#91 Article 4272 Posted at 1995/04/09 00:53:30 by OPRETER (MAP1819) [ORIGINAL]

Subject: Re: Re: オリジナルエルドランの話… /4264 /4263

というわけで、4月だし…

 クウサンダーの第1話を上げてみようと思います。

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超絶覇王 クウサンダー

		#1「天空の覇者」

 プシュッ、と自動ドアが開き、武田防衛隊長官が部屋に入ってくる。
  ここは、防衛隊に新たに作られた、外宇宙監視センターオペレーションルームであ
る。
 邪悪帝国、そして機械化帝国の2度に渡る外宇宙からの侵略の結果、外宇宙からの
侵略に対して、可能な限り早急に察知するために、外宇宙からの飛来物体に対しての
監視ネットワークが作成され、つい先日、稼働を始めたばかりであった。
「これで、少しはましになるじゃろうな」
 武田長官が呟く。
「長官」
 オペレーターの一人が、長官に声をかける。
「ん、どうした」
「ちょっと、これを…」
 ディスプレイをのぞき込む長官。
 ディスプレイには天体の軌道図面が表示されていた。
「これが、どうした?」
「現在、軌道計算中ですが…どうも、太陽系方面へ向かっている様なんです」
「流星とか、彗星とかでは…無いのか?」
「軌道計算、出来たぞ」
 隣のオペレーターが話しかける。
 ピピピッ、と、ディスプレイに軌道線が現れる。
「推定コースは、太陽系、毎秒80キロ…減速中?!」
「減速中じゃと!?」
 驚く長官。ふつうの天体ならば、加速することはあっても、減速することはまずあ
りえない。
「該当する天体…無し…」
「早くも来おったな…」
「長官…」
 そばにひかえていた副官が話しかける。
「Eバードの出撃準備を整えておけ」
「はっ!」
				     ◇
 カーンコーン…
  基地からすこし離れた学校の鐘がなる。とたんに学校中がさわがしくなる。
 5年生の教室。がらりと戸が開いて、子供達が何人か飛び出してくる。
「すずみー!はやくしろよぉ」
 他の子と比べて少し背の低い男の子が、教室のドアによりかかって、教室のなかに
一人残った眼鏡の女の子に向かって声をかける。
「ちょっと待ってよ勇二」
 眼鏡の女の子は、ランドセルにノートや教科書を放り込み、そのランドセルを肩に
かける。
「お待たせ。饗児は?」
「先に『雷龍』に行くってさ」
 勇二とすずみの二人は、階段を降りて、学校の校門へ向かう。
 校門の向かい側に、大きなコンビニエンスストアがあり、勇二とすずみは、その中
へ入っていく。
  看板には「雷龍」と書かれている。
  コンビニの中は大きく2分割され、半分はふつうのコンビニのように商品が並んで
いるが、もう半分、ちょうどレジのカウンターを境に、いくつかの椅子とテーブルが
配置され、学校が終わった子ども達でにぎわっていた。
 勇二とすずみはぐるっと店内を見回し、お菓子を選んでいる男の子を見つける。
「饗児」
 すずみがぽんとその男の子の肩を叩く。
「すずみか。ちょうどいいや、どっちにする?」
 男の子は、両手に2種類のぽてちの袋をすずみに見せた。
「…のりしお」
 すずみが答えたぽてちの袋を篭に放り込む。
「大体終わった?」
「ま、こんなもんだろ」
 饗児はふたつの篭の一つを持ち、勇二がもう一つ持って、レジへ向かう。
「1530円だな。誰が払うんだ?」
 レジのお兄さんが3人にいう。
「わたしが」
 すずみがポケットから財布を出して、1600円出す。
「70円のお吊りね。それと…」
 レジ横にある1個10円のアメ玉を6つ取って、袋に入れる。
「おまけだ。毎度」
「ありがと、龍矢さん」
 礼をいう勇二。
「いこうぜ」
 饗児がお菓子が入った袋を持って、二人を促す。
  3人は揃ってコンビニから出る。
「そういえばさっき、基地の方で警報がなってたな?」
 と、饗児がすずみに聞く。
「そうだったか?」
 勇二が聞き返す。
「寝てたもんな、お前」
 饗児とすずみがジト目で勇二を見る。
「え、え~と…」
