#13 Article 8588 Posted at 1994/08/19 23:02:47 by かくた (MAP4496) [SEKININ]

Subject: Re: Re: Re: 桜井前長官の発言とその顛末に寄せて思う /8587 /8580 /8575

>共通するものが『火垂るの墓』にある、と見るわけですね。我々自身が「軍国主義
>を生みだしたのだ」という。
>ちっぽけな個々人と、巨大な国家意志である軍国主義を結び付けるためには、そう
>した方法を採るしか無いのかも知れない。

 残念ながら違うの。
 私の強調したい点は“共同体から排除された者がどうなるか”。この1点だけなん
だもん。「戦争状況下」と限定条件をつけてしまったのは私のミスです。
 だから私のresはこのベースには不適切だったとも言えるんですが。
 それに“我々自身が「軍国主義を生みだしたのだ」”とはある意味で正しいが、そ
れで戦後の「1億総ざんげ」を正当化するヤツもいるから私はあんまり言いたくない。
 ちなみに戦争が政治の継続であるならば、戦争の責任は政治の責任者がとる。これ
はあたりまえのことです。だから対外侵略戦争とその責任なんてのは国民個々人に背
負わされるものではない。さらに言えば、政治をまっとうに描いたアニメがいまのと
ころない以上、戦争責任をまっとうに描いたアニメがないのも当たり前の話。反戦作
品は戦争下の生活しか描けない。

 私があの作品見てて思い出したのは、数年前に札幌で起きた母子家庭の事件。病弱
で働くことができないため生活保護を受けに役所に出向いた母親が窓口で屈辱的な扱
いを受け、それ以後生活保護を受けることをせず、電気・水道まで止められたあげく
食糧も底をつき、ついには母親が子供2人を残して衰弱死するに至ったという事件。
 『火垂るの墓』とまるでかわりゃしないじゃないか。しかも戦争とかいう状況のせ
いにすることもできない。(ちなみに映画公開より後に起きた事件です)

 人々の生活のつながりは政治によるつながりより広い。そしてこのつながりを共同
体と呼ぶならば、私たちは共同体を離れて生きることはできない。しかも、私たちの
意識自体がこの共同体に引きずられる。それなのに私たち個々人とその共同体とはな
んとあいまいな関係でしかつながっていないことか。そしてそこから弾き出された人
々に共同体はなんと冷たいことか。
 だからこそ私は恐ろしく、やりきれない気分を味わうのです。
(自主管理くんが関わっている有害コミック問題も同じことでしょ?)

 つけくわえれば、政治はしばしば生活をまきこみ、あまつさえ生活すら政治の一環
にすぎないように錯覚させる。戦争というのはその最たるものでしょう。

 まあ、以上のことが『火垂るの墓』にすべて表現されているかというとそんなわけ
ないのであって、私が見ててそんなことを考えたって話だからやっぱベースにはあわ
ないな。メイプル自体にもあわない話かもしれない。すんませんみなさん。

 あと、『火垂るの墓』作者の野坂昭如が昭和末期になにしてたかなんてことに私は
興味ないです。作者と作品はある程度区別して考えるべきだと思います。作品が作者
の意図を超えて多くの意味を含有することはよくあることですから。
(そうでなきゃK某が春に出した『四重人格』のエロマンガはどーしよーもないから
昨冬号の批評特集も同じ、なんて話になって俺やだ(笑))

                                  かくた
p.s.札幌の母子家庭については、この事件のドキュメンタリー番組を作った札幌テレ
ビのディレクターが書いた「母さんが死んだ」という本が出てます。