#140 Article 1849 Posted at 1994/03/23 16:19:18 by ゆ~さく (MAP1754) [NOVEL]
Subject: Re:*5 小説『熱血最強ゴウザウラー』/"もう一つの最終回" /1848 ... /1822 /1821
3 「ザウラーズ、出動ォッ!!」 夜明けの春風小校舎に、エリーのヒステリックな命令が響き渡った。 薄明のぶどう色と薔薇色に染まった空を背景に、校舎が激しい震動を始める。 と、そのシルエットがみるみる解体し、組み替えられていく。 長方形の建物はピラミッドの様な角錐形に、そして外壁が収納され、にぶく光る 金属のボディに、手品のように置き換えられていく。 曙光が差し込む。 朝日に照らされたそれは、既に小学校校舎ではない。輝くノーズコーン。 コバルトブルーの翼が陽光を照り返しつつ起き上がり、胴体に接続される。 機体上部に巨大なエネルギーライフル・マグナバスターを背負ったその威容。 と同時に、朝日を遥かに凌ぐまぶしい噴射炎がその尾部からほとばしった。 ブラストの咆哮! ゆっくりと上昇を開始する。めくるめく震動と光の奔流のカクテル。 水蒸気の排気煙が、入道雲を凌ぐダイナミズムでちっぽけな校庭を覆い尽くす。 小さな山の様なその姿が残る校舎の屋上よりも高くリフトアップすると、 背中にたたまれていた翼が水平に展開を開始する。 エルドランの巨鳥は6年2組の少年達を乗せ、いま大地を蹴って飛び上がった。 「ザウラージェット、発進ッ!」 五郎がジョイスティックを引く。ロールを始める巨体。マグナバスターが 接続部を支点にぐるりと回転を始め、機体前部の格納位置に納まる。 背面飛行から姿勢を水平に移すと、目的地へ向けて勢い良く加速する。 時を同じくして体育館側からも大出力エンジンの雄叫びがあがる。 ザウラージェットをしのぐ全長を持ったグランジェットが、空に身を踊らせる。 パイロットの洋二は吼えるマシンを駆って、五郎の後を追った。 二羽の巨鳥はお互いの後を追いつ追われつ、凌ぎをけずるかの様に疾駆した。 一刻も速く、危機に陥っている目的地の街を目指して。 連絡が入ったのは朝の5時前だった。 機械化帝国と思われる敵の急襲を受けている、ザウラーズの緊急出動を要請する。 全員、寝込みを叩き起される格好で飛び出してきた。 「アレが来たの?」「判らない…」 互いに声を掛け合いつつ、この世にも珍しい使命を受けた少年達は、何かに 駆り立てられるように全力で、まだ夜の明けぬ薄暗がりの中に黒々とたたずむ 校舎に駆け集まってきた。 教室に飛び込むやいなや自分の席について発進準備よしを告げる者、 一方、不安そうに一塊になって説明を欲しがる数名の女子。 それらもいつになくヒステリックなエリーに急かされて、こうしてジェットを 緊急発進させて来たのだ。 「どーして攻撃のタイミングをもっと選べないのよッ! じょーだんじゃないわあたし達を何だと思ってるの! やっつけたと思ったのにしつっこいったらありゃしないッ! 陰湿だわ! きっとあたし達を寝不足にしようとこんな時間に現れたのよ! あ・た・しは夕べ遅くまでエクササイズやってくたくたなのよッ! 肌が荒れたらどーしてくれんの! シャンプーだってやってこなかったんだから髪だって寝ぐせのまんまで お風呂に入りたいコロンを付けたいも一回眠りたい き~~~~っ」 司令官席で一人暴れるエリー。 「随分荒れてるね、エリー」 指令部前方の通信座席からツーがおっかなびっくり振り返る。 「あのね、夕べ、はじまっちゃったんだって」 斜め後ろのレーダー手席から身を乗り出して囁きかける結花。 「あ、あたし余分持ってるよ。いつも机の中に入れてあんの。言っといて」 「あ~、おほん」 指令室内では絞ったつもりの声でも、インカムには入ってしまう。 腕のブレスからそんな内緒話を聞かされた五郎が、言いにくそうに二人を注意。 「女子諸君、作戦中なので私語は控えて」 結花とツーは真っ赤になった。 それは見た所、いつもの出動風景だった。 