#72 Article 1431 Posted at 1991/04/29 22:33:23 by 根本 剛志 (MAP1144) [NO.440]

Subject: エスパーエリさま

《#440・Bパート》

                《《《 エスパーエリさま 》》》


 すがすがしい朝であった。木々の朝露が朝日の輝きを得て美しく輝いている。
されど『春眠暁を覚えず』とはよく言ったものでエリは未だに起きようとはしな
かった。いや、何も春だからではない。一般的な人ならば誰でもそうであるよう
に単に起きたくないだけなのである。されど、そんな朝寝坊の人種とは異なった
存在もあるものでママはいつものように台所に立ちせわしげに包丁をまな板の上
で踊らせていた。こきみ良いリズムが朝を連想させる。ま、ここまでは何処の家
庭でも平和なのである。問題はこれから・・・ この一握りの朝の達人が真の実
力行使を行うのはこれからなのだ。
「いい加減に起きなさ~~~い!!」
 ママの憂鬱は毎朝、中々起き出さない娘を叩き起こす事であろう。この日エリ
は前日のチンプイとの賭博行為(笑)で遅くまで起きていた為、いつもより根性を
入れて布団の中で粘っていたのであるが、ママの奥義である『布団返し』が見事
に決まりエリの布団はあっと言う間にたたまれてしまったのである。この技は是
非とも皆さんに観て頂きたいものなのであるが・・・ いかんせんこれは文章物。
涙を飲んで諦めてもらうしかないであろう(クスクス)。
 エリの横では科法を失ったチンプイが丸くなって眠っていた。その姿ははた目
から見ていても中々可愛いらしい。その横でエリはのろのろっと、いかにも気だ
るそうに起き上がった。
「・・・チンプイ、もう朝よ・・・ 起きなさい」
 そう言うエリ自身も、今にも眠ってしまいそうな調子である。されどチンプイ
は中々起き出そうとしない。チンプイを起こすことを諦めたエリは仕方なくベッ
ドから抜け出し、着替えをしようとタンスの引出しに手をかけた。
「あぁ、なんか面倒くさいなぁ・・・ チンプイみたいに科法が使えればこんな
苦労もしなくても・・・ !?」
 エリはふと思った。そう言えば昨日チンプイと賭をしてチンプイの科法を全て
自分が取り込んでしまったのではないか? いや、もしかするといつものように
夢を見ていたのかも知れない。その証拠に自分が科法を使えるなんてこれっぽっ
ちも自覚が無いのである。まぁ誰も見ていないことであるし・・・ エリは試し
にタンスの引出しを開けてみることにした。今なら夢で全てが片付く。
「エリ!」
 エリはそう一声挙げると引出しの『動向』に注目していた。やはり何も起きな
いではないか。
「ははは。やっぱりアレは夢だったのね・・・ さてと、着替え着替え・・・」
 その時、階下からママの悲鳴が聞こえてきた。どうせママの事だからまた何か
ドジをしたに違いないとエリは思い構わず着替えを行っていた。
「着替え完了! さて! 朝ご飯んん!!」
 ランドセルを抱えながらエリは階段を駆け降りて行く。台所のドアのノブに手
を架けたところでママの悲鳴が再度、いや連続して聞こえて来るのに気が付いた。
「どうしたのかしら?」
 そう思い、エリはパパとママの寝室に足を向けたのであるが・・・
「な、何なのこれぇ!!」
 エリの目の前で展開されていた光景は、エリの部屋を除く全てのタンスの引出
しが引き抜かれ、中の衣類が四散にし空中に飛び散っている光景であった。
「まさかと・・・ は思うけど・・・」
 そう。エリの考えた通りこれはエリの科法のかけ方に問題があったようである。
チンプイの会得している科法はインスタントな初心者向け科法ではなく本物の科
法であると言うところにエリの失敗はあったのだ。これは気合いを入れて再度科
法をかけるしかないとエリは思った。精神統一を(したつもりで)してエリは念
じるように科法を放った。
「エリっ!!」
 このかけ声と共に、四散していた衣類は一気に統制を持ってタンスの引出しに
吸い込まれ、そして引出しはもとの『鞘』に戻っていったのである。何とか今度
は成功したようだ・・・