 後ずさる勇二。
「ま、それはそれとして…あれ、たぶん『アップル・ジャック』だと思うんだけど…」
 すずみが考え込む。
「『アップル・ジャック』って、マジかよ…」
 驚く勇二。
  『アップル・ジャック』…防衛隊の状態コードの一つである。
  平時を表す『スノウ・マン』、警戒状態を表す『レモン・ジュース』、そして敵機
来襲を表す『アップル・ジャック』。
「また、どっかの宇宙人でも攻めてきたのかな?」
 と空を見上げる饗児。
			    ここ
「有り得るわね。でなきゃ、降雷基地が鳴るわけがない」
 とすずみ。
「ネットワークに引っかかったかな…基地の方に寄ってみるか?オレ達に何が出来る
かは別にして」
 そう言って、勇二が基地の方を見る。
				     ◇
 防衛隊、降雷基地。
  この降雷基地は、外宇宙監視ネットワークのモニター施設として、周囲の街、降雷
ニュータウンとともに、新たに作られた。
 監視ネットワークのモニターシステムを設置するには、陽昇駐屯地では手狭になる
ため、新たに基地を建設する事となったからだ。
 いくつかの候補地の中から山合いの盆地が選ばれ、3千m級の滑走路を中心に、緊
急展開用部隊として航空部隊3個大隊、空艇部隊1個大隊、基地防衛用として陸上部
隊1個小隊が配備された。
 滑走路脇にあるいくつかの。
  そののひとつから、全長40mほどの航空機が姿を現す。
  E・バード…正式名称は、「エルド・バード」
  かつて、ザウラーズの「教授」こと小島尊子からもたらされた、ゴウザウラーのデー
タ…この場合、正確には、ザウラージェットの、と言うべきだろうが…それをもとに
建造された、大気圏内外両用の、多目的戦闘機である。
 かつて造られた「ボウエイガー」は、おもに地上戦闘を目的として作られた物であ
るが、このEバードは、空中、宇宙戦闘を目的としている。
 単体での大気圏離脱能力、再突入能力に加え、無補給で地球周回軌道から火星軌道
まで往復できる航続距離を有している。
 Eバード、コクピット。
						パイロット	ガンナー	 RIO
  Eバードは、歴代のエルドラン・ロボットと同様、操縦手、砲撃手、索敵手の3人
で操縦する。
「まさかこいつを本当に使う事になるとはな…」
 パイロットが呟く。
『目標は現在、冥王星軌道を通過。依然、減速中。Eバード、
   テイクオフ・スタンバイ・レディ
発進準備、よろしいですか?』
		   テイクオフ・レディ
「こちらEバード、発進準備完了」
  ラージャ 				      クリアード・フォア・テイクオフ
『了解。軌道上での受け入れ準備も完了しています。発進、どうぞ』
  ラージャ
「了解」
 ブン、とシステムが立ち上がる。
 離陸や巡航、軌道上での軌道変更など、比較的単純な操作、タイミングがシビアな
操作などは、コンピュータによる自動操縦が可能なようになっている。
 やがて爆音を響かせ、Eバードの巨大な機体が、ゆっくりと動き始める。
				     ◇
 防衛隊基地のはずれ、区域外を仕切るフェンスぎわの道路。
「勇二、饗児、あれ見て」
 すずみが基地内の滑走路を指差す。
  その先には、ふつうより大きな飛行機…Eバード…が、出撃しようと滑走を始めた
直後だった。
「な、あんなデカい飛行機、ここにあったのか?」
 饗児が驚く。
「ネットワークの完成とほぼ同時に完成したはずよ…あんな物まで持ち出すなんて、
よっぽどらしいわね…」
 腕組みして考え込むすずみ。
「たしかありゃ、スペースプレーンだったよな、すずみ」
 勇二がすずみに聞く。
「そのはずよ」
 すずみが答える。
「スペースプレーン?」
 饗児が聞く。
「あれ?知らなかったのか饗児。ブースターなしで軌道まで上がれる航空機のことを
そう呼ぶんだよ」
 勇二が答える。
 ヴォォォォォ…爆音を響かせて、Eバードが空へ舞い上がる。
				     ◇
 静止衛星軌道上。
  既に、この静止軌道上にも、宇宙ステーションが造られ、数十機の宇宙戦闘機が駐
留していた。
					     プロペラント
 Eバードが、その係留ブームの一つに係留され、推進剤の補給を受けている。
