#140 Article 2298 Posted at 1994/07/01 16:39:58 by ゆ~さく (MAP1754) [STORY]

Subject: Re:*46 小説『熱血最強ゴウザウラー』/"もう一つの最終回" /2297 ............. /1822 /1821

キングゴウザウラーの頭部、メインコクピットの内部は……がらんどうだった。

普段通りならばキングの動きや格闘を担当する拳一のマスター制御ユニットを
中心に、充分な余裕をもって他の4人のシートが放射状に展開する様に設えら
れているはずなのだが、そのシートが無い。
それどころか拳一の活躍の場である制御ユニットも無い。
彼の動きをトレースするアームはコクピットの最前部、キングゴウザウラーの
殆ど鼻先と言っていい位置にとびっきり細い頼りない物が2本、天井から
ブランと吊り下がっているのみである。
それを装着していると、まるで小学生の姿を模した操り人形の様だ。
普段の勇ましさはカケラも無く、実に情けない格好である。
そして、他の4人のシートも影も形も無い。
あるのはただ、電車の吊り革を止めてあるスチールパイプに良く似た物が
2畳ほどの室内に数本立っているだけ。そのそこここには身体を止めるのに
使うのであろう、シートベルトや留り木の様な申し訳程度のベンチが膝くらい
の高さに、はたまた肩の高さにあちこち取り付けられている。
その数もただごとでは無い。普段のコクピット要員の3倍くらいはある量だ。
3倍?
そう、見たところ簡易シートの量は15人か…もしくはそれ以上の人数分は
用意してある様だった。
それぞれの簡易シートの前にはキーボードやモニタが取り付けてあるが、
指令室や動力室から無理矢理もぎ取って来たのであろう、それらは機能性も
美観も何も考えずにゴチャゴチャとケーブルも何も剥き出しでパイプや壁面に
くくり付けられていた。
そんなコクピット内部で絶句しているパイロット達に、教授は屋上から
自信満々の声で呼びかけた。
「はぁい、パイロットの皆さんは取り合えず出て来て下さぁい。
 場所を開けてもらえませんと、全員乗り込めませんからぁ」
「ぜッ、全員!!?」
「そうです!」
眼を真ん丸にしてコクピットの窓…キングの目から身を乗り出した
パイロット達に、教授は決然とした態度で言い放った。
「これが私の出した結論です!あの光弾にもビクともしないキングソードは
 有効な攻撃武器であると同時に、無敵の盾であると言ってよいでしょう。
 しかし、残念な事に大きさが小さくて、全体をカバーする事が出来ない。
 それならば、発想を逆にすれば良いのです。守るべき場所を、小さい
 一ヵ所にまとめてしまえばソードの盾でも充分有効に使えるはずです!!」
全員があんぐりと口を開けた。
「18人が乗り込んだ場合の機能性については、私と秀三クンで充分に検討
 致しました。ちょっと満員電車くらいの窮屈さを我慢して戴ければキング
 ゴウザウラーの能力を100%引き出す事には全く支障無いはずですっ!」
無いはずですっ!…と言われても。
その単純かつキョクタンな発想に、拳一はあきれるしかなかった。
絶句している拳一や金太の後ろから洋二が身を乗り出し、
しかし彼だけはまともな、真剣な表情で彼女に尋ねた。
「ちょ、ちょっと待ってよ教授。それって僕たちの身の安全は何とかなる
 かも知れないけど、キングゴウザウラーを犠牲にするって事なの!?」
あ、そうか。
拳一も気が付いた。盾が守るべきヵ所を限定するッて事は、同時に他の
場所を切り捨てるって事だ。それってキングゴウザウラーの丸腰の身体を
盾がわりにする事と同じじゃないか。
「はい…」
教授は残念そうに俯いた。
「そればかりは、仕方ありません。キングゴウザウラーの耐久性に期待する
 より無いでしょう」
「おいおい、ちょっと待てよっ!」
拳一がコクピットから飛び出して来た。後の4人もそれに続く。
拳一は屋上のコンクリートの上に飛び降りると、キングゴウザウラーの顔を
振り返り、そしてキッと教授の顔を睨み付けて叫んだ。
「ゴウザウラーは…キングゴウザウラーは今まで俺達と一緒に戦って来た、
 俺達の生命を守ってくれた仲間だぞ!それを見捨てるって言うのかよ!」
「現実は非情ですから…人命には代えられません」
「ゴウザウラーだって仲間だ!同じ命だ!」
「では、拳一君ならばどうします? サラマンダは来ているのですよ。
 キングゴウザウラーと引き換えに18人の生命を危険に晒しますか?」
拳一はグッと詰まった。
「拳一…」
教授の後ろから秀三が進み出て来た。徹夜明けの彼の顔には、
疲れ以上に悩み尽くしたかの様な、やつれた表情が見て取れた。
「俺は、ゴウザウラーのメカマンだ。いつも俺が先頭に立って、こいつの
 面倒を見て来たんだ。だから、こいつについては誰よりも良く知ってるし
 判っているつもりだ」
そう言いつつ、彼はゆっくりとキングの顔に近付いていった。屋上の床面に
顔を近づけたキングゴウザウラーは、やや俯き加減に、彼を…そして全員を
見つめている様に見えた。
「見てくれよ、こいつの肩と腹を」
全員が振り仰いだ。
キングゴウザウラーの肩と翼、そして脇腹にはサラマンダの光弾の直撃を
受けた傷跡が痛々しく残っていた。が、しかしそれも薄皮が張った様な
新たな金属の皮膜で覆われ、機能を取り戻しつつある兆候を示していた。
マグナバスターがどこまで修復しているかは、この位置からは見えない。

