#70 Article 6104 Posted at 1997/09/09 05:47:04 by みりす (MAP6909) [PORINFANO]

Subject: Re: 読書日記です(児童文学とファンタジー中心) /6003

ゲド戦記最後の書「帰還」ル・グウィン/作 清水真砂子/訳(岩波書店)

	 ゲド戦記の第4作目。シリーズ完結編。3作目からそう時間はた
	っていない。

	 2作目で闇の神殿から救い出されたテナーは、ゲドの師であるオ
	ジオンのもとにいたが、やがて普通の男と結婚して子どもまでもう
	けている。しかし、夫に先立たれ、息子は船乗りになって出て行っ
	た。夫が残した農園を手入れしながら彼女は静かな暮らしをいとな
	んでいた。
	 そんなある日、村はずれで野宿していたならず者たちは、自分た
	ちが連れていた女の子をいたずらして、半殺しのまま焚火の中に放
	り込んで逃げるという事件がおこる。体の半分以上に重い火傷をお
	った女の子は誰の目にも助からない状態だったが、自分がゲドの手
	を借りて闇の世界からはいだしたように、テナーは少女を闇の世界
	から救った。
	 こうして火傷をおった少女とテナーの生活がはじまるが、そこへ
	オジオンが病に伏しているという知らせが来る。テナーは少女の手
	を引いてオジオンのもとへ急ぐ。そしてオジオンの死とひきかえる
	ように、世界の果てから生還したゲドと再会するのだったが、ゲド
	は魔法使いとしての力を失い、抜け殻のようになっていた。
	
	 3作目までのすべてをふまえてストーリーができあがっています
	が、これはもう、児童文学というにはあまりにも生々しい人間模様
	なのでした。
	 2作目では若いゲドとテナーはたしかにひかれあっていて、この
	ふたりはいずれ結ばれるのではないかと思わせているのに、テナー
	は何処の誰とも知らない普通の農夫と結婚して家庭を持って、今は
	後家さんになっている。若くもなければ、特別な力も持ち合わせて
	いないただの女。なんともやるせない設定ですが、テナーは自分が
	選んだ家庭を持つという人生を後悔してはいないみたい。それが救
	いかな。
	 ところがそこへ、すべての魔力を使い果たして普通のじーさんに
	なったゲドがやって来るんですね。その哀れっぽさといったら、あ
	の若く無鉄砲だったゲドを知ってる読者なら、認めたくないような
	情けなさなんです。ここにはかつての大巫女も大賢人もすでになく、
	リアルな人間のみが存在している……これは滅茶苦茶つらい物語か
	もしれません。
	 まあ、結論を言ってしまえばテナーとゲドは結ばれて、それなり
	にハッピーエンドなんですけどね。でも、ゲドは魔力を取り戻すこ
	とはなくて、最後までシビアな話とも言えるかな?
	 もっとも、人並な家庭を持った彼は進んで魔法使いに戻ろうとも
	しなかったのですが。

みりす