  単体で地球~火星軌道の間を往復できる能力を持つEバードは、その能力に比例し
て、かなりの「大喰い」である。
 ゴウザウラーのデータを元にして、これまでとは比較にならない高効率のエンジン
を搭載してはいるが、航続距離を地球~火星軌道までと欲張ったために、結局、大喰
いのままなのである。
「オペレーションセンター、補給はいつ終わる?」
 パイロットがオペレーションセンターに訪ねる。
『補給はあと4分で終了します。目標は先ほど火星軌道を通過、依然減速中。8時間
後には月軌道へ到達します』
	     ランデブー
「こっちはいつ接触できる?」
	     ランデブー
『6時間後には接触できるはずです。月軌道の少し外ですね。まもなく、補給が完了
します』
「補給が完了次第、出撃するっ!」
  ラージャ
『了解』
 ガシュン!係留ブームからEバードが切り放される。
「Eバード、出撃する!」
 ドォ!Eバードのメインノズルがうなりを上げ、加速を開始する。
  続いて、軌道ステーションから数機のブースターつきの宇宙戦闘機が切り放される。
  ホームオービットフリート
『本星軌道部隊、第4分隊、同行します!』
  ラージャ
「了解」
 グゥォォォ!数機のブースターがうなりを上げて、Eバートの後を追う。
				     ◇
	オブジェクト・オン・サイト
「あれだ…目標を視認!」
 はるか向こうに、光の点が見え始める。
「距離は、どのくらいだ?」
 ガンナーがRIOに聞く。
「距離は180kmはあるな…目標の全長は約2km…」
 RIOが答える。
   こいつ
「Eバードで…勝てるのかよ…」
 ガンナーががくぜんとする。
「やるしかねぇだろ。そのために、こいつは生まれたんだ」
『攻撃命令は…まだですか?』
 同行していた戦闘機のパイロットが言う。
「馬鹿かお前は!」
 怒鳴るガンナー。
「もし相手が地球に友好的だったらどうすんだ!向こうが手を出すまで、こっちから
手を出すんじゃない!」
 同じく怒鳴るEバードパイロット。
「ったく…軌道を変更する!目標を包囲して、地球まで「警護」する!」
  ラージャ
『了解!』
									エスコート
 Eバードを初めとした宇宙戦闘機群は、各部のモーターをふかして「目標」を包囲
するよう、コースを変える。
				     ◇
「あれが地球か…なかなか美しい星だな」
 窓際に立っている男が、窓からようやく見え始めた地球を見て、呟く。
  その背中は広く、がっしりした鎧を着込んでいる。
  プシュッ、と部屋のドアが開き、もう一人、男が入ってくる。
「シグマ様」
 その男は、動物のような…強いて言うなら、犬のような頭を持った、小太りした男
だった。
「どうした?アルファ」
 シグマと呼ばれた男が振り向く。
  振り向いたその姿は、部屋に入ってきた男…アルファのような、強いて言うなら虎
のような頭を持っていた。
「地球のものらしき物体が、本艦を包囲し始めていますが、いかが致しましょう」
「ふむ…適当に歓迎してやれ」
「は」
				     ◇
「でかいな…まったく…」
 Eバートパイロットが呟く。
  すでに、Eバードを初めとする戦闘機隊は、「目標」を包囲して、地球へのコース
を取っていた。
			 ふね
 「目標」は全長2km程の「艦」だった。
  いくつか攻撃兵装らしきものも確認できる。やはり、攻撃意図を持っている可能性
が高い。
『どうします…』
 戦闘機隊の隊長が、Eバードのパイロットに指示を仰ぐ。
「やはり向こうが始めるまでは、こちらが手を出すべきじゃぁない。こっちの言い逃
れのためにもな」
「ん?おい、これは…」
 目標をモニターしていたRIOが声を掛ける。
「どうした?」
「モニターに出す!」
 メインスクリーンに目標の一部が拡大された画像が映る。
  目標の格納庫らしき扉が開いて行く。
「なにか出てくるのか…」
 そこから出てきたのは、
「な、なんだ!あれは!」
 機械の獣だった。
  おおきな金属の爪、サーベルタイガーのような金属の牙と頭、そして人型に近い体…
	    ブレイク
「くるぞっ!散開!」
 その機械の獣は、スラスターをふかして艦から離れ、手近の2、3機に一撃を加え
る!