「俺達がどうしようも出来ないで悩んでいる間、こいつも傷を癒していたんだ。
 そりゃ俺も校舎の中のバックアップシステムから要らない資材を調達したり
 して手伝ったよ。でもエルドランが作ったこいつには自然に自分を修理する
 能力が備わっているんだ。今回の作戦で、こいつは必ず傷つく。確実に。
 でも、今の俺達にはこいつの自己修復能力に期待するしかないんじゃないか」
「それは…だけど」
「聞けよ、拳一」
秀三は拳一の鼻先にまで進み出て、彼の目を覗き込んで言った。
「俺、悩んだよ。夕べ一晩じゅうこいつに改造を加えながら済まない、
 済まないって何度も謝ったんだ。お前にこれから酷い事をするぞって。
 そして、聞いたんだ。こんな事をする俺達をどう思う、お前はどう
 したいって。拳一、お前はメインパイロットだ。お前にも判るだろ。
 こいつ、何て答えたと思う」
拳一は答えなかった。黙ったまま突っ立っていた。
彼にも、その答えが薄々判っていたからだ。
「え、何て言ったと思う?」
秀三はまるで、そんな彼を追い詰めるかの様に重ねて聞いた。
拳一の心に秀三の苦悩が伝わって来た。
そうだ、ゴウザウラーを愛しているのは自分だけじゃない…。
彼はキングの顔を振り返って見つめた。
巨大な頼もしい顔。今は閉じている目のキャノピーは澄んだ、深く明るく輝く
優しげな緑色をたたえていた。
ここから見るとやや俯き加減の顔は、口元が僅かに上へ丸く吊り上がって、
微笑んでいるかに見える。
拳一は聞いた。

そうなのか。

キングゴウザウラーは澄んだ蒼い目と堂々とした微笑みで答えた。

そうとも。

少年達が一年間、生死を共にしてきた大地よりの使者は、揺るぎなく頼もしく、
いつでも飛び立てるぞと言わんばかりに無敵の力を秘めてたたずんでいた。

拳一は決意した。

「…行くぞ」
コンクリートの床面を見つめて呟く。

「こうなったら、キングゴウザウラーの身体にも直撃を何発も食らわない様に
 素早くあいつを片付けるしかねぇ。やってやるさ、俺が。出かけようぜ」

「拳一君、忘れないで下さいね。コクピットを守るのが優先ですよ」
教授が念を押す。
ややデリカシーに欠けるのが彼女の欠点だ…。
「判ってるって」
拳一は俯いたまま、全員の顔を見ないで叫んだ。

