#91 Article 1468 Posted at 1992/05/07 01:09:20 by TOSHI (MAP2425) [LOVESOS]

Subject: 守れ!日曜参観その5

(承前)
 篠田と5年3組の父母たちは、保健室へ避難していた。
「おっ、また揺れが……」
「今度は何でしょう?」
「お父さん、お母さん方、落ち着いてください。バクリュウオーの発進です」
 ざわめく親たちに養護教諭の姫木るる子が説明する。
 学校の地下にはもう一機のメカが隠されている。竜型から人間型へ変形するロボット
、バクリュウオーである。大きさはライジンオーとほぼ同じという巨大なロボットだが
、ライジンオーとは違って、指令室からの遠隔操縦によって動くのだ。ライジンオーの
支援メカであり、またライジンオーと合体して究極の巨大ロボット・ゴットライジンオ
ーにもなる。それが、今、地上へと浮上しつつあるのだった。
 校舎がスライドし、隠されていた発進口が開かれ、それとは反対方向へ時計台と学校
の壁面が移動して、カタパルトを形成する。出現した竜型のメカは、翼を広げると校舎
よりも大きいくらいである。それが存在を誇示するように、雄々しく一声吠えた。
「バクリュウオー発進!」
 マリアが拳を振り下ろし、パネル上で明滅している球体を勢いよく叩いた。はげしい
噴射煙をたてながら、バクリュウオーは空へ舞い上がった。
「ねえ、やだ、ちょっと」
「どうしたの、れいこ。あら、やだ、ほんと」
 通信担当の池田れいこときららが騒ぎ出した。れいこはクラスでも一番背が小さいが
、仁と一緒にプロレスごっこをするような活発な女の子である。だが、女の子らしい一
面も持っていて、怒ったり泣いたりと感情の起伏が激しい一方、こうしてみんながなか
なか気づかないところまで気を配っているのだった。
「いったいどうしたの。れいこ」
 マリアが問いかけると、れいこは困った顔をして、
「バクリュウオーに人がつかまってるの。今、スクリーンに映すわね」
 各国の人工衛星や出動時に打ち上げられる複合センサーからの情報が、正面の大スク
リーンに入れ替わり、いくつも表示されるようになっている。その内のバクリュウオー
の後ろ足を捉えていた映像が、スクリーンいっぱいに拡大された。れいこの言うとおり
、中年の男性が一人、必死になってバクリュウオーの爪にぶら下がっている。
「やだ、どうして気づかなかったの」
「すみません。バクリュウオー発進時の安全確認はラブさんの仕事でしたから……」
「……あの、あたしも……」
 バクリュウオーのレーダー担当、近藤ひでのりと、センサー担当の泉ゆうが申し訳な
さそうに答える。
 マリアは虚をつかれた。普段なら、バクリュウオーの近くに人がいれば愛子が知らせ
てくれるのだが、今日はいなかった。発進はオートマチックだから、始動後が主な仕事
のひでのりやゆうがつい気を抜いてしまったからといって責められない。大体、無理や
りに乗り込もうとでもしなければ、発進口になど入り込めるものではない。何とか侵入
したとしても振り落とされるのがオチだから、よほどの酔狂でないかぎり、バクリュしたとしても振り落とされるのがオチだから、よほどの酔狂でないかぎり、バクリュウ
オーに取り付こうなどということは考えもしないだろう。
 マリアはキッとなって、スクリーンに映し出された男を睨んだ。恰幅がいい……とい
うよりは少々太った、背の低い人物である。いったい何を考えているのだろうか。そう
思い、男の顔を見つめるが、必死の形相からは、振り落とされまいという感情以外は読
み取れない。
「これでは戦闘はおろか、変形、合体もむずかしいですね」
 妙に落ち着いた声で勉が言った。
「もー、あっちもこっちもどーするのよ!」
 マリアは半分、ヒスを起こしかけていた。
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 愛子は朦朧とした意識の中をさまよっていた。さっきから、何度も自分を呼ぶ声が 愛子は朦朧とした意識の中をさまよっていた。さっきから、何度も自分を呼ぶ声がす
る。それがあの人の声に聞こえてしかたがないのだ。夢うつつの中で彼女は叫んだ。
「いや、こっちへこないで!」
 しかし、呼び声はやまず、空から巨大な手のようなものが伸びてきて、彼女をわしづ
かみにした。彼女の全身が隠れる程巨大なものだ。それがギリギリと彼女を締め上げる
。必死になって体を突っ張り、押し潰そうとする力に抵抗するのだが、圧倒的な力の前
に息もできない。次第に押し返す力も弱まり、バキバキと音を立てて体が潰されていっ
た。彼女の体は粉々に砕け、塵になる。ただひとつ残った右腕だけが空中を虚しくかい
た。と、その手がふいに何かを掴む。温もりのある手。そう、汗ばんだそれは昔どこか
で触れたことのある掌である。愛子はそれを無我夢中で強く握りしめた。暖かくて大き
な手。それは……。
「愛子!」
 強い呼掛けに愛子は意識を取り戻した。同時にうなりをたてて突風が彼女を襲った。
黒い巨大な影が彼女の上空を通りすぎていく。
「バクリュウオー! そうか、私……」
 彼女は自分の置かれている立場をはっきりと思い出した。
「オヤジィィィ!」
 邪悪獣がひときわ大きな叫び声を上げて、腕に力を入れてきた。夢の中のように、か
なりの圧迫感で、愛子を締めつける。
「ラブ、しっかりして!」
 上空を旋回しているバクリュウオーからマリアが呼びかけてきた。愛子はバクリュウ
オーに向かって小さくうなずいた。回りを見渡すと、剣王、獣王が手をこまねくように
、遠巻きにこちらを眺めている。上空にはバクリュウオーと並んで鳳王もいるようだ。
 わたしのためにみんなが攻撃できないでいるんだ。彼女はズボンのポケットをまさぐ
った。メダルがある。何とかこれを持って教室にもどらなきゃ。
 メダルを握ると勇気が沸いてきた。大丈夫、わたしには17人の仲間がいるんだもの。
自分にそう言い聞かせながら、愛子は体に力を入れた。邪悪獣の腕を精いっぱいの力で
押し戻す。--駄目だ。もう一度繰り返す。やはりびくともしない。
 どうにかして、邪悪獣の気をそらし、腕の力を抜くように仕向けないと脱出はむずか
しいようだ。愛子は天を仰いだ。
 すると上空のバクリュウオーから黒い影が邪悪獣めがけて発射された。(つづく)