#91 Article 1467 Posted at 1992/05/07 01:06:15 by TOSHI (MAP2425) [LOVESOS]

Subject: 守れ!日曜参観その4

(承前)
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「地球防衛組出動!」
 マリアはいつもの号令とともに、メダルをピンと跳ね上げ、落ちてくる勢いのままに
机の一角にはめこんだ。すると教室全体が光り輝いて、教室の中のものが一斉に移動を
始める。中にいた大人たちは、篠田先生も含めて廊下に放り出された。
「ほほー、これがライジンオーの発進ですか」
「実際に見るのは初めてですね」
「あの子たち大丈夫でしょうか」
「おお、教室が動き出した」
「かなり揺れますな」
「いってらっしゃーい。怪我しないでねー!」
「負けるんじゃないぞお」
 親たちが口ぐちに叫んでいる間に、教室は5年3組の子供たちを乗せたまま、地下深
くへ移動し、そこで巨大合体ロボット・ライジンオーの指令基地となった。机は並べ替
えられてコンソールに早変わりし、窓はいつのまにかモニタースクリーンになっている
。
 さらに、その間に仁、飛鳥、吼児の3人は高速シューターを通じて、学校の各所に存
在する3体のロボットの操縦席へと移動し、発進準備にとりかかる。
「飛鳥君、鳳王出動OKよ!」
 石塚織絵ことポテトが呼びかける。いつもは、相撲取りのようにふくよかな体にふさ
わしく、おっとりとしている彼女だが、積極的な親衛隊のメンバーだけあって飛鳥がら
みだとさすがに素早い。
「こちらはいつでもいけるよ」
 獣王のコックピットから吼児が声をかけてきた。慌てて、坂井ときえが獣王の各セン
サー機能を確認する。親を手伝って居酒屋を切り盛りしているときえのこと、普段なら
テキパキとこなすところだが、愛子のことが気になったとみえて、確認が遅れた。
「おおい、剣王はどうなってるんだ?」
 仁が怒鳴る様子が教室、いや指令室の正面のスクリーンに映し出された。
「回路のチェックは終わってるよぉ」
 催促されたヨッパーがぶうぶうと口を尖らせて文句を言う。
「いけない。ラブいないんだっけ。大介くん、お願い」
 『地球防衛組』指令官のマリアの呼びかけに応え、
「剣王、オールグリーン」
 佐藤大介がセンサーモニターをすかさずチェックする。大柄な彼だが、動作はいたっ
て俊敏だ。
「ラブさんがいないため、センサー系統の効率が40%落ちます。各自、気をつけてくだ
さい」
 地球防衛組の頭脳労働担当、小島勉が眼鏡をずり上げながら注意を促した。彼の言う
とおり、本来なら愛子のいるべき席のコンソールは沈黙したままだ。全員が揃わないと
発進も思うようにいかないところが地球防衛組の弱点である。
「各機発進!」
「剣王、鳳王、獣王、各機発進!」
 マリアのかけ声を射出担当の今村あきらが復唱し、3体のロボットを次々と打ち出し
ていく。鳳王は鳥型のメカなので、発進口のプールからそのまま垂直上昇すればいいが
、人型の剣王と獅子型の獣王には飛翔能力がないために、グラウンドのトラックと体育
館が、それぞれのカタパルトとなっている。
 轟音をたてて、3体が発進した。最初の頃は、この騒音に近所から苦情が殺到したも
のだ。幸い、学校が高台にあるため被害は少なく、矢沢校長のとりなしもあって、今は
我慢して貰っている。
「仁、いい、金蔵じいさんの家の上は避けて通るのよ」
「わーってるって!」
 マリアが仁にいちいち念を押すのは、以前、着地に失敗して半壊させた家から学校に
怒鳴り込まれたことがあるからである。それが日昇市一の頑固者と言われている老人だ
ったため、町中を巻き込んだ大騒ぎになったのだ。
「うわーっ、いけね、対地距離を間違えた! じーさんとこに、突っこんじまう!」
 言っているそばから、仁がミスをしでかした。
「何ですってぇ。センサーはどうしたのよ! ……ってラブよね……。とにかく何とか
しなさいよ!」
「何とかったって、どーすりゃいーんだよ!」
「そんなこと自分で考えるもんでしょう!」
「仁、捕まれ」
 飛鳥が機転をきかせて、鳳王をホバリングさせ、尾羽で剣王を引っかけた。
「さすが、飛鳥君!」
 きららが自分のことのようにはしゃぐ。
「ねえ、邪悪獣は目の前だけど、どうするの?」
 吼児の乗った獣王は、他の2機がどたばたを演じている間に、すでに町中の邪悪獣に
迫っていた。本来なら、3体が充分相手を痛めつけておいた後、合体して巨大ロボット
・ライジンオーとなり、一気に決着をつけるのである。
「そっか、ラブが捕まったままなんだわ。勉君どうすればいい?」
「どうすればいい……と言われましても……」
と、勉は困ったように首を傾げた。
「ライジンオーに合体しても、ラブさん不在のため、戦闘力は低下したままで効率的で
はありませんし……第一、合体できるかどうか……」
「そうじゃなくて、ラブはどーやって助けるのよ!」
 マリアは勉にくってかかった。向かいに座っている高森ひろしが、慌てて間に入る。
5年3組の副委員長であり、クラスの仲裁役という損な役回りを引き受けている、気の
優しい男の子だ。
「やいやい、そこの邪悪獣、ラブを離しやがれ!」
「そうだ、ラブを離せ」
 指令室でもめている間に、さらに邪悪獣に接近した仁と吼児は、口々に邪悪獣へと無
駄な呼びかけを続けていた。
「オヤジィィィィ!」
 邪悪獣が叫び声を挙げると、口の回りの不精髭のようなものが鋭さを増し、ミサイル
となって、2機に襲いかかった。そして2機が爆発に巻き込まれているうちに、また、
繁華街へと進み始める。
「とにかく……街から人気のないところへ場所を移し、邪悪獣の足を止めるのが、先決
です。そこでラブさんを救出しましょう」
 マリアに体を揺さぶられながら、勉が進言すると、マリアはうなずいて、
「わかったわ。バクリュウオー発進スタンバイ!」
というかけ声とともに、指令席のパネルから立ち上がったレバーを引いた。再び、今度
は校舎全体が鳴動を始める。(つづく)