#13 Article 10899 Posted at 1996/06/28 02:30:33 by MSP-Iris (MAP4370) [DSM.IV]
Subject: Re:*17 就職活動と記憶操作 /10893 ...... /5405(#210) /5219(#210)
>例えば、「何でもない」(というのも曖昧な言い方ですが)人が検査を受けたとき
>精神疾患に分類されてしまうリスクは、以前から指摘されていたし、
>それはDSM-IVでも、いや今後もおそらく解消されることがないと思うからです。
これはDSMの問題というより、医統計学上の一般問題とするべきでしょう。
「何でもない」人をある検査をした結果「何でもない」と判断する率を特異度と
言いますが、特異度が100%の検査は残念ながらありません。DSMも100%
ではないでしょう。100%をめざして改良中である、というべきかな。
しかし、100%でなければ使えないかというと、そうではないわけで、実際に
使っている感触として、十分使い物になると思っています。日本の場合は純粋にD
SMの操作診断のみで診断を下しているわけではないという土壌がありますので、
そのせいかもしれません。しかしながら、日本的な「直感」的な診断を排し、でき
るだけ系統的に診断していこうという試みは(アメリカ的ですが)評価できると思
います。古くはヤスパースあたりもそんなことを言っていたような気が。
確かに批判はあるでしょうが、どこの世界にも批判はあるもので、そういう場合
はやはり原文を自分で読んでみて、自分で判断するのが一番だと思います。という
か、こういった問題は原文を自分であたらないと自分の意見を構築することは難し
いと思いますが。
診断基準、というと、どうしても膠原病に頭がいってしまうので、ちょっとSL
Eの話を。
SLEの診断基準というのはどうやって作られたかというと、
・まず、「これはSLEに間違いない」という患者を集める。
・それらの患者の症状を集める。
・そのデータを元に、感度と特異度がなるべく高くなるように(半ば数学的に)
項目を設定する。
というもので、それぞれの診断基準項目について、感度と特異度のデータがあっ
たと記憶しております。
こんなような例と比較すると、たしかにDSMはいい加減というかあやふやとい
うか、そういう感触もあるかもしれません。しかし、感度、特異度ともに、それほ
ど問題となるレベルとも思えないのも事実です。また実際、多くの論文において、
一つの「疾患統一基準」としてDSMが広く使われているというのも事実であり、
批判のみに目を奪われて欲しくないとも思います。
この辺は具体的に数字が出るとはっきりするのでしょうけれど、あいにく不勉強
なもので。
> 僕はここまで無邪気に(ではきっとないのでしょうが、文面ではそう見えます)
> 医学は自然科学であるとおっしゃる医学徒に出会ったのは始めてです。
> 特に、精神科関係では。正直、とても驚きました。
「医学は自然科学をめざしている」あるいは「医学は自然科学であるべきだ」と
いう表現ではいかがでしょうか。今現在は、といわれると確かに心許ないのですが、
いつかきっと「症候群」などという非科学的なものがなくなる日が来ると思ってい
ます。
> 同様に、分類もあくまで治療上の便宜であって、それ以上ではない。
> じゃあ、治療とは何か、と考えると、
さあ、そこで治療とは何か、ですが。
ここで対症療法は除きます。対症療法は「医療」であって「医学」ではありませ
んので。
#あと「この治療をすれば治るだろうけど、年齢と苦痛を考慮して無治療にする」
というのも、医療であって医学でない。人道的には正しいけど学問的ではない。
そうすると、治療というのは(簡単にいえば)疾患原因を排除することです。
ということは、治療による分類というのは、すなわち疾患原因による分類になる
わけです。
先に様々なうつ病が「大うつ病」としてまとめられた、という話を書きました。
これは治療効果が同じだからでした。そうすると、様々なうつ病というのは(成因
の如何にかかわらず)脳内では同じ現象が起きて、それによりうつ状態となるので
はないか...こういう予想が成り立つわけです。実際うつ状態に関係する脳内代
謝もわかってきていて、これは治療薬と決して無縁ではないです。また、甲状腺機
能低下でもうつ状態となりますが、これはDSMでも別に分類されています。普通
のうつ病とは治療が違う(それはすなわち原因が違う)のです。
こういうのって、十分自然科学だと思うんですけど、いかがなものでしょうか。
MAP4370 MSP-Iris