#126 Article 18405 Posted at 1994/07/30 00:30:09 by 大地 (MAP4664) [HIME.TXT]

Subject: Novels "Himechan's Ribbon" 1-1

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現在 #126/18405 — 「Novels "Himechan's Ribbon" 1-1」 1994/07/30 00:30:09 · 大地 · MAP4664
     返信先 #126/18433 — 「Re: Novels "Himechan's Ribbon" 1-1 /18405」 1994/07/30 11:37:54 · たゆき · MAP4408
感想キーワードってこんな感じでよかったかしら? それはそうと感想です。 うみゅ、姫ちゃんはおいしかったです(笑)。 「受験」の緊張感みたいなものがこちらに伝わって来ますね。私の中学のときの 友達は今年が受験みたいですが、私にはそういうのってもう無いんですよ ね。(高専だから) だからといってろくに勉強もせずにちんたらちんたらすごしてる自分が 少し恥ずかしくなりました。私も中学の時は、この姫ちゃんのように一生懸命 受験勉強してたのに...…
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Novels "Himechan's Ribbon"

 <First Story>      Spring of Fifteen Years Old (February 1995)


……… ピピッ、ピピッ、ピピッ ………
 目覚まし時計の電子音が、寒い姫子の部屋に響いている。姫子は手を伸ばして
目覚ましを止めた。
「ううっ、寒いよお。ふとんから出たくないなあ。」
「ねえ姫ちゃん、もう起きた方がいいよ。」
「あーあ、ポコ太は毛で暖かそうだね。いいなー」
「あのね姫ちゃん、ボクはライオンなんだよ。寒いのは苦手!………っと、そん
 なこと言ってる場合じゃない。いよいよ今日じゃない!」
「うん、分かってるって。」
ようやく姫子は着替えて階段を下りていった。
「あっ、姫姉ちゃん、おはよう」
「おはよう、姫子」
「おはよう、今日はさすがに早いのね」
夢子、愛子、花子の三人はもう食事を始めていた。太郎は撮影に出かけていて留
守だったが。
 手早く食事を済ませた姫子は部屋に戻り、窓を開け放った。
「クシュン!どうしたのさ姫ちゃん、窓なんか開けて。」
「ごめんねポコ太。でも、こっちの方が気合い入るでしょ。」
ポコ太はいつになく真剣な姫子の顔を見上げた。そして、その理由もポコ太はよ
く分かっていた。なぜなら、今日23日は風立中央高校の入試の日だからである。
「えっと、受験票でしょ、筆記用具でしょ、教科書でしょ、………」
持ち物を確認している姫子を見て、ポコ太は昔の姫子と違う何かを感じた。準備
のできた姫子は、晴れて真っ青に澄んだ二月の空を眺めていた。
「よっし、じゃ気合い入れるよ、ポコ太!」
「あっ、うん!」
「いっけいっけ ご~ご~ じゃ~んぷっ!」
二階から響く音を聞いて、姫子の今も変わらない癖に、花子は笑みをもらしてい
た。大地からもらったリボンをつけた姫子は、鞄を手に取りポコ太に言った。
「じゃ、ポコ太、行って来るね。」
「頑張ってね姫ちゃん。あれだけ勉強したんだからきっと大丈夫だよ。」
「ありがと、ポコ太。行って来まーす。」
姫子が出ていったあと、ポコ太は玄関で花子と話す姫子の声を聞いていた。


 姫子は歩きながら、廃屋でのクリスマスの日のことを思い出していた。
……「ねえ大地、高校決めた?」
思い切って聞いた姫子に、大地は半ばあきれながら言った。
「ばかなこと言うなって。俺はずっと前から風立中央に決めてるんだよ。前にも
 言っただろ。だいたいおまえは人の話を………おい、どうした野々原?」
姫子はうつむいて言った。
「・・・あたしね、・・・大地とね、・・・同じ高校に・・・でも、あたしの成績じゃ・・・」
姫子の手をそっと握る大地の頬は、夕日に赤く染まっていた。
「俺が・・・俺が教えてやるよ。」
姫子は大地の思いがけない言葉に驚いていた。大地は顔を上げた姫子の視線をそ
らすように窓の外を向いていた。
「まだあと二ヶ月ある。五利に何文句言われようともさ、受かっちまえばいいん
 だよ。それでさ、・・・一緒に・・・中央高校行こうぜ・・・」
姫子は自分と顔がひどく火照っているのを感じた。そして、それを大地に見られ
ないようにそっと下を向いていた。……
「よっ、野々原!」
その言葉で姫子は我に返った。
「おはよう、大地。」
そう言ってにっこりと微笑み返した。二ヶ月間のことを思い出しながら。
 中央高校の校門に着いたとき、姫子は緊張しきって手に汗がにじみ、震えてい
た。手袋を外して握りしめても汗は止まらなかった。
「こんな時に緊張してないヤツなんてどこにもいないぜ。」
「そ、そりゃそうだけど・・・」
「・・・前さ、くも助で三年後に行ったとき、三年後のおまえは何も教えてくれな
 かったんだよな。で、もし中央高校に行くって分かってたら、おまえ、どうし
 てたと思う?」
姫子は大地の質問の意図が理解できなかった。
「どうって、何も変わらないんじゃない?」
大地は首を振って言った。
「それは違う。例えばな、うーんと、50cmの高跳びをするとする。その時、おま
 え、練習するか?」
「えっ?するわけないじゃない。50cmだったら小学生だって跳べるわよ。」
「だよな。それと同じことだよ。当然出来ることを練習するヤツはいないだろ。」
姫子はハッとして顔を上げた。
「知ってたらおまえは勉強してなかっただろうな。でも、知らなかったおかげで
 おまえは勉強したんだと思う。………俺、いつも思うんだ。『未来は、自分が
 作るものだ。毎日一生懸命生きていき、その努力で先が開かれていく』って。」
「うん、・・・ありがと、大地。」
いつのまにか姫子の震えは止まっていた。
「あたし、信じるわ。あれだけやったんだし、絶対受かるんだって。」
「そうだ!最後は自分に自信のあるヤツが勝つんだぜ。じゃ、お互い頑張ろうな。」
ようやく姫子は明るい顔になり、試験教室には行っていった。
………試験は無事済んだ。姫子は自分の力はすべて出せたと確信していた………

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