#140 Article 2300 Posted at 1994/07/01 16:46:33 by ゆ~さく (MAP1754) [STORY]
Subject: Re:*48 小説『熱血最強ゴウザウラー』/"もう一つの最終回" /2299 .............. /1822 /1821
8 焼け焦げた大地。 草も気もなぎ払われ、太陽の様な信じ難い高温で焼き払われたそこには 動く物の影とて無い。 そこここに金属片らしき物が転がっている。辺りは異様な匂いで包まれている。 ちょっとした小屋程もある、表面が焼けただれた丸い物体が転がっている。 言うまでも無くキングゴウザウラーの首。 熱血最強だった頃の頼もしい見上げる様な威風は、今や見る影も無い。 と、空間に青白い丸い球体が現れた。周囲が蒼い澄んだ輝きに照らされる。 その青さ、みずみずしく深く明るい胸に滲み入る青さ…。 それは何かの青に似ていた。 そうだ、地球の青だ。 球体は辺りの大気を緊張するかの様に震動させる、しかし生命ある物に取って 不思議と耳に優しい発振音を響かせつつキングの首の真上まで来ると、 ふわりと膨らんで人の姿になった。 大地からの使者、エルドラン。 「済まない、地球の少年達よ…恐ろしい思いをさせてしまった。 しかし私にはどうしようもなかった。許して欲しい」 答える者の声は無い。 「地球は、過去30億年のその歴史上すべての時代において狙われ続けて 来たのだ。幾度もの侵略に対して全ての時間上で私は戦い続けて来た。 しかし限界がある。種として成長しつつある人間に、君たちに協力して 貰わなければ過去最大の敵…機械化帝国の侵略は防ぎようが無かったろう」 青白く光る人物はその輝きを増す。 「私はすべての時間において戦い続けている。永遠、永劫の戦いだ。 君達の苦しみを救おうと駆けつけて来たのだが、間に合わなかった。 済まない。 私は全ての時代、全ての時間から地球の生き物達の生命エネルギーを 少しずつ集めて来た。30億年の地球の歴史に現れた全ての生き物の 生命の集大成、それがゴウザウラーだ。 姿形は君達の文明に合わせて扱い安い様に機械の姿を模してはいるが …実際は生命そのものなのだ」 「今、砕け散ったキングゴウザウラーの生命を、君達の身体に宿そう。 キングゴウザウラーは君達の身体の中で、君達と共に生き続けるのだ」 青い光に呼応するかの様にキングの首が輝き始める。首だけでは無い。 辺り一面に飛び散った金属片が、機体の一部が、石ころの様な小さな 物までが全て輝き、ル…という優しいハミングを立てて揺れ始めた。 戦場…キングの生命を奪った、焼け焦げ破壊し尽くされた大地全体から 蜂鳥の羽音の様な軽い音を立てて、キングゴウザウラーの身体の部分部分が 跳ね飛ぶ様に集まって来る。 キングの首は、青い輝きに溶け込みつつあった。 そこへ無数の光が集まって来る。跳ね飛ぶ様に、群れ飛ぶ様に。 集中する生命のエネルギー。楽しげに舞い、周囲を回り、弾け、歌う。 青い光の中心に18人の少年少女達の姿が折り重なって現れて来た。 「君達が子を産み、育て、満足のいく一生を終えるまでキングゴウザウラー だったものは君達の生命と健康を守り続けるだろう。そして君達が土に 帰る時、それは再び飛び立って集まり、次代を築き守っていく新たな 少年達の手へ渡されるのだ」 「機械化帝国は去った。彼等の中央部へ通じる連絡は私が阻止した。 ここ地球に再び彼等の手が回って来るまで数百年はかかるだろう」 「君達はよく戦ってくれた。これからは人間としての幸福をつかんで欲しい」 光りが弾けた。輝きは黒い荒野一面に拡がる。 30億年間に地球上に現れた全ての生き物のエネルギーの集成。 想像も叶わぬほど膨大な量のそれは、少年達の生命を再生するに留まらず 焼け焦げた山々全体に波及し、荒れた大地を覆い優しい波動で包んだ。 そこここから緑の芽がふく。 黒い大地は、再生した若々しい生命に覆われつつあった。 「私は帰ろう。全ての時代で侵略を受けている、全ての生き物を守らねば ならない。さらば、地球の少年達。君達は君達の住むこの時代を守った」 「確かに守ったのだ」 青い輝きはオーロラの様に、大地へ、空へと拡がった。 合唱の様なものが聞こえる。生命の賛歌。生きとし生けるものの謳歌。 力強く優しく雄々しいそれは、大地を、地球自体を震わせた。 奇跡は着実に行なわれ、そして去っていった。 輝きが収まった時そこには既に光る人影の姿は無かった。 やがて。 優しい春の光が辺りには満ち満ちている。 暖かい。 いい匂いがする。小鳥の声がする。近くで仲間の寝息が聞こえる。 いま俺が枕にしているのは誰の手だろう。誰かの足が横腹を小突く。 痛ぇな。まぁいいか。 陽光が眩しい。くそ、もうちょっと寝ていたいな。 決して疲れてるんじゃない。 むしろ生まれ変わったみたいに身体中が活き活きと調子がいい。 でも、なんかいい気持ちなのでもうちょっと寝ていたいや。 太陽の光が身体中に滲み入る。 暖めてくれる。 そして隣に居る仲間からは、枕にしたり上に乗ったりしている手や 足から肌の暖かさが、生々しいくらいの生命の鼓動が伝わって来る。 それは暖かいというよりは、むしろ熱い。 ああ、いいな。仲間がいるって。生きてるって、やっぱりいいな。 なんだか、これから何でも出来る気がするな。 目が覚めたら、真っ先に何をしようか。何をやってやろうか。 一羽の蝶が舞って来て鼻先を優しくくすぐった。 「ぶぇっくしょん!」 飛び起きる拳一。 その声に誘われるかの様に一人、また一人と少年少女達は起き上がった。 「なにこれ」 「すっげーっ…」 少年達の周りは一面の花畑。見渡す限り山裾まで春の花々が咲き乱れていた。 そのど真ん中に彼等は寝転がっていた。 「エルドランの声、聞いたよな」 「ああ」 互いに顔を見合わす少年達。 どの顔も活き活きとしてつやが良く、健康そうに見える。 「あーっ!あたしの手…」 エリーが、包帯を解いて片手を陽の光にかざした。 その手は産まれたての赤ん坊の様に、ぴかぴかのつるつるだった。 拳一の口の中も全ての歯が生えたての様に揃っていた。虫歯も治っている。 少年少女達は手を取り合って立ち上がった。 谷の出口の方から数機の何かが飛んで近寄って来る。 しかし今度は恐ろしい怪物の姿では無い。 防衛隊の双発ヘリだ。チヌークってヤツだっけか。大人達だ。 キャノピーの中に武田長官が、 そして胴体後方の窓には中島教諭の手を振っている姿が見える。 手を取り合った少年達の真上にヘリは集合し、ホバリングした。 その上の空は、抜ける様な青空。どこまでも続く、あざやかな青空。 春の陽光が輝く。 大地には溢れ返る生命が、これから駆け出してゆこうとする少年達を 両手を広げて歓迎していた。 彼等がこれから生きていこうとする、広くて活気のある舞台だった。 ---------------------------------------------------------------------------- <エピローグに続く> ゆ~さく。