「いってきま~~~すっ!!」
 元気いっぱいの声と共に、エリはいつものように塀を飛び越えて学校に登校し
て行った。後にはいつものようにママの叱る声が聞こえるが、そんなものは聞こ
えない聞こえない! 今日はいつもより多少の余裕がある。何も走らなくても充
分間に合うのであるが、自分に起きた変化に居ても立っても居られないくらいに
エリの心は弾んでいたのだ。しばらく走ると同じ方向に歩く大勢の小学生の中に
エリは内木を見つけた。
「あ! 内木さん、おはよう!!」
「エリちゃん、おはよう」
 いつものように落ち着いた調子で笑顔を浮かべ、内木はエリに答えた。
「今日は余裕があるね。それにしても、何か良いことでもあったの?」
「え?」
「だって、何かいつもよりうきうきしているように見えるからさ」
 『流石に内木さんは鋭いわ!』エリはそう思った。だが、はた目から見ていれ
ば今朝のエリは必要以上にニコニコしていることは明かであろう(^_^;)。見方に
よっては顔に締りが無いと言えなくもない。
「実わね・・・ ちょっと内木さん耳を貸して」
 ヒソヒソと内木にエリはことの真相を語った。
「えぇ!? エリちゃんがチンプイの科法を全部賭事で取っちゃったぁ?!」
 これには流石に内木も驚きを隠せなかった。それはそうだろう。如何に科法が
安直に使えるものだとしても、これ程意図も簡単に科法力を個体から個体へ移動
出来る物だとは・・・
「まぁ今日中にチンプイに返してあげようと思っているけど、1日位はいっかなっ
と思って。学校から帰るまではこのまま科法使いで居ようと思うの」
「でもエリちゃんの話を聞いていると科法って簡単に使えるようで実はそうでな
いってことが分かってるんだから注意しないといけないね」
 あくまでも内木はエリ思いの優等生なのであった(^_^;)。
 その時、二つの影が素早く二人に近ずいて来た。影からいきなり触手のような
物が伸びたかと思うとその影は一気にエリのスカートに手を架け素早く、そして
一気にめくり上げたのであった!!(クスクス) そのイキナリの攻撃に意表を突かれ
たエリはなす術もなくただ凝固するのみであった。
 ・・・数秒後・・・
「きゃあぁぁぁぁっ!!」
 我に帰ったエリは一気に叫び声を上げたのは言うまでもないだろう。そしてそ
の必殺の『スカートめくり』をしたのが大江山とその一党(と言っても小政しか
居ないのだが(笑))であることは皆さん先刻ご承知の通りである。大江山にとっ
て『スカートめくり』とは一種の趣味・生き甲斐・芸術にまで高められた崇高な
行為であり、決して悪意から行っているものではない。もっとも、こうなると始
末に終えないが・・・
「へっへっへ~~ぇ!! 今日も白か。相変わらず変化の無い趣味をしてるじゃ
ねぇか(笑)」
 こう言われてエリが逆上しない方がおかしい。通常の場合内木の前では猫を被っ
たところがあるエリであるがこうなると状況が見えてこないのである。
「なんですってっ!! じゃぁ大江山くんは毎日毎日色違いのをはいてるって言
うのぉ!?」
 逆上するのも分かるのだが、ここまで来ると品が無い(^_^;)。
「けっ! 女のくせにそんなこと言うのかよ。こんなヤツの話なんて聞いてられっ
か。小政行くぞ!!」
「へい! オヤブン」
 毎度のあいずちと共に小政は大江山の後を追った。
 こうなって面白くないのはエリであろう。被害者であるはずのエリは『こんな
ヤツ』よばわりでシカトされたのである。逆上から危険な領域へ。理性は既に因
果地平にまで吹き飛んでいた。
「・・・科法使いをなめるんじゃないわよ・・・」
「え、エリちゃん!! いけないよっ!!」
 そのエリの言葉を聞いた内木は慌ててエリの自制を求めようとしたが既に遅し!
「科法! 人工降雨!! エリっ!!!」
 その瞬間、かえでヶ丘小の上空に黒雲が現れたかと思うと、一気に凝縮された
その雲達は大江山達の頭上に滝のような、それこそ本当に滝のような雨を降らせ
たのであった!!
「わぁ~~~~っ!!! 何でエリが科法使えるんだぁ~~~~っ!!!!」
 大江山は、それこそ脱兎の勢いで校内に逃げ込んで行った。されど、滝のよう
な雨は一瞬で大江山達を完璧にずぶ濡れにしてしまったので余り意味は無いので
あるが・・・
 エリは校庭の一角で大江山達への仕返しを完了して悦に入っていた。『結構私
も科法使えるんじゃない』と。
「エリちゃん、ちょっとやり過ぎじゃないかなぁ・・・」
 この展開に着いて行けない内木はエリの行動と使った科法の威力に恐れをなし
ていた。その時、内木はある異変に気付いた。
「エリちゃん。さっきの雲がまだ残ってるようだけど、どうやってアレを消すん
だい?」
「え?」
 そう言われて初めて気が付いた。科法をどうやって具現化するかの術は知って
いてもそれを収拾する術をエリは知らないのである(これじゃワケナイだ(^_^;))。
そして、その雲は次第に勢力を増しエリの頭上に達したかと思うと・・・ 突然
イカズチがエリを襲った!!『ズドォバリバリバリバリバリ~~~~ィッ!!』
「きゃあぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
 一瞬の出来事であった。
 そのイカズチを受けたエリはその場に気を失って倒れ込んでしまう。
「え、エリちゃんっっ!!!」
 その内木の声も聞こえず、エリは何の反応も示すことはなかった。

