#140 Article 1919 Posted at 1994/04/16 03:28:13 by ゆ~さく (MAP1754) [NOVEL]

Subject: Re:*22 小説『熱血最強ゴウザウラー』/"もう一つの最終回" /1918 ....... /1822 /1821

次の朝。

相変わらずうららかに晴れ渡った空を見上げ、しのぶが登校してくる。

背負った鞄の肩紐に両手の指をかけ とぼとぼと街路を歩きながら、探しても
見つかるはずも無いことは判っているが、それでも空から赤い星が降りては
来ないかと空に目を走らせ、雲の隙間を睨んでしまう。

夕べは遅くまで練習していたのだが、それでも目が冴えて今朝は早起きして
しまった。遠目では学校にはまだ誰も来ていないようだ。

早朝の街は空の青さを反射して輝き、静けさの中にも人々の生活の証しである
様々な音がそこここに感じられた。
新聞配達の自転車の音。どこかの家の台所の水の音。早起きな子供の声。
その中を名も知らぬ鳥が、鋭い威勢のいい声で鳴きながら駆け抜けてゆく。

しのぶはまばたきをした。

一瞬、人々が生活している活気のある街の風景が消え、
真っ赤に焼けただれた死の荒野になったように見えた。

慌てて頭を振るしのぶ。固くつぶった目を開ける。街は元のままだ。
寝不足が原因か…ストレスが原因か…。
ゾッとしたしのぶはブルッと身を振るわせ、恨めしそうに空を見上げると
再び一人、ぽつぽつと学校への坂道を昇ってゆく。

学校についた。静まりかえった早朝の校舎に人けは無い…と、体育館から
機械のような音がしてくる。規則的な、素早い連続した音だ。
「?…」
彼女は下足のまま体育館横の用具搬入用の出入り口に向かい、中を覗き込む。

中では拳一がバットを振っていた。
どこで借りて来たのかピッチングマシン、しかもソフトボールは使えないので
高校の軟式野球用の軟球を大量に使っての特訓だった。
マシンの速度は極限にまで上げてあるらしく、唸りを上げて恐ろしげに
回転するドラムから目にも止まらぬ速さでボールの群れが弾き出されてくる。

弾く。叩く。打つ。かすめる。避ける。決死の形相でバットを振り回す拳一。
必死にボールと戦いながら、彼は何を思ったのかジリジリと激しく稼働している
マシンに近付いてゆく。
「あ、バカッ」
思わずしのぶは声を上げた。あまりにも無謀過ぎる。
案の定、拳一は顎に直撃弾を食らってのけぞり、ひっくり返った。

のそりと起き上がる。遠目でも、口から血が垂れているのが見える。

しのぶは「!」と駆け寄ろうとしたが、何故だか足が動かない。
拳一の気迫に押されたのか、足はその場に凍りついたように固まってしまった。

再びバットを構えつつ、ジリジリとマシンに迫ってゆく拳一。
今度は無駄な素振りをしない、脇を締めてバットを真正面一文字に構えた格好だ。
ひゅっと鋭い音をたて、ボールが頬をかすめる。
必要最小限の動きでボールを払いながら、じりじりとマシンとの距離を
詰めてゆく……が、変化球を腰に食らって思わずよろけた隙に、
飛んできた速球が顔面にまともにヒットした。

吹っ飛ぶ拳一。

なおも降り注ぐ球の雨の中、時折身体に当るボールを気にもして
いないかのようにしばし呆然として、ペッと何かを吐き出す拳一。

歯が折れたらしい。

しのぶはそれでも、その場から動けないでいた。

彼にはマシンが赤い怪物、サラマンダの姿に見えているに違いない。
何かに憑かれたように立ち上がると、再び構えを取る。
その横顔はザンバラに乱れた髪で覆われ、目の表情まではここからは見えない。