  バム!と戦闘機のコクピットカプセルが分離し、一瞬後に、機体は爆光に包まれる。
「各機、脱出ポッドを回収しつつ、後退しろ!」
 そのEバードパイロットの命で、防衛隊の各機は可能な限り散開し、「敵艦」と距
離を開ける。
「行くぞ!」
「おおっ!」
 ガンナーとRIOが答える。
  Eバードは単体、機械の獣に向かって突入する!
  ヴォァウ!ヴォァウ!Eバードがビームを2射する!
 ギュゥン!ビームは相手に命中するが、ものともせずに向かってくる!
「くっそぉっ!」
 クンッ!操縦桿をひねるパイロット。
 Eバードはクンッ!とコースを変え、相手を避ける!
「『タイタン』は!使えるか!」
「チャージに30秒いる!この状況じゃ、まず無理だな!」
「くッそぉっ!」
 Eバードは反転し、戦闘体制を整え直す。
「うわっ!」
 目の前に敵機が迫っていた!
  ドガシャァ!という振動!吹き飛ばされるEバード!
「まだだっ!まだ終わってねぇ!」
			オーバーブースト
 パイロットがスロットルを過全開にたたっこむ!
  ゴォォォ!Eバードのメインノズルがうなりをあげて、加速!
「『タイタン』だ!回り込んで時間を稼ぐ!」
「わかった!」
 ガンナーが『タイタン』の発射準備を始める。
  『タイタン』…そう、ゴウザウラーの主力火器の一つ、『キングタイタン』をもと
に、可能な限り再現した、Eバードの必殺火器である。
 グッァウ!敵機が迫り、Eバードがすんでの所で避けるという綱渡りのドッグファ
イトが繰り広げられる!
  チャージアップ
「充填完了!いけるぞ!」
 クンッ!と反転して、機首を敵機に向けるEバード!
「くらえぇ!Eタイタン!」
 ガンナーが『タイタン』のトリガーを入れる!
  グドォォゥゥ!強力なビームが、至近距離で、敵機を襲う!
「…やったか?」
 爆炎が、晴れる。
「!」
 そこには、無傷の敵機がいた!
「くっそぉぉ!」
 バッとモーターをふかして反転するEバード!
  ドガシャァ!その隙を、敵機は見逃してはくれなかった。
 吹き飛ばされるEバード。
「どこを…やられた…っ!」
「メ…メインノズルだ…」
 RIOが損害報告する。
「ちっ…くしょぉぉぉっ!」
 ダン!とコンソールに拳を打ちつけるパイロット。
「Eバードより各機へ…メインノズルをやられた…戦線を離脱するっ!」
 RIOが各機へ連絡する。
『!』
「各機…各自の判断で、順次離脱しろ!無駄死にはするなよ…」
 パイロットが連絡する。
				     ◇
 防衛隊、外宇宙監視オペレーションセンター。
「どうじゃ、状況は?」
 武田長官がオペレータに聞く。
「Eバードは撃墜、他の機体も、各個ばらばらに待避していますが、半数は撃墜され
ました…」
「なんということじゃ…やはり、地球の科学力では、まだ対抗できんのか…」
				     ◇
「ち…っくしょぉっ!」
 RIOがいきなり怒鳴る。
「どうした?」
 ガンナーがRIOに聞く。
「地球の重力に捕まった!落ちるぞ!」
 その報告どおり、推力を失ったEバードは、地球の重力に引かれ、地球へ落下する
