#148 Article 25568 Posted at 1997/03/07 07:14:06 by δ-WAVE (MAP5804) [STORY]
Subject: 凍える夜の炉辺語り
原作/アニメ/拙作の設定ゴチャ混ぜ、矛盾しまくりです。判ってます。ツッコマない で下さい(^^;;)。 「お鈴ちゃんの様子、どうです?」 冬の夕映えが斜めに差し込む保健室に、引き戸を開けて入って来るしいねちゃん。 "やっこちゃんが付いてくれてるから大丈夫だろうけど…"とは思ったものの、何か 心の中に引っ掛かる物が有って、教室掃除を早々に切り上げてここまで来てしまっ たみたいですね。 「9度7分。一応40度は切ったけど…。忍者の薬物耐性ってのも、こーゆー時は困り 物よねぇ。何とかここまで下がったのは、氷嚢と水枕のおかげ…って言った方が正 しいわね」 授業のノートを書き写す手を休めて、やっこちゃん顔を上げます。 おとといあたりから妙に上気した顔をしていたお鈴ちゃんが、うずくまる様にし て気を失ったのは5時間目の直後の放課の時の事。近頃流行のAぽんぽん型感冒ら しく、呼吸器症状だけで"大した事ない"と思っていると、急に熱が上がって昏睡状 態に陥ってしまうのです。抵抗力の弱い乳幼児や高齢者だとそのまま死んでしまう 事も有るため、風邪と言ってもバカに出来ません。 「解熱剤…もっと使ってみたらどうでしょう?」 「バカ言わないでよ( --)。この娘の体重でこれ以上打ったらショック死するわよ。 ただでさえ作用量と致死量の近い薬使ってんのに…。後は免疫力を信じて見守るし かないのよね」 「そんな危険な薬を…それに注射って…?」 「忍者が使ってる数少ない解熱薬の内で、手持ちの材料で合成出来るのはこれしか 無いの。経口投与だと胃酸と反応して効果が落ちちゃうから、結局注射が一番だし。 それで5分しか下がんないってんだから参るわねぇ…ああ、注射ね。大丈夫、あたし 正看の免許持ってるから」 い…いつ取ったんでしょう(^^;)?大魔王統治時代末期のどさくさを利用したんで しょうか? 「お鈴ちゃんの熱、下がった?」 空のごみ箱を抱えたまま、チャチャが保健室に顔を覗かせます。 「少しだけらしいです。理科室の掃除は終わったんですか?」 「うん、これ置いてきたら終わり。当番で出てきてるの、あたし一人しかいないんだも ん。…なんかお鈴ちゃん、さっきより顔赤くなってない?」 「こら!埃まみれの手で触るんじゃない!さっさとごみ箱片づけて手洗って来なさ い。それと、ラスカル先生と園長先生に『今夜はあたしもここで泊まりになるから』 って伝えといて。今この娘動かすと危ないのよ」 「はぁい…」 「あともう一つ…しいねちゃんも、ちょっとの間ここ外してて」 「え?何で…ですか?」 「この分だと朝まで意識は戻らないだろから…おむつしてあげないと」 「ああ、それで……おむ!?(*゚゚*;)」 夜がふけて来ました。満天の星空の下は放射冷却で気温は氷点下。からっ風が時折 遠くの窓を鳴らす音が響いて来ます。保健室の大きなダルマストーブの中では石炭 が赤々と燃え、その上ではやかんがしゅんしゅんと湯気を立てています。 ラスカル先生は夜中に見回りで寄る程度で、保健室でお鈴ちゃんのそばについて いるのはチャチャとしいねちゃん、そしてやっこちゃんの三人だけ。4年前の小流行 の時にかかっていて、免疫が出来ているから大丈夫だろうという事で、居残りを許 されたのです。リーヤとポピィ君はこの条件ではねられて帰宅を命ぜられ、マリン ちゃんは「ナミに感染るといけないから」ってな言い訳でリーヤに続いて下校。 最大の問題が鈴之助/やん太君でしたが… 「じゃかっ☆」 というコッキング音を聞かせただけで、大人しく帰ってくれました(^^;)。 お鈴ちゃんの容体は、相変わらず39度台の後半に張りついたまま。