#13 Article 9756 Posted at 1995/03/17 06:38:51 by かくた (MAP4496) [SYNTAX]

Subject: Re:*14 タイトル… /9735 ..... /16414(#148) /16322(#148)

> ちなみに「四段」となっている方の版では「お段の未然形」って
>どういう扱いになってますか? 抹殺されてるのかな?

 はいはい。よろずもめ事まとめ屋のかくたです。
(ちなみにこれは映画『クレージー作戦・くたばれ!無責任』でクレージーキャッツ
の7人が始める商売で、たいした意味はありません)

 てなわけで「四段」の由来である時枝誠記の「日本文法 口語篇」(岩波全書)を入
手してきましただよ。
 で、……WAKさんきちんと読んだの? これ。問題の動詞の活用についての説明
もWAKさんの説明とえらい違うよ。

 時枝は五十音図でも母音にヤユヨワを含めるべきだと考えています。実際これは母
音と考えたほうが合理的なわけですよね。さらにかなづかいが発音に即して表記され
るべきなら、「わ」「は(助詞)」、「お」「を(助詞)」の区別もないほうがいいんじ
ゃないか、とすげー先進的な考えを示しています。(ちなみに1950年初版の本です)
 で、問題になってる動詞の「意志の表現形」(未然形の「う・よう」に続く形)も、
歴史的仮名遣いがどーのという話ではないんです。上記のような発想をする人が、現
行の発音による活用形を旧仮名遣いに従属させるべきだなどと考えるわけがないです
よね。
 例えば五段活用動詞の「思おう」という形。「思お」を活用形として「う」を助動
詞と見るのが現行の学校文法ですが、この場合の「う」というのはそもそも「お」の
長音を表す仮名遣いの規則によるものであって、[u]という音を持つ「う」という字の
本来の意味は失われています。ですから、実際の発音のみに即するなら「思おー」と
書いてもなんらおかしくないはずです。しかしその場合、「思お」を活用形と見なし
て「ー」を助動詞と見るのは無理があります。
 ここで時枝の見出した解決策は、MSP-Irisさんがはからずも指摘しておられる「音
便」なのです。つまり、他の未然形「思わ+ぬ・ない・せる・れる」と同じく、意志
を表す形も「思わ+○○」てな助動詞がついて、音便で「思おー」てなふうに発音さ
れると考えたほうが合理的ではないか、ということです。
 上のように五段活用の「意志の表現形」を、○○(それはたぶん[wo]と[yo]の中間の
音であろうが、現行の五十音では表記できない)という助動詞がくっつくことによって
生じるとする考え方は、五段活用だけ未然形がア段オ段の2種になるという特例をな
くし、上一段・下一段など他の活用形とも統一がとれます。
 
 しかし、この考え方は合理的ではありますが、はっきりいって子供に教えるのには
無理があります。時枝自身も本書の冒頭で「中学校低学年に文法を教えるべきではな
い」と書いてます。
 現行の学校文法てのは小学校から教えられるようにという妥協の産物なんでしょう
ね。

                                   かくた

p.s. 動詞の活用をめぐるその他の論議については調査中です(笑)
p.p.s. あ、もしかして……WAKさん、音便(おんびん)て習ってないのかな……(笑)。