小学生の彼等は、必要以上に物事に順応するのが早い。 未知の宇宙からやってきた強大な機械軍団との戦闘も、死線をかいくぐる攻撃の 応酬も、1年間という大人の尺度より遥かに長い期間を戦い抜いてきた少年達。 熟練と自信が、既にそんな戦いの連続を、生活の一部にまで引き下げていた。 彼等はプロであった。 しかし、そんな彼等も、今日ばかりは少し様子が違う。 いつもの様に軽いやり取りをしつつも、何か気が焦っている様な空気が 指令室に、コクピットに張り詰めていた。 それは…その雰囲気は、大きく二つに分類できた。 もう終わったと思ったのに、また戦わなくちゃならないなんて。 それに機械神の後に出てくる敵って、どんな奴なんだろう。 ひょっとして機械神よりも強いのかな。これで本当に終わりなのかな。 これからも、ずっと戦わなくちゃいけないのかな。 …という、不安を押し殺した、一部女子に代表されるタイプ。 そして、 どんな敵が来たって俺たちは熱血最強無敵だぜ! なにが惑星を食う怪物だ、 そんな物一撃でやっつけてやる!…という自信に活気づく一部男子のタイプ。 しかし、その自信みなぎる元気な男子達にも、どこか気がはやった、 足が地に付いてない様子が読み取れた。 全員が、何か焦っている。 それはひょっとしたら際限無く続くのかも知れない戦いの予感への焦りか? もしくは得体の知れない、強大な敵の影への漠然とした不安か? エリーのヒステリーも、半分はそういった訳の判らぬ不安を吹き飛ばしたくての ことなのかも知れない。 いずれにしても、早くやっつけてしまいたい。 早く相手の正体を知り、有効な手立てを講じたい。 何よりも、一刻も早く、今すぐにでも相手をこの目で見てみたい。 「それで教授、来たヤツは教授が言っていた海王星を食っちまったヤツか?」 拳一がブレスで教授を呼び出した。 「そう断じてもいいのではないかと思います。 防衛隊の連絡では、相手は赤い光を発してるって言ってましたから」 教授が即断した。 大人の感覚からすれば、そう決めつけるには早いのではないかとも思われる。 しかし少年達の単純な、躊躇しない、直感に頼った行動がこれまで奇妙に 幾度かの危機を救ってきた。 それは経験と、鈍らない生のままの動物的感覚が産み出す「勘」の様な物か。 しかし、その「勘」がそうさせるのか、今日に限っては少年達はジリジリとした 焦燥感に駆られていた。 赤い光か。来たのか。その怪物が、本当に。 少年達の純粋なセンスがそうさせるのか、「赤い光」というキーワードに、 なにか妙に嫌な予感を感じる。なんとなく忌まわしい臭いがする。 昨日見た、赤い光の写真。 その姿のイメージが、ピリピリと少年達の敏感な神経を苛んだ。 「教授、それで、それ以外に防衛隊は何か情報をくれてないのか?」 ジェットのコクピットからブレスを通して五郎の声が飛んできた。 彼は、普段は冷静である。普段は。 「入って来てません…。なんというのか、近づけないそうです」 「そいつに?」 「ええ、はい…なんだか向こうも状況が混乱しているみたいで、 電話を受けたこちらもよく判らなかったのですが……」 教授はそこで言葉を切って、続けた。 「"熱い"って言ってました」 「"熱い"?」 「なんでもいいや。とにかく相手の姿を見ない事には始まらないぜ」 拳一はそう言うと、待機室の中でふんぞり返って足を組んだ。 その声には、ある種不敵な決意のようなものが含まれている。 幼いながらも彼の横顔には戦地へ赴く用心棒の様な男気が漂っていた。 と、その時、ザウラージェットが突然 ガクンと高度を下げた。 「あわっ」 横着な姿勢を取っていた拳一はバランスを崩し、前のめりにフロントパネルに 顔面をぶっつける。 「痛てぇーッ!」 この、今一つキマらない、男未満ガキよりちょっとだけ上、みたいな 微笑ましさが彼の持つパーソナリティーであった。 「もう、何やってんのよ! 戦闘前にふざけてんじゃないわよ!」 しのぶの声が飛ぶ。 「なにをっ、この…」 拳一が応じようとした、その時である。 ザウラージェットがさらに高度を下げる。