#91 Article 1469 Posted at 1992/05/07 01:11:44 by TOSHI (MAP2425) [LOVESOS]
Subject: 守れ!日曜参観その6
(承前) ミサイル……ではなかった。それより何かもっと小さなものだ。射ち出されたという よりは、落下した、あるいは振り落とされたという方がふさわしい感じだ。それが、ぐ んぐんと勢いをつけて邪悪獣に向かってくる。 ついに黒い影は邪悪獣の目に激突した。 「オ~ヤヤヤヤジイィィィィ!」 邪悪獣には何が起こったのか理解できなかったに違いない。目を両手で押さえ、グラ リとよろめいた。その拍子に、愛子を押えつけていた力も抜けて、彼女はあっと思う間 もなく空中に放り出された。 二度三度と天地が入れ替わる。どこからか彼女の名前を呼ぶ声がした。これから起こ る恐怖が頭をよぎって、彼女は目をつぶった。 ぐい、と急に腕に力が加わった。誰かが彼女の手を握って、飛んでいきかけた彼女を つなぎ止めてくれたのだ。彼女はよくわからないまま、必死にその手を握りしめた。手 に力を込めると、向こうもそれに合わせて力強く握り返してくれる。掌に懐かしい感触 が広がった。この感じは小さい頃よく味わったことがある…… 驚いて、引かれる手の先を仰ぎ見ると、そこには忘れられない人物が微笑んでいた。 「本当に本物? 邪悪獣じゃなくて?」 愛子が驚きの声を上げると、 「もう忘れられてしまったのかな」 眉間にしわを寄せて幾分悲しそうに言う。愛子は慌てて首を横に振った。 彼女の反応にうれしそうに笑い返してきた顔だが、一転苦痛に歪む。どうやら向こう も邪悪獣のどこかに無理やりしがみついているらしい。自分と愛子の全体重を腕一本で 支えているのだ。大人の男性でもこれは苦しい。 「大丈夫?」 「何、このくらい……。お前には親らしいことを何もしてやれなかったからな。こうい うときくらい頑張らせてくれよ……」 強がりを言うが、顔には脂汗が浮かんでいる。 「オオオオオオオオオヤジィ!」 思わぬ攻撃に邪悪獣が怒りだしたらしい。体を左右に大きく揺すりながら、四方の建 物をあたり構わず叩き壊し始めた。こうなってはもうなすすべがない。愛子たちは邪悪 獣に振り回され、邪悪獣を掴んでいた腕も抗い切れなくなり、ついにあえなく空中へと 投げ出された。 バクリュウオーから女の子たちの悲鳴が上がる。 不思議に愛子には不安はなかった。これから数秒後に待っている悲惨な結末がわから ないわけではない。だが、くるくると空中を舞う、こんな状況に至っても、まだ手は握 られたままだということが彼女を安心させた。 この手だ、さっき夢の中で握ったのは。そう考えると、微笑みさえ浮かんでくるのだ った。 不意に下から体が支えられた。地面でなく、何かがフワリと彼女を受け止めたのだ。 横を向くと剣王の顔がすぐ近くにあった。 「へへっ。滑り込みセーフだぜ」 仁の得意そうな声がする。愛子たちは剣王の掌の上にいた。剣王の右目を透かして、 仁がVサインを出しているのが見えた。愛子はそれに笑顔で応える。わたしには仲間が いるんだ。そして…… 「しっかりして!」 愛子が剣王に向けた顔を戻して呼びかけると、苦しそうな息をしながらも笑顔が返っ てきた。愛子はほっと胸をなで下ろす。すると突然、向こうが話し始めた。 「なあ……愛子、参観に行けなくてすまなかったな」 「何言いだすのよ」 おとなしくさせようとする愛子を押しとどめて、彼はなおも話を続ける。 「昨日のお前の姿が気になってこっちまできたら、参観日だっていうじゃないか……。 で、お前の顔が見たくて学校まで行ったんだが、勇気がなくて……。ばかみたいにうろ うろしていたら、突然怪物がお前を抱えて飛び出してくるだろう。もうどうしたらいい かわからなくって、ロボットにしがみついて後を追ったんだけど……。結局役に立てな くって、逆に迷惑かけちゃったなあ……」 「そんなことない、そんなことないよ」 照れたように笑う男に、愛子は飛びついて、力を込めて抱き締めた。 「メイワクなんかじゃない。お父さんなんて、お父さんなんて……大好きよ!」 「ラブ、大丈夫なの?」 バクリュウオーからマリアの心配そうな声がした。愛子が、その声に手を振って応え ると、今度は剣王に乗った仁が話しかけてきた。 「ラブ、昨日はあんなこと言って、その……悪かった。ごめん」 「いいのよ。気にしないで。それより、仁、私を早く教室へ連れてって。ゴッドライジ ンオーであいつをやっつけなくちゃ」 「お……おう! 飛鳥、頼む」 仁が離れたところに愛子たちを下ろし、鳳王を呼んだ。 愛子は降りてくる鳳王に駆け寄りながら、振り返り、父に向かって叫んだ。 「お父さん! わたしたちが邪悪獣を倒すところを見ていて。それが、地球防衛組の授 業参観よ!」 ■ ■ ■ ■ 「僕たちの授業参観はめちゃくちゃに終わってしまった。でも、お父さんお母さんたち は、僕たちがどんなに大変な仕事をしているか少しはわかってくれたみたいだ。おかげ で、前とはちょっぴり変わって、邪悪獣の出た日は宿題しろ宿題しろってあんまり厳し く言わなくなったみたい。あと変わったことと言えば、帰り道、ラブがときどき、僕た ちと途中でわかれて、上日昇への小路を曲がるようになったこと、かな」---日昇学 園5年3組星山吼児の日記より (了) �「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「�「 ダウンロードありがとうございました。 TOSHI