 春日家二階。
 エリの部屋でチンプイは不自由な生活を送ることを余技なくされていた。
 科法力を全てエリに奪われた(?)チンプイには春日家の階段は結構キツイもの
がある。何せあの身体に大きな足。飛行しないと動きずらい事と言ったら・・・
こう考えるとやはり科法が使えないチンプイはただの縫いぐるみ以下である。
「あ~~~ぁ・・・ んな賭事するんじゃなかったなぁ・・・ おかげでボクは
エリちゃんの部屋から出ることもままならないや・・・ ん??」
 チンプイが自分の身体の異変に気付いたのはその時だった。身体中にみなぎる
パワー!! こ、これはもしかして!? チンプイは自分の直感の確証を得る為
身構えると・・・
「チンプイっ!!」
 そのかけ声と共にチンプイの身体は中に浮いていた。
「おかしいなぁ? どうしたんだろ・・・」
 チンプイは事の次第を理解していない。

 消毒薬の臭いがした。
 エリは自分が今何処でどうしているのか皆目見当が付かない。目をゆっくりと
開けたエリの目には白い天井と壁が映っている。そして反対の方向には、白いカー
テンがあった。そう、ここは保健室。エリは落雷で気を失いここに運び込まれて
来たのである。
「気が付いた?」
 優しい声がカーテンの向こうから聞こえた。保健医の林原先生である(^_^;)。
カーテンを手で払うとベッドの傍らにある椅子に座りエリの身体を調べ始めた。
「・・・あの、私どうしたんですか・・・?」
 エリは状況が把握出来ないでいた。
「雷に打たれたのよ。覚えていないの?」
「・・・・・・!」
 そう、思い出した!! 自分の放った科法の黒雲が制御を失い、その雲が発し
たイカズチを受けたのだ。『内木さんに嫌なところを見せちゃったわ・・・』そ
う思いつつ、自分はどのくらい気を失っていたのだろう? エリはほんの少しそ
んなことが気になっていた。
 一通りの検診を終えた先生は『よしっ!』と言わんばかりにエリの肩を叩いた。
ちなみにこの林原先生。女の先生で女の子からも人気がある(クスクス)。
「取り合えず大丈夫みたいね。安心したわ。でも、今日は帰った方が良いかも知
れないわね。何しろ雷に打たれたんですもの」
「あの、先生。今何時なんですか・・・?」
「え? 時間? えっと・・・10時ね。貴方が雷に打たれてから1時間ちょっ
とって言うところかしら? でも、早く目が覚めて良かったわ」
 本当に『ほっ』としたように先生はこう言うと机に向かって立ち上がり歩き始
める。
「これから『早退願い』を書いてあげるから、もう今日は帰りなさいね。そして
お医者さんに行って詳しく検査を受けなさい。何かあったら大変ですものね」
 『早退願い』の書類に走るペンの音が、静かな保健室の隅々に満ちていった。

 知らぬ間に科法力は消えていた。そのことにガッカリしたエリは元気なく春日
家の玄関をくぐった。
「・・・ただいま」
 そして、そのエリの帰宅を待っていたようにママはエリを早速病院に連れて行っ
た。検査の結果は『異常無し』。この結果でママはそれまで気が気でなかった為
か一気に力を失っていくようにエリには見えた。それはそうだろう。大切な一人
娘が雷に打たれると言う事故に遭ったのだ。とにかく今日は安静にしていなさい
と医者の忠告を受けて、帰宅後エリは一人部屋で惚けていた。チンプイはと言う
と、戻った科法に嬉しさの余り町中を飛び回っていたのであろう。夕方頃にやっ
と帰ってきた。
「あ、エリちゃんおかえり~~~っ」
 ベッドに寄りかかっていたエリはベランダのチンプイに目をやった。
「やっぱりチンプイに科法力返っていたのね。でも、もう科法なんてこりごりよ」
 そんなエリの言葉に、どうしたのかとチンプイは不思議がった。彼は今だエリ
に起こった今回の事件を知ってはいなかったのであるから。事の次第はエリの口
から淡々と語られた。
「やっぱり今のエリちゃんには科法は使いこなせないんだよ」
「分かってはいるけど、やっぱりこう言うのって悔しいじゃない」
「そうかなぁ?」
 『どうせ科法を使えるチンプイには分からないわよ』エリは心の中でそう呟い
た。そして、このまま引き下がるのもしゃくだと思ったのだろう。エリの口から
はこんな言葉が出てきた。
「ま、チンプイも科法が使えるからって言っても『テレポート』なんかは不得意
だしね」
 チンプイとしても科法使いとしてのプライドもあろう。この言葉には少々釈然
としない物を感じた。されどこれはエリの嫉妬からくるものと理解している手前
怒ってもあまり意味はないと受け流した。エリに背中を向けながら。
「ま、人にはそれぞれ『得手・不得手』ってのがあるからね」
「でも、良いわよね。不得意でも『テレポート』出来るんだから・・・ あ~ぁ、
内木さんのところにテレポート出来たら・・・・・・」
 エリの言葉が途切れた。何故こんなところで言葉が途切れたのかチンプイは分
からなかったが、とにかくまたエリが意地けたのであろうと思った。
「エリちゃんももう意地けるのは止めてさ。マール星に来ればすぐに科法を使え
るようになるし思い切って殿下と結婚したら・・・」
 エリの方向に向き返ったチンプイはエリがこの部屋に居ないことを初めて理解
したのであった(^_^;)。
「ありゃりゃ!? え、エリちゃん??」

