#148 Article 22214 Posted at 1995/10/16 12:50:26 by DELTA (MAP5804) [STORY]

Subject: Re: Re: 大やっこちゃんホーリーアップ?! /22213 /22212

「…セラヴィ、あんたの解呪薬って遅効性なの?」
   薬を飲んで既に30分、やっこちゃんには依然何の変化も現れません。怪訝そうな顔を
  して尋ねるどろしーちゃん。帰って来ていたチャチャが代わりに答えます。
   「そんな筈ないよ。便秘薬以外はすぐに効果が出るように作るのが普通だよ」
   「認めたくありませんが…失敗したかもしれません。やっこちゃんの実力を甘くみて
  いたようです。もう一度やってみましょう。中和の同調精度を上げれば今度は大丈夫
  の筈です。八重…じゃなかったやっこちゃん、使った薬品とその量を出来るだけ詳し
  く書いて下さい」
   この時までは楽観していたやっこちゃんも、レシピを受け取ったセラヴィの「"ビッ
  グナッツ"…これは何なんですか?」という質問で、事態が予想より深刻だと気付いた
  ようです。
   「あの…異世界にいる妖精からもらった物なんです…大人になる作用があると言っ
  てました。それが…何か…?」
   セラヴィは頭を抱えてしまいます。物理法則の異なる世界の魔法アイテムが、こちら
  の世界で正常に機能する保証は無いのです。しかも他の薬品と作用させて、こちらの
  世界の魔法で変成させて作った物を飲んだというのです。
   「よく…生きていましたね」
   「副作用で死ぬかと思いました」
   「やっこちゃんいっけないんだ~。異界ゲート屋さんってお客もつかまるんだよ!」
   しゅんとしているやっこちゃん、チャチャの言葉にも珍しく言い返せないでいます。
   「とにかく、うちらのギルドの不祥事として表に出る前にもみ消さないと。魔力暴走
  でこの国を死の大地にしたくないしね」
   どろしーちゃんが仕切ります。セラヴィに協力する気のようですね。
   「やっこちゃんなら年中暴走してるよ」
   「そうじゃなくて…あたしもさっき気付いたんだけど、マナの流れがこの娘に集中し
  始めているの。いつもより魔法が強力になっているから自分でも察しが付いてる筈よ
  ね。この娘のキャパシティがどの位の物か判らないから正確な事は言えないけど、あ
  たしと同じだとしても明日の今頃には臨界に達するわ」
   臨界に達した後どうなるのか、という疑問をセラヴィが引き継ぎます。
   「集中したマナが自己発火し、同時相転移でエネルギーに変われば、半径1000km近く
  が焼け野原。マナを消費しようと魔法を使えば、それがさらにマナの流入を増加させ
  …やがて自分で扱えるレベル以上の呪文を唱えてしまって破滅です。急ぎましょう、
  今夜がヤマです」

   セラヴィは地下室から魔法大百科辞典を運び出して来て"ビッグナッツ"および"魔
  法薬に使われるナッツ類"の条件で検索魔法をかけます。どろしーちゃん、他のギルド
  や国の司法に悟られずに集められる限りのエタニティ・シャードをもって来てくれ
  ました。どろしーちゃんに呼ばれてやって来たしいねちゃんは食事の支度その他の雑
  用係をおおせつかります。チャチャは青い顔をしてぶるぶる震えているやっこちゃん
  のそばについているように言われました。魔法使い以外には、この五人以外には秘密
  がもれぬように作業を進めなければなりません。
   しばらくたって、どろしーちゃんが検索作業の手伝いに呼ばれました。少しおいて、
  しいねちゃん。最後にチャチャまで夜半すぎにかり出され、やっこちゃんは一人で残
  されました。はかどっていないのでしょうか?やっこちゃんは隣室へ通じるドアを少
  しだけ開いて聞き耳を立てます。
   「セラヴィさん、これで五回目です。他の検索キーは無いんですか?」
   「"異世界"と"花魔法"です。これでだめだと…あとは"種"くらいしか…」
   「…やっこちゃん、助からないの?そんな事ないよね?ね?」
   「縁起でも無い事言うんじゃないわよ!あたし一人になっても最後まで悪あがきし
  てやるんだから!」
   どおおぉぉん!
   遠くで衝撃音がしたのを聞いて、どろしーちゃんほぞを噛みます。
   「しまった…チャチャだけでも残しておくんだった…」
   既に隣室はもぬけの殻。チャチャはやっこちゃんを追いかけようとしてセラヴィに
  止められます。
   「解呪方法を探すのが先です!やっこちゃんの行き先は大体判っています…」
   みなが机の上の置き手紙に気付いたのは、翌朝になっての事でした。

