#148 Article 22723 Posted at 1995/11/01 07:28:33 by DELTA (MAP5804) [STORY]

Subject: Re: 約7年後 /22719

§2

  (これでまた二三日はリーヤの話が続くのか…)
  謁見の間の前でリーヤと別れた次官補、名残り惜しそうに閉じられた扉を見つめた後
 踵を返します。チャチャの見せた嬉しそうな笑顔が、少しだけ心を締めつけます。
  (結局今回もしいねちゃんの話しかしてくれないんだろうな…)
  扉が閉まった瞬間のチャチャの寂しそうな顔に気付く青年将校。
  (あたしと話してても面白くないのかしら?リーヤの時もしいねちゃんの時も、何か
 つまらなさそう。一週間に一回くらいしか三人いっしょにいられないからお互いの事
 教えてあげたいのに…)
  子供の時と同じ感覚で三人の関係をとらえている第一王女。まるで「どちらを選ぶか、
 それとも全く別の人との政略結婚に甘んじるか」という選択を恐れているかのようで
 す。弟が生まれてからはいっそう王女として、そして姉として振るまう事を、誰からと
 もなく要求されているような気がして、「少女のままの心でいたい」という無意識から
 の要求との間でチャチャの心は引き裂かれんばかりになっています。
  (待っているだけじゃだめなのかしら…でも二人のどちらかが告白してきたら選ばな
 きゃいけない…そんなのできない…)
  次々と勲功をあげる青年将校と未来の宰相…王女としてもどちらも失う事のできな
 い存在です。
  (ぼく以外にチャチャさんを幸せに出来る男はいない!…でも…ぼくは…魔族の子な
 んだ。それに今、伸び切った防衛線を支えられるのは"不死身の銀狼"しかいない)
  (「おまえから言い出せ」だとぉ!?出来るわけないじゃねぇか!獣人が王城に入ってる
 だけで嫌な顔する連中をどうやって押さえたらいいんだよ?大体"1001人目のドラゴ
 ンマスター"が城からいなくなりでもしたら、軍の士気は瓦解する!)
  そして三個艦隊に匹敵する海上防衛力と、兵力換算不可能な情報収集力…いずれが欠
 けてもチャチャのいる王城は危険にさらされます。三人が互いの事を思いあい、ライバ
 ルとして高め合ってきたが故に陥った千日手。
  はたしてチャチャは「女の悦^H喜び」を知らずに年老いてしまうのでしょうか?

  「いらっしゃ~い!あら、お鈴ちゃん」
  帳簿付けの手を休めて顔をあげる女主人。昼日中のこの時間帯は、夜間よりむしろお
 客が少ないのをお互い知っているのです。
  「やっこさん…あの…例の薬を…」
  「お鈴ちゃん…あたしも商売だから売ってはあげるけど…この薬、そろそろ止めた方
 がいいわよ」
  「でも、これがないとしいね様に迷惑が…」
  あきれ顔で溜め息をつくやっこちゃん。
  「前にも言ったと思うけど、『一時的に』じゃなくて『永久に』赤ちゃんの出来ない
 身体になっちゃうのよ!十年以上飲み続けた人のほぼ半数が…」
  「まだ二年目です!…大丈夫、やっこさんの薬の安全性は確かですから」
  「全く…言っちゃえばいいじゃない!『子供ができました、結婚して下さい』って…」
  「できません…やっちゃいけないんです」
  代金を置いて立ち去るお鈴ちゃん。悲しげな笑みがドアの向こうに消えました。聞こ
 えないのを承知で外のポニーテイルに女主人が呟きます。
  「マリンは…上手くやったのに…」


   MAP5804 やっぱしツラい DELTA_WAVE
P.S まだ状況説明部だったりする。で、やっぱしやっこちゃんメインの話になるみたい
P.P.S 「十年以上飲み続けた」ら、そろそろ三十路ですね。どの道不妊率や奇形率は高く
     なっちゃいます