#119 Article 4092 Posted at 1993/09/11 04:16:24 by K_Katayama (MAP3623) [S.STORY]

Subject: まこちゃんのショートストーリー

ども K_Katayama です。

他の話も読みたいという人がいてくれたようなので、調子に乗って
他の話もアップします。

まずはまこちゃんのやつから。

-------------------- ここから ------------------
12月5日(土)

放課後、まことはうさぎの姿を見つけると声をかけた。
「ねぇねぇ、うさぎちゃん。今日、これから暇?」
そう、今日はまことの誕生日、皆で楽しく過ごそうと思いうさぎに誘いをかけ
た。しかし、うさぎの口から返ってきたのはまことが期待していた答ではなかっ
た。

「ごめんねぇ。今日はあたし亜美ちゃんとショッピングに出かけるの。」
「そう、じゃああたしも一緒に行ってもいいかな?」
多少落胆しながらも、皆と一緒にいられればいいや。とおもったまことはそう
尋ねたが、うさぎは
「あっ、今日はダメなの。ほんとーうに、ごめん(_ _)」
「そう……。」
まことの声の調子にはがっかりとした様子がありありとしていた。
「じゃ、そういうことで。」
「うん…。」

うさぎが立ち去るのを見送り、まことはうさぎちゃんは亜美ちゃんと一緒にショッ
ピングに行くって言ってたから……レイちゃんの方に聞いてみよ。と思い、通
信機のスイッチを入れた。

「何か用?まこちゃん」
「いや、今日もし都合が良かったらつき合って欲しいな。って思ったんだけど。」
「あ、ごっめーん。あたし今日は衛さんとデートの約束しちゃったの。」
「そう、じゃあいいよ。ゆっくり楽しんできなよ。」

そういうとまことは通信機のスイッチを一旦切り、今度は美奈子のところにつ
ないだ。

「あら、何か用?まこちゃん。」
「美奈ちゃん、今日これから都合良くない?」
「何で?」
「いや、せっかくの土曜日の午後だし、良かったら一緒に遊ばないかなぁ。な
んてね。」
「うーん、今日はちょっ。ダークキングダムについての資料とかもまとめ
なきゃいけないし、あ、そうだまこちゃん、良かったら手伝ってくれない?」
「いや、そういうのはあたしの柄じゃないからね。よろしく頼むよ。」

そう言うとせっかくの誕生日にまでダークキングダムなんてね。という本音を
隠しつつ、通信機のスイッチを切るまことであった。

しょうがない、ゲーセンでも行けば元基お兄さん位はいるだろ。
そう考えてクラウンに足を運んだまことであったが、当のクラウンで待ってい
たのは元基の姿ではなく、どうしたのか他の店員に尋ねたまことには「あいつ
は今日は休みだよ。」という冷たい返事しか返ってこなかった。

心当たりを一通り回っても誰も相手を見つけられなかったまことはやむを得ず
家に帰った。

「はぁ~あ、せっかくの誕生日だってのに誰も祝ってくれる人はいないのか。
皆でパーティやろうと思って昨日のうちにこんなに材料を買い込んだのになぁ。」

ふと脇を見るとそこにはローストチキンや、フルーツポンチその他諸々のご馳
走の材料が所在なさげに転がっていた。両親はまことが幼かった頃飛行機事故
で死んでしまった。その後親戚をタライ回しにされていたが、この十番中学に
来る時に思い切って一人暮らしを決意した。その結果、まことの家事の腕は同
年代の女の子のそれより数段上回ることになっていたのである。

「ま、しょうがないか。誰も祝ってくれる人がいないのなら自分で祝うとしま
すか。」

このままぼーっとしていてもしょうがないし、せっかく買った材料を捨てる訳
にもいかないからひとまず料理でもしよう。と思い立って台所に立ち、おもむ
ろに口ずさみはじめた。

「♪Happy birthday to me. Happy birthday to me. 
        Happy birthday dear Makoto. Happy birthday to me.♪」

そう歌いながら料理をしていたまことであるが、いつしか寂しくなり、料理の
手も止まり、涙が止まらなくなってきた。

「あ、あれ?タマネギにでもやられたかな。」

気丈にも自分が寂しくて泣いているのではないと思い込もうとしていた。
去年までだってそうだったじゃないか、みんな自分の両親のいない境遇と大き
な体を珍しがり男の子は苛めようとしてばかりいた。それから身を守る為に空
手を学んだ。その結果苛めはなくなった。しかし逆に今度は皆が自分を恐がり、
積極的に友達になろうと飛び込んでくる人はいなかった。子分になりたがる者
は多かったが……。

この十番中学に転校してきて最初のクラスの雰囲気もそれまでのそれと変わる
ものではなかった。

だけど、ここには一人の少女がいた。
その名は月野うさぎ。
彼女を不良から助けた時にはそんなことになるとは露とも思っていなかった。
彼女も不良を簡単に蹴散らした自分を恐がるか興味本意で見ているのだろうと
ばかり思っていた。しかし彼女はその日、いつものように一人でお弁当を食べ
ていたあたしに声をかけてきてくれた。しかもそればかりではなく、ほとんど
初めて会ったばかりのあたしに色々と親切にしてくれた。そして、彼女がセー
ラームーンであり、自分が同じ仲間のセーラージュピターであると分かった時
に私はここに来る運命だったと悟った。
そして、この仲間達を2度と離すまいと思っていた。

自分は一人でも寂しくない。一人でいた時はそう思っていた。
だけど仲間を得てからそれは自分の気持ちに嘘をついていることだと知った。
だから、今の一人の自分がむしょうに寂しい。

誰か私を助けて、この寂しさから救って!