目的地の街一帯が視界に入って来た。 「あ、あれは!」 「ひどい…」 そこでは地平線を覆い尽くすように、巨大な黒煙が空を汚していた。 少年達が背にして来た東の空は陽の輝く快晴なのに、これから向かおうとする 方向の空は真っ暗だ。 いったい何平方Kmの大地が焼けているのだろう。 まるで大空全体が、青と黒に二分されてしまったかのようじゃないか。 それは、これまでの敵であった機械化獣にやられた大地の印象とは、 まるで異なっていた。 機械化獣が暴れると、辺り一帯は機械化される。 それはおよそ人間らしさ、生き物らしさが感じられない死の世界だが、 一方では規則正しいパターンを持った、冷たいながらも何らかの意思による 構造物に計画的に秩序立って置き換えられるのだった。 しかし、いま目の当たりにしている大地は、それまで彼等が戦って来た敵の やり口とは全く異なっている。 破壊され、引き裂かれ、焼けただれていた。 メチャクチャだ。 なにか怒り狂った物の、手当たり次第の八つ当たりの結果の様だ。 何よりも機械化されたのなら物質復元装置で元に戻す手段も有るが、こんなに 酷い破壊にあっては生き物は到底生き残れない。街の人々は大丈夫だろうか。 「教授、被害は?」 渇いた声でエリーが聞いた。 それに答えたのは教授ではなく、通信席のワン。 「今、防衛隊の通信を傍受してる…大丈夫、大方避難は終わったそうよ」 良かった。 それにしてもこれだけ広域の避難をスムーズに終わらせるなんて、 防衛隊もやるじゃないか。全員がホッと安堵の胸をなで下ろしかけた時、 「へんなのがいる!」 レーダーディスプレイを覗いていた結花が大声を上げた。 全員がキャノピーを通して、スクリーンを覗いて黒煙に覆われた空に目を転じた。 赤い星が浮かんでいる。 青い空を暗黒に染めてもうもうと上がる黒煙。手当たり次第の破壊の収穫だ。 その中に強く輝く、赤い星のような物がポツンと浮かぶ。 全員が何か、強い違和感のような物を感じた。 あれが敵? あれが、この破壊をもたらした物? 「拡大!」 エリーが叫ぶ。すぐさまスクリーンが切り替えられ、指令部のメインパネルに 輝く赤い物体の姿が大写しになった。その映像は各ザウラーメカの待機室にも 転送される。 それは独楽のようだった。ゆっくりと回転している。 材質は判らないがクリスタルの様な、それよりも数段透明度の高い、 赤い宝石のようなボディ。中央部が強く赤く輝いている。 ブリリアントカットを施された、超大型のダイヤモンド。いや、色からすると ルビーか…。その外周からは棘のような、鰭のような…いや、両刃の剣のような 突起物が数本張り出している。トゲトゲの赤いダイヤ。 「きれーっ………」 その余りの美しさに、エリーが絶句した。 エリーだけではない、そのこの世の物とも思えぬ美しさに全員が息を飲んだ。 なにか肩透かしを食らった様な、拍子抜けした気分だった。 巨大惑星、海王星を食ってしまうような怪物。 天を覆うような、地球をも一呑みにしてしまうような巨大な相手を想像して いたのだが、見たところ相手の大きさはキングゴウザウラーより一回り大きい 程度だ。 しかし、何にしても敵だ。 ザウラージェットは用心に応じた距離を取りつつ、相手の周りを旋回する。 「もうこれ以上好き勝手はさせないわ…ザウラーフォーメーションッ!」 「オーケイ、分離するぞ。各メカ、分散して包囲しろ」 エリーと五郎の指示と同時にザウラージェットが、ばらりと分解する。 放り出されたマグナバスターはマグナティラノに。 一方、グランジェットはグラントプスに単体で変形。 ザウラージェットのパーツもそれぞれ3体の恐竜メカに変形し、 相手を包囲する形で展開、ホバーをふかして着地した。 「うわあ。暑いなぁ!」 コクピットの中でランドステゴのパイロット、立花浩美が思わず叫ぶ。 ぶ厚い装甲に守られているコクピットの中でも熱帯に居るようだ。 これでは外の温度はいったいどの位になっているのだろう? 「外気温は摂氏90度です。蒸し風呂なみですね。あいつの周りの空気は400度 以上になっている様です。