#72 Article 1195 Posted at 1991/04/04 19:54:35 by 根本 剛志 (MAP1144) [NO.439]

Subject: 「エリさま自伝記を書く」

《#439・Aパート》

                 《《《 エリさま自伝記を書く 》》》


 かえでヶ丘小学校6年*組の教室は実に普通のクラスだった。
 教師道この道18年のベテラン教師に元気の良い生徒40名(推定値)。窓から
射込む陽の光に居眠りする生徒も無く、ただ3月ももう半ばで春休みが近いと感
じられる日々が続く。今はただ先生の声だけが教室中に響いているだけ。
「このように自伝記を書くような偉い人物に君達が成ってくれる事を先生は望ん
でいる訳ではないが、この自伝記に書かれた人達のようにみんな努力して行くよ
うにしなければならないな」
 そう、今は国語の時間。昔の偉い人の自伝記を教材にしているのだが、何とも
かったるいとエリは思いつつ窓の外を眺めていた。校庭の桜の木も心無しか色付
き始めたように見えるな。まだ枯れたような黒い枝しか見えないけど後もう少し
できれいな桜が・・・ そんな事をぼやっと考えていたその時である。
「か~~~~~~すがっ!!(注・春日) 何をよそ見している!!」
『しまった!!』とエリは思いつつ窓の方向から教壇の上に視線を移す。そこに
は“いつものように”自分を睨みつける先生の姿が。
「君はいつも私の話を聞かずに外ばかりを見ているようだが、それ程君の見てい
る方向には私が君に教えるよりもっと素晴らしい教師が居るとでも言いたいのか
ね!?」
 ちょっと先生も大人げないなとエリは思った。だがエリの授業中の注意は今に
始まったことではない。それこそ数限り無い注意をされ、ついこの前は居眠りを
していたエリはイキナリ『殿下の馬鹿~~~っ!!』と叫んでしまったのである。
そんな調子でエリのことを先生が特にチェックしてしまうのは仕方の無いところ
だろう。それでもエリは仕方なく立ち上がり臆面もなく・・・
「こんな春の美しい陽の光の中の風景が私を引き付けるんです。きれいなものを
見たくないって先生も思わないでしょう・・・?」
 またか・・・ そんな表情で教師の表情は沈痛な面もちに次第に変わって行く
のがクラス中の皆にもしっかと見えた。エリの言い訳はいつもこのように自己中
心の展開で語られる為ほとんど先生としても諦め気味とも思える。エリはエリで
いつものように右手を後頭部に持って行き頭をかきながら力無く愛想笑いを浮か
べている。そしてエリは内心『また廊下に立たなければならないかしら?』と諦
めてもいたのだが、今回はちょっとばかり展開が違っていた。
「春日。君の言うことは良く分かった。だが君も注意されたらもっとすまなそう
な顔くらいしたらどうかね。そう言えばアメリカの初代大統領『ジョージ・ワシ
ントン』の伝記くらいは君も読んだ事があるだろう?」
「いいえ」
 間髪を入れずにあっさりとエリに否定された先生は教壇から足を踏み外しそう
になった。それはそうだろう。あまりのあっけない返事に自分がこれから言おう
と頭の中で組み立てていたシナリオが全て破壊されたようなものなのだから。仕
方なく初めから『ワシントン』の話をしなければならないと諦めながらエリに何
から話そうとしたところで、挙手をする生徒の居ることに初めて気が付いたので
ある。
「何かね?」
 その言葉にすっくと立ち上がった生徒は、スネ美であった。
「先生。よろしかったら私に『ジョージ・ワシントン』の解説をさせて頂けませ
んでしょうかぁ?」
 その言葉にエリは内心『余計なことを』と思ったのであるが、先生はと言うと
『それではお願いしようか』と続け、スネ美は『ワシントン』の伝記についてしゃ
べり始めたのである。その解説は30分はあるだろう国語の残り時間を丸々潰す
羽目になったのであるがそれでも先生は何も言わず、ただスネ美の話す間違いを
1・2点ばかり訂正してうなずくだけだった。
 ここで先生が何を言おうとしたのかは賢明な方ならお分かりだろうとは思うの
だが、敢えてフォローしておくことにしよう。つまりは例の『桜の木を伐ってし
まった』有名な話である。素直に自らの行いを話し反省する事を促そうとしたの
であるが、先生の考えはちょっとばかり甘かったようであった。
 それはともかく、スネ美の『例の口調』で30分も話を聞かされた他の生徒達
はたまったものではない。特に大江山の反応はすさまじくムシズが走っているよ
うである。この事態を招いたエリに対する大江山の攻撃は御想像にお任せすると
して、スネ美の最後の言葉に流石のエリも切れかかったようであった。
「この程度の事は一般常識ですことよぉ(笑)」
 確かに自分の落度ではあるが、みんなの前でこれ程の屈辱を受けて怒らない者
は居ないと思う。だが今は先生の前である。黙って耐えるしかない・・・

