#210 Article 14477 Posted at 2000/01/09 07:21:12 by 高木志郎アオ (MAP3887) []

Subject: Re:*9 20世紀 /14476 .... /14463 /14452

その年の冬、ニューヨークの町には無料のスープを貰おうと順番を待つ人々
の列があちこちにできていたし、通りには箱の上にリンゴを乗せて売っている
人たちが目についたが買う人は多くなかった。いや、果物店の店先からリンゴ
をすばやく盗む若い女性の姿もあった…。
 これは、1933年に公開された映画『キングコング』の冒頭の描写である。
 この怪獣映画は、不況のニューヨークのドキュメンタリーでもあったのだ。
 リンゴを盗んだ女性と彼女を見とがめた興行主は、不況の冬のマンハッタン
から陽光の南の島へと船で脱出し、南から連れてこられたコングは、アメリカ
文明の象徴エンパイアステート・ビルディングによじのぼってみせた。
 映画は大ヒットした。生活に苦しむ人々は、ファンタジーの世界に安らぎを
見出そうとしたのである。

 ウィリス・H・オブライエンは徹底的な恐竜狂で、1914年に趣味として立体
(人形)アニメーションによる雷竜と原始人を登場させたのをきっかけとして
石器時代をコミカルに描いた短編を作った後、『ロスト・ワールド』(1925)の
特撮を担当、様々な恐竜を人形アニメで再現した。そして彼の技術は『キング
コング』で開花する。当時、大当たりは取ったものの批評家からはゲテモノと
片付けられたこの作品は、いまやSF映画の古典的名作として、不動の地位を
占めている。
 そのアニメ合成とコングの演技があまりに見事なため、かえって人が入った
ぬいぐるみだと錯覚した人も少なからずあるらしく、ついには、ぬいぐるみに
入って演じたのは自分だと名乗る人物まで現れた。多分ライブアクション用の
テスト・フィルムを演じた男が実際の画面のコングも自分だと信じてしまった
のだろう。

 というわけで、巨大怪獣が登場する特撮映画が出現しました!
 これを見た円谷英二が、後に『ゴジラ』(1954)や『ウルトラマン』(1966)で
怪獣ものを手がけることになるわけですから、その影響は計り知れませんね。
 だけど円谷の『キングコング対ゴジラ』(1962)のキングコングの着ぐるみは
カッコ悪かったと思います。あんまりコングへのオマージュという雰囲気では
なかったのかな?『キングコングの逆襲』(1967)は結構好きだけど。

                        21世紀まで、あと358日   高木志郎アオ