そう思い始めると涙が溢れて止まらなくなっていた。
立ちすくんだままただ流れる涙に身を任せるだけであった。

その時、トントンというノックの音がした。
誰だろう?ふと我に帰ったまことが顔の涙をエプロンで拭き、家のドアを開け
ると

パーン!パパーン!パーン!!
鳴り響くクラッカーの音。
そして、扉の前に立っていたのは亜美、レイ、美奈子、元基、レイに無理矢理
連れてこられたのであろう衛、そして、彼らの真ん中に立っていたのはうさぎ
であった。

「お誕生日おめでとう!まこちゃん。」

まさか来るはずもないと思っていたところへの奇襲だったがゆえに、まことは
ただただ呆然とするばかりであった。

「うさぎちゃんがね。どうせならいきなり押しかけてびっくりさせようってい
うから……。」

亜美の説明を聞いたまことははたと思い当たった。

「じゃあ、もしかして今日のショッピングっていうのは……。」
「そう、まこちゃんへのプレゼントを買いに行っていたの。はい、あたしから
はこれよ。」
「開けてみてもいいかな?」
「ええ、どうぞ。」

亜美はにっこりと微笑んだ。
期待に満ちた表情で包みを解いたまことは中身を見て一瞬目が・になった。

「あ、亜美ちゃん。これってもしかして、あの、その……。」
「数学の参考書と問題集よ。あたしも前に使っていたの。すごくいい問題だか
らやってみてね。」

罪のない表情でにっこりと微笑まれると完全に毒気を抜かれてしまったのかま
ことは絶句するしかなかった。

「あたしからはこれよ。火川神社のお守り、破魔矢、お札の3点セット!おま
けに巫女用の衣装もセットであげちゃう。」
「これってほとんどお金かかっていないんじゃない……?」
「あ、あはは……でも実際に買ったら 1,000 円くらいするのよ。」
「まあいいけどね。」
「あ、おじいちゃんからの伝言があったんだ。この衣装が気に入ったらバイト
しに来てくれだってさ」

最後の一言でその場の全員が思わず吹き出していた。

「これは僕と衛の2人から。」
と、いうと元基は持っていた花束を差し出した。
「まこちゃんも女の子だし、名字に木野なんて言ったり、薔薇のピアスなんて
しているくらいだからきっと花が好きだろうなと思ってね。」
「はい、ありがとうございます。花は大好きです。」
「全く、高かったんだからな。大事にしてくれよ。」
「はーい、キザなお・に・い・さ・ん。」

その場の全員が爆笑の渦に飲み込まれる中、衛一人が苦笑せざるを得なかった。

「あたしからのプレゼントはこれ。まこちゃんもあたしと同じでリボンを使う
から選びがいがあったわ。」
「わぁ、綺麗な色のリボン、美奈ちゃんありがとう。そろそろ新しいのが欲し
いなって思っていたところなんだ。」

「えっと、じゃあ後はうさぎちゃんか、うさぎちゃんは何をくれるのかな?」
「え、えっとね。うんとね。だから、その、あのあたしさ、本当に言いにくい
んだけどお小遣い使い切っちゃってね。だからさ、その、プレゼント用意でき
なかったんだ……。ごめんね。まこちゃん。」
「ふーん、そうなんだ。あたしの誕生日なんてお小遣いを使う価値すらないっ
て言うんだ。へぇーっ、ふぅーん。そうなんだぁー。うさぎちゃんにとってあ
たしってその程度の扱いなんだ。そう。」
「えーん、まこちゃんがいじめるーーー。だからごめんって言ってるじゃない
よ。」
「う・そ。皆来てくれただけでも嬉しいよ。今から腕をふるって美味しい料理
をご馳走してあげるから、ささ、皆、中に入って。」

やっぱり仲間って、友達っていいなぁ。
こんなに大事なものだとは思わなかった。
あの歌はもう2度と歌わないよ。
だって、あたしにはもうちゃんと歌ってくれる友達がいるもの。

「じゃあみんなでまこちゃんのために Happy Birthday を歌おうよ。」
「そうしよう、そうしよう。」
「♪Happy birthday to you. Happy birthday to you.
        Happy birthday dear Makoto. Happy birthday to you.♪」

(F.O.)
-------------------- ここまで --------------------

この話、最初に書き上げたのは去年の12月なんですよね。
おかげで今見直すと結構恥ずかしいです。(^_^;;)
多少の改変は加えたけど、基本的なところは変わっていません。
感想などありましたら宜しくお願いします。