 内木は優等生である。
 彼はその日々の努力によってかえでヶ丘小でも1・2を争う秀才であった。当
然彼は夕方あたりには宿題やら何やらで机に向かっている訳なのだが、今回は昼
間のエリの事が気になって少々勉強が手に付かない様子であった。
 と、突然ベッドの方向から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「・・・良いんだけどなぁ。そうすればママに見つかる事なく内木さんの部屋に
一気に遊びに行けるのに・・・ ねぇ、聞いてるのチンプ・・・い゛・・・」
 エリはやっとそこでここが内木の部屋であることを理解した。エリも内木も目
が点になっているのは仕方が無いことか?(^_^;)
「エリちゃん、どうしたのイキナリ現れて・・・」
「・・・こ、こんにちは内木さん。私、なんでここに居るのかしら・・・??」

「すると、エリちゃんはチンプイとエリちゃんの部屋に居て、気が付いたらここ
に居たって言うんだね」
「そうなの。そのときは『テレポート』の話をしていたんだけどそうして目を閉
じてい気が付いたらここに居たのよ」
 二人はうなった・・・ されど、この場合考えられることは限られているでは
ないか。そう! チンプイがエリを内木の部屋に『テレポート』させたと考える
のが一番自然である。
「そうとしか考えられないよ。でもチンプイもイキナリテレポートさせるなんて
思い切ったことをするね」
「そうよ。チンプイったらひどいんだから!! 返ったらとっちめてあげるわ!」
「まぁまぁエリちゃん。でも元気そうで良かった。心配していたんだ。でも大丈
夫みたいだね」
 内木のその言葉にエリは急に『おしとやか』な振舞いに急変した(^_^;)。
「あ、ありがとう内木さん。心配してくれて・・・ 嬉しいわ・・・」
 エリは感動でいっぱいであった。
 その時内木家に電話のベルが鳴り響いた。どうやら春日公爵夫人からの電話ら
しい(笑)。
「いけない! 今日は安静にしていなさいってママに言われていたんだっけ!
マズイわマズイ!! あ~~っ!! 早く内に帰らなくっちゃ~~~~っ!!」
 エリは目を閉じながら両手を胸にじたんだを踏んでいた。
 と、その時である!! 内木の前からエリの姿は消えて無くなった!?
「エリちゃんっ!?」
 後に残るは呆然と立ち尽くす彼の姿だけ・・・・・・

「・・・どうしよう! どうしよう!!・・・」
「エリちゃんっ! 急に消えたり現れたり!! 何処へ行ってたの!?」
「どうしよう!! どうし・・・・・・ へ?」
 自分の部屋? さっきまでは内木さんの部屋・・・? 目の前にチンプイ。
「チンプイ・・・ あなた私をテレポートで内木さんのところへ跳ばしたでしょ
う?」
「そんなことしてないよ! だってボクがテレポート得意じゃないのを一番知っ
てるのはエリちゃんじゃないか!!」
「そ、そっかぁ・・・」
 チンプイの懸命とも思える言葉に、エリは納得せざるを得なかった。あれこれ
考えてみるもののこれと言った考えは思い付かない。ワンダユウさんならわざわ
ざ内木のところにエリをテレポートさせるなどと言うことは考え難いことである
し、他のマール星人とも考えられない。それなら・・・ エリは一つの推論を思
い付いた。
「ねぇチンプイ。もしかしてまだ私の中にチンプイの科法力が残っているのかも
知れないんじゃない?」
 チンプイはエリの考えには消極的そうに。
「でも科法力が戻る時は完全に元にも戻るからそれは考えられないと思うけど。
でも全く無いとも言いきれないなぁ。じゃぁこの『科法力測定器』でエリちゃん
に科法力があるかどうか測ってみよう」
 そう言いチンプイが取り出した測定器は体温計のような細いガラス管であった。
「エリちゃんに科法力があればこのガラス管が力によって色分けされた光を出す
んだ。試しにくわえてみて」
 エリは少々うさん臭そうにその測定器をくわえてみた。するとどうだろう?
そのガラス管は全く輝きもせず、ただの透明なガラス管の状態を維持していた。
「やっぱり今のエリちゃんには科法力は残っていないんだよ」
 測定器を口から出したエリは三白眼で憂鬱な表情になっている。
「じゃぁ一体なんなのよぉ・・・(・_・;)」
 エリは少々神経質になってきた。自分に訳の分からない力が働いているのは間
違い無く、そんなエリを見てチンプイも何かフォローをしようと思いつつ中々言
葉が出て来ない。沈黙が続いてどのくらい経っただろう? やはりと言おうかチ
ンプイが口火を切った。
「まぁエリちゃん、気にすること無いと思うよ。だってたいした害がある訳じゃ
ないし・・・」
「たいしたこと無いですってぇ!? 充分大変よ! 気が付かない内に何処か分
からないところに跳ばされちゃうんだから!! あっ! 分かったわ!! きっ
とこんな過激なことする人って言ったら、マジローさんしか居ないじゃない!!」

