#72 Article 1555 Posted at 1991/05/23 20:58:51 by 根本 剛志 (MAP1144) [NO.723]
Subject: 涙のダイエット日記
#723・Bパート 《《《 涙のダイエット日記 》》》 洋の東西に限らず、美味しい物を食べたいと言う欲求は、尽きることが無い。 されど、食べることにより自らの体重を増やし、後日自らの行いを悔いても、そ れは自業自得でしかない(クスクス)。 春日エリ(12歳)は、今日も勢いよく夕食を食べていた。その食べっぷりは天 晴なもので、パパやママは元より、チンプイの目線もエリに注がれていた。内心 チンプイは『これが未来のマール星の妃殿下の姿・・・』と、意気消沈してしま いそうになったことは、言うまでもないだろう。 「エリちゃん。そんなに急いで沢山食べると太るわよ」 流石にみかねたか、ママがエリに注意を促す。 「大丈夫よ。ちゃんと日頃から運動してるし、私は太らない体質なの」 このように、現在のエリには食べることしか眼中にないのである(^_^;)。 「ごちそうさまぁ!!」 言うより早く、エリは二階に上がって行く。後に残った春日夫妻は、一連のエ リの行動にあっけにとられている。 「もうちょっとエリにも女の子らしくして欲しいわね」 母親の心理としては、女の子がこうもガサツ(おっと!失礼(クスクス))に育って行 くのを見るのは、決して良い気分でないだろう。 「でも元気があっていいじゃないか」 いつもながら公爵はノンキであった(笑)。 「それにしてもさ」 チンプイは、ベッドでマンガを夢中に読むエリに構わず、話し始めた。 「エリちゃん最近ちょっと食べ過ぎなような気がするよ。確かに育ち盛りなのは 分かるけど。少なくとも、もうちょっと食事は落ち着いてするものだと、ボクは 思うけどね」 「チンプイってママみたいなこと言うのね(クスクス)」 エリはマンガから目を話さずに笑いながらチンプイに答えた。恐らく笑ってい るのはマンガのせいと思われるが、チンプイには当然エリの態度が面白くないこ とは確かだった。 「でもエリちゃん。このままじゃエリちゃんぶくぶくに太って、内木くんと並ん で歩くことが出来なくなるかも知れないよ」 エリの笑いは『ピタ!』っと止み、変わってチンプイに向ける目は、三白眼で いかにも嫌なことを言ってくれるわね、と言わんばかりの目付きに変わっていた。 「チンプイ。ちょっとそこまで言うことないんじゃない? 私はママの子だから 絶ぇっっ対っに太らないの!!」 「でもエリちゃん。エリちゃんはパパの子でもあるんだよ」 『ぎくっ!』確かにエリはママの子だけではない。パパの子でもあるのだ。その パパはと言うと・・・ どちらかと言えば『太め』ではなかろうか・・・・・ エリの額からは一筋の汗が流れ、チンプイは初期の目的を達したことを確認する に到った。だが、チンプイにはまだ切札が残っている。別に追いつめているのは チンプイであるから切札とは言わないかも知れない。この場合は『止め』と言っ た方が正しかろう。チンプイは早速エリにその『止め』を刺すこととした。 「エリちゃん。ちょっと体重測ってみたら?」 人は、何かを気になり始めると、加速度的に神経質になるものである。エリも 当然自分の体重と言うものが、気になって仕方がなくなっていた。渋々立ち上が り、エリは階下のヘルスメーターのある場所へと向い始めた。 「よしよし、計画通りだぞ! 科法『暫定重力コントロール』チンプイ!!」 この時、春日家が薄ぼんやり光ったことを知る者のは、チンプイを除いては、 誰一人として居なかった。 エリはヘルスメーターを前に躊躇していた。 「大丈夫とは思っても、何か気になって仕方がないわ。・・・もし、思っていた より体重が増えていたら・・・ ま、その時はその時よ!!」 一気に気を取り直したエリは、そのまま勢いでヘルスメーターに両足を乗せて みた。 すると・・・ 「・・・・・・うそ・・・・・・(・_・;)」 エリは我が目を疑った。なんと5キロも体重が増えている・・・ 5キロと言 えば相当な体重の増加。