 下校時間。いつものような元気は無く、エリは完璧に沈んでいた。
「エリちゃん、今日のスネ美さんの事なんかあんまり気にしない方が良いと思う
よ。そりゃちょっとは今回エリちゃんにも落度はあったと思うけど・・・」
 隠し事の出来ない内木くんであった(^_^;)。
 そんな内木の言葉に止めを刺されたのかエリは増々落ち込んで行った。
「今日はもうここで良いわ。ありがとう内木さん。それじゃぁさようなら」
 分かれるエリの背中に言い様の無いものを感じて、流石に内木は何も言えなかっ
た。とぼとぼと歩くエリにはいつものように垣根を飛び越える元気があろう筈は
無く、玄関で掃き掃除をしていたママが『どうしたんだろう?』と娘を驚いた表
情で見下ろす。
「お帰りなさい。一体どうしたの・・・?」
 やっとママの存在に気が付いたのか立ち止まったエリは小声で『ただいま』と
呟くように言った。そんな娘に不信を抱かない訳には行かない。ママはいつもの
ごとく『ピンっ!』と閃いたようである。
「エリちゃん。もしかしてテストで酷い点数を取ったんじゃぁないでしょうね!」
 予想もしない言葉にエリは一瞬ママが何を言っているのかさえも分からない状
態であるように見えた。が、徐々にママの言葉を理解したエリはすかさずいつも
の調子で反撃を敢行する。
「何よぉ! 人が落ち込んでいる時にそんな根も葉もない無い言いがかり言うの
は止めてよね。優しいママだったら娘が落ち込んでいる時は優しい言葉をかけて
くれるものじゃないの? 信じらんないわぁ! ママなんて大っっ嫌いっ!!」
 そう言いながらエリは玄関から家の中へ消えて行った。後にはあっけに取られ
るママが竹ぼうきを持ってたたずんでいる・・・ 一気に階段を駆け上がる足音
は相当大きなものである。そんな音がチンプイに聞こえない筈が無い。部屋のド
アを一気に開けて『ただいま』も言わずにベッドに泣き伏せよとするエリに押し
潰されそうになり寸でのところで身構えていたチンプイはこの危機を辛くも回避
することが出来た。
「エリちゃん、どうしたのぉ?」
 気にならない筈は無い。こんなエリは滅多に見られるものではないからだ。例
えテストで0点取ろうとも、ママに叱られても、こんなエリを見ることはないか
らである。エリは何も答えずただベッドに伏せってるだけであった。
 暫くして気が済んだのかエリは起き上がりベッドに腰掛けるように座りなおし
た。なんとか元気になったエリを見てほっとしたチンプイであったが、突然エリ
は机に向かってノートを開き何かを書き始める。
「どうしたのエリちゃん? 一体何書いてるの?」
 そんなチンプイを振り向きざまに鉛筆を口に加えて持ったまま無言でほんの少
しの間エリは見た。そしてイスを回転させエリはチンプイと向かい合う形になっ
た。
「チンプイ。私って不幸よね」
 と、突然そんな事を言われてもどう反応して良いのかチンプイには全く分から
なかった。そんなチンプイを見てエリは『くすっ』と笑うと言葉を続けていった。
「自伝記を書いているのよ」
「自伝記・・・?」
 チンプイはあっけに取られた。
「そう。私の自伝記よ。ほら、自分のした事を本にするの」
 エリは机の上で今書き込んだノートをチンプイに見せた。ところがそのノート
にはまだタイトルの『私の生涯 ~不幸との隣合わせ~』としか書いていなかっ
た。自分でも今だタイトルしか書いていない事に気付き『パっ!』っと隠してし
まうエリにチンプイは呆れた表情でエリを見上げている。
「自伝記って、それは偉い人だからこそ価値があるんでしょ? エリちゃんが書
いたってどうしょもないと思うけど」
『うっ!』とエリは言葉に詰まった。だがこれで負けるエリではない。
「あら、あたしはママのお手伝いとかちゃんとしてる偉い子よ」
 明らかに問題の取り違えをしているとチンプイは思った。
「それじゃ『偉い』違いだよ。それにどうして急にそんなの書く気になったのさ」
 チンプイでなくても世界七不思議の一つに数え上げても良いかも知れないと思
う方が正しい。エリはちょっと照れたように赤くなりモジモジしている。『えぇ、
やだぁ(クスクス)』といかにももっと来て欲しいようなそぶりで嫌がっていた。そん
なエリにチンプイは仕方無しに再度聞いて見ることにした。
「で、何で自伝記なんて書いてるの??」
 2度言われては仕方が無いわね。と言う表情でエリはチンプイに話し始めた。
「だいたいの自伝記を書く人ってどん底の不幸から成功して行くじゃない? そ
れを考えると今の私ってそのもののような感じなのよね。きっと私は将来有名に
なると思うの。だから今の内に自伝記を書いとこうと思うのよ。そうすればすぐ
に出せるでしょ?(クスクス)」
 エリの事だからそんなところだろうとチンプイは思っていたのであるが『やっ
ぱり・・・』の展開に少々呆れ気味になっていた。それでも何とか理性を保った
チンプイはある一つの事に気が付くのである。
「でもワンダユウさんがこのこと知ったら大変な事になるんじゃない?」
「え? 何でよ」
「だってワンダユウさんの事だから『おぉ! エリさまがご自分から自伝記をお
書きになっているとは。やっとマール星に来られてルルロフ殿下のお妃になる事
を決心なされたのであろう!!』・・・ な~~んて言うかも知れないよ!」
 エリは無邪気に笑いながら、
「関係無い関係無い。私は地球でこの自伝記を出すんだからマール星には関係無
いわよ。さぁ! バリバリ書くぞぉ!!」
 真剣に机に向かいエリは自伝記を完成させる為に集中しているようであった。
でもチンプイはこれからの展開を考えると頭が痛い思いでいっぱいである・・・

