#38 Article 942 Posted at 1991/02/25 12:03:34 by ユ-サク (MAP1754) [STORY]

Subject: Re:*11 激動焼け跡ラブコメ・小説版「てやんでえ」! /941 .... /889 /887

その姿を認めるや、吠え声を上げてその方向に突進しようとする原子怪10号。
そもそも対猫目スラッシュ戦を想定して造られているメカである。その技の主を一番の
攻撃目標として選ぶ様にプログラムされてあったとしても、不思議は無い。
カラ丸は幻ナリ斎の怨念の深さを見る思いがして、ゾッとした。

質量からいえば自分の1万分の1も無い相手に掴みかかろうとする巨大な怪物。
その顎がガッと開かれ、忌まわしい銀色の輝きが噴き出そうとする。
「危ないッヤッ太郎、避けろ一一一一一一一ッ!」叫ぶスカシ-、だが間にあわない!
殺人光がヤッ太郎めがけて吐き散らされる!
瞬間、それまで溜めに溜めた力をその双刃に込めて解き放つヤッ太郎!
「猫目スラッシュッッッ!」
光が交錯する。大爆発!突風、激震!行き場を失った加速粒子が嵐となって荒れ狂う!
崩れた廃ビルの壁に叩き付けられるヤッ太郎。関節がギシリと鳴り、火花が散る。
「ッッ!!」
その激痛の中にも、瞳は敵の動きを追い続ける。
原子怪10号は相手が動かないと見るや、拳を叩き付けて潰そうとする。まるで虫でも
殺そうとするかの様に。
「!!」
ヤッ太郎の双眼が開かれ、何かを見切る!
「猫目スラァッシュッッ!」いきなり張り付けの体勢から必殺技を繰り出すヤッ太郎。
迫り来る拳に、激突!まともにぶつかり合うエネルギ-の矢と巨大な金属質量!!
爆風!巻き上げられるスカシ-カラ丸、忍者軍団!
「うわ一一一一一一一一っっ!」
必死に風と戦いながら、…スカシ-は見た。
ヤッ太郎は爆風に痛め付けられ、倒れ伏していた。
原子怪10号の拳は指の一本が僅かにガタついていたが、殆ど無傷であった。怪物は少々面食らいはしたものの、直ぐにガッと手を開いて相手を握り潰そうとする。
「猫目スラァァッシュッッ!」
突然、ヤッ太郎が向き直り仰向けの体勢のままその手を狙い撃つ!
直撃!爆光の中、もげ墜ちてゆく原子怪10号の指の一本!
例え装甲が絶対に無敵でも、内部のパ-ツは通常の素材で出来ている。…しかも、拳の
先端は多数の関節機構が複雑に絡み合う、言わば精密装置である。度重なる振動に耐え
られず、内部で小さな破壊が起き、関節アクチュエ-タ-の一つが脱落したのだ。
それを見逃すヤッ太郎ではなかった。
「猫目スラァァ一一一一一一ッシュッッッ!」
絞り出された生命か、不屈の精神か。輝く一撃が指の脱落した関節孔に飛び込んで行く!凄まじい連鎖爆発!!
限られた、しかも完全に密封された空間内での爆発は、桁外れの圧力を生む。
跡形も無く叩き潰される腕内部のメカ!肩関節のタ-レットが外れ、轟音をあげて落下
する原子怪10号の右腕!
「でぇいいッ!」
気合と共にジェットホバ-と背部スラスタ-を全開にし、腕の外れた関節接合部に飛び
込んで行くヤッ太郎。
「ヤ、ヤッ太郎ッ!!?」
「あッ、あの馬鹿野郎ッッ!」
「ヤッ太郎ッ、無茶だ一一一一ッ!」
口々に叫ぶスカシ-、カラ丸、マイケル。

原子怪10号はそれに気付くと、もう一方の腕を廻して侵入者を摘み出そうとする。
まさぐる手に捕まらないよう、メカの奥に潜り込んで行くヤッ太郎。
「ヘッ、一発決めたらトンズラこくつもりだったが、こうなっちまっちゃ仕方ねぇな…
 ウッ…………」
体中がガタガタだ。激しいスパ-ク、オイルが飛び散る。………まだだ。あと、一発。
意識が遠退きそうになる頭を振り、メカの狭間に立ち上がるヤッ太郎。
2本の刀を、交差させる。気合を込める。

  悲しみを追い越す魂の群れ 正義を護る力で輝くよ
  生命の温もりをその手に託し 勇気の刃振り降ろせ

おミツは、遠く離れた場所で始終を見ていた。「!!」…突然おミツは理解した。
「ヤ、ヤッ太郎さんッ…」
これが理由だったんだ。おミツには、全てが判った気がした。何故、猫目スラッシュが
最強の剣と言われるのか、その所以が。…だが、しかし。…いやだ。嫌だ!見たくない、そんなもの、見たくないッ!
目を覆って座り込んでしまうおミツ。
傍らでプリンスがつぶやく。「負けた…」
「僕は、あの男には叶わない…」

  瞳の向こうに新しい風が吹き 希望の明日運ぶよ

これが最後の一発だ。……多分、本当に最後の一発だ。
ヤッ太郎の胸中に、様々な人々の顔が浮んでは、消える。
気のいい仲間達。憎いが頼りになるライバル。おっかないが可愛い店長。そして美しい
あの娘。
…だがしかし、最後に浮んで来たのは、目に涙を一杯に溜めたプルルンの泣き顔だった。
「プルルン、済まねぇっっ!」

生命の最後の一滴までも燃え上がる刃に叩き込み、必殺の一撃を撃ち降ろすヤッ太郎。

  BATTLE IN FLASH!時を越え 燃えあがるよエナジィ
  LET ME BE YOUR STAR!戦いに叫べ YOU ARE THE HERO OF MINE

原子怪10号の体内を斬り裂き、突き抜けて行く灼熱のエネルギ-!
閃く核融合の炎!
絶対無敵のはずの装甲が、閉鎖空間内での壊滅的な圧力が、逆に内部の何もかもを完膚
無きまでに破壊し尽してゆく!

  BATTLE IN FLASH!迫り来る闇に放つ BURNIN'FIRE
  LET ME BE YOUR STAR!この胸に響け YOU ARE THE HERO OF MINE

一瞬、原子怪10号の身体のあらゆる接合部が輝いたと思うと、次の瞬間。
大音響!!
バラバラに吹き飛ぶ絶対無敵の装甲、地を焦がす爆炎、沸騰した金属が飛び散る!
大地震の如き振動、大地が裂け、岩塊が巻き上げられて宙を舞う!

原子怪10号は跡形も無く四散していた。

「ヤッ太郎ッ…」
「あのバカ野郎ッ……」
「ヤッ太郎さぁん!」「大将-ッ!」「ヤッ太郎殿-ッッ!」
皆の声が悲痛に響く。

後に残るのは、巨大なクレ-タ-と、今だ輝きを失わない装甲片と溶けた金属塊のみ。