 マール星諜報部本部
「へっっっくしゅっ!!! 誰だ! この俺のことを噂するのは・・・」

「でもエリちゃんおかしいと思わない? ワンダユウさんと同じでマジローさん
がエリちゃんを内木くんのところにテレポートさせる訳が無いじゃない」
「うるさいわねチンプイっ! あっちへ行きなさいっっ!!」
 その瞬間であった! チンプイはエリの指さした方向にあるクッションに一気
に叩き付けられたのである。エリは余りに突然のことに慌てふためいた。
「だ、大丈夫チンプイ!?」
「大丈夫。でも何かに突き飛ばされたような気がしたけど・・・」
 途端にチンプイはハっとしてエリを見上げた。
「ど、どうしたのチンプイ?」
「エリちゃん、、もしかしてこれってESPじゃないのかなぁ?」
「E・S・P・・・? 何それ??」
「言わゆる超能力だよ。今までエリちゃんが何かをしたいと思った時にエリちゃ
んに不思議なことが起こっていたけど、エリちゃんに超能力があるなら全部カタ
が着くじゃない。ESPなら『科法測定器』には引っかからないし」
 エリはチンプイの言葉を実感なく聞いていた。
「私に・・・ そんな力があるって言うの・・・?」
「試してみなよ」
「どうやって?」
 その気の無い返答にチンプイは少々コケてしまった(^_^;)。
「例えばさ、あそこにある人形を持ち上げてみたいな・・・ と念じてみて」
「そうね・・・ やってみましょ」
 エリはそう言うと半信半疑で部屋の一角にある人形にめがけて『動いて』と念
じてみた。されど変化は起きない。
「駄目ね。やっぱり動かないわよ」
「駄目だよ! 信じて疑わず心の底から念じてみて」
 その再度のチンプイの言葉に、エリは今度こそと思いつつ念じてみることにし
た。
「(動いて。お願いだから・・・)」
 途端、人形は微かに動いたかと思うとその動きは見る見る内に大きくなり、や
がてその人形は中に向かって急速上昇し、力なく床に落ちて行った。この異常な
光景にエリは初めて自分にある力に自覚し目覚めたのである。
 両手を見ながらエリは信じられないと言いたげにチンプイに向き返った。
「チンプイ、どうして私にこんな力が目覚めたのかしら・・・?」
「ここ最近変わったことって無かった?」
「!?」
 言われてみれば。エリは今日学校で自分の放った科法で落雷に遭っている。も
しかするとこれが原因なのか・・・??
「きっとそれが原因だよ。その雷でエリちゃんに超能力が使えるようになったん
だ」
 外は薄暗くなり始め、今まさに宵の明星が西の空に輝き始めようと言う時間の
ことであった・・・


 昨日とは全く違うと言っていい程、エリの寝起きはすこぶる良好だった。
 いつもなら毎朝起こすのが一苦労のママなのであるが、今朝エリを見たのは洗
面所でである。
「あらエリちゃん、今朝は早いのね」
 そのママの声にエリは振り向いたのであるが、歯を磨いている歯ブラシは手を
離れて上下運動を行い、タオルはひらひらと中を浮いている。エリの手には何も
無くただブラブラと動いているのみであった。
「うわわおひゃやふ(ママおはよう)」
「お、おはよう・・・・・・」
 そう言いつつ、頭を抑えつつ廊下を歩いて行くママ。見てはいけないものを見
てしまったと言う面もちである。
 こんな調子だからエリの気持ちはもはや学校へ飛んでいた。朝食もそそくさと
済まし、いざ一路『かえでヶ丘小学校』へ!!
「いってきま~~~~す!!」

 唐突ではあるが、学校。
 昨日の落雷騒ぎでエリは学校中の有名人になっていた。それはそうだろう。雷
を受けて何ともなかった(訳ではないが)等と言うのは滅多あるものではない。
特にエリの親友である『さやかとほたる』の心配そうなことと言った相当なもの
で、それこそ病み上がりの者を気遣うようである。
 しかしそんな中にあっても常にマイペースな連中という者も存在する訳で、大
江山は素直な心配の仕方が出来ない手前、毎度の『スカートめくり』と言う手段
で己の存在を誇示し気遣っていると言うことをアピールしようと今また『スカー
トめくり』を敢行するのであった。
「お! 今日はイチゴ模様~~~~っ!!」
 しかし、めくられた当のエリは大した反応を示さない。はた? おかしいなと
思いつつ既にエリから10数メートル離れた地点より大江山はエリの様子を伺っ
ていた。どちらかと言うとエリよりもさやかとほたるの方が大騒ぎしている。
「あんた達! なんてことすんのよ!!」
「エリちゃん、どうしたの? いつもなら大江山くんに喰ってかかるのに・・・」
 だがエリの表情には怒りと言うより哀れみにも似た表情を浮かべている。この
表情に二人は何かおかしいと感じた時、やっとエリは口を開いた。
「ねえ二人とも、これから大江山くん達がどうなるか見てて・・・」
「え?」
 訳の分からない二人を後目に、エリは離れたところにいる大江山達に腕を向け
た。
「エリの奴、なにやってるんだ?」
「さあ? 何してるんでしょうねぇ・・・ え?」
「あ・・・!? な、なんだぁ!!!」
 二人の足は地を離れ、そのまま足払いをされたように一気に回転し地面に足が
付いた時には既に二人とも地面と全身で親睦を深めていた。
「な、どうしちゃったのあの二人・・・?」
「へへへへ! 実はね・・・」
 エリはニコニコしながらさやかとほたるの二人に耳打ちした。
「えぇ? じゃあ今のって、エリの超能力なの??」
「そうなの。ほら、昨日私雷に打たれたでしょ? あの時のショックでどうやら
ESPに目覚めたらしいのよ」
「ふぅん・・・ ところでさ、エリの超能力って物を動かすだけなの?」
「分からないわ。だってまだそこまで試していないもの。それがどうかしたの?」
 エリは何かさやかが腹に一物持っているのではないかと感じていた。
「でさぁ、折角エリにそんな力があるんだから・・・」
 さやかはエリに耳打ちをした。
「え?」

