#140 Article 2297 Posted at 1994/07/01 16:37:08 by ゆ~さく (MAP1754) [STORY]
Subject: Re:*45 小説『熱血最強ゴウザウラー』/"もう一つの最終回" /2296 ............. /1822 /1821
5 青い惑星を離れること数十万キロの重力均衡点に それは浮かんでいた。 地球の一少女によってサラマンダと名付けられたそれは、この数日を費やした 自己修復作業をほぼ終えようとしていた。 思わぬ反撃で傷ついたボディであったが、破壊を受けた瞬時に周りに飛び散った 破片すらも回収し、軌道上にまで持ち帰っていたそれらを丁寧に継ぎ合わせ、 ぽっかりと開いた傷跡を埋めてゆく。 それは…サラマンダは、行動し攻撃する 純然たるエネルギーの塊であった。 光コンピュータの素子群を光自体が演じているエネルギーコンピュータだ。 海王星をまるまるエネルギー化したそれは、光素子群のシナプスを際限無く 内側に微細に折り畳んでいく事によって全体を形成し、自己保存の本能を プログラムされた、目的遂行のためのロジックを備えた「意志のある光」だった。 その目的とは、機械化帝国の脅威になる存在の観察と、そして処分。 そもそも機械化帝国は、気の遠くなる様な距離の空間を何十億年という歳月を かけておし渡って来た宇宙のジプシーである。 その絶望的なまでの距離は、彼等の組織同志の交信やトラブルへの即応を困難に していた。そのため彼等の侵略部隊…この場合「部隊」という言葉が適合されるか どうか定かで無いが…行動単位毎に、それは、「サラマンダ」は装備されていた。 行動単位の首脳部-この場合、それは「機械神」と自らを名付けていたが- それが破壊されると「サラマンダ」は行動を起こす。 首脳部を破壊する程の文明レベルと強固な意志を持った存在。 全宇宙に散らばる機械化帝国にとって「天敵」に成り得るかもしれないそれらの 力を冷静に判断し、彼等が強大かつ宇宙空間を移動する能力を持っており、 一撃で全滅させる事が不可能であると知ればそのエネルギーを全て使って 指向性を持たせたメッセージを発し全宇宙に警告を与える。 たちまち近隣に位置する全ての機械化帝国が押し寄せて来る事になるだろう。 また、それの持つエネルギーのみで処分出来ると判断した場合…例えば 彼等がまだ産まれ故郷の一つの惑星から飛び立てていない場合などには、 その惑星を破壊してしまう事によって脅威を取り除く。 生命や文明が発生する環境を持つ星系においては、外輪部の巨大ガス惑星は しごくありふれた存在だった。そして、それを素材に作られた「サラマンダ」。 それは生きる爆弾である。 自身が自爆を決意した時以外にも、例えば粉々に破壊された時にはそれらの 破片一つ一つが核爆弾を遥かに凌ぐ最終兵器となる。 破壊を受けたのが目的遂行の過程であり、自己修復が可能だった場合は システムの再構築を計るが、それが困難な程に分断されてしまった時には それぞれの破片が自然に演算処理不能になって自らを支える自己保存の ロジックを失い、崩壊して元の破壊的なエネルギーに帰してしまう。 文字通り機械化帝国の切り札。対立するものにとっては実に厄介な特攻兵器であった。 そして今、最後の修復過程も終了段階に入り、復元されたボディを走査し、その どこにもバグが発生していないかどうか見極める作業が慎重に行われていた…が、 やがてそれも完了した。 目的の文明の技術レベルに関しては ほぼ結論は出ていた。あともう少し。 異常な攻撃力を有する「特異体」の実力を見極めれば任務は終了する。 その最後の目的を果たすべくそれは行動を開始し、青い惑星に向かって降下を始めた。 6 まだ街路に人影は無い早朝の街。 少年は走る。学校に向けて走ってゆく。 弾む息。顔に巻かれた包帯が呼吸の邪魔になったのであろう、乱暴にむしり取ると 投げ捨てる。同時に口の中に含んだ鎮痛剤を含んだガーゼも吐き捨てた。 少年の走り。…それは、生きる物の生命の輝き、そのものだった。 一足一足毎に筋肉が躍動し、自分のやろうとしている事に一瞬の疑いも抱かない のであろう瞳が輝く。 その願い、切迫した表情に浮かぶ決意は、自らの父母を 友人達を 街じゅうの 人々を守りたいという、いても立ってもいられなくなる純粋な衝動だった。 奴が来た。来たんだ。 やらなくちゃ。おれがやらなくちゃ。他の誰でも無い、おれが。 誰にも指一本触れさせやしねぇ。 それに、一人じゃない。独りぼっちじゃない。あいつが一緒に居てくれる。 少年は、思いを噛み締めた。 あいつの事は、俺が守る。必ず守ってやる。必ずだ。 必ず無傷で、笑って家に帰してやる。 