それもつい1週間前と比べてである。これはゆゆしき事 態だろう! そう言えば、なんとなくエリは自分の体が重くなっているような気 がしてきた。『自覚症状かしら?』そうエリは思った。もしこのままの調子で肥 満が進行したら・・・ エリは1カ月後の自分を想像して恐怖した。これではエ リはミニ小錦とでも言われるくらいぶくぶくに太ってしまうかも知れない。とて もではないが、そんな自分と内木が並んで歩く想像など、出来る筈はなかった。 エリの中に、ある決心が生まれていた!! 「私、やせてみせるっ!!」 「今ごろエリちゃん相当悩んでいるだろうな(笑)」 チンプイはエリから1本取ったと言う優越感に浸っていた。チンプイのかけた 今回の科法により、春日家の敷地内の重力加速度を数パーセント強化したのだ。 当然それによって春日家の全ての重力の干渉を受けているもの、つまり全ての物 質は重くなる訳である。当然エリの体重も増えることになる。今階下で自分の体 重を測っているエリが冷汗を流している筈であり、チンプイにはエリの様子が在 々と浮かんでいるのであった。 やがて数分後。決意の眼差しで自室に戻ったエリを見たチンプイは、自分の計 画が成功したことを確証した。 「チンプイ! 明日からダイエット作戦を敢行するわ!!」 午前5時。 この朝早くからエリの部屋では目覚し時計がけたたましい音を起てて、この部 屋の主を起こそうと躍起になっていた。 布団の中から気だるそうに腕が伸び、目覚し時計をわしずかみにしたかと思う と、バッと布団をめくり上げエリは勢いよく起き上がり、素早くジョギングルッ クへと着替えていった。 「さぁ! これから毎日走り回るわよぉ!!」 傍らのダンボールのぷちぷちの中から、一気にエリはチンプイを掴み上げた。 「チンプイ。あなたもつき合ってくれるわよね?」 チンプイは、未だに目が覚めていないようであった(^_^;)。 「ダイエットって、エリちゃんが勝手に決めたことじゃないか。ボクは関係ない よ。朝ご飯になったら起こしてね。おやすみ・・・」 そう言い残して、チンプイはエリの手を離れると、のろのろとダンボールの中 に入って行った。 「しょうがないわねぇ・・・」 エリは仕方なさそうに、そのまま一人で階段を降りて行った。 「起立。礼!!」 『おはようございま~~~~~す!!』 かえでヶ丘小の授業がスタートした。 エリには、これ程授業が特別辛いと思えたことはない。エリは早朝ジョギング で体力を使い果たし、また、朝ご飯もちゃんと食べて来なかったのである。こう なると、いつも以上に集中力が欠如するのは無理からぬところだろう。先生の声 が子守歌に聞こえてきた・・・ 「・・・であるから・・・ なに??」 何処からともなく寝息の音が聞こえて来る。静まり返った教室を見回し、気持 ち良さそうに眠っている生徒を見付けるのにそう時間は掛からなかった。 「春日~~~~~っ!!」 エリの気付いた時には、既に先生がエリの目の前に仁王立ちしているところで あった(^_^;)。 「それにしても。エリ、今日は本当にどうしたの?」 「そうそう。なにかずっと元気が無いみたい・・・」 さやかやほたるの言葉に、エリは照れ笑いをしていた。 「エリ。給食、食べないの? エリの大好きな『ニンジン抜きカレー』じゃない」 そのさやかの言葉に、エリはギクリとした。 「実は、ね・・・」 重い口をエリはやっと開けた。 「なんですって!? ダイエットぉ?!」 「し~~~っ!! 声が大きいわよ。さやか」 「でも、どうしてそんな急にダイエットなんか始めたのよ。エリらしくないじゃ ない」 そう問うさやかの言葉に、エリはこれまでの経過を話した。ほたるもそのエリ の話をまじまじと聞いている。 「ふぅん。確かに尋常じゃない増え方よね。でも、そう気にすることないんじゃ ない?」 「さやかならそう言うと思ったけど。でも気になるじゃない。1週間で5キロも 太るなんて」 深刻になっているエリに、ほたるはなにかフォローを入れようと、あれやこれ やと考えてみた。されど、良い言葉は浮かばない。