コースに入ってしまっていた。
「くそっ!なんとか軌道を変えないと…生き残っているモーターを示してくれ!」
「わかった!」
 RIOがそう答え、パイロットのコンソールに、生き残っている姿勢制御モーターが
示される。
「大半がやられているな…」
							した
「まずいなこりゃぁ…軌道が悪い、この分じゃ、燃え尽きずに地上まで落ちるぞ!」
「なにぃぃ!」
 驚くパイロットとガンナー。
「落下予測地点は!」
「…今計算中…出た!…どこまでツイてねぇんだ!防衛隊基地のそばだぞ!」
「なんて…こった…」
 がくぜんとするガンナー。
「まだ姿勢制御できるかもしれん!制動用モーターに残っている推進剤を集める!」
 しかし、2時間後。健闘むなしく、今はただの金属の塊になったEバードは、地球
の周回コースに乗ってしまっていた。
「どうだ?」
「だめだ、3度計算をやり直したが…軌道は変わってねぇ!」
「くそぉっ…」
「ん?別の機体が近づいてきたぞ」
「『敵』か?」
「いや、味方のようだが…」
	      ホームオービットフリート
『ザ…こちら、本星軌道部隊第4分隊所属、木下深雪少尉です』
 と、通信機から声がした。
	    ホームオービットフリート
  モニターに本星軌道部隊の機体が1機、近づいてくるのが映る。
『下から押してみます!』
「待て、少尉!まもなく摩擦熱が発生し始める高度だ!下手すれば、逃げられんぞ!」
 パイロットが通信機に向かって怒鳴る。
『やってみなきゃ、わかりませんよ!』
 深雪の機体が、戦闘機形態から人型形態へ変形し、Eバードの前方に回り込む。
		    ホームオービットフリート
  軌道上に配備された本星軌道部隊の一部の機体は、宇宙空間での作業用として、戦
闘機形態から人型形態への変形機構を持っていた。
 ガズン!と深雪の機体がEバードの前部に体当たりをかまし、続いてドォォ!と推
力を全開にして、Eバードを押し戻す。
「どうだ?」
「…だめだ、これだけ加速しちゃぁ、1機ぐらいの推力では軌道を変えるのは無理そ
うだ…」
「くそぉ…動けっ!動いてくれっ!」
 操縦桿をひねるパイロット。しかし、大半の姿勢制御モーターが死んだEバードは、
もはやうんともすんともいう事を聞いてくれなかった。
「外板が赤熱を始めた…大気圏に突入し始めたな…」
 RIOがつぶやく。
  その言葉どおり、Eバードの外板が、大気との摩擦熱で赤熱し始めていた。
  当然、Eバードの前部で押し戻している深雪の機体も、赤熱している。
  ホームオービットフリート
  本星軌道部隊の機体は、一応大気圏への再突入能力を有してはいるが、あくまで戦
闘機形態で突入する事が前提であり、人型形態のまま大気圏突入を行えば、燃え尽き
てしまう事は目に見えていた。
「くそぉぉっ…」
 必死に体勢を立て直そうとするパイロット。
  コンソールに『大気圏突入』のサインが映る。
「だめだ、大気圏突入モードに移行しちまった…」
 一方、深雪は、必死に振動と高熱に耐えていた。
「くぅぅっ…」
  ズンッ!という爆発音!足のエンジンが爆発した!
