#148 Article 12219 Posted at 1994/10/22 11:57:21 by サメくん (MAP5059) [FREE]

Subject: では・・・(長文注意です)

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現在 #148/12219 — 「では・・・(長文注意です)」 1994/10/22 11:57:21 · サメくん · MAP5059
     返信先 #148/12328 — 「Re: では・・・(長文注意です) /12219」 1994/10/25 02:27:38 · 速水 明 · MAP4167
> 今回は、先日見た赤ずきんチャチャの第25話から得られたインスピレーションを基 >に書いた文章をUPします。 久しぶりに、創作の世界を堪能させて頂きました。 いやぁ、ジョアンI世と言えども、ただの女の子という面がなんとも 「らしくない」というか、そのギャップがいいですね。 文面も読みやすいし、しっくりと違和感なく読めました。 これからも、何か出来たら書いて、アップして下さいね。(笑) 私も、昔、似た様な小説を書いてたんですが、途中で果…
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今回は、先日見た赤ずきんチャチャの第25話から得られたインスピレーションを基

に書いた文章をUPします。

 なにぶん一気に書いたものですから、至らぬ所、独り善がりな所等多々あるとは思い

ますが、よかったら読んでみてください。

 できれば、感想などいただければ嬉しいです。


 『未来へ……』

 そよぐ風。 あふれる陽光。 
 新緑に萌える山は蒼く、空はまるで深秋のごとく澄み切っている。
 緑野を渡ってきた柔らかな風が、白い頬を撫で、さらさらと音をたてるように金色の
繊毛を煌かせていく。
 純白の羽飾りが2つ、間に得も言われぬ気品をまといし金翼のメダリオンをはさみ、
凛々しき少女の髪を飾っていた。
 紅のベールを肩に巻き、風に流すその姿は、戦場の時とは違って肩当てはつけていな
い。 身にまといし白と蒼のドレスは、清楚であり、巫女とも聖女ともとれる風合いを
かもしている。
 透明な風に、はるかな未来を見通すような視線をおくる少女が、ほんの一時前まで
一人の戦士として、虐げられし者達の救世主として戦ってきたことなど、伺いしれよう
もないことであった。

 亜麻色の瞳が鳥のさえずりに揺れ、かすかな潤みが光を映えさせる。
 華奢ともいえる伸びやかな身体に、わずかな震えがはしる。
 そっと瞳をふせ、かろく細い息をつく少女。
 何気なく右の手のひらを見やると、そこにぽうっと淡い薄桃色の光がともった。
 ……程無く、光は紅に輝く一振りの小剣と化し、少女の右手におさまる。
 いくぶん瞳を細めながら、少女はその剣をしげしげと眺め続けた。
 複雑な文様を為している金と紅玉の装飾が施された紅き剣は、幾度も少女とその仲間
達の生命を救ってくれたもの。
 かけがえのない、自分自身そのものとも言える剣。
 そして……。
 少女の金色の髪が、優しき風をはらむ。
 そっと、まるで太陽に捧げるかのように、少女が紅剣を差し上げると、再び薄桃色の
光が剣を包み、見る間にそのシルエットを変じていく。

 ピィーッ
 差しのべられた少女の右手に、紅き羽毛と鋭き眼光を有する鳥の姿があった。

 不死鳥。
 この、神の使いとも言われる聖なる鳥こそが、紅き剣の本来の姿。
 そして、少女の無二の親友。
 見上げる少女の瞳が、こみあげる涙にきらきらと輝いた。

 ピィーッ
 少女に注がれる不死鳥の蒼瞳は、限りなく優しく、そして哀しい。
「……ぴぃ……」
 おそらくは、その名を告げたのだろう少女のつぶやきは、しかし今はただ風の中に
融けていった。