やがて、なにかしらフォロー の言葉を見つけたらしく、ほたるはこの重苦しい雰囲気の中、口を開いた。 「内木さんと釣合がとれなくなって困るなら、内木さんも太らせちゃえば良いじゃ ない」 屈託の無いその表情で恐いことを軽く言うほたるを前に、二人が一気につっぷ したのは言うまでもない(クスクス)。 家に向かう道路を勢いよくエリは走っていた。不思議と家に近ずくにしたがっ て風が強くなって行く。春日家の垣根の手前! そしてジャンプ! 着地成功! だが、気のせいか、体が重いような気がしてきた。 「チンプイ、ただいまぁ!!」 「エリさま!! ダイエットを敢行中とは本当でございますか!?」 ドアを開けた瞬間、いきなり現れたワンダユウのアップに、エリは思わずのけ ぞってしまう。 「わ、ワンダユウさん! いきなり現れて! 驚いたじゃない!!」 「これは申し訳ないことをしました。平にお許しを~~~っ!!」 エリの剣幕にワンダユウは驚いた。やはりエリは食べるものも食べていないよ うだとワンダユウは冷静に分析を行っていた。事実エリは給食も全く手を付けな かったのである。 「エリさま。ダイエットを行って大変ではございませんか?」 「そりゃ、大変よ。でも私がぶくぶくに太ったらワンダユウさんも困る筈よ」 「はて? 何故ですかな?」 「だって、ぶくぶくに私が太ったら殿下に嫌われるかも・・・」 『しまった!』エリは思いもよらないことを口走ったと、自らの軽はずみな言動 を後悔した。目の前には、耳をエリに向けニヤニヤと笑うワンダユウの姿がある。 「エリさま。今なんと申されようとしていたのでしょうかぁ??(クスクス)」 「うるさいわね! とにかく、私はやせたいのよ!!」 両の手で握り拳を作って、訴えるようにエリは叫んだ。 「では、エリさま。これをお使い下さい」 ワンダユウはスプリングの沢山付いた物をエリに手渡した。 「・・・なに、これ・・・?(・_・;)」 タ心出来ないの である。 ュ化ギプノそうなの? これを付けるとマール星に行きたくなるなんて言うんじゃ ないでしょうね?」 「大丈夫だよエリちゃん。そのギプモワじと見ている。でも何かうさんくさそうなものであ るような気がしてならない。とにかくワンダユウの手渡した物は安心出来ないの である。 「本当にそうなの? これを付けるとマール星に行きたくなるなんて言うんじゃ ないでしょうね?」 「大丈夫だよエリちゃん。そのギプスを出したのはボクなんだから」 チンプイの言葉を聞いて、エリは一安心した。 「チンプイがそう言うなら安心ね!」 「ちょっと! エリさまそれはないんじゃないですかぁ!!」 まぁワンダユウの日頃の行いを見ていれば、エリに疑われても、それは仕方が ないだろう。 「でもエリちゃん。無理にやせることないと、ボクは思うんだけど・・・」 「あら? やせた方が良いって言ってたのはチンプイの方じゃない」 「そりゃ、そうだけど・・・」 チンプイは何か言いたそうな。それでいて言いたくないと言う仕草をしていた。 しかし! 今のエリにはやせることが大事な目標である!! チンプイなんぞ にかまっている暇はないのだ!! 「ところで。これどうやって付けるの?」 「それはね、何キロやせたいかを設定して、そのまま着込むように付ければ良い のさ。ギプスが装着されると見えなくなるから誰にも気付かれることもないよ」 「じゃぁ、ちょっと多めに7キロやせたい・・・ と」 エリはギプスのカウンターを7に合わせると、ギプスを装着してみた。その瞬 間、ギプスは消えて無くなり、変わってエリの一挙手一動が、かなりぎこちなく なって行くのがチンプイには見えた。そして『あぁ、付けちゃった・・・』と言 わんばかりの表情でチンプイはエリを見た。 「・・・どう、エリちゃん?」 「なにか・・・ とっても動くのが大変そう。それに、動く度になにか体が熱く なって行くような気がする」 待っていましたとばかりに、ワンダユウは口を開いた。 「それはパーソナルサウナ効果が現れている証拠です。そのまま熱くなって行き 発汗作用で、脱水症状に成らない程度に、一気に体重を減らす効果があるのです。 