またしてもボールを食らう。もはや全身はアザだらけ、床は垂れた血で真っ赤だ。
血でスリップして倒れる。そこに機械の無情さ、豪球の雨が浴びせられる。
それでもまた立ち上がる。
「バ…」
しのぶは再び声を、いつもの彼のバカさ加減への、言い慣れた罵りの文句を
口に出そうとしたが、うまく唇が動かない。
「バカ …」
小さな声で呟いた。どうみてもこれは、バカだ。でも。
苦しみ、のたうち回る彼の姿を見ても、ついにしのぶはその無謀な、バカじみた
特訓を止められずにいた。彼女には判っていた。拳一と同じ気持ちだった。

彼は、18人の生命、その余りにも大きな重さを感じているのだ。

だから止められない。必死に抗い、戦い、追い詰められた獣のようにあがく
彼の姿、はたからみたらおかしいんじゃないかと思われるその姿を見ても、
止められなかった。
「バカ …」
しのぶはもう一度呟くと、キラリと瞳を光らせた。
何かの決意が、その瞳の中に宿ったようだった。そう思うと足が動く。
彼女は土足のまま体育館に走り込むと、拳一に駆けよっていった。

昼休み。

暖かい日光が差し込む教室。
拳一は頭をミイラのように包帯でぐるぐる巻きにされ、
窓際の席で椅子に仰向けによっかかっている。
一時間目に包帯男と化した拳一が教室に入ってきた時は皆んな驚くやら
心配するやらあきれるやら大騒ぎだったのだが、結局、昼休みの今では
そっとしておこうという事で落ち着いたようだ。

教授が教室に入ってきて、ヘルメットの様なマシンを机の上に置くと
ぐるりと周りを見渡して説明を始めた。
「さあ、これが小島尊子特製の対サラマンダ用熱特訓マシンです!」