そして、そのためには勝つんだ。勝つしかねぇ。絶対に、勝つんだ!! 彼はガードレールを飛び越え、ゴミのポリバケツを踏み台にすると 民家の塀を一飛びにし、トタン屋根の上を走り抜けて周囲に派手な 目覚ましを与えると商店街に飛び出して車道の真ん中を突っ走った。 走りながらも、しかし、彼の横顔には一片の不可解な思いが浮かんでいた。 「連絡をよこしたのはエリーだ。いつものように防衛隊から電話が来たって 言っていた。しかも、通信が終わってあわてて着替えてる最中、 ブレスがモニタしてるのを聞いたとこだと あいつは他の全員にも招集を かけていた。フシギなのは聞いた内では誰一人、「嫌だ、行かない」と 言い出すヤツがいなかったことだ」 全員が行く気になっているらしい。 一方では「やっぱりいざとなるとあいつらもザウラーズだぜ」と喜びたくも なるが、もう一方では「あれだけ恐れ、怯えてた奴等がなんで急に覚悟を 決められるんだ?…ひょっとして、これから向かう所がどんな所なのか 判ってねぇ奴がいるんじゃないのか?」…と、つい疑いたくもなる。 もし気分だけで来たがる奴がいたら、叱ってやらなくちゃ。 そうだ、いっその事、指令室にも動力室にも誰も居てくれなくていい。 光が当っちゃ困るマトが増えるだけだからな。 コクピットにあいつと俺がいるだけでいい。それで充分だ。 少年、拳一は、はそれ以上考えるのを止めると学校に続く坂道を 跳ね飛ぶボールの様に目にも止まらぬ速さで駆け上がっていった。 「いやだ!行く!金太君と一緒に行くんだ!もう決めたんだもん!」 「判らない奴だな結花。今度は危ないから、もしもの事があったらいけないから 残ってくれって頼んでるんじゃないか!」 「もしもがあるんだったら、なおさら行く!ぜったい金太君と離れない!」 「大丈夫だって!俺は必ず無傷で帰って来るって!」 「大丈夫なんなら、一緒に行ったっていでしょう!?」 6年2組の教室では、金太と結花の押し問答が繰り広げられていた。 その他の連中は、それを見るとも無しに突っ立っている。ワン、ツーの姿も あった。浩美の側にはクーコ。ほぼ全員が既に集結を完了していた。 教室の後方、児童用ロッカーの並んでいる手前の床には大きな四角い孔が ぽっかりと開いており、内部にはエルドランの手による複雑な装置機構が チカチカと明滅しているのが見える。 その周りには工具箱、金属パイプやら接続具やらビスやら照明用の動力発電機、 さらに様々なケーブル類が這い出してお手製らしい機械装置類に繋がっており、 その末端の一つにはキーボードを叩いている教授の姿があった。 「話は判ったけど、大丈夫なの、教授。キングゴウザウラーを改造して…」 教授の手元を覗き込む様にしてエリーが尋ねる。 「はい。改造たってシートを取り払って、新しく付け直すだけですから。 強度的には私が計算しましたし、施工は秀三クンですから大丈夫です!」 教授はパソコンから目を離さずに自信を持った声で答えた。 「よぅし、改造は終わったぞ! 乗り込むにはいったんキングゴウザウラーに なるのが必要だ。エリー、発進準備にかかってくれ」 孔から秀三が這い出してきた。 手にはスパナを握っている。徹夜開けらしく、やつれた顔はオイルまみれだ。 「御苦労様でした。秀三クン」 ホッとした顔を上げて答える教授の目元にも、黒々とした隈が浮き出ている。 夕べは二人とも一晩中この教室に篭っていたらしい。 「おおぃ、どうした!?」 拳一が駆け込んで来た。同時に、彼は教室に集まっている一同を見渡す。 一同から帰って来た目線が意外としっかりしている事を、彼は瞬時に確認した。 特に普段は弱々しい結花の目は、今日ばかりは不思議と強情そうにキラキラ 輝いている。 「教授がアイデアを出してくれたの。どうやら、やってみる価値はありそうよ」 エリーが答えた。 額に汗を浮かべた拳一が肩で息をしているその後、しのぶも駆け込んできた。 「全員揃ったわね。何をするのかの説明はキングゴウザウラーに合体してからに するわ。見てもらえば判ると思うから。まずは見てみて。それでいい?」 取り合えず、その場では反対意見を言い出す者は無かった。 金太も、結花を説得する事はひとまず断念し、ここでは黙認した。 連絡では怪物は民家の無い山奥に現れたらしい。街を直接襲われた この前の時ほど急を要してはいないが、それでも山火事が発生している。 ここで時間をかけて出動する者の足を引っ張っちゃまずい。 教授のアイデアとやらが危険な物だったら、それを確認したら、 その時は結花を無理矢理置いていってもいい。彼はそう判断した。 「それじゃ、ザウラーズ出動ッ!!」 エリーが机に向かうのと同時に、そこら辺に居た者が教室の床を片付ける。 