   「逃げなくちゃ…出来るだけ遠くに…人も生き物もいない所に…」
   そしてセラヴィに迷惑がかからない所に…。超音速巡航で国境を三つも超えれば、そ
  こは草一本生えていない砂漠地帯。岩山の頂上に腰を下ろし、ウィル・オー・ウィスプを出して
  かばんの恋文を読みます。
   「…さっすが上級生、ちゃんと韻を踏んだ詩を書けるのね。でも本文はありきたりだ
  わ…次は…あらピッケル君。全然変わってないのね~、もうちょっと自分に自信持っ
  たら?大体、女の子はあたし一人じゃないんだから…」
   声に出してツッコミを入れながら読んでいると、東の空が明るくなってきました。置
  き手紙はもう読まれたでしょうか?チャチャに、マリンに、しいねちゃんに、どろしー
  ちゃんに、お鈴ちゃんに、その他思い出せる限りの人々に思い出せる限りの事を謝っ
  た後、最後にセラヴィに
   「初めて会った時から本当に、本当に大好きだったんです」
  と綴っておきました。死んだ後まで"いやな娘"だと思われたくないという気持ちもま
  あ半分はありますが、セラヴィへの気持ちだけは100%本物です。
   「やっぱり…キス、しときたかったな…」
   しんみりしかかるやっこちゃんですが、お腹の虫がぐうと鳴いて見事にムードをぶ
  ちこわしてくれます。
   「んとにもう、死ぬ間際だってのに…」
   食べても食べなくても結果は同じ。なら何か食べようという事で、かばんの中を探し
  てみると、お母さんがおやつに焼いてくれたクッキーの包みが有りました。多少しけ
  っていますが、この際しかた無いでしょう。
   「いただきま~す」
   **POMっっ!!**
   最初の一個を飲み込んだ大やっこちゃんの身体を煙が纏います。その中から現れた
  のは、だぶだぶの服に身を包んだ13歳のやっこちゃん。広く開いた胸元にちょっとだ
  け"おばさんブラ"がのぞいています。
   「母さんたら…それでリトルナッツの瓶が空だったのね…」
   怒ったふりをしていますが、口元の微笑みは隠し切れません。ナッツの入ってないの
  をより分けて、昇る朝日を眺めながら食べるクッキーは、とってもとってもおいしそ
  うです。

   いつもなら登校しているやっこちゃんが、今日はまだいません。チャチャとしいねち
  ゃんは虚脱感と悲しみのいりまじった表情でやっこちゃんの席を見つめています。勘
  のいい子は何があったのかうすうす気付いているようで、バナナ組は重苦しい空気に
  包まれています。
   「なあチャチャ、やっこちゃんあれからどうなった?」
   リーヤの質問にチャチャは答える事が出来ません。
   「休んでるだけだよな?明日かあさってには出て来るよな?」
   「そうです!世界で一番目と二番目の魔法使いがついてるんです、やっこさんきっと
   元に戻れます!」
   「お鈴ちゃん…」
   ようやく重い口を開くしいねちゃん。
   「ぼくは今まで魔法に不可能は無いと思っていました。人間の精神で完全に制御でき
  る無限の力だと…。二つとも…間違いでした。なぜ"禁呪"という物があるのか、なぜ師
  匠について修行しなければならないのか…考えた事も無かった。魔法の力というのは
  本当はとてつもなく危険で巨大なもので、それを今まで何万人もの魔道士が何千年も
  かかってここまで安全に、簡単に使えるようにしてきたもので…ひとたび牙を剥けば
  大陸一つが消えてしまうほどの力があるんです」
   カラ~ンコロ~ンという予鈴が、今日はお弔いの鐘に聞こえます。
   「チャチャさん…」
   しいねちゃんが促すと、チャチャはお花の束を出してやっこちゃんの席に置きます。
  一回で出た事を揶揄する人はここにはいません。…今来るのですから!
   「滑り込みセ~フ!!」
   聞き慣れた声にみんながぎょっとして入口を振り向きます。
   「何なのよ、幽霊でも見るような顔して…」
   「足は…あります」
   すかさず確認に走るお鈴ちゃん。
   「(くんくん)だれかの変身でもないみたいだぞ」
   「まさかセラヴィさんが魔法で作った…」
   「ホムンクルスでもないわ。本家本元オリジナル、黒ずきんのやっこちゃんよ!」
   「やっこちゃん…やっこちゃんだ…やっこちゃんだやっこちゃんだやっこちゃんだ
  やっこちゃんだやっこちゃんだやっこちゃんだやっこちゃんだあああぁぁぁ(ToT)」
   マントにすがり付いて泣きじゃくるチャチャ。みんなといっしょにもらい泣きしそ
  うになるやっこちゃんですが、ここはぐっとこらえて、
   「あ゙~もう、暑苦しいから離れなさい!こらマントで鼻水を拭くんじゃない!よだ
  れをたらして寝るな~!!」

   女子トイレの洗面所で涙と鼻水と涎まみれになったマントを洗っていると、マリン
  ちゃんがやって来ていきなり後ろから抱き締められます。
   「や~っこちゃん!」
   ふにっ!(背中では「ふかっ!」)
   「…ったく、女子校じゃないんだからそーいうのは止めなさいって!」
   「へっへ~だ!あたしの勝ちぃ!!」
   Vサインを高らかに掲げて足どり軽く去ってゆくマリンちゃん。
   「誰があんなろくでもない事教えたのかしら?…胸に行ってる栄養少しは頭に回しな
  さいっての」
   漆黒のマントをぎゅっと絞ってパン!と広げて…どうやらシミになる前に汚れは落
  ちたようです。日なたに干せば、帰るまでには乾くでしょう。
   鏡の前で身だしなみを整えたやっこちゃん、百面相の後こんな事を呟きます。
   「一枚位、写真撮っときゃよかったかな」

   ピンボケでよければピッケル君が持っています。


  MAP5804  やっこちゃんは"ふくらみかけ"が一番  DELTA_WAVE