#124 Article 2347 Posted at 1994/12/22 22:09:54 by iSOMEC (MAP4141) [HOLMES]
Subject: ホームズ「金縁の鼻眼鏡」
久々に見ることができ幸運だった。「犯人は二人」以後、見逃してばかりだったの で、まことに良かった。では、思い付くままに感想など。 ワトスンがいないという点がなかなかに面白い。冒頭から怪奇色の強い演出だと思 うので、ワトスンの温和な語りが無いことが似合と言えるだろう。 「赤い色」に、こだわりがあったように思う。 ホプキンズ警部が訪れると、ホームズの部屋は徐々に「闇」と鮮やかさが毒である 「光」に支配されていく。科学実験用のガラス容器に入っている液体を透過した「赤 色」は、警部の背後を満たし、これから語られる事件の暗示であろうか。 このシーンには、天井を写したカット割りがなされているのも特徴だと思う。天井 に栄える明暗や、ホームズの額をかすめる虹筋など、光の演出も、ブレット氏の演技 と相まって面白い。このカットのホームズは、蘇ったドラキュラかなにかのようだ。 警部の口から、事件のあらましが語られていく。書斎にいる教授の背後にかかって いる絵にはすでに赤い色が使われている。 そして、ウィロビー・スミス青年の血。興味深いことに、書斎には赤い飾り窓がは まっており、そこを透過した光もまた、血痕の上に落ちている。 ヨクスリー屋敷の問題の廊下の壁紙は赤。コラム教授のベストも同じような赤であ る。寝室にも赤茶の色がそこかしこにあるようだ。アンナの手袋も赤。 女中(メイド)のスーザン・タールトンが、鮮血の生々しさに見入ってしまう様は 、原作には欠けている心理描写の好例であり、こういった演出に、ホームズという作 品をドラマ化するときの妙味があると思う。時間を埋めるための間伸ばしと言うなか れ。 マイクロフト・ホームズが、ワトスンの代役を演じている点は、もしかすると役者 の都合から派生したものかもしれないが、ワトスンが物語の正式なストーリーテラー であるという二重性に照らし合わせると、これが記録に無い事実の方とも受け取れる 訳で、読者は秘密の部分を楽しんでいるかのような雰囲気になる。台詞に見られる「 父上の拡大鏡」にも曰くがありそうだが・・・。 iSOMEC