 チンプイは春日家の屋根の上で昼寝をしていた。そんなチンプイの目の前に見
慣れたUFOが異常接近して来た。いつものワンダユウである。
「あ、ワンダユウさん」
「チンプイ、このようなところで何をしておるのだ・・・?」
「ちょっと昼寝をね」
「なに? 昼寝じゃとぉ!! 貴様はこのワシが汗水たらして殿下のために働い
ているのに、そんな羨ましいことをしていたと言うのか!! この事を王室議会
に報告したらどうなるか、お前とて知っておろうが」
 ワンダユウの剣幕は相当なものであった。これにはチンプイも堪えたらしい。
「そんなに言わなくったって・・・」
「ま、取り合えず今回は見逃してやろう。ところで、エリさまは今学校か? 今
日はこの『強力害虫撃退バッジ』を持ってきたのだが」
「えぇ! あの自動守護装置の『強力害虫撃退バッジ』!? そんなものエリちゃ
んに付けてどうするの?」
「決っておるだろうが。大江山のような輩にエリさまをいじめられるのがワシは
我慢出来んのだ。それ故この守護装置を・・・ ところで、何時頃エリさまは戻
られるのだ?」
 ワンダユウのその問いにチンプイは。
「でもそのバッジはエリちゃんにはもう必要無いよ。実はねぇ・・・」
 チンプイは今までの経過をワンダユウになるたけ詳しく説明した。
「な、なんじゃとぉ!? エリさまにESP!?!?」
 流石のワンダユウもこれには驚いた(^_^;)。
「ではこの装置は必要無いどころかエリさまには危険な代物じゃなぁ」
「え? 何でさ?」
「実はこのバッジは『強力な作用を押さえつける』作用があってな。ESPに関
してはESP使用者自身に力が跳ね返る作用があるのだ」
「ふう~~~~ん・・・」
「しかし、エリさまがESPをなぁ・・・」
 ワンダユウはしみじみと呟いた。

「起立・礼・着席」
 いつものように内木の声と共に授業は始まった。そしてこれまたいつものよう
に、極めて退屈かつ面白味の無い時間となっていた。エリにとってせいぜい学校
で楽しいことと言ったら休み時間でのさやかとほたるとのおしゃべり、給食、そ
して内木とまず確実に会えると言うところだろう。
「さてこの人物は一体何をした人物か、分かる者はいるか?」
 社会の教科書を手に持ち、エリ達の担任の先生は生徒に質問を投げかけた。い
つもなら数人の生徒の挙手があるのだが・・・ 目の前の40人の生徒は何かに
注目し自分の質問が全く耳に入っていないことにやっと気付いた。
「君達・・・ どうしたのかね・・・・・・?」
 教卓から立ち上がり皆の前に一歩足を進めた途端、教室は爆笑の渦に巻き込ま
れた!!
「あははははははははははははははははっ!!!」
 生徒全員が正面を見て、ある者は指さし、またある者は机につっぷして腹を抱
えて笑っている!! 一体何が? 先生が振り返り見たものは・・・ 黒板一面
に描かれたこのクラスの担任、つまり自分の巨大な(しかもとても下手くそな!)
似顔絵であった!!
「なっ! なんだこれわぁっっ!?!?」
 ついさっきまでこんなものは描かれていなかったのに!!
「誰かね! こんないたずらをしたのわっ!!!」
 その大声に驚いたエリ達は、瞬間に笑い声を発するのを止めた。
 しかし、そのほとんどの生徒は笑いを押し殺しているにすぎず、教室のいたる
ところで今だに『くすくす』笑いをしている。

 そんでもって今は音楽の時間。この時間と家庭科の時間だけはどうやらエリ達
の担任の先生は得意としていないようで他の先生に御任せすることになっている
らしい。
「それじゃぁ今日は・・・」
 担当の先生は若い女の先生。音大卒ではないか思われるのだが、そんなことは
この際問題ではない。その時、音楽室の隣にある準備(楽器保管)室から何か物
音が聞こえて来た。
「先生、後ろの部屋で何か聞こえてますけどぉ・・・」
「え? 何かしらね・・・? ちょっと待っていなさい」
 そう言うとその若先生は準備室へと入って行った。と、その時・・・
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
「どうしたんですか? 先生!!」
 生徒達が飛び込んだ準備室の中では、楽器と言う楽器が空中に濫舞し目茶苦茶
な音を響かせていた。その光景を目の当たりにした内木はもしかしてと思いエリ
に目をやった。エリは自分の席で笑いもせず何かを一心に念じているように見え
た。