「これからあいつを倒しに行くぞォ!ちょっとでも恐かったり、
 気分につられたりしてるヤツは来るな!
 来るからには俺が全力で守ってやるけど、来なくても大丈夫だ!」

「行く!」
「行くわ!」
「あたし達が欠けちゃったら、力を完全に発揮出来ないもんね」
「行きます!」
「結花も行く!きんぐごうざうらーだけを危ない目に会わせて、
 結花が何もしない訳にはいかないもん!ね、金太クン!」
「結花…」
金太も、それ以上は何も言わなかった。
結論はとうに出ている様だった。全員、夕べの内にそれなりに悩み、
答えはとっくに出していたらしい。拳一が心配する必要など初めから無く、
彼等は最初から仲間であり、最後までザウラーズだった。

やがてエリーが全員を代表して、包帯にくるまれた片手を差し上げて叫んだ。

「それじゃ、6年2組ザウラーズ、全員まとめて出動ォ!!!」

「おうッ!!」

しかし決然として立った勢いは良かったのだが、2畳程の狭苦しいスペースに
いくら小柄な少年少女達とはいえ18人もが乗り組むのはひと苦労だった。

「わぁい、結花、一度こっくぴっとに座ってみたかったんだ!」
「結花さん、待って下さい。貴方のシートはありません」
「え~。どうしてぇ…」
「ご免んなさい、スペースが足りなかったんです。一番小柄な貴方は
 金太君の背中に赤ちゃん用のキャリアで背負ってもらいます!」
「ふぇ~。…かっこ悪いようぅ…」
「き、気にするな結花。非常事態だから仕方が無いさ。
 お、俺が必ずお前を守ってやるからな!」
結花を連れて行く事で心を決めた金太は、何故か赤くなって彼女を慰めた。
「ちょっとそこ詰めてぇ」
「痛い痛い。足踏んでるってば!」
「おおい、奥の隅っこの方は息苦しいぞぉ」
「今エアコンを入れますから待って下さい!ひとまず乗り込んでしまわないと…」
これではまるで、公衆電話ボックスに何人押し込められるかを競い合うゲームの
様である。
「きゃ~~ッ!!エッチィ!なによこのあたしのシート配置はァ!!」
「エリーさん済いません。だって貴方は司令官ですから、位置を高くして
 コクピットの外が良く見える様にしないとしょうが無いでしょう」
「だからって、これは…こんなの…」
エリーの座席は、五郎の上。コクピットの一番後方で壁に背中を押しつけ、
足を投げ出して座った五郎の後頭部に設えられていた。肩車をする様な格好だ。
「我慢して下さい!しばらくの辛抱です!」
ブツブツ言いながら赤くなっているエリー。
五郎の方も、エリーの足に頭を挟まれて何も言えずに真っ赤になっていた。
「…」
その五郎を両側から挟む様にピッタリとくっついて、育代とマー坊が同様に
足を投げ出して座る。
教授が彼等の上に端末のコンソールを配置して固定する。
それらの前方、丁度コクピットの床中央辺りには五郎の足の間に尻を割り入れる
様にして洋二の居場所が設えられていた。
その左隣には、彼にピッタリ身を寄せる様にして春江の席。どうやら彼を
サポートする様な役も同時に背負わされているらしい。
そして、その春江の左脇腹に背中をくっつける様にして、ワンとツーの席が
左側面の壁…キングの左耳方向に並べられていた。
「あ~ッ、春江ったらズルい、洋二クンと密着ぅ!」
なんだかハイになっているらしいワンとツーが口を揃えて不平を言う。
「エヘヘ…役得…」
春江もなんだか顔を赤らめてモジモジしている。
それを見てエリーもちょっとムッとした様だが、何も言い出さない内に今度は
教授と秀三が乗り込んで来た。
科学コンビの席は空中、コクピットのど真ん中、エリーと丁度同じ位の高さに
左右を向き、背中をくっつける様な格好でパイプに固定してあった。
そしてその右下側、洋二の右脇腹に背中を押しつける様にして今度はボンと
チョビの座席がワン・ツー同様に外側に向かって備えられている。
パイロットなのに、これでは洋二は皆んなの身体に埋もれる様になってしまい
外が見えない。そこで、彼のコンソールは飛び切り大きく、大画面のモニタを
備えていた。
大きなコンソールを抱きかかえる様にして他の面々の中に埋もれ、頭の上には
教授と秀三の尻。
「あ…あのボク…パイロットなのに、何か妙に冷遇されてる気がするんだけど…」
そして洋二のコンソールの前方には、身体が暴れられるだけの少し余裕のある
スペースを取って拳一が立つ。
その右隣、彼の腰に後頭部をくっつける様にして、しのぶのナビゲーション席。
彼女の後には拳一の右隣に並び立つ様にして金太が仁王立ちになり、パイプに
ベルトで身体を固定していた。その背中には、勿論結花がちょこんとおぶい紐で
後ろ向きにくくり付けられている。
秀三が自分の座席から手を伸ばして、結花の膝の上にレーダーパネルを設置して
やった。
「…冷遇されてるッて言ったら、俺達だよなぁ」
「そうそう、俺達ッていつもこんな役回りな…」
ボンとチョビがブツブツ文句を言っている。
それもそのはず、彼等の席はなんだか隅っこの方に追いやられて、
背後には洋二の脇腹、左には金太の尻、右側にはマー坊の間の抜けた顔、
そして頭の上ではいつ秀三と結花の蹴りが襲って来るか判らない状態だ。
「あ…でも、これだけはちょっといいかも、てへへ…」
チョビが左上を見上げると、そこにはおぶわれた結花のスカートが。
「やぁん、チョビ君 うえを見ないでぇ!」
結花が悲鳴を上げる。
「おいこらチョビ!」
「へいへい」
金太の怒号に彼は首をすくめた。
そして最後、拳一の左側、しのぶと対象の位置には浩美の座席。
その彼と背中をくっつける様にしてクーコの座席が後ろ向きに
備え付けられている。クーコは春江と顔を見合わす様な状態だ。