「熱特訓マシン!?」

ブッ倒れている拳一を除いた全員が周りに集まってくる。
教授は得意げに胸をそらすと、講釈をたれはじめた。
「心頭滅却すれば火もまた涼しと言います。何事も要は慣れ。今度至近弾を
 食らっても取り乱したりして作戦に影響しないようにと、私はこのマシンを
 開発したのです!」
「取り乱したりしないようにって…それ……」
「はい、これは脳神経に直接刺激を与え、実際に至近弾によって身体に熱が
 加えられた時にどうなるか体験するための一種のバーチャルマシンなのです!」
全員が何か不吉なものを感じ、その場から一歩後ずさった。
「脳神経に刺激を加えるだけの「疑似火傷」ですので、身体には一切危険は
 ありません。さあ、誰か試してみようとする人はいませんかぁ?」
返答はない。
「大丈夫ですってば! ギネスブックによると、沸騰したお湯に入って数分
 我慢した人の例があるのです! 日曜お昼の番組でだって熱湯に入って
 一分も我慢している人がいるではありませんか! それに比べりゃ光弾の
 熱さなんてものの数秒です。人間の身体には適応力といって、何度も
 受けた刺激には耐久性が付く機能がちゃんと備わっているのです!
 さあ、我慢比べ大会だと思って!」
思って!などと言われても、こと発明品に関しては教授の「大丈夫」が大丈夫で
あった試しはない。しかも引き合いに「熱湯コマーシャル」など持ち出された
日には進んで実験台になってやろうという者など現れようはずも無い。
教授を取り巻いた輪はさらに遠巻きになり、進み出る者は一人もいなかった。
「情けない!それでも地球を守っているザウラーズですか!
 判りました、もういいです、この私自ら試して差し上げましょう」
そう言い放ったかと思うと、教授はヘルメットをかぶり
てきぱきとケーブルをボックス状の子機に接続し始めた。
「お…おい教授…」
「なんですか秀三君」
教授は準備の手を休めない。
「おい…ちょっとそのマシン…」
「秀三君は、私達の開発したマシンの性能を信じられないんですか? 二人で
 作ったって事はいわば私達の子供です。子供を信じない親が何処にいますか」
「い…いや…そうだけどさぁ…」
「さて、お立ち会い!」
準備の整った教授が、不格好なヘルメットをかぶった頭を上げる。
「いいですか、このダイヤルは光弾がどの位の距離を通ったかを設定するため
 の物です。まず最初は手始めに100m位にしてみましょう。始めますよ」
「教授…」
「何事もトライしてみなければ科学の進歩は有り得ません。えいっ!」
秀三がそれ以上何かを言う前に、教授は始動スイッチを入れてしまった。
子機のLEDが明滅し、ヘルメットに付いている電球がビカッ!と光る。
「ふぎゃっ!」
教授は飛び上がった。たちまち顔が真っ赤になり、脂汗がだらだらと垂れる。
「きょ、教授っ大丈夫!?」
「顔が真っ赤よ!」
「はは、ははは、大したことはありませんでしたよぅ。
 ちょっと あぢっ!って来てヒリヒリする感じですけど。
 さ、さあ、皆さんもどうですかぁ? こんなものは慣れ!
 一度やってしまえば、後はどうという事はありません!」
「…」
皆んな心配げに見守るだけで、答えは無い。
「信用できないようならば、今度は80mでやってご覧に入れましょう」
「教授! やめろ! もういいからやめろ!」
「離して下さい秀三君、今の私にはこんな事しか出来ないのです!
 何もせずに指を加えて敵がやって来るのを待っているなんて
 私には出来ません、離してったらぁ!」
教授はムキになって秀三の腕を振りほどくと、再びスイッチを押してしまう。
ガタン!椅子を鳴らして跳ね上がる教授。
「つあぁぁァッ!」
苦しみの叫びを上げてのけぞると、そのまましばらく硬直した姿勢で動かない。
やがて大きく息を吐いて、ペタンと腰をおろす。
「ふぅ…」
目に涙を浮かべている。既に身体中、汗でびしょびしょだ。
全員この光景に凍りついたまま動けないでいた。
「ほ、ほら、平気。この通り元気です。人間の身体には、苦痛に慣れようと
 する性質が備わっているのですよ。喉元過ぎれば熱さを忘れるってヤツです。
 はは、はははは…」
ことわざの使い方がおかしい。意識が朦朧としているらしい。もう限界だ。
「教授、判ったからもう止めよう。このマシンにはまだ改良の余地があるよ」
秀三は精一杯優しく言って、そう言ったつもりで、
教授のヘルメットに手をかけケーブルをはずそうとする。
しかし無理矢理に強いようとしていると感じたのか、教授は頑強に抵抗した。
「触らないで! 放して下さいッたら! こ、今度は60mに挑戦するんですっ」
秀三の顔色が変わった。
「だ、ダメだ! や、やめろッ! 皆んなっ!」
彼に急かされて、その場にいた何人かが教授に飛びかかる。
秀三は背後から教授を羽交い絞めにして機械からひき剥がそうとするが、
彼女は片手でヘルメットを押え、片手で子機を脇に抱えて頑強に抵抗した。
煮詰まった時の彼女の強情さ、無茶さは知っていたつもりの秀三だったが、
焦りに加えて熱と苦痛のショックでヒステリックになり、その上数人に突然
よってたかって押さえつけられようとした少女の抵抗は思いのほか激しかった。
その結果、彼女は秀三の予想し得ない自暴自棄とさえ言える行動に走って
しまった。子機のダイヤルを「0」にまで回すとスイッチを入れてしまう教授。
「あッ」
バンッ!!ヘルメットの電球が破裂して吹っ飛ぶ。
「ぎゃあっ!」
恐ろしい悲鳴を上げ、蝦のように跳ね上がってビクンビクンと痙攣する
教授の身体。床に倒れ込むと苦しげにのたうつ。身体中足の先まで真っ赤だ。
「危ない!」
「ヘルメット取れ!ヘルメットを!」
ヘルメットをむしり取られた教授はぐったりとして動かない。
「教授! 教授ゥ!!」
「なッ、何をしているんだッ!」
教室に入ってきた中島担任が驚き、慌てて駆け寄ってきた。
「何をしたんだ!? 委員長ッ!!」
「教授が…敵の攻撃に慣れようとして…「痛み」を作り出すマシンを…」
「ッ!!…………バカな事を…」
中島は悲痛に顔を歪めると、教授を助け起こし、襟をはだけて脈を取った。
「教授?…教授…」
中島の腕の中で、ふぅっ…と息を吹き返し、うっすらと目を開ける彼女。
目を開けるのと同時に、ぼんやりした視界の中に見慣れた顔が入ってくる。
誰だろう…大きな顔、大きな肩…子供じゃない、大人だな…大きな大人だ…
あ、先生。
気が付くと、…自分が抱かれているのが仲間の少年ではなく、大きな頼りがいの
ある大人である事に気が付くと、彼女の両目からぶわっと涙が溢れ出てきた。
なんだか判らないが、泣くのを我慢できない。
教授は中島の胸にしがみ付き、シャツに顔をうずめて泣きじゃくった。
「せ…先生……」
中島は何も言わずに彼女の後ろ髪…いや、刈り上げを撫でてやる。
「先生…い、痛かったです、痛かったです……う、うわぁあぁぁぁ~~~~ん」
怯えたその声。心底怯えた声だった。恐ろしさに震えて、少女はその
小さな身体を中島の懐にもぐり込ませようとするかの様に丸める。
「うわぁああぁぁぁ~~~~~ん、うわぁぁあぁぁああぁぁ~~~~~ん」
教授の泣き声は、鋭いナイフのようにその場の全員の心を切り刻んだ。
泣き声に感化されて、数人の女子が涙を溜めて手で目を覆う。
全員が目を床に落としていた。
少年達は今はっきりと、自分達が立ち向かい、乗り越えようとしているのが
どんな運命なのかを理解した。
しかし。
そんな中、秀三は別の意味で唇を噛んでいた。
教授が倒れて怯えている時に、何も出来ないでただ見つめているだけの自分。
いま彼女が必要としているのは自分ではない。頼れる大きな大人なのだ。
自分はまだ子供だ。今の自分にはその資格は無い。
焼けつくような悔しさに、彼は指が折れそうな位に固く拳を握り締めていた。

