#75 Article 493 Posted at 1995/01/02 21:38:43 by Elcaset (MAP4600) [NAUSICAA]

Subject: Re: ナウシカ読書後の感想 /475

このボードへの書込みは初めてです。
  今日、ナウシカの最終巻を買って読みましたので書きます。

  大方の疑問や伏線が、きちんと収束しているのはさすがですね。
  一時は、風呂敷の広げ過ぎになってしまっているのではないかと、危惧を抱いた
 のですが、それも杞憂に過ぎなかったようです。

  でも、もっと時間をかけてじっくりと、長くこの物語を続けて行ってもった方が、
 良かったかも。
  どうにも、謎解きが先行してしまって、作者がこの作品で訴えたかったテーマが
 いまいち、うまく伝わって来なかったような、そんな気がしています。
  もちろん、読み返して見れば、ていねいに謎を解き明かしながら、ところどころ
 に思想と言うか、テーマが散りばめられているのはわかるんですけど、今の所は、
 それが実感として伝わって来ない、もどかしさを感じています。
  宮崎駿さんの語り口の確かさは定評ですし、また作劇の実力もある方ですから、
 ナウシカのような複雑な物語を、わずかこれだけの枚数できちんと終結させたこと
 に、敬意と驚きを感じるべきなのかもしれません。
  しかし、何か食い足りない、もっと枚数を使ってほしかった、という欲情はどう
 しても残ってしまいました。
  初期の頃の、あのおおらかな語り口を知っているだけに。

  結末は、大円団に終わったと判断しています。
  (結果的には)腐海の毒を受け入れ、それに適応して行った人類ですから、やが
 て腐海がその役割を終えて、清浄な地に世界が変わったとしても、再びそのような
 環境に適応して行くのでしょう・・・・この作品世界の人類は。
  もちろん、それが即ち、我々現実世界の人類にあてはまるとは、とうてい考えら
 れませんが。
  しかし腐海を、その表現の通り、人類が破壊した環境と額面通りに捉えるのでな
 いのなら、もっと様々なことがらの比喩として例えるのなら、この結末は我々人類
 の未来に対して、一筋の希望と光明を投げかけてくれる結末であると判断します。

  少なくとも、この物語の終末では、すべての人々と行かないまでも、人々の行く
 末を現実的に導くことになる人々については、以前よりもわずかではありますが、
 前よりも賢明になったであろうことが暗示されています。
  つまり、これは破滅の後の再生が胎動を始めた時点で、物語を「ひとまず」終結
 させたことで、希望を残した終わり方であると見ています。
  まあ、この世界もナウシカやクシャナが死に、それから歳月が経てば、再び退廃
 と絶望を抱え込むことになり、いずれは再び破滅の夜を迎えることになるのでしょ
 うが、たぶんその後には、再び再生の朝が訪れるでしょうし、まさに「同じことの
 くり返し」になるのでしょう。
  けれども、それは人類という種の鼓動であり、宿命でありながらも性質でもあり
 ます。
  ナウシカでは、よく生命の表現に鼓動が用いられていますが、これは生きとし生
 けるもの、そして、そのしたたかさを表現していると思います。

  墓所の体液と王蟲の体液が同じ、という事柄については、現時点でのわたしの考
 えは、一方的、偏狭的である、文明の全否定を、作者が拒んだ結果だと思います。
  同じ体液=(たぶん)同じ技術で作られながらなぜ、一見すると、相反するよう
 な働きをすることになったのか。
  これは、文明と文化、そして技術の持つ二面性を比喩し、また風刺した結果だと
 思います。
  ・・・ちょっと単純すぎる、見方だとは思うんですけどね。
  何もかもクローズドな世界に置いて、長らえようとした墓所と、外に出ていって
 実際の自然の猛威にさらされた王蟲、この違いは明らかです。
  この事柄の持つ、他の、もっと深い意味に付いては、これから折りにつれて考え
 て行くことになると思います。


  それにしても、この作品が始まってから終結するまでが、やけに長かったような
 気がしています。
  たかだか10年程度なのに・・・でも、もっと長く続けて欲しかったです。
  一つの作品世界が、その作者の一生を通して語られることは珍しくないことです
 し、ナウシカの物語もそうやって語られるに相応しいスケールと深さを持っていた
 だけに、なぜ10年の短い歳月で幕をおろしてしまったのでしょうか。
  伝聞によると(^_^;)、ナウシカは作者にとって重荷でしかなかったそうですが、
 あれだけ有名人になり、日本映画のかなりの部分を背負って立つようになってしま
 うと、マンガ描く時間なんて無い筈だから・・・お疲れ様でした、ですね。
  とりあえず、今月のコミックボックスは手に入れて見ることにします。
  しかし、10年以上前のコミックボックスでも、ナウシカの特集やってて、幸い
 にも持ってるんですけど、この頃はまだ、今ほど有名じゃなかったから、まだ余裕
 があったみたいで・・・、「ソバ食いながら解るマンガにならないようにしてる」
 って、おっしゃってますね。


                          長くて済みませんでした。
                                エルカセット