#148 Article 22822 Posted at 1995/11/09 22:36:46 by サメくん (MAP5059) [JOHAN]

Subject: 希望のしらべ・・・

「希望のしらべ(その3)」

「じいちゃん!!」
「行けッ!!」
 意を決して、駆け出すふぇるみ。
 だが、背後から響き渡る剣撃の音に、思わず振り返る。
 ぐおおーっと振り回される老人の鉄槌が、一振りで数体の竜牙兵を砕く!
 だが、次の瞬間には、破片が寄り集まって再生していく!?�
「やらせはせぬわーッ!!」
 核である種を見抜き、気迫で燃え上がった槌矛を勢いよく叩きつける。
 べこっと金属床がへこみ、しゅうっと闇色の煙がたちのぼった。
「竜牙兵さえも、時間稼ぎにしかならぬか。ならば、受けよ。我が爪を」
 カリフの全身が霞み、流れるような動きで老人の回りを巡る。
 閃く光の筋は、確実に老人の身体を刻み、血に染めていった。
「ぬぉおおおおおーッ�。」
 吠えながら、槌矛を振り回す。
 だが、流水の動きにも等しいカリフの姿は捕らえられない。
「ぬおッ!?」
 老人の左目から血がほとばしった!
「じいちゃーんッ!!」
 ふぇるみは、我思わず“杖”を突き出した。
 その刹那、火と風と水の精霊達が荒れ狂い、一筋の奔流となってカリフを直撃する!
「な、なにぃぃぃぃッッ!!」
 まだ生き残っていた竜牙兵さえも粉砕しながら、トライアングル・ブラストとでも呼
ぶべきエナジーの奔流は、艦を突き抜けていった。
「やりおったか!!
 左目を押さえながら、老人が叫ぶ。
「いや、まだだな」
「がふッ!?」
 老人の右胸から、白い繊手が突き出していた。
 背後に立つカリフの右手だ。
「じいちゃーんッッッ!!」
 駈け戻ろうとするふぇるみ。
「来るんじゃない!!」
 最期の力か、祖父はカリフの右腕をしっかととりながら振り向いた。
「くたばりぞこないがぁッ!」
 カリフの左手刀が、老人の左肩を砕く。
 だが、それでも老人は不敵な笑みを浮かべて見せた。
「確かに、儂は貴様には勝てぬな。カリフとやら。……ふぇるみよ! いかなる時も諦
めるでないぞ!!」
「じいちゃーんッ!!」
 慈父の瞳の輝きをふぇるみに残し、老人は奥歯のスイッチを入れた。
(我が艦よ。ともに冥土へゆこうかの)
 爆炎が膨れ上がる�。
「!? な、なんだとーッ!!」
 カリフが逃れる暇もなく、かつて星の海を渡ってきた艦は、老人とともに轟爆した。
 真っ赤な火柱が上がり、吹き上がる暴風に、ふぇるみの小さな身体がころころと転
がっていく。
「……じ、じいちゃん……」
 業火の中、崩れゆく艦を呆然と見つめながら、ふぇるみは泣いた。
 涙が止まらなかった。
『男は、べそべそ泣くもんじゃねぇ!』
 じいちゃんに怒られた記憶が蘇る。
 熱気にさらされながら、ふぇるみは涙を右腕で拭う。
「……よくも、やってくれたものだ。だが……」
 背後から響く陰鬱な呟きに、ふぇるみが慌てて振り返った。

                その3終り            サメくん