 放課後。
 本日の授業は多少の騒ぎ(もっともあれから毎時間騒動が起こっていたのであ
るが(^_^;))はあったものの、つつがなく終了しエリとさやか&ほたるはいつも
のようにそろって下校しようとしていた。校庭に出た3人は待ちかまえていたと
思われる内木と出くわした。
「エリちゃん、ちょっと話があるんだけど良いかな? すぐ済むから」
「え、ええ・・・」
 いつになく真剣な言葉にエリは内木に連れられて校舎の脇まで歩いて行った。
「実は話って言うのは、今日の騒ぎの事なんだけど」
「・・・え? 騒ぎって、あの先生達が災難に遭ったこと?」
 エリは明らかに動揺しているように見えた。このエリのちょっとした仕草を内
木が見逃すはずはない。だが、エリは何も知らないと言わんばかりに首を大きく
左右に振りキッパリとこう言う。
「私、全く何んにも知らないわ!」
「エリちゃん!!」
 内木が珍しくエリをにらんだ。その真剣な目にとてもエリはこれ以上の嘘をつ
くことが出来なかった・・・
「ご、ごめんなさい。つい調子にのって・・・」
「ボクはえりちゃんがあんなことをする娘だなんて思わなかったよ!」
 明らかに内木はエリを軽蔑していた。
 そう、悪いのは自分だ!! エリは分かっていた。分かっているが胸の奥から
何かとても苦しい思いがこみ上げ、やがてそれは『悲しみ』と言う感情に変わり
顔は下を向き肩は小刻みに震えていた。
「ご・・・ ごめんなさ~~~~~い・・・」
 やがて大粒の涙をボロボロと落しながらエリは2・3歩後ろへ引くと一気に内
木の元からエリはテレポートして何処へともなく消えて行った・・・
 後に残った内木はうつむき加減で、それでも怒りの表情を今だうっすらと浮か
べている。と、そこへ事の一部始終を見ていたさやかとほたるが現れた。
「内木さん、エリを責めないで・・・ 責任は私にあるのよ・・・ エリ、本当
はあんなことしたくなかったんだけど私は『やっぱりエリって度胸が無いのね』
って私が焚き付けたの・・・」
「でも、実行したのはエリちゃんじゃないか・・・」
「内木さんの言葉は分かるわ。でもこのままじゃエリが・・・かわいそう・・・」
 さやかの懸命の言葉に内木は思い直したか、今までの怒りの表情は和らぎ、い
つもの穏和な内木少年の表情に変わっている。さやかに歩み寄りいつもの内木ら
しい優しい声でこう言った。
「ごめん、ボクも言いすぎたよ。これからエリちゃんにも誤りに行く。だから君
も泣かないで・・・」
「内木さん・・・」
 やけに妙な雰囲気に一部始終を見ていたほたるは訳が分からなくなっていた。
 ま、それはともかくとして、さやかは内木の優しさに感動していた。
「・・・でもエリが何処にいるか分からないから、私も一緒にエリを捜すわ!」
 だが内木は首をゆっくりと左右に振る。
「ボクだけで捜したいんだ。それに・・・」
「それに・・・?」
「エリちゃんのいるところが、ボクには分かるんだ」
 内木の目はかえでヶ丘のある一点を既に見つめていた。

 小高い丘の上。その傾斜した丘の一角にポツンと1本の木が立っている。エリ
はその木のしたでうずくまって泣いていた。
 陽が西に傾き、陽光が赤身を帯びて行く。
 しばらくの刻が過ぎ、草を踏みしめる音が聞こえてきた。その足音はやがてエ
リの目の前で止まり、そこからその足音が再びその場を離れることは無かった。
それでもエリは現実から逃避したいが為に、その存在を無視してる。
「・・・エリちゃん」
 その言葉にエリは『はっ!』となり顔を上に上げた。エリの目の前には内木が
優しい笑みを浮かべてそこに立っている。涙で濡れたエリの顔は内木の優しい笑
顔を目の当たりにしても未だ悲しい。
「ゴメン。さっきはボクも言い過ぎたと思うよ・・・」
 その言葉にもエリは救われることはない。自分の行った業に対して、校庭での
内木の言葉はエリに笑顔を拒絶させるのに充分な事であったから。
 エリの心が未だ沈んだままな事が内木には耐えられなかった。いつも自分に笑
顔で接してくれるこの女の子が、今はその笑顔の片鱗も見ることが出来ないから。
自分の正義感がこうも人を傷つけることになるとは正直彼も思わなかった。彼自
身も言葉を失い、その場に立ち尽くすのが精いっぱいでしかない。
 陽は尚も傾き、遠い山並の中に没しようとしていた。