解熱剤を打った 直後は辛うじて38度台まで下がって、微かながら意識を取り戻すのですが、4時間位 たつとまた熱が上がってきてしまうのです。 「迷うわね…今すぐ医者を呼ばなきゃならないって熱じゃないだけに…。B・D・B (生体防衛機能総合増強剤)も、これ以上打つと後の反動が怖いし…」 薬の調合とその効果には絶対の自信を持つものの、病人を診た経験はあまり豊富 ではないやっこちゃん。やはり日の有るうちに、動かせるうちにお鈴ちゃんを医者 まで連れて行くべきだったのでは…という後悔が、隠そうとしても顔に出てしまい ます。 「そんなに悪いんですか?…何ならぼくがひとっ飛び…」 「大~丈~夫っ!(^^;)。Aぽんぽん型は一晩寝込むけど、翌朝にはほとんど治って るモンなんだから。…ま、いよいよとなったらあたしが呼びに行くから、そん時はあ んたはお鈴ちゃんの側についてあげてて」 しかしそれも、"一晩保てば"の話です。高熱がお鈴ちゃんの体力を急速に奪いつつ あるのに気付かないやっこちゃんではありません。まだはっきりと自覚はしていま せんが…やっこちゃん、自分で責任を取る覚悟を決めたみたいです。 「…そうだよね。お鈴ちゃんちょっと重い風邪なだけだもん、すぐ治るよね。それに、 いざとなったらやっこちゃんが蘇生薬(エリクサー)持ってるもん」 相当眠そうな顔をしてますが、チャチャはとりあえずまだ起きています。 「あ!そうですね。さっすがチャチャさん(^^)!まぁ、お金の事は後で何とでも… やっこちゃん?」 やっこちゃんの周りの空気が、まるで鉛の様に重くなったのに気付き、しいねちゃ ん怪訝そうな声で振り返ります。 「どうか…したんですか?…まさかあれも忍者には効かな…」 「チャチャ…あんたあの薬の事、誰から聞いたの?」 やっこちゃんの声には僅かな怒気と…そして秘密の発覚を恐れているかの様な震 えが含まれています。 「え…だって、大魔王の城でしいねちゃんに使ったんでしょ?前にお鈴ちゃんから 聞いたの」 ↑↑(参照)Art.22528 やっこちゃん、苦虫を噛み潰したような顔で「口止めしといたのに…」と呟いて、 「あんた、それをセラヴィ様にチクッたりしてないでしょね!?」 「してないよぉ…でも、あたしも生き返しの魔法使えるようになりたいって先生に 言ったら、『チャチャには使えません』ってそっぽ向いちゃったの。そのあと何度 もおねだりしたんだけど…そのたびにはぐらかされちゃうのよ」 「そう…よかった。とりあえず、うちで作ってる事は知られてないのね…」 「ぼくのお師匠様も、同じような事言ってました…『生き返ってくれたのは嬉しい んだけど…あんな薬、存在しちゃいけない』んだって。人を生き返すんだから、いい 魔法の筈なのに…なぜか暗黒魔術に分類されてますよね」 やっこちゃん、自分の家の代々の仕事の名誉と、家訓でもある守秘義務とを天秤に かけた末、こう切り出します。 「蘇生薬は…忍者にも効くわよ。だってあれは……薬じゃないんだもの」 「それって…一体どういう事です?」 「薬の瓶の封を切って中の液体を取り出して分析したとしても、大した事は判んな いでしょうね。確かに、止まってる心臓を無理矢理動かして、神経細胞にショックを 与えて活性化させる為の成分は入ってるけど…それで生き返るのは"死にかけてる" 人。あの時のあんたみたいに、既に死神のお迎えが来た人には何の効き目も無いわ」 「それじゃ…今ぼくがここにこうして生きているのはどういう訳なんですか!」 「そうね…自分がどういう薬を使われたか、あんたには知る権利が有るわね。どう せチャチャは説明を聞いても判りゃしないだろうし…」 ためいき、そして微かに浮かぶ苦笑…"ほーら、やっぱり秘術をバラす羽目になっ ちゃった"と言いた気な表情で、やっこちゃん外の風切音が止むのを待ちます。 「蘇生薬(エリクサー)は…人の命そのものなのよ」 MAP5804 続きます DELTA_WAVE