「皆んなぁ準備はいい? 身体はしっかりベルトで固定しなさいよ」
「あ…オレ、緊張したのか、おしっこ…」
「我慢しろよ!こんな状態でもう一度外へ出られる訳ないだろォ!」
「たのむから漏らすのだけはやめてよォ」
「あ~ッ、マー坊のヤツ、こんな時にチョコバー食ってやがるッ!」
「えへへ…は、腹が減っては、いくさは出来ぬ…」
「暑いよ教授ぅエアコン効いてないよぉ」

全員がなんだかハイになっていた。まるで遠足に行く様な騒ぎである。
それは、これから起こる出来事への不安と恐怖を振り払いたい気持ちも
あったのであろう。しかし、信頼しあった仲間とぎゅうぎゅう詰めに
なった少年少女達は、不思議と奇妙な一体感にはしゃいでいた。

ピッタリと身を寄せていると、なんだか本当に文字通り全員の力が
一つになってゆく様な気がしてくる。
一般に子供は大人よりも生き物そのものの持つ本能に敏感だ。
彼等は身体をくっつけて一塊になる事によって、無意識の内に、
大昔に彼等の祖先がやったであろう事と同じ事をしようとしていた。
猛獣の徘徊する森林の奥で、また嵐の夜に洞穴の中で、
恐ろしさに生きている実感を失いそうになってしまった時。
身を寄せ合う事で彼等の祖先は、互いの血潮の暖かさや息吹を
肌で感じあう事で勇気を奮い起こしてきた。
くっついて、団結して、協力し合う事で祖先は厳しい自然の中を
猛獣の来襲をくぐりぬけ、辛さに負けない力を勝ち取って、
そうやって生き延びて来たのだ。
皆んな、生きている。俺達は生きている。だから負けない。
そうやってきた彼等の祖先達は、だから群れの身内が死ぬと
自分の事以上に悲しく辛かったろうし、仲間との友情や愛は
今以上に熱く切実で、かけがえの無いものだっただろう。