 薄暗くなった空をチンプイはエリを捜している。『探知スター』を使えば良い
と思うのだが・・・(^_^;) 内木同様チンプイもエリの行きそうなところは良く
分かってる。
 いつもの、そう、あの丘の木の下。やはりエリはそこに居た。悲しいことや辛
いことがあったらいつもここに来ていたから。チンプイもエリと一緒によくここ
に来たものだ。内木が一緒に居たのは少々解せないところがチンプイにはあった。
やはり学校で何かあったのだろうか? チンプイは二人の様子を伺う為近くの雑
木に隠れることにした。
 西の空高く宵の明星が輝いている。まだ他の星が輝くには空は明るく、そう、
やっと季節外れのシリウスが分かるくらいである。
 二人が言葉を失ってからどれくらいの刻が流れたか・・・ やっとエリが口を
開いた。
「・・・内木さん、私って本当に馬鹿ね。確かに自分の力を試したくって先生達
をからかったのだけど・・・ でも今は自分のしたことを本当に反省しているわ。
だから・・・」
 エリの言葉はそこで途切れた。チンプイはエリのその言葉である程度の状況を
理解した。やはり学校で自分の力を使ってしまったに違いない。そして、その力
のせいでこのような状況に陥っていることも。
「エリちゃん。反省しているんならもう気にすること無いよ。ボクだって自分に
そんな力があったら何に使っていいか分からなくなると思うし、ちょっとしたい
たずら心なら誰にだってあるさ」
 そう言いつつ、内木はエリに手を差し伸べた。
「さ、エリちゃん。もう暗くなったし帰ろう」
 差し出された手を見て、エリ表情にやっと笑顔が戻っていた。その笑顔に微笑
み返しを内木はした。エリは内木の手を取ると一気に立ち上がり内木を見つめ、
そして顔をうっすらと赤く染めながら呟くように言った。
「・・・内木さん、ありがとう・・・」
 見つめる二人にチンプイはやれやれと思いつつもうそろそろ出て行っても大丈
夫かな? と思ったその時!!
「エリさま~~~~っ!! こちらにいらっしゃいましたか~~~~っ!!」
「(ゲっ!! ワンダユウさんっ!!)」
 ワンダユウは一気に突撃し、勢い余って二人に激突した!! その反動でエリ
とワンダユウは傾斜した草原を転げ落ちて行く!!
「きゃあぁぁぁ!!」
「エリちゃん、超能力を使って!!」
 内木のその言葉にエリは『そうだった!』と呟き瞬時に自分とワンダユウの転
がり落ちるのを停止させた。その時雑木の物陰に居たチンプイが大声で叫んだ!!
「駄目! エリちゃんっ!!」
 と、その時!! ワンダユウから強力な電撃がエリを襲った!!
「きゃあ!!!」
「あっ! エリちゃんっっ!!」
 エリはその電撃を受けて失神してしまった・・・

 どれくらいの刻が流れたか・・・
 エリは自分の部屋のベッドで目が覚めた。
「エリちゃん、気が付いた?」
 ベッドの傍らには内木がエリに笑顔でそう問いかけた。
「私・・・ 一体どうしたの?」
「それはですなぁ・・・」
 ワンダユウが内木のすぐ横ですまなそうな顔をしながら答えた。
「実は私の持っていました『強力害虫撃退バッジ』がエリさまの強力なESPに
過剰に反応しましてエリさまに自衛電撃を浴びせてしまったのです。それと・・」
 ワンダユウが言葉をそこで切ったのがエリには気になる。
「どうしたの?」
「はあ・・・ 実はその電撃のショックで、エリさまのESPが消滅してしまっ
たらしいのです」
 エリはその言葉に、自分のESPを自覚する為に動かした人形に再び動くよう
に『念じて』みた。だが、ワンダユウの言葉通り人形は『ピク!』っとも動かな
かった。エリは自分の開花した能力が再び無くなってしまったことに少々残念な
気分になっていた。エリは急に起き上がるとワンダユウをにらんだ! ワンダユ
ウはそのエリの表情に身震いし、これから起こるであろう事態に対し覚悟を決め
ていた。その二人を見て内木はこの場を何とかしようとエリを制止しようとした
のだが、エリの剣幕は相当強力そうに見え思わず内木は怯んでしまう。
 だがエリの表情は一気に柔らかいものへと変わって行った。
「いいのよ、別に。元々私には超能力なんか無かったんだわ」
「エリちゃん」
 内木はエリを見直し、そんな内木を見てエリはちょっと照れていた。
「はは! それに私が超能力なんか持ってても意味無いしね。私は私。普通の女
の子『春日エリ』で良いわ(クスクス)」
 ワンダユウはその言葉でほっとし、チンプイはいかにもエリらしいその言葉を
素直に受け止めていた。そして内木くんも・・・

 だが『でも、ちょっと惜しかったかな?』とエリは心の片隅でそう思ったこと
は事実である(^_^;)。



         《《《  エスパーエリさま  完  》》》

 Bパートアイキャッチ『チンプイっっ!!』(エリ)


                           根本 剛志(MAP1144)