#42 Article 1854 Posted at 1995/01/03 04:58:19 by 鳥坂(細川)司 (MAP703) [KOMIKE]

Subject: Re: Re: コミオ /1853 /1851

マルチユニット型オペレーション・システム ASURA(アシュラ)

 J9グリフォンに搭載された、機種依存性の高いシステムであり、アシュラ・フ
ォーマットのデータを、他機種へ移植するまたは他機種から移植することは不可能
に近い。また、そのような行為は不要であると言える。
 その理由として、内部で複数のユニットに別れた、アシュラ独特のハードウェア
があげられる。ここで言うハードウェアとは、直接駆動部や信号系を指しているの
ではなく、「行動発思」と「逡巡推考」という論理回路のことである。

 従来、これらの処理は単一のCPU群によってソフトウェア的に処理され、見か
け上、自己完結した独立思考を保っているにすぎない。1台のコンピューターの中
において、ひとつのプログラムのふたつの部分が、非常に高速にスイッチングしな
がら、ひとつづつ処理されていると言う事である。(TSSではない)
 このようなシステムの場合、メインコンピューターは工業機械制御用の汎用品を
使うことができ、プログラムも機種ごとの違いがごく一部で済む。具体的には、駆
動部の形状差による最短移動距離算出及び接触防止のルーチンがそれにあたるが、
近年のようにオプション装着により、個体間の形状差異が大きくなる中では、いず
れソフト側で対応することとなる部分であるため、汎用コンピューターと汎用ソフ
トの組み合わせは、いずれレイバーの操作方法を統一することとなろう。
 このことはメーカーにとっては非常に好都合である。汎用による共有化で部品点
数やソフト量は減少し、設計コストは軽減される。また、単一アッセンブリーの大
量生産は、生産コストと設備投資も軽減することとなる。これらで節減されたコス
トは当然販売価格に反映され、性能の向上した新製品が旧型品よりも低価格で販売
されることになり、市場の拡大が加速するこことなるからである。
 このように「シンプル・イズ・ベスト」を具現した汎用機には、実は大きな落と
し穴がある。コンピュータの性能向上を上回る速度で、プログラムの複雑化が進み
、処理速度の低下がレイバーの行動を制限しつつあるのである。とくに、高機動性
を追求するような汎用レイバーでは、各種行動パターンのバンク化が進められてい
る。しかし、膨大な量のバンク・パターンの中から最類似のものを選択し、現在の
状況に合わせて最適化する作業はは、すでに工業機械用汎用コンピューターの能力
を越えているといってよい。

 この問題に対して、HOSはソフトウェア的な解決法を示した。神業的プログラ
ミングによる処理の高速化、イメージ・インデックス方式によるデータの高速検索、
複数のレイバーをネットワーキングした分散処理系の構築、さらに独自のオプチマ
イザによる個体格差の吸収。これらはパターンデータの共有化と操作法の統一を、
ハードウェアの追加無しで同時に実現している。

 ASURAでは、肥大化した機能を、「過去のデータにより行動を発想する」部
分と「発想された行動を過去のデータにより評価する」部分とに、ハードウェア的
に分割することで問題の解決を図っている。
 この「発想」すること自体は非常に画期的である。
 例を取って説明する。従来のオートバランス機構では、転倒しそうになった場合、
レイバーはバランスを保ち姿勢を復旧しようとする。ASURAシステムでは、人
間のように身をかわして、転倒を防ぐのである。その動作はオペレータの操作でも
過去のデータ照合でもなく、発思ユニットが発想したものだ。発思ユニットは様々
な方策を発想し、推考ユニットに送り込む。推考ユニットはそれを評価し、オペレ
ータに提示するのである。
 オペレータは、外部状況、機体へのダメージ、行動目的を総合的に判断し、AS
URAに指示を与える。
 しかし、これではオペレータの負担が非常に重く、脳波等生体電流による接続が
必要になってしまう。そこで、コオペレータ・ユニットを追加し、低レベル処理を
委任する事により、オペレータは「行動」を指令する事に専念できるわけである。
 これらユニットが三位一体で機能するのが、真のASURAシステムである。
 ASURAシステムを実現するためには、非常に高度な機体とコンピュータを用
意しなければならない。当然、OSも全く異なるものとなり、全くの独自開発とな
る。これらのリスクを負担して得られるのは、生物のようにしなやかなレイバーで
しかない。そして、その用途は非常に限られている。ASURAシステムの能力は、
現時点のレイバーに要求されている能力とは、非常に異なる種類のものであると言
えよう。

 初めてASURAシステムを搭載した「グリフォン」は、実験機的性格が強く、
高性能ではあるが、各種問題を抱えている。整備性の点では、実験機で調整が難し
いうえ、予備部品もほとんどが試作品であり、交換時の摺り合わせ等に時間がかか
るため、連続運用が難しい。また、アクチュエータ、SCB等に高い負荷がかかる
ため、冷却系を装備しており、稼働時間が短くなる原因となっている。

 バドの搭乗するプロトタイプでは、コオペレータ・ユニット用にデータを収集す
るため、生体電流接続の機能があり、ユニットはレコーダとして機能している。発
思・推考各ユニットの機能の一部も、オペレータが直接負担し、データの収集をお
こなっている。
 黒崎の搭乗したテストタイプでは、ASURAの運用試験がなされており、一般
的な行動においては、オペレータの負担は画期的に低減されている。
 これら2タイプの相違点は、機体ではなくコックピットとASURAシステムに
あり、工場でユニットを交換することで、機体を共用している。

 このように、ASURAとはハードウェアとOSが融合した「システム」そのも
のであり、高性能ハードウェア指向である。対するHOSは、汎用ハードウェアを
OSが管理する、高機能ソフトウェア指向である。正反対ともいえるこれらのアー
キテクチャが、城南大の古柳研という、ひとつの卵から生まれたということは非常
に感慨深いものがある。


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                             鳥坂 司