「お別れの時だなっ」
  びくっと身体を震わせ、振り向く少女の背後には、痩身に薄青のローブをまとい、
  一振りの細剣を携えた男が微笑んでいた。 淋しげな翳を頬にはきながら。
 少女は、まるでいやいやをするように小さくかぶりを振った。

 ピィーッ
 胸にかき抱かれた紅き鳥が、主人を、友を、気遣うように鳴く。
「……ジョアン。 いや、今はもうジョアン1世陛下かな」
 かすかな苦笑を浮かべると、男はまっすぐに少女の瞳を射た。
「あれの封は終わった。 彼の者の眠りが覚める日が来ぬことを、僕は祈っている」
 ジョアン、いや今はこの国を治めるべく宿命づけられた少女、ジョアン1世は、その
凛々しき表情をかすかに曇らせた。
「島に封印した魔族達が、永久にあのままであるわけはありません。 いずれは、私
以上の力を持つ者が現れて、縛鎖をふりほどくでしょう」
「神託かいっ?」
 答える代わりに、ジョアンはふっと高い空を見上げた。
 王城の一角から眺める青空は、けれど緑野から見る青空と少しも違いはしない。
 ぽっかりと浮かぶ白雲が二つ三つ、ゆっくり北へと流れていく。
 あの島から眺める空も、同じ空に見えるのかしら?
「……魔族達とて、この世に生きる者としては私達と同じ。 そうだったね、ジョアン」
 彼女が時につぶやいた言葉を、男は噛みしめるように口にした。
「でも……。 この戦いは、避けられなかったわ。 ヒューリ」
 ジョアンは、幼馴染みの名を呼んだ。
 そして、まっすぐな瞳を彼に向ける。

 ピィーッ
 羽ばたき一つ、不死鳥は少女の手から舞い上がり、やがてヒューリが差しのべた左手に
優雅に舞い降りた。
「神から賜りし三つの武器と共に。 君は、そして僕達は、この戦いの是非を疑う暇が
無いほどの激戦をくぐりぬけてきた。 やがて戦いは終わり、君はこの国の救世主として
新たなる王位につき、すでに武器の一つの封は為された」
 厳かなるヒューリの言葉に、ジョアンはこくりっとうなづいた。
「訪れし平和な時代に、武器は必要無いわ。 もう私がホーリーアップを為すことも無い
でしょう。 ……その子ももう、空へ帰る時ね」
 訣別の情を振り払うように、彼女は大きく伸びをした。
 おいでっと差し出された右手に、不死鳥はすべるように飛んでくる。

 ピィーッ
 優しく鳴く紅き鳥のくちばしに、そっとキス。
 『……ありがとう……』
 ぱっと蒼空に向けて、解き放つ。

 ピィーッ
 大きく弧を描いて別れを惜しんだ不死鳥は、最後にひときわ高くさえずると西の空へ
と飛び去っていった。
「いつか、また……。 貴方の助けを借りる日が来るでしょう。 その時は……」
 胸の奥からこみあげてくる想いに、亜麻色の瞳が涙に揺れる。
 そっと差し出された、絹のハンカチーフを受けとるジョアン。
 くすんっと、涙を拭いながらも苦笑してみせる。
「大丈夫。 未来はきっと、その時々の若者が作り上げるよ。 だから……」
 そう言って微笑むヒューリの胸に、ジョアンはそっと飛びこんだ。
 恋人は、優しく彼女を抱きとめてくれる。
「……幼き我のために。 未来にて、困難に直面するだろう子供達のために」
「我らは祈る。 神よ、我が子等に祝福を。 愛と勇気と希望の名のもとに……」
 二人の祈りに、ジョアンの髪を飾るメダリオンが応えるかのように煌いた。

 初夏を思わせる陽光が、射しこむ貴賓室の赤い敷布を温めている。
 透明な風が、瑞々しい緑の芳香を運んでくる。
 やがて、金色の煌きと、エメラルドの煌きが、そっと寄り添っていった。

               94.10.22 第4版
                 サメくん