#148 Article 22212 Posted at 1995/10/16 12:48:19 by DELTA (MAP5804) [STORY]

Subject: 大やっこちゃんホーリーアップ?!

副題:「紳士はブルネットに恋をする」(笑)

   「うえ、にっがぁ~い!Xb」
   試作品の自己人体実験ですから覚悟していたとはいえ、やっこちゃんあまりの不味
  さに顔をしかめます。
   「緩衝溶液で十倍に薄めてるのに…こりゃ商品化は無理ね」
   もっとも、最初は自分一人で使う為に作った薬なのでそれでもいいのですが…
   今回やっこちゃんが作ろうとしている薬は「金髪クリンクリンG」。度重なるアタッ
  クにもかかわらず自分の方を見てくれないセラヴィに対するやっこちゃんの切り札
  であり、悲しい結論でもあります。
   (「あたしも金髪の巻毛だったらあるいは…」)
   親からもらった身体を変えてまで愛する人を振り向かせようとするその努力を、子
  供ゆえの短絡思考と片着ける事は作者にはできません。
   (思うに、セラヴィにとってやっこちゃんは、初めて出会った時の「熊に追いかけられ
  て泣いていた小さな女の子」のまま変わっていないのでしょう。髪の色を変えてまで
  セラヴィを嫌いぬいたどろしーちゃんを許せるようになるまで時間が必要だったの
  と同様に、やっこちゃんの気持ちに気付いて答えてあげられるようになるまで、まだ
  しばらくかかりそうです。どう答えるかは私には判りませんが)
   「さあ、もう引き返せないわよ、やっこ。本当にこれでいいの?」
   鏡に写るやっこちゃんも、どうしたらいいのか判らない様子。「金髪クリンクリンG」
  を作ろうと決めた時から何度も何度も自問した事なのに、飲み干した今になってYES
  とはっきり答えられなくなってしまいました。
   「こんな事までして…それで捨てられたらバカみたいよね…」
   寒くもないのに震えが走り、微笑んだつもりの顔も何か悲しげです。「こうすれば必
  ずセラヴィ様はあたしを認めてくれる」などと考えていた自分が愚かに思えて仕方あ
  りません。そんな保証などどこにも無いのですから。
   もうすぐ根元から髪の色が抜け始め、朝までにはすっかり金髪になっている筈です。
  後はカール用のこてで縦ロールを作れば完成…なのです。しかし、鏡を見つめていた
  やっこちゃんは、別のとんでもない事に気付きます。
   「…チアノーゼ?」
   顔が、日に焼けてないというだけでは説明の付かない程白くなり、唇も紫色になって
  います。
   ドクン!
   不整脈です。頭痛まで始まりました。手を頭に当てようとして動かすと、関節に激痛
  が走ります。足に力が入りません。痛む身体に言うことを聞かせて膝をつき、それでも
  耐え切れず横向きに寝てしまいます。苦しそうに口で息をし、目を閉じています。
   (「あはは、失敗しちゃった…いつかこんな事やるんじゃないかって…」)
   さっきまで鼓動していた心臓の動きが今は全く感じられません。呼吸さえも肋骨の
  きしみと戦いながらでないとおぼつきません。
   強烈な耳鳴りと全身の痛みがフッと軽くなり、意識が段々薄れて行きます。
   (「あたし…死ぬのかな?…そしたらセラヴィ様、泣いてくれるかしら…」)
   やっこちゃんの記憶はここで途切れます。

   朝の日差しと小鳥のさえずりで、やっこちゃんは意識を取り戻しますホッ。全身の痛み
  は消えています。耳鳴りもありません。
   「朝だ…生きててよかった…」
   風邪の病み上がりのようなだるさは大分残っていますが、身体は一応動かせます。期
  待を込めて髪の毛を一本引き抜き、目の前に持ってきます。でも色は前と変わらず濃
  紫色。がっかりと同時に「これで良かったのよ」と自らを慰さめます。
   大量の冷汗と寝汗を吸ったせいか、下着と服がジメジメしています。おまけに…ズロ
  ースの股の部分が異常に冷たく感じられます。
   「ああ…(;。;)こんな姿、セラヴィ様に見せられないわ…」
   溜め息をつきながらやっこちゃんは立ち上がり、お風呂場に向かいます。汗を吸った
  服が身体を締めつけ、頭がまだフラフラするせいか床が妙に遠く感じられます。
   ドアのノブってこんなに低い所にありましたっけ?
   風呂桶に水をはり、いつもどうり火球(ファイヤーボール)の呪文をかけたやっこちゃん、温
  度を見ようと手を入れて、思わぬ熱さに驚きます。加減を間違えたのでしょうか?
   熱湯を捨てて水をつぎ足し、ようやく適温になりました。服を脱ごうとしましたが、
  何故かぴっちり張り付いて脱げません。どうせ全部洗濯してしまうのだからと、魔法
  で直接脱衣籠に飛ばしてしまいます。
   「あら…何か…ぷるんって…胸が重い…?…!!」
   下着で締め付けられていた時は気付かなかったのですが、やっこちゃんの胸にはた
  わわに実った見事なバストが誇らしげに存在を主張しています。胸だけではありませ
  ん。細くくびれたウェストから上を向いたヒップ、そしてすらりと長く大理石で出来
  ているかのようなおみ足へと続く芸術品の様な曲線美。そのスタイルはどろしーちゃ
  んに優るとも劣らない…いえ、若々しさに重点を置くなら今のやっこちゃんの方が上
  でしょうタレテナイモンネ。均整のとれた発育を遂げたその姿は、ひいき目でなくヴィーナス
  の再臨です。
   「な…何じゃこりゃあああぁぁぁ!!!」
   …これさえなければ。