そして今、18人の少年少女はそれを再び体現しようとしていた。

拳一は立った。仲間達の先頭に、彼等全員の息づかいを感じて。
彼は身体中に叫び出したくなる程の熱情が、昂まるマグマの様な
強烈なパワーが湧き上がって来るのを感じていた。

「それじゃぁ、皆んないいわね、行くわよ。キングゴウザウラー発…」
「待ってエリー!」
エリーが出発の号令をかけようとした瞬間、浩美の声が飛んだ。
「先生!」
「先生だ!」
しのぶと浩美が、同時に身を乗り出して叫ぶ。
担任の中島が、春風小の校庭に転げる様に駆け込んで来た。
着替えの途中で恥も外聞も無く飛び出して来たのであろう、着ている
ワイシャツはボタンを掛け違っており、下は部屋着のジャージ姿のままだ。
彼は肩で息をしながら、校庭に現れたキングゴウザウラーを
未だ信じられないといった様に見上げて呆然と呟いた。
「こ、これは…そんな、まさか!」
防衛隊からの電話は、彼の頭を飛び越して直接エリーの自宅へ入ってしまった。
現用兵器が通じない以上、防衛隊はいかに危険な局面で
あろうともザウラーズの出動を求めて来るだろう。
一教師として、それを無理矢理にでも止める方法は無いか。
考えた末に、彼は子供達のブレスを取り上げたのだが。
しかし、下宿のアパートの窓から歯を磨きながら眺めた朝の風景、その中で
校舎が突然変形を始めたものだから仰天し、慌てて駆けつけて来たのだ。
中島は、震える手に握り締めた一本のザウラーブレスを見つめ、
「……そうか…」
ハッとして呟くと、それを頭上に差し上げて叫んだ。
「お前達は…お前達は、嘘をついたのか。これは偽物か。先生を騙したのか!」

ザウラーズは、しばし沈黙した。
しかし、やがて拳一がコクピットから身を乗り出して叫ぶ。
「先生ごめんよ。でも俺達、やっぱり行くよ」
「ま、待て、拳一!」
「騙してご免なさい先生。後で謝ります」
その隣から浩美。
片方の目から、しのぶも顔を出して叫んだ。
「先生、教授がいいアイデアを出してくれたんです。
 きっと無事で帰って来ます。私達を信じて下さい!」
その他の数人…窓の側に居た身動きの取れる者たちも、
ぞろぞろとキングの目から顔を見せて口々に中島の名を呼んだ。

そして、エリーが拡声器のスイッチを入れて、冷静な声で呼びかける。

「先生、ありがと。先生が私達の事心配をしてくれるように、どこかの街で
 誰かが心配している誰かの生命がこれから危ない目に会おうとしている
 んです。私達、やっぱり黙って見ている訳にはいきません」
いつものヒステリックな調子は微塵も感じられない、澄んだ穏やかな声だった。

「し、しかし…」
中島の心配をよそに今度は拳一の張り切った大声が降ってくる。

「先生、信じてくれよ、俺達を。大丈夫、俺達ザウラーズだから。」
自信に溢れた、暖かいその声。
「知ってるだろ先生。俺達、熱血最強だから」

中島は絶句した。子供達のこの落ち着き様はなんなんだ。
昨日まであんなに怯えて、守ってやらねばと思っていた子供達が
今ではまるで私の方が諭されているみたいじゃないか。

やがてキングゴウザウラーは、ゆっくりとブラストを噴射すると
ふわりと空へ舞い上がっていった。
「先生ーっ」
「待っててねーっ」
「中島先生~っ」
拡声器が少年少女の合唱を伝える。
中島は噴射ガスの突風に吹き飛ばされない様に腰を落としながら叫んだ。

「お前達――――――――ッッ!」
キングは上昇してゆく。
小山の様に大きいその巨体が、太陽よりも眩しいその噴射炎が、
距離に阻まれて青空の中に溶け込む様に見えなくなってゆく。

「先生は……先生は、待っているぞォ――――ッッ!!」
ちぎれる様に手を振る中島。

キングゴウザウラーは やがて彼の視界から消えた。