#119 Article 4093 Posted at 1993/09/11 04:22:32 by K_Katayama (MAP3623) [S.STORY]
Subject: レイちゃんのショートストーリー
ども K_Katayama です。 はい、まこちゃんの話に引き続き、今度はレイちゃんです。 シチュエーションとしては亜美ちゃんの話と同じ頃を想定して下さい。 -------------------- ここから -------------------- 草木も眠る丑三つ時、そろそろ他の皆も集まってくる。 そう思ったレイは、祖父の部屋の前で静かに頭を下げた。 母を亡くしてからずっと一人で自分を育ててくれた誰よりも大事な祖父に……。 「お爺ちゃん、今まで本当にありがとう」 そう、心の中で礼を言った、その時。 「レイ、入りなさい」 眠っているとばかり思った部屋の中から祖父の声がした。 「お爺ちゃん!?」 突然の呼びかけにびっくりしながらもそっと襖を開け、レイは中に入った。 そこには布団の上に正座する今までの、言ってしまえばとても坊主とは思え ないような普段の態度とは全く違った様子の祖父がいた。 「お前は今から戦いに行く。それも生きては戻れぬやも知れぬ戦いに。そう じゃな?」 断定するような祖父のその口振りに、なぜ知っているのか?といぶかしみな がらもレイは否定した。 「やぁだ。お爺ちゃんったら何であたしが戦いに行かなくちゃいけないの?」 「隠さずとも良い。わしは全てを知っておる。以前わしが異形のものとなっ た時のことをわしは全て覚えているのじゃ。お前が戦士として戦う姿も見た」 祖父のその真剣な表情からレイは全てを話す決心をした。己が月のプリンセ スを守る四守護神の戦士の一人セーラーマーズの生まれ変わりであることを、 今邪悪なるクイン・メタリアが復活しようとしていることを、そしてクイン・ メタリアを封じるために戦いに行かねばならないことを。 「そうか、火野の家の娘に代々伝わった超常の力はこのためのものだったの か」 祖父はそう一人ごちてからおもむろに孫娘に言った。 「火野の家に生まれた娘には代々超常の力を持つものが多かった。お前の母 親もそうであったようにな……」 その時、レイは昔の、己の母の記憶が走馬灯のように駆け巡るのがわかった。 レイの母親は時を越えた未来を見ることができたと言う。 そして、その未来を示唆することによってその人物に予測される危険を予め 回避していた。 そのため、彼女の夫、すなわちレイの父親であるが、は数多くの政治的スキャ ンダルからも逃れ、当時では押しも押されぬ有力な勢力をその手に収めていた。 その日、母親は体調を崩していた。幼いレイは母を心配し、父に共にいて欲 しいとせがんだ。 「父様、今日は母様のお体の具合が悪いの。本当に苦しそうにしてるの。お 願い、今日は母様と一緒にいてあげて」 「ダメだよ。今日は重要な会議があるんだ。おい、今日は何に気をつけたら いいんだ?」 そして、母は無理を押して占い、父はそれを見てその日も会議に行った。 「母様、大丈夫?」 幼きレイはそう声をかけるしかできることはなかった。それに対し母は、 「ええ、大丈夫よ」 と、にっこり微笑みを返すのであったが、その微笑みにも力はなく、その後 母は倒れ、起き上がることすらできなかった。 父はその日の会議でさらに大きな権力を手に入れたという。そして、より一 層あちこちを飛び回るようになり家に帰ることも少なくなった。しかし、レイ にはそのようなことはどうでもよかった。ただ父と母がともに自分のそばにい て欲しかっただけであった。 そして時は過ぎ母の容態は悪くなっていく一方であった。しかし、父はそん な母にさらなる未来見(さきみ)を要求し、またその時以外はほとんど家にそ の姿を見せることがなかった。そして、とうとう母の命の火も燃え尽きる時が 来た。 「レイ、こっちにおいで」 母に呼ばれた時に嫌な予感を禁じ得なかったのは思えばその時既に目覚めか けていた火野の力の前兆だったのであろう。 「なぁに、母様」 「私はもうすぐこの世を去るでしょう。そうしたらお前はこの家を出て麻布 十番の火川神社に行きなさい。