そして、その日の放課後。

ザウラーズは解散した。

…いや、それは名目の上だけの解散ではあったが。
その日の下校前のHRは、中島と少年達との喧々囂々たる議論に終始した。

先生は今回に関してはお前達の自主性に任せてきた、以前のように
無理矢理お前達の自由を奪うような真似はしたくなかったからだ、
しかしこのような無茶をするようなら考えを変えなけりゃいかん、
ゴウザウラーは防衛隊に任せることにする、ブレスをよこしなさい、
いやです、私達だって今必死にどうしたらよいのか悩んでるんです、
決して勝手に出動はしませんからどうか自由は奪わないで下さい。

それらの激しいやりとりの末、出動しても何らかの対策が講じられるものと
判る時までザウラーブラスを預ける。そういう事に決まり、少年達は
しぶしぶながらも中島にブレスを渡し、全員とぼとぼと家路についた。

しかし。それは、秀三が予め作っておいたフェイクだった。

非常に精密に出来た物ではあったが、中身はがらんどうの偽物だ。
先生を騙す事になってしまったが、彼らはどうしても大人達に
全ての判断を任せてしまう気持ちにはなれなかった。
各自、家に帰ったら明日までに良く考えて、次の出動に参加するか
居残るかを決めること。それが別れ際にエリーと五郎の出した結論だった。

