#70 Article 6055 Posted at 1997/08/28 07:35:07 by みりす (MAP6909) [PORINFANO]

Subject: Re: 読書日記です(児童文学とファンタジー中心) /6003

「歌う石」O.R.メリング/作 井辻朱美/訳 (講談社)

	 「妖精王の月」の作者メリングの2作目。もっとも妖精王は3
	作目で、日本では翻訳の順番が逆になってるそうです。

	 捨て子だったケイは孤児院で育ち、16歳の時に独立して今は
	ひとりぐらし。ある日ケイのもとに差出人不明の古い書物が届く。
	内容はアイルランドの神話について書かれたものばかり。彼女は
	その本の内容にしたがってアイルランドを探索することが自分の
	過去につながるのではないかという直感をえてアイルランドへと
	向かう。そして遺跡めぐりの途中で古代アイルランドへと迷い込
	み、トゥアハ・デ・ダナーン族の戦いに巻き込まれてしまうのだ
	った。

	 「妖精王の月」が神話を知らなくても読めるのに対して、「歌
	う石」は知らないとつらい話のような気がします。もちろん、ま
	ったくケルト神話を知らなくても読めるようには書いてあります
	が、知ってるのとでは愛着の度合いが違うでしょう(わたしはケ
	ルト神話にさほど詳しくはないのでつらかった(^^;)。
	 古代アイルランドで4つの民族が対立しあう中を4つの宝物を
	求めて探索するという壮大さのせいか、話がとんとん進みすぎて
	「ここはもうちょっとねちねちっと心理描写なんか入れてくれる
	と……」なんて物足りなく感じることもしばしば。まあ、このへ
	んは好みの問題でしょうねえ。

	 ただ、ケイがタイムスリップした後に自分にひそむ「力」に気
	づいて使い始めるあたりはいい感じです。岩に対して「風と雨と
	海」という風化に必要なイメージを送りつけて崩壊させるとこな
	んか、魔法使いのノウハウ紹介みたいで面白いなあ。でも、そう
	いう部分がもっとあってもよさそうなのに、さらりと流して先へ
	すすんじゃうあたりが物足りないかなあ。

	 まあ、3作目の「妖精王の月」を読んでも、どんどん書き慣れ
	てきてる感じなのでこれからの人なのかもしれません。
	 作者のO.R.メリングはアイルランドのダブリン生まれで5
	歳の時にカナダに移住、現在はまたアイルランドに住んでいるそ
	うです。1994年には「妖精王の月」でルース・シュワッツ賞
	(カナダの青少年が選んだその年一番面白かった本に与えられる)
	を授賞しています。

みりす