   いつもなら静まり返っている筈のバナナ組のホームルームの時間ですが、今日に限
  ってざわめきが止まりません。ラスカル先生は無視して出席を取ります。
   「…やっこちゃん」
   「は~い!」
   周りと比べて場違いに背の高い、少女と呼びうる最高年齢近くの娘が、やっこちゃん
  の席に座って手を上げています。紺のリボンでまとめた、腰の辺りまである黒紫色の
  豊かな髪が、かすかに揺れます。
   「やっこちゃん、いないのか?」
   「だから、ここにいますって!」
   「…やっこちゃん、欠席…と」
   「先生~、いいかげんボケるのは止めて下さい」
   「本当か?本当~に本当だな?トレードマークの黒ずきんをかぶってなくても君は
  "黒ずきんのやっこちゃん"だというのだな?」
   ラスカル先生のドアップに、やっこちゃん少しも動ぜず、
   「仕方ないから今日は母の服を着て来たんです。似た色を探したんですが、寒色系は
  これしか無くって」
   一気に騒然となるバナナ組。みな口々に質問を浴びせます。
   「スピリッツ系モンスターに加齢攻撃でも受けたんですか?!(ぼくだってダンジョン
  攻略はまだなのに…)」
   「やっこさんのお姉さんじゃなかったんですか?」
   「あせった~、今日は父兄参観日かと思ったぜ」
   「…あたしのマネしてる…マジカルプリンセスより胸大きい…ガーン」
   やっこちゃん、「まあまあ」と押さえるしぐさをしながら、
   「お爺ちゃんには参ったわ。ゴールデンナッツとビッグナッツ(#109)の瓶を落として
  割っちゃって、その時に混ざっちゃったみたいなの。副作用のキツかった事といった
  らなかったわ。おまけにあのナッツって見分け付かないでしょ、全部廃棄しなきゃな
  らなくなったの。またあの茄子の妖精に頼んで分けてもらわなきゃ」
   いつもの声より落付いた、低めのトーンで("ドスの効いた"でわない!)話すやっこ
  ちゃん。表情もノーブルで柔らかめです。もちろん、語りの背景画には、お爺ちゃんが
  怒られた末、足蹴にされている回想シーンが写されています。お爺ちゃん、とうとう
  薬品庫に立入禁止にされてしまいました。
   リーヤとしいねちゃん、顔を赤らめて見とれていますね。嫉妬したのか、ぷーっとふ
  くれたチャチャに耳を引っ張られて我に返ります。