ついでに申し上げておきますと、汗は滴になる前に蒸発しますので、エリさまが 汗まみれになることはございませんのでご安心下さい。エリさま。殿下の為にお やせになると言うそのお心。必ずしや殿下も感動なされると思いますぅ!!」 「な! なに言ってるのよワンダユウさん!!」 エリはワンダユウを追いかけようとするが、今のエリはギプスの為にいつもの 機動性が失われているのであった(笑)。ワンダユウはエリの追撃をひょいと振り 切ると。 「まぁまぁ、エリさま。そう照れなくても結構です。ははは! では私はこれに て失礼致します!! ワンダユ~~~~ゥ!!」 エリは苦々しくワンダユウの搭乗するUFOを見送った。 それからが大変だった!! エリは全ての動作を強烈に制限され、また動く度 にエリの体から水分が逃げて行くのである。如何にやせる為とは言え、楽しい土 曜の午後がこれでは地獄の刻としかエリには思えなかった。エリはギプスを外そ うとギプスの跡を辿ろうと思ったが、何処にもそれらしい手ごたえはない!! 仕方なく、エリはチンプイに頼み込むことにした。 「チンプイ。今日は内木さんのところに遊びに行くからギプスを外して欲しいん だけど。明日からダイエットに励むから。ね?」 そう頼み込むエリに、チンプイは憂鬱な表情でこう答えた。 「残念ながらエリちゃん。そのギプスはエリちゃんが設定しただけの体重変動が 無い限り外れないんだ。だから覚悟決めた方がいいよ」 エリの中に衝撃が走った!!(笑) 「じゃぁ・・・ 私が7キロやせないと・・・」 「そう。一生掛かっても外れないことになるね・・・」 チンプイの言葉に、エリは膝を床につき、脱力してしまった(笑)。 仕方ない! エリは何としても体重7キロを減らすことに集中しようと考えた。 追いつめられたエリはギプス付きでジョギングをしようと着替えて階段を降りて 行った。ギプスは装着後は全く邪魔にならないようになるようである。流石はマー ル星の製品だけはあるな、とエリは思った。 階段を降りると、ママがなにやらキッチンで悩んでいる場面に出くわした。 「ママ。どうしたの?」 「あら、エリ。何そのかっこ?」 「へへへ! ちょっとジョギングなんかしようと思って・・・(^_^;)」 「そう。じゃぁ今度ママもつき合うわ」 「え? どうしたの? 急にママがジョギングなんて・・・」 「どうも最近私太り気味らしくって。今日体重を測ったら急に太り出したのよ」 『なぁんだ。ママもダイエットか。やっぱりママも女よね』エリは意味もない 連帯意識を持つのであった(笑)。 「ところでママ。何考え込んでるの?」 そうそうとばかりに、公爵夫人は目の前の秤を見るように、エリを呼び寄せた。 「この秤おかしいのよ。今晩の夕食用に買ってきたお肉の重さをなんとなく測っ てみたら頼んだよりも重いから、目盛りが正確かどうか、いつも確かめるのに使っ てるこのコップの重さを測ったんだけど、やっぱり重いのよねぇ。壊れちゃった のかしら・・・?」 「いつもより、重い・・・?」 その瞬間。エリは自分の体が何か恐ろしく軽くなったような気がした。と同時 に、ママが何やら騒ぎだした。 「あら? さっきより軽い表示になったわ。元に戻ったみたいね。良かったわ! 何か調子が悪かったのね。あら? エリ?」 エリは無言でキッチンを後にした。廊下に出たエリは、チンプイが階段の上空 をコソコソと飛んで行くのを目撃した。 「失敗したなぁ。エリちゃんを脅かすつもりでかけた『暫定重力コントロール』 を解除するの忘れるなんて・・・」 「そう言うことだったのね。チ・ン・プ・イ・・・」 チンプイの背後。ドアの方向から不気味な、恨めしそうな声が聞こえて来た。 恐る恐る振り向くチンプイ。そして、そこには怒髪天、怒りに髪を逆立てている エリの姿があった・・・・・・(^_^;) 「・・・え、エリちゃん・・・(^_^;;;)」 引きつり、苦笑いするチンプイに、恐怖の大王! エリが迫る・・・ 《《《 涙のダイエット日記 完 》》》 Bパートアイキャッチ「チンプイっ」エリ 根本 剛志(MAP1144)