近寄られただけで日本の家屋には火が付きます」 教授がキーボードを叩きながらそう告げた。 全員が、焼けただれた周りの風景に目をやった。 家々は黒焦げになり、動くものの影すらない。 街の人達は大丈夫だったんだろうか。逃げおくれたものは居ないのだろうか。 その異様な情景が 少年達の怒りに、そして焦りに拍車をかけた。 「くッ」 拳一が唇を噛み締め、怒りに瞳を燃やした。 「街をこんなにしやがって…許さねぇ、これでも食らえッ!」 拳一のマッハプテラが先行して飛び出し、翼端のバルカンを叩き込もうとする。 「ちょっとッ命令前に動かないでよッ!」 叫ぶエリー。 「いけません拳一君、まだ相手の武装がどんな物か判らないのです!距離を…」 教授がその言葉を言い終わる直前だった。 相手が突然、太陽を投げてきた。 ^^^^^^^^^^^^ 一瞬巨大ダイヤの中央部がギラリと光ったかと思うと、太陽のようにまばゆい 銀白色に輝く光弾が数発、矢継ぎ早にマッハプテラに向かって撃ち出される。 「うわッ!」 拳一の反射神経があったればこそ、プテラは咄嗟にロールで切り返し、 危うく難を逃れた。 かに見えた。 光弾はプテラの翼端の数10m先を通り過ぎただけだったが、それだけで 翼が赤熱し、先端がどろりと溶けて もげ落ちた。 「ああッ!」 驚愕する少年達。 「くッ」 拳一は錐揉み状態になる所をテクニックでカバーし、 プテラに傾いだ姿勢を取らせて墜落を防ぐ。 「な…何だ今のは…」 斜めになったプテラ内部の作戦室で、教授は振り落とされないように 机にしがみ付きながらも信じられないといった風に呟く。 「あ、あの光弾は、あの輻射熱は…!」 「教授ッ!大丈夫か?」 サンダーブラキオの作戦室から声が飛んできた。 「大丈夫です、秀三クン…」 「あの光弾の温度は何度くらいになる!?」 教授は さすが秀三クンだ、判ってるな…と思いながらも端末のキーを叩く。 「こ…これは…」 驚愕に見開かれる、眼鏡の奥の丸い瞳。 「そッ、そんな………そんなバカなッ!」 続いて光弾の攻撃は地上のザウラーメカ達の上にも降り注いだ。 いくつもの小型の太陽が、うなりを上げて迫ってくる。 「きゃぁ!」 しのぶはサンダーブラキオをホバーモードに入れて横っ飛びに避ける。 「うわッ!」 金太はマグナティラノの脚力を使い、飛び下がらせて直撃を防いだ。 ズガガガガッ!! 雨あられの様な光弾の群れが大地に突き刺さる。目も眩む輝きの爆発。 と、同時に、 大地が避けた。 ドン!と衝撃波を食らい、サンダーブラキオは横倒しにひっくり返る。 「きゃぁあぁーっ!」 光弾が直撃した大地から、たちまち幾本もの巨大なガスの柱が立ち上る。 予期せぬ方向からの滝のような奔流が、重さ100tにも届こうとする ザウラーメカ達を木の葉のように翻弄した。 地殻が裂ける。轟音と共に岩盤は崩れ、地滑りが起き、堅牢だったはずの 大地は今や雪崩を打って押し寄せてくる。 「うわッ!危ないッ」 洋二はグラントプスのホバーを全開にして後退したが、噴き出すガスの柱の 一本に接触してしまい、重量160tのトプスはおもちゃの様に弾き飛ばされた。 「うわぁああぁぁ~ッ!」 小山のようなトプスが2転3転宙を舞い、地面に叩き付けられる。 「ぐッ…」 ランドステゴはホバーで浮上しながら、まるで追われるネズミのように 光弾とガスの柱の嵐の中を逃げ回った。浩美が叫ぶ。 「な、なんなのこれはぁっ!」 頼もしかった大地がまるで、嵐の大海のようだ。しかも攻撃の手は休まず、 立っている場所すらも怪しくなって来た。 全員のブレスに突然、教授の金切り声が飛び込んできた。 「いけませんッ皆さん、飛び上がって! 空中戦に持ち込んで下さいッ、 あの光弾をこれ以上地面に撃たせてはダメですッ!」 「なに言うんだ教授! 空中なんか隠れる所もねぇ! プテラはいいが、 重いメカはいいマトになっちまう!」 反対する拳一の声を、教授の悲鳴が押し返す。 「なんでもいいから撃たせないで! 早くッ! ち…地球が、」 「地球が壊れるぅッ!」