   口コミの伝達速度というのは凄いものです。次の休み時間までに、このバナナ組の
  "きれいなお姉さん"の事は学園中に知れ渡っていました。元がやっこちゃんだと知っ
  て二度びっくり、バナナ組に実物を見に来て三度びっくり。
   (「ちょっとちょっとあんた、まさか夢オチとか、死に際の幻覚オチとかにするんじゃ
  ないでしょね?!」)
   いえいえ、そんなことはしません。代わりにもっと恥ずかしがらせてあげます。
   バナナ組の廊下にすずなりになった男子生徒達を見て、やっこちゃん戸惑っていま
  すね。一挙手一踏足に注目が集まり、リップクリームなど付けなくとも桜色に輝く唇
  が動く度に廊下で溜息がもれます。ちょっとでも微笑もうものなら「後、押すな~!」
  の怒号。ちなみにピッケル君は、この押しくらまんじゅうの中で身動きが取れなくな
  って、酸欠でのびてます。
   「どいてどいて~!はいそこ邪魔よ!」
   人の波を強引にかき分けてマリンちゃんがバナナ組に登場です。
   「やっこちゃんね?!あたしと一緒に来て!」
   「何よいきなり…って、わ!ちょっと、どこに…」
   どこにそんな力が有るというのか、マリンちゃんはやっこちゃんの腕を引っ張って
  廊下の人混みの中を突き進み、女子トイレに駆け込みます。ぴしゃりと扉を閉じてし
  まえば、もう男どもは入ってこれません。他の女の子も。
   「…あ…ありがとマリン。逃がしてくれたのね?」
   閉ざされた扉の前でしばらくじっとしていたマリンちゃん、ゆっくりと顔を上げま
  す。頬は上気し、潤んだ瞳で上目遣いにやっこちゃんを見詰めて、二三度まばたきなん
  かしています。いつの間にやら背景も無粋なトイレから百合の咲き乱れる花畑になっ
  ています。
   「何よ…何なのよこの演出わ~!」
   「やっこちゃん…やっと二人きりになれたわね…」
   手を胸の前で組み、マリンちゃんが歩み寄ってきます。距離を保って後ずさるやっこ
  ちゃん。ぞぞ~っと血の気が引くのが自分で判ります。十歩も下がるとそこはもう壁。
  後がありません。
   「やっこちゃん、お願い!」
   …ぐみゅっ!
   マリンちゃん、両手をやっこちゃんの胸に押し当て、にぎにぎします。やっこちゃん、
  頭に血が逆流し、真っ赤になった顔で、
   「な…な…なんばしょっとかああぁぁぁ!!」
   突き飛ばされたマリンちゃん、手の平を見つめ、はらはらと落涙しながら呟きます。
   「…やっぱりあたしより大きい…追い越されちゃった…シクシク…」
   「だからこれは、偶然出来た薬のせいだってば!」
   「やっこちゃん!!」
   再び星降る目を向けるマリンちゃん。
   「はい~?(^。^;)//」
   「"はんぺん"が要り用だったら、今度こそあたしに言ってね」
   マリンちゃん、どうしても"女の子のひ・み・つ"を分かち合いたいみたいですね。

   「やはり。…『ともだち光線』が出ています。道理で…」
   ミラーサングラスを浅くかけたしいねちゃん、手元の水晶球を見ながら解析です。
  鼻を洗濯ばさみで挟んでいるのでどうしても鼻声になってしまいます。
   「『ともだち光線』ってなあに?」
   と、これはチャチャ。同じく鼻に洗濯ばさみをしています。
   「花が人間その他の生き物に向かって出している不可視性の光線で…つまり、やっこ
  ちゃんには強力な魅了(カリスマ)の魔法がかかっているのと同じ事になるんです」
   「まったく…なんでそんな迷惑なモン出すのよ!あたしまで変な気を起こす所だっ
  たじゃないの!」
   鼻にティッシュを詰めたマリンちゃん、光線が目に入らないようにやっこちゃんと
  背中合わせで悪態をつきます。
   「大きくなって、きれいになって、その上魅了の魔法ですか…。凄い薬作りましたね。
  (やっこちゃんにだけ聞こえるように)買えないと思いますけど、いくらするんです?」
   何故かお鈴ちゃんだけ鼻をふさいでいません。
   「だから、あれは偶然出来たのよ。ビッグナッツとゴールデンナッツとの配分が判らないから、も
  う一度作れと言われてもたぶん出来ないわ。それに猛烈な副作用も有るし、効果がい
  つまで続くかも判んないし…」
   話しているうちに、今朝のあの事に思い至るやっこちゃん。
   「ねえ、何でみんな鼻を塞いでるの?あたし何か匂う?」
   お鈴ちゃん以外の視線が集中し、仕方無くしいねちゃんが解説に入ります。
   「『ともだち光線』だけじゃなく…フェロモンも出てるんです、やっこちゃん」
   カメラが横にパン、鎖につながれた犬リーヤを映します。ハートの目をしてさかんに
  発情のうなりをあげていますねぇ。股間にはモザイク処理。
   「あらやだ」と言いたげに口に手を当てるやっこちゃん。「あっちゃ~」という顔の
  チャチャ。「けだものめ!」と頭をかかえるしいねちゃん。お鈴ちゃんだけ意味が判ら
  ず、きょろきょろしています。
   体側線でも匂いを感じてしまうマリンちゃん、座り心地が悪いのか、お尻をもじもじ
  させています。どうしたのでしょう?ウォレットを覗いて替えのナプ○ンの枚数を確
  認していますね。小声でこんな事も言っています。
   「何でやっこちゃんなんかにときめくのよ~(;。;)」


    果たして、やっこちゃんは元に戻れるのか?待て次Art.!
   MAP5804  濡れ場は(たぶん)ありません  DELTA_WAVE
P.S  「なんばしょっとね!!」の方が正しいのでせうか?あやふや