「うわっ!」
 流される深雪の機体、何とかEバードにマニピュレータを引っかける。
「少尉!どうしたぁ!」
 Eバードのパイロットが聞く。
『エンジンがやられました…何とか、Eバードの上に引っかかってますけど』
「大丈夫か?」
『なんとか…このままEバードにのっかって、ブラックアウトが終わったら脱出しま
す。燃え尽きない事を祈らざるをえませんね…』
「燃え尽きてもらった方が、こっちとしてはいいんだがな…」
 Eバードのコクピットにゴキュン!という音が響く。
「なんだ!」
		      EJECT
 各員のコンソールに「脱出」のサインが表示される。
 イジェクト
「脱出だとぉ?!ちょっと待てぇぇぇ!」
 Eバードのコクピットユニットは、それ自体が大気圏突入能力を有している。
  また、Eバードのコントロールシステムは、『搭乗者の生命を守る事』を第1義と
して、プログラムされている。
 メインノズルが死に、ほとんどの姿勢制御モーターさえも死んだまま、大気圏突入
を行えば、コクピットの搭乗者の生命に危険が及ぶと判断し、システムはコクピット
ユニットを切り放したのだ。
 バシュン!とEバードからコクピットユニットが切り放される。
「おい!Eバードを追えねぇか?」
 ガンナーがRIOに怒鳴る。
「無茶言うな!ブラックアウト中だぞ!追えるわけがねぇ!」
「くそぉぉっ!」
「これで質量が変わって、軌道が変わってくれればいいんだが…少尉…死ぬなよ…」
				     ◇
「長官!大変です!メインノズルが破損したEバードが地球へ落下してきます!」
 防衛隊オペレーションルーム。オペレータの一人が、長官にEバードの落下を報告
する。
「な、何じゃと!大気圏で燃えつきんのか?」
「無理です。しかも軌道が、この防衛隊基地の、すぐ近くに落下しそうな軌道をとっ
ています!もし燃え尽きずに落下すれば、核弾頭級の破壊力が…」
「な、何ということじゃ…人類の英知を結集したEバードが、逆に人類にとって驚異
となろうとは…」
				     ◇
「ちきしょ~…これまでかもなぁ…」
 Eバードに一人、取り残された深雪の機体。
  どうにかこうにかマニピュレータでEバードの表面にしがみつき、大気圏突入に耐
えていた。
「ん?なにかしら、あれは…」
 キャノピーの外、地球の地平線が見える。
  その向こうから、いくつかの光が、Eバードに向かって飛んで来ていた。
「なに…」
 その光は、Eバードを包み込んでいった。
				     ◇
 街はずれの山中。
  この山の中に、防衛隊の地上レーダーネットワークの一翼を担う、無人中継レーダー
サイトがあった。
  本来は無人のはずのこのレーダー施設に、勇二、饗児、すずみの3人が潜り込んで
いた。
 ふと、空を見上げる饗児。
「あれ…?」
「どうした?饗児」
「勇二、何だろな、あれ…」
「あん?」
 空を見上げる勇二と饗児。
  まだ昼間だというのに、ひとつ、ぽつんと、星が見える。
「流れ星…かなぁ…」
「どうしたの?」
 すずみが声を掛ける。
「あ、すずみ。あれ…」
 空を指さす勇二。
  眼鏡をなおして、空を見るすずみ。
「流れ星…かしら、でもそれにしちゃ長いし…」
 やがてその星は、大きくなってくる。
「長い…長すぎるわ!いん石かしら…」
 さらに、どんどん、大きくなってくる。
「ちょっと…」
「どうした?すずみ」
「まだ尾が見えない…」
 どんどん、どんどん、大きくなってくる。
「近くに落ちるわ!」
「うそだろぉっ!」
  建物から飛び出す3人。
「逃げたほうがいい!近くに落ちる!」
 すずみのその言葉に、大あわてで逃げ出そうとする3人。
  次の瞬間、光が、彼らの後ろに落ちた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
				     ◇
 固く閉ざしていた目を、ゆっくりと開くすずみ。
「あ…れ…?」
 彼女は、淡い光の中で、浮いていた。
「たす…かった…の?」
「ん…俺達…」
「たすかったの…か?」
 勇二と饗児も目をさましたらしい。
「これは…」
 彼女達の後ろに、もう一人、女の人がいた。
 まわりの淡い光が、一つにまとまって行く。
「なに?」
 その光の塊は、人間のような形になった。
「だれ?」
 すずみが呟く。
『地球の、子供達よ…』
 誰かの声が、響く。
「あなたは…まさか、噂のエルドラン…」
 後ろの女の人が言う。
『私は、エルドラン。太古の昔より、地球を守りし光の戦士。
今、この地球は新たな敵、獣機帝国に狙われている。
君達を助けるために、私は力を使いきってしまった。私は休まねばならない…
ここに落ちた機械に、私の最後の力で、新たな命を与えよう。
この、新たな命を得た機械…クウサンダーで、地球を守ってほしい…
頼んだぞ、地球の子供達よ…』
 エルドランは一方的にしゃべり、そして、ふたたび光があふれ、4人の視界が消え
て行く…
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 次Art.につづく