そこでは私の父、あなたにすればおじいちゃん ね、とあなたにとって大事な運命が待っています」 「母様、そんなことは言わないで。そんなことを言っていたら治るものも治 らないわよ」 「いいえ、自分のことは自分が一番良く知っています。それに私には未来見 の力があります。それにあなたにも見えるのでしょう?私の体にとりつく病魔 が」 レイは思わず絶句してしまった。それは母が己の死期を悟っていたのとそれ 以上に自分でもようやく微かに感じられるようになった力を知っていたと言う 事実に対してであった。 レイはその頃から炎の中に人に仇なすものの存在を見ることができるように なっていたのであった。最初は誰にでも当たり前のようにできると思っていた ことが自分にしかできないと分かった時レイはその力を人知れず隠すようにし ていたのであった。 「レイ、あなたはまだ見ることしかできないようですが、あなたの真の力は もっと強いものです。そしてその力はこれから先必ず必要になってくるもので す。そのためにもここにいるのはあなたにとって良いことではありません。本 当なら今すぐにでも火川神社に行って欲しいのだけど、私がいるうちはあなた はここを動こうとはしないでしょう。だから私が死んだらその時には火川神社 に行きなさい。これは私の遺言です」 そう言い残すとあたかも最後に残った力をも使い果たしたかのように母は倒 れた。レイは父にすぐに連絡を送ったが、父はその日も帰ってこなかった。 そして次の日、母は最期の時を向かえようとしていた。 レイはとうとう今まで心の中で隠し通していた質問を母に対して発した。 「母様、どうしてこんなになってまで未来見の力を使ったの?あれは母様に 相当無理がかかるはずなのに、あんなほとんど家にも帰ってこないような男の ために」 母は穏やかに微笑むと言った。 「それはね。愛していたからよ。レイも、そしてあの人も」 その微笑みはまさに聖女がこの世に具現すればこんな感じなのだろうと思わ せるものであった。 そして、母は目を閉じた。この世の全てに満足したような顔で。 結局父が帰ってきたのは母が死んだ後のことであった。父が帰ってきた時、 レイは掴みかからんばかりに父に詰め寄っていた。何故母が危ないと連絡した 時に帰ってこなかったのか、母は死に際にもあなたのことを愛していると言っ たのに、そう言っているうちに段々悲しみがこみ上げてきて、いつしか父の胸 の中で泣きじゃくるレイであった。父はそんなレイを何も言わずただ抱きしめ ているばかりであった。 そして母の葬儀を終えたレイは周りの言葉を一切聞かず、火川神社に行くこ とを告げた。 「どうしてもこの家に残るつもりはないと言うんだな」 それは説得ではなく確認。レイもそれは痛いほど良く分かっていた。 「ええ、母様の最期の言葉には従いたいし……それに……ここにいると母様 のことを思い出してしまいそうで……。もう二度と会うことはないでしょうが、 父様もお元気で」 それだけを言い残すとレイは足速にその場を立ち去った。それ以上いるとま た泣いてしまいそうな自分がそこにはいたから。そして屋敷を出ると一度だけ 振り返りしばらく眺め、そしてきっぱりと決別したかのように歩き始めた。 思えばあの時に母が言った言葉は今、この時を示しているのではないだろう か。ふとレイはそう思った。ならばこの時のために与えられたその力、全力で 使ってクイン・メタリアを封じる。そう決意を新たにするレイであった。 「レイちゃーん、こんばんはー」 どうやら他のみんなも来たようである。 「それじゃ、おじいちゃん行ってくるね」 それはいつものように交わされた挨拶、いつものようにまたここにみんなで 戻ってくるために。 To be continued to the story of Pretty Soldier Sailor-moon Episode 45. ------------------- ここまで ------------------- えーと、レイちゃんのお母さんが未来予知ができたなどというのは勝手につけた 設定ですが、悪くないのではないかと思っています。(^_^;;) こちらの方も感想お待ちしています。