しかし、拳一だけは別意見だったようだ。
「ゴウザウラーは一人でも戦力が欠けるとフルパワーを発揮できない。
 必ず俺が守ってやる!俺の身体がバラバラになっても皆んなには
 マッチの火一本近づけねぇ、だから皆んな来てくれ!いや、来い!
 俺たちは18人全員揃ってこそのザウラーズなんだ!!」
実際には歯の抜けた口でモガモガモゴモゴ言うセリフだったが、勝ちたい、
勝たなきゃいけないという一心で彼は全員に激しく詰め寄った。

しのぶがそんな彼の腕を引っ張って、他の一同から引き離した。
話がある。そう言ってしのぶは拳一を連れて再び校舎の中に戻っていった。

後に残った全員は、空を見上げながら街へ続く坂道を下ってゆく。
秀三は未だ保健室のベッドで寝ている教授を見舞っていてこの場にはいない。

空は、真っ赤だ。

夕焼けは次の日の青空を約束するものだという。ならば、真っ赤な炎に立ち
向かおうとしている少年達の明日に、青空は果たして広がっているのだろうか。

少年達の群れは、自然にいくつかの塊に別れていった。
その塊がさらに四つ角曲がり角ごとに一人、二人と欠け、

浩美は気が付くと、クーコと二人きりで歩いていた。

「どうする?…クーコ……」
「…」
彼女はうつむいたまま答えない。
「あ…あのね、僕の…僕の勝手なお願いなんだけど、クーコには残って欲しい」
少年と少女は肩を並べたまま、同じ歳頃の少年達が考えも
しないであろう苦しみを共有し、夕暮れの迫る街路をたどった。
「僕がクーコの分まで働くから…。あ、そ…そうだ、きっと火傷して帰って
 来るだろうから救急箱いっぱい用意して待っていてよ、ね」
立ち止まってクーコの顔を覗き込む浩美。
クーコも立ち止まるが、相変わらず顔はアスファルトを見つめたままだ。
「浩美君は…どうするの……」
やっとの事で重い口を開くクーコ。
「ぼくは…ほら……パイロットだから………」
そう言いつつ空を見上げる浩美。夕陽に照らされたその横顔。
優しい彼らしく寂しげな表情は隠せないが、瞳は澄んでいた。

どこまでも澄んでいた。

「あたしも……行く」
クーコがぽつりと呟く。
「クーコ…」
「行く。浩美君たちが行くのに、あたしだけ休んでいられないもん。
 あたしも働く。だから一緒に行く。もう決めたの」

しかしそう言いつつ、少女は身体がしだいに震えてくるのを止められずにいた。
なんだか、自分の身体が自分の物ではないみたいだ。膝がガクガクする。
足腰の力が抜ける。少女は倒れそうになるのを必死に堪えていた。
その肩が目に見えて、ぶるぶる震えているのが浩美にも判った。
「ク…クーコ!」
浩美はハッとして、彼女の両肩をつかんだ。
少女は、怯える小鳥のように震えている。
顔を覆ったまま立ち尽くす彼女の肩を抱きながら、浩美は塀の向こうの
どこかの家の茶の間から聞こえてくるTVの賑やかな音声が、なんだか
遠い世界の出来事みたいだと感じていた。
どう声をかけていいものやら判らない。彼は迷った末、呟くように尋ねた。
「怖い…?」
クーコは僅かな間 躊躇してから、やがてコックリと頷いた。
「うん…」
そう言ってしまうと、今まで堪えていた涙がぱたぱたっと音を立てて街路に
こぼれ落ちる。慌てて目をこするが、涙は後から後から湧いて出てくる。
あれ、どうしちゃったんだろう。
その時クーコは悲しさよりも、むしろ不思議な感情を抱いていた。
涙だけは絶対に見せない、泣いて心配をかける事だけは絶対にしないって
誓っていたのに。なんだか浩美君の前ではそれが出来ないみたい。
なんだか、へんなの。止まらない。あれ、どうしたんだろう。
あたし、どうしちゃったのかな。やだな。おかしいな。

少年は夕焼け空の下、明かりの灯き始めた街路灯の光を浴び、
少女の肩を抱いていつまでも立ち尽くしていた。