 30分経過。エリは気持ち良さそうに机に伏していた(笑)。
 チンプイはそれ見た事かと思いエリの書いていたノートを肩ごしに見てみた。
すると、やはりと言うか何と言うか、タイトルのみが燦然と輝き後はきれいに真っ
白け! 所詮エリは文章を書く柄ではない。まぁこんなもんだろうと思いつつ、
エリが風邪をひかないようにベッドまで運んでいた時である。
「おめでとうございますっ!!」
 紙テープと紙吹雪が机の上に舞いワンダユウがいつものごとく騒がしく登場!
されど今回は狙いが外れたかエリはベッドの上。
「ワンダユウじいさん。エリちゃんは今寝てるんだから起こすような事は止めて
よ!」
「これはすまぬ事をした。で、まさかエリさまはご病気なのか!?」
「そんな筈無いじゃない。今までエリちゃんは机に向かっていたんだ」
 チンプイの言葉にワンダユウは理解を示したようである。皆まで言わなくても
エリの事に関して二人はこの程度の会話で理解する事が出来るのであった。まぁ
大体の場合はではあるが・・・
「では起こすのにしのびない。今回は殿下のディスクをお持ち致したのであるが、
まぁこれでは仕方あるまいな。チンプイ、エリさまがお起きになられたらに殿下
のディスクをお見せするのだぞ! ではワシはこれで・・・」
 そう言ってそそくさと帰って行こうとするワンダユウに、チンプイは机の上の
今は単なるゴミと化した紙テープを指(?)さした。
「まさかちらかしたまま帰って行くつもりじゃないだろうね。ワンダユウさん!
エリちゃんが見たらなんて言うかなぁ・・・」
 チンプイの刺のある言葉にンダユウは立ち止まった。
「チンプイ。そこはおまえが処理する管轄ではないか?」
 しかしチンプイはまるっきりの無視を決め込んでいた。しばらくしてその態度
に業を煮やしたワンダユウが忌々しそうにエリの机に歩み寄って行った。エリの
机の前にまで来た。ワンダユウは振り向きざまにチンプイを見るが、チンプイは
エリの眠るベッドで既に丸くなっている。
「だ~~~~っ! チンプイ、今回ばかりは見逃してやるわい。『科法・ミニブ
ラックホール』ワンダユウ!!」
 そのかけ声と共にエリの部屋の一角に黒々とした物体が表れ、紙テープは跡形
もなくその物体に吸い込まれて行った。そのテープの中にノートを発見したワン
ダユウは吸い込まれる直前、ノートを掴み引き戻した。
「はて? これは何じゃろう・・・?」
 何の気なしにノートをめくったワンダユウは、そこに例のタイトル『私の生涯
~不幸との隣合わせ~』と言う文字を見つけたのであった。そのタイトルを見た
ワンダユウの反応は・・・
「おぉ! エリさまがご自分から自伝記をお書きになっているとは。やっとマー
ル星に来られてルルロフ殿下のお妃になる事を決心なされたのであろう!!」
 チンプイがエリに言った言葉そのものを発したのであっる(笑)。
「しかし、未だタイトルのみとは・・・ 流石に公爵夫人のお子さんだけあると
言う事だろうか・・・(^_^;)」
 このボードに来る「チンプイ」ファンにはもう説明せずとも分かるだろう。つ
まりはそう言う事だ(笑)。
