#43 Article 775 Posted at 1991/02/01 09:50:07 by ひろみっく (MAP779) []

Subject: 「史上最大のアイドル(前編)」

「史上最大のアイドル(前編)」


	「アイドルって何?」という問題提起は、伝説のアイドルえり子
	以来問いかけられ続けてきている命題である。
	えり子の場合は、伝説の中の話であった(ようこの世界から見れば。)
	わけであるし、また、その問いかけを自らに課したのは他ならない
	アイドルとして成功したえり子自身であった。そして、その迷路から
	の脱出口を見つけたのも彼女自身であったわけであり、事情はかなり
	違っている。
	しかも、そこでえり子が見つけたのは解答でもなければ解決方法で
	すらなく、単に迷路からの道であったに過ぎない。
	
	「アイドル」どころか、「歌手」というものの存在すら危ぶまれる
	ようになった現在に於て、TVの歌番組というものがほとんど存在
	しないのである。これは、拡大再生産を目指すどころか現状維持すら
	難しいという状況を示している。

	ようこは渋谷のアリスであった。そこからスタートすることによって
	アリスたちの夢を具現化するための対象となり得たのであり、多くの
	アリスたちの夢の実現に向かって時には励まし、時には自らの夢よりも
	優先させて行動した。歌い、踊り、地道に練習し、アイスクリームを
	試食して。

	多くのアリスたちと同様にお金というものに縁がない暮らしの中で、
	しかも自ら飛び込んだプロダクションすら資金的余裕は皆無である
	という絶望的な環境と、資金に物を言わせて「アイドルを作ること」
	(現在ではそれすらも不可能になった。皮肉なことに田中陽子という
	例が全てを象徴している。田村英理子がそのパターンが使えた最後の
	人工アイドルであった。まるで、最後の有人戦闘機と言われたF-104
	のごとく・・)という「企業利益の追及の過程で少女の夢をついでに
	実現する」という形で登場していた星花京子とは対照的であるが、一度
	ステージに立てばF1のよっきゅんであり、決して「F1に寝坊して
	出られなかったほっきょん」では無いのである。
	そして、アイドルとして同じTVの番組に出れば、対等な存在であり
	大人達の意向に関わらず親しさを増して行く。

	「アイドルはアイドルを知る」と言われる。「デルモはデルモを知る」
	のであり、「デザイナーはデザイナーを知る」。そして、渋谷のアリス
	は渋谷のアリスを一番良く知っているのである。
	女優を目指すサキさんにしても、自分の限界をよく知っている。そして、
	その限界を無視して更なる向上を目指していかないと決してその限界を
	越えることが不可能であることも薄々は感づいているが、それについては
	ようこなり久美子なりに指摘してもらうまではっきりと気づくことが
	できない。
	絶望を恐れない勇気の代償としてでしか限界を越えて行くことは許されて
	いない。その最後の一線を越えられたものだけがスターとして脚光を浴び
	ることが許されているのであり、その道は同時に奈落への道とも同一であ
	るという現実も知っていなくてはならないのである。
	そもそも、「不幸なアイドル」という言葉は矛盾してしかるべきなのである
	が、それすら実は真実を語っている現実の一コマにしか過ぎない。

	そういう意味からしても、現実の世界には「ようこのようは太陽の陽」と
	いう女の子は存在しない。何故なら、彼女は・・・多くの渋谷のアリス
	たちの夢の結晶のような形としてのみその存在が許されており、実在して
	いないのである。たとえ、それが「ようこそようこの世界」であっても。

	架空の空間、架空の世界ですら存在できるはずがないようこ。

	しかし、私達は約1年にわたりようこを目撃してきました。「目撃して
	きた」ということがようこの存在理由であり、また、存在価値であった
	のではないでしょうか。
	「夢の戦士」ではなく、「夢を具現化するための戦士」として存在して
	いるからこそ、そして、「絶望という言葉」を知らないということ。
	
	ようこがどう展開して終結を迎えるのか私は全く情報を得ていないのです
	が、「アイドル」というものの存在は「典型的な夢オチ」であると思うの
	です。だから、ようことサキと社長と久美子と渋長とオモさんと・・・
	ようこそようこに出演してきた・・そして制作してきた側、見てきた側、
	全ての夢見る人々の本当の夢こそが、実は「アイドル」という言葉の意味
	であると。
	
	みんなが星空を目指し飛ぼうとする。
	むささびは滑空するのではなく自力で飛行したいと願う。
	人力飛行機は科学的根拠の無い動力で飛ばせたいと思う。
	みんなが魔女になりたいと願う。
	雪だるまさんは、自分が誰に呼ばれて出てきたのか知りたがった。
	そして、ようこはスターになりたいと願った。
	
	いつか、その夢は消えてしまう。夢がやってきて通り過ぎて行ってしまう
	のが渋谷という街。

	みんながそうして、また人混みの中へと消えて行ってしまうのですが、
	それでも「ギャルズ集合ハチ公前!」といった記憶は消えません。
	私達の側からすれば、「ようこそようこを通してアイドルという存在、
	渋谷という街を1年間見てきた」という記憶は消えないのです。
	
	「アイドルの魂って知ってるか。
	テクニックじゃない。叫びさ。
	自由や愛や友情への熱い心からの叫び。
	久しぶりに見たよ。本物のアイドルを。」

	「私はアイドルなんですね。アイドルって何ですか??」
	「踊るの大好きかな、歌うの大好きかな?
	ちょっとは泣き虫なのかも・・・」
	
	ある日、SHIBUYAという国境の街に一人の少女とむささびのムーが
	新幹線と山の手線を乗り継いでやってきました。女優志望のサキさんとい
	う大いたちとは何の関係も無い少女と一緒に。


	ひろみっく


	そして、田中陽子という少女は忘れ去られ、新たなるよっきゅんの伝説
	が生まれる。えり子は伝説になることが約束されていた存在であったが、
	ようこは自ら伝説となり得た最初のアイドルであった。

	占いハウスへようこそようこ・・・

	私達はこのアイドルを探しています。誰かこのアイドルを知りませんか?



		(これは、1/28以前に書いたものです。後編へ続く)