#75 Article 480 Posted at 1994/12/19 02:28:48 by 灰原達之 (MAP3252) [NAUSICAA]
Subject: Re: ナウシカ読書後の感想 /475
はじめまして。 TWIN TOWERさん。 僕も、連載完結時に、何回読み返してもわけがわからなくて、単行本でかなり 加筆修正されるんだろうと楽観していたのだけれど、やっぱりわかりません。 墓所の主によると、遅かれ早かれ人類は全滅します。腐森が広がることによっ て。そして、”清浄の地”が広がることによって。 そこにさえ適応できるような、人類再改造プログラムさえ、墓所には用意さ れていたのです。それをナウシカが拒否したところが、どうにもわかりません。 過去からのプログラムに、生物の運命の主体性を奪われることに反発したのか もしれませんが、それにしたって、墓所を破壊する理由としては弱いです。 墓所はべつに現人類を滅ぼそうとしているわけではないのです。新人類が生 まれるにしても、「交代はゆるやかに行われる」と語っています。 「私たちは血を吐きつつ繰り返し繰り返しその朝(生物相の交代)をこえて飛 ぶ鳥だ!!」 「生きることは変わることだ。王蟲も粘菌も草木も人間も変わっていくだろう。 腐森も共に生きるだろう」 ここから辛うじて読み取れるのは、人類を含めた全生物の進化というか、適 応能力に期待しようというナウシカの意思なのですが、それらが、そもそも過 去の人類によって改造を受けた生物がほとんどであって、滅びることさえプロ グラムされている以上、望みは薄いと言わざるを得ません。ナウシカ自身、 「亡びはすでに私たちの暮らしの一部となっている」 と語っています。 ナウシカの倫理だと、コントロールされて生きるくらいなら、滅びた方がま しなのでしょうか。さらに、ナウシカは、生まれるはずだった新人類を、事前 に滅ぼしてしまいました。なんて罪深いんだろう。 ただ、ラストでナウシカがセルムへ送った念話、 (王蟲の体液と墓所のそれとが同じだった) が、何かを暗示しているような気がします。 これを解読できる人はいませんかねぇ。 余談ですが、安定を求めるプログラムに反発して、滅亡も含めた運命を選択する という話は、僕の知るところではアシモフの『永遠の終わり』があります。 その世界では、時間管理機構”永遠”が、タイムマシンによる歴史改変を不断に 行うことによって、破滅的な戦争や災害を回避し、人類の存続を図っています。 主人公ハーランは、その制度が実は安定とひきかえに、人類の可能性(宇宙への 進出=銀河帝国)をつみとってしまっていることを知ります。その結果、ハーラン は”永遠”を消滅させてしまうのですが、最後に、「永遠は終わり、無限がはじま る」と語っています。