#82 Article 2213 Posted at 1995/01/05 00:10:05 by 灰原達之 (MAP3252) [SATO]

Subject: ふりかえるな!ガンダム

忘れた頃に出る雑誌コミックボックス(○月号という言葉が意味を失って既に
久しい)に、あの『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』の佐藤健志氏によるガ
ンダム論が掲載されています。
 ニュータイプ論を、進化論から世代論に矮小化したあげく、放棄してしまった
富野氏の製作姿勢だとか、ガンダムの革命的部分を捨てて昔のロボット物に先祖
返りしたGガンダムだとか、15年にわたるガンダムの変遷を通じて、アニメ界
が依然として抱えている問題を指摘した、なかなか秀逸な論文であると感じまし
た。
 「大人のドラマ」の構築なくして、アニメの一般的な市民権の確立はありえな
いという結論はその通りだと思うものの、マニア向けのカルトな作品を、自分た
ちだけの文化として囲い込み、閉鎖的な楽しみを見出している私たちもまた、大
人にならなくてはならないわけで、佐藤氏の要求に応えるようなアニメとは、作
り手にも受け手にもしんどいものになりそうです。

 ただ、佐藤健志氏の評論のいつもの手である、文芸作品の破綻の原因を、作家
個人の思想に帰着させるというやり方が、私にはどうもうさん臭く思えてなりま
せん。
 作家は思想家ではないから、「私の思想はこれだ」と明示的に述べることはあ
りえなくて、彼がやっているように、様々なメディアに発表されたコメントの断
片から推測するしかないのですが、その作業を余計なバイアスなしに、客観的に
行ったとしても、作家の「思想」が作品に反映されるという保証がどこにあるの
でしょうか。優れた職人ならば、自分の思想に反した作品だって作ることができ
ます。
 文芸批評理論なんて、勉強したことがないんで、この辺があやふやなんですけ
ど、佐藤評論の方法論は、オーソドックスなものなんでしょうか?それとも、彼
が独自に考えだしたんでしょうか?

 富野氏の思想が本当にガンダム破綻の原因となったかどうかはさておき、ガン
ダムパターンの解析と、その限界性の指摘自体は、非常に納得のいく内容でした。
はずかしながら、私は1年戦争にネタ本が存在するとは知りませんでした。