ホウキと身体を使って、工具や器具や材料やらを一まとめにして廊下へと 一気に掃き出す。 オーバーアクションでエリーが指を振り下ろし、ブレスのスイッチに触れる。 校舎が震動する。春風小はかれこれ何十度目かの変形を開始した。 教室ではパイロット達の椅子がガクンと落ちてシュートになだれ込む。 五機のザウラーマシンが始動する。パイロット達を乗せたマシンは変形の 続く校舎内部の廊下を突っ走り、コクピット待機室へと走り込んでゆく。 朝の光の中 輝く校舎は、いつになく素早い動作で変形を開始した様に見えた。 見る見る内に形態が変わり、日常的な ありふれた町の景観の中、その一部を 切り取ってドラマチックな異空間に置き換える様にそれは堂々とした姿を現す。 雄々しいブラストを吐き出してそれまで校舎だった巨大ジェットは上昇を開始した。 春風町上空1000mに達した時点で、早くも分離変形に入るザウラージェット。 「マグナバスター分離! ザウラーフォーメーション! ゴウザウラー合体!」 エリーと五郎が声を合わせ、ハモる様に指示を出す。 「マグナザウラー変形完了!」「グランザウラー変形終了!」 同時に、指令室に金太と洋二の声が飛び込んで来た。 「キングゴウザウラー、超熱血合体!」 全員が一斉に叫ぶ。 それら一連の過程は、18人の少年少女が歌うコーラスの様であり、息のあった マスゲームの様でもあった。 熟練とチームワークが見事な連係プレーを呼んで、ジェットから三体のマシン、 そして一体の巨大メカへの集合は芸術的なまでに美しい一つの流れの中で進行した。 二機の巨大なジェット、その一方が真っ二つに分かれ、さらにその一つが三体 にバラけたと思う間も無く、朝の光のきらめく空に三体の人影が現れる。 見る間にその内の二体がパッと散り、瞬く間に集合して強い輝きを放ち、 一つの巨大な姿となって地上に降り立つ。 地球上、大陸の端の島国、名も無い静かな町に現れたそれは地上の 全ての生き物を守るべく降り立った、降臨する神の様な存在だった。 その中で拳一は、一連の操作を行ないながらチーム全員がその持てる テクニックを合わせた時の大きな力の流れの様なものを感じていた。 一年間、共に闘ってきた仲間達が力を合わせた時のハッとする程大きい、 頼もしいエネルギー。水を切って身体を閃かす巨魚の様に力強く、自由に、 奔放にうねり、思うよりも速く身体に反応してくれる一人ではどんなに 頑張っても決して手に入る事の無いパワー。 チーム。その一体感。 そうだ、俺達18人が集まった時の姿、それそのものがキングゴウザウラーなんだ。 「象徴」等という難しい言葉は彼の脳裏には浮かばないが、今、彼は機械神を 倒して以来感じていた、言葉に出せない胸中のモヤモヤの正体がハッキリと 判った気がした。 機械化帝国をやっつけたと思ったら間も無く、皆んな勉強やら進学やら 忙しくなって一年間の戦いを忘れたみたいになりやがって。 目的を見失ったら、それでもう俺達は自然にバラバラになっちゃうのか? そんなもんじゃない。俺達の絆ッてのは、決してそんなもんじゃない。 それが今、どうだ。再びザウラーメカに乗ったなら、18人全ての動きが まるで一つの生き物になったかの様に あたかも自分の手の様に足の様に、 そして自分自身も彼等の思うがままに一体になれるじゃないか。 彼はとうとう、自分が何故戦いの中に戻りたかったのか、嫌がる者達を 何故無理矢理にでも危険の中へ連れ出したかったのか判った気がした。 このまま居られたらいい。俺達はザウラーズなんだ。永遠にザウラーズなんだ! やっぱり、皆んな居て欲しい。嫌な奴は来なくていいなんて、やっぱり嘘だ。 生命をかける時は、皆んな一緒に居て欲しい!! お願いだ、一緒に居てくれよ!! 思いつつ、彼を乗せたシートはキングゴウザウラー頭部のコクピットへと到着した。 同時にしのぶが、浩美が、傍らには金太と洋二が上がって来る。 …しかし、何かおかしい。どこかいつもと様子が違う。 彼は周りを見渡し、同じ様に辺りをキョロキョロしているチームメイトと 顔を見合わせて、そして叫んだ。 「あ~ッ!なんだこりゃ!?」 キングゴウザウラーはブラストをふかして、校庭を傷付けない様にふわりと 着地すると、残った校舎の屋上に片方の腕を差し出す。 「さぁ、皆んな出て来てぇ」 エリーに急かされるままに、コクピットの5人を除いた後の全員が、腕の先に 設えられている非常用のハッチからぞろぞろと列を成して屋上に降り立った。 同時にキングゴウザウラーはその顔をぐぐっと屋上のへりに近付ける。 目のキャノピーが開き、エリーの導くままに全員はコクピット内部を覗き込んだ。 「え~~~~ッ!?」