#13 Article 10892 Posted at 1996/06/26 01:56:53 by MSP-Iris (MAP4370) [DSM.IV]

Subject: Re:*15 就職活動と記憶操作 /5739(#210) ..... /5405(#210) /5219(#210)

>  DSMIIIでは確かに僕が指摘したような問題が存在していたはずですし、

 III 自体は確かに問題の多いものであるようです。
 ただ、III が制定されたのは1980年のことで、IV の制定は1994年です。
 この世界で14年といえばかなり長い年月です。

>  基本的に判断が大きく変わらないように作られているはずのDSMIVも

 確かに III → III R → IV と基本姿勢は変わっていませんが、段々洗練されて
きたことはたしかです。それは III を利用したことによる臨床研究成果ですね。
 あたし自身は III の原文を見たことがないので、III については確たることは
言えません。しかし、IV についていえば、「誰でも精神疾患になってしまう」と
いう感触はありませんね。それは、一つには判断の項目がそれなりに厳しいとい
うこと、もう一つはかなり縦断的に診断しているということからです。

 例えば、分裂病の場合。ここの項目Cには
                                  .............
 「障害の持続的な徴候が少なくとも6ヶ月間持続し、
                その中で活動期が1ヶ月以上持続する」
                                                ~~~~~~~~~~~~~~
 という意味のことが書いてあります。ところがWHOのICDでは、この「6
ヶ月」の規定がありません。このように、DSMはかなり「横断面的になりすぎ
ないように」という点に気を使っています。
 また、A項では活動期の特徴的症候について規定していますが、

 「妄想、幻覚、解体した会話、ひどく解体したまたは緊張病性の行動、
  陰性症状(すなわち感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如)のうち
  2つ以上が、各々1ヶ月ほとんどいつも存在」
                          ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 となっており、B項では

 「障害のはじまり以降の期間の大部分で、仕事、対人関係、自己管理等の面で
  1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している」
              ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 となっています。
 これらの文面より、DSMがそれ相当に慎重であることは納得していただける
と思います。

>  治療を欲している人が多く存在し、治療に従事されている方々の努力も
>  また大変なものでしょう。それは本当に頭が下がります。(このことを
>  ないがしろにされたような感じがして、カチンとされたのでしょうか?)

 いえ、あたしがカチンときたのは「適切な根拠を示さずに、かつ自明であるか
のように、間違っている(と思われる)医学情報を公共の場に書き込んだこと」
なのです。そういうのがまずいことは TOSHI さんはよく知っているはずだと思
いましたので。

#「自明であるかのように」というのは「~なんだよなあ」という書き方のこと。

 実際、間違った医学情報がマスコミなどで流れることによって、治療関係に問
題が起こるというのは、非常に困ったことですが、現実に起こっていることなの
です。皮膚科などは最たるものでしょう(ステロイド外用薬とか)。精神科もナ
イーブな側面がありますから、こういうことには注意しなければいけないのです
ね。

>  そもそも「気質分類」や「性格分類」については(判断や治療上の
>  ガイドラインにはなっても)眉唾だと思うし、DSMもその延長上にある、
>  という印象をぬぐい切れません。

 ええと、クレッチマーあたりを想定しているのなら、おっしゃる通りです。

 しかしながら、DSMの人格障害の分類は

・妄想性        ・分裂病質      ・分裂病型      ・反社会性      ・境界性
・演技性        ・自己愛性      ・回避性        ・依存性        ・強迫性

 多くの人が予想しているものとは随分違うのでは?

 それぞれの診断項目も「誰でも精神疾患に分類されちゃう」というような甘いもの
ではありません。
                            .......
 さらに、DSMの人格障害は第2軸です。
 第1軸(臨床疾患、臨床的関与の対象となることがある他の状態)とは決定的に
異なるものです。

>  極端な言い方をすれば(あくまで極端な、ですが)
>  「血液型性格分類とどこが違うのだろうか」とまで思っています。

 「血液型性格分類とどこが違うのだろうか」という指摘は、要するに性格分類の
意義といったものに関するものでしょうか(疾患特異性とか)。そうであれば、ま
ことに(現在でも)おっしゃる通りです。しかしながら、これは先の発言の「誰で
も精神疾患に分類されちゃう」というのとはまったく別次元では?

 これは先の発言の根拠にはなり得ませんね。

>  医学は自然科学ではないにもかかわらず、

 「自然科学」とは「自然を研究対象として、一般的法則を追求する学問」である
と辞書にはあります。
 医学は「疾患」という自然を対象として、それを治療を通して系統付ける学問だ
と思うので、十分自然科学だと思いますが。まあこの辺は見解の相違かな。


 そもそも医学の系統立て(=分類)というのは、それが治療上有用であるから
されるべきです。

 例えば、以前はうつ病を「内因性うつ病」「反応性うつ病」などと分類してい
ました(ICD-9のころ)。しかし、これらの言葉はDSM-IVにはなく、「大う
つ病 (Major Depressive Disorder)」でひとくくりになっています。これは臨床
研究により、うつの成因によって治療方法および結果に差がないことが明らかに
なったからです。


 それと、そもそも話の発端となった性格検査の話ですが、これも日々進歩して
います。例えば、今手元に「TCI」っていうのがあるんですが、これは脳内の
ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン系との関係を模索している性格検査
です。精神分裂病や気分障害(躁うつ病)がこれらの異常と結び付いていること
はよく知られていますので、この検査は精神疾患との特異性を模索しているとも
いえます。
 あ、TCIについてはどの教科書を見ても載ってないと思います。やっと日本
語訳ができたばっかりだから。十五年くらいたったら国試にも出るかもしれませ
ん。(^^ゞ


 今は精神科医がSPECTのオーダーをする時代なのですから、クレッチマー
あたりは忘れてください(笑)。


 最後に、DSM-IVについての参考文献ですが、

 DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院(高橋三郎ら訳)

 これをお薦めします。ポケットサイズで、4000円くらいだったと思う。


 つ~わけで、検討会のためにワープロ打たなきゃなので、今日はこの辺で。

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