 ワンダユウはなおもエリのこれから書こうと言う自伝記に思いを馳せていた。
もしこれをマール星で発行する事が出来たらエリさま御本人が書かれた物である
から超ベストセラー間違い無しである。だが、以前の公爵夫人のように途中で飽
きて止めてしまわれては元も子もない。しかもこれがマール星で発行するなどと
言ったが最後エリはそれこそもう自伝記なんて書かないと言うに決まっている。
エリはエリでワンダユウをよそにすやすやと未だ眠りの世界。そしてチンプイも
丸くなり・・・ 途端にワンダユウの表情は怪しの表情に変貌して行く。
「このチャンスを最大限生かす事にしよう」
 ワンダユウは春日家の屋根の上に駐機してあるUFOに向い、ある小さな棒状
の、鉛筆と腕時計のような物を取り出しエリの部屋に戻ってきた。するとワンダ
ユウはエリの手に鉛筆を握らせ、腕時計状の物をエリの左手首に巻き付けた。す
ると、さっとベッドにどきやけ笑いを浮かべながら、
「『科法・拘束自動執筆&スケジューラー』ワンダユ~~ウ!!」
 と、エリの握らされた鉛筆にワンダユウは科法をかけ、その科法によってエリ
は何かに取り付かれたように無言で『スケジューラー』の加速機能を使ったごと
く目にも止まらぬ早業で自伝記を書き上げて行った。無論彼女は眠っているので
あるが自伝記を書き追えたノートの数はみるみる内に増えて行きワンダユウが調
達したノートで100冊分! 僅か10分で書き上げて行ったのである。恐るべ
きは『スケジューラー』の威力であろう。書き上げたエリは再び机に伏してしま
いワンダユウはエリを元居たベッドに再び戻しワンダユウの計画は成功と相成っ
た。
 自伝記の書かれた数冊をパラパラっと見たワンダユウは確かにワンダユウの用
意したノートにエリの文字が書かれていることを確認し一人で悦に入っている。
すると、不意に眠っているエリに対してワンダユウはいかにも真面目な顔でこう
言った。
「エリさま。貴方様の意思はこのワンダユウめがマール星で叶えて差し上げましょ
う。今はごゆっくりとお休みになって下さいませ。・・・うひひひひ・・・」
 そう言うか言い終わらないかと言う状況でワンダユウの目は一気に笑いに変わ
り、喜々としてエリの自伝記が書かれた100冊分のノートを持ってワンダユウ
はマール星に帰って行く。後に残るは、元々のエリがこれから書こうとしていた、
タイトルのみが書かれたエリのノートだけであった。

 それからどのくらいの時間が経ったであろうか? ママの夕御飯と言う声でエ
リは目が覚めた。
「あら? 私いつの間にか眠っていたんだわ・・・」
 寝ぼけ眼のエリが可愛い(クスクス)。
 エリのすぐ側でチンプイは丸くなりすやすやと寝息を立てている。そのチンプ
イをエリは黙って笑顔を浮かべながら見ている。
「やっぱりチンプイって可愛いわよね(クスクス)」
 ママの声はより一層トーンを上げていた。エリはチンプイを起こすと夕御飯の
待つ台所の食卓へと向かった。

 マール星。
 自由と平和の世界ではあるが大量消費経済と常に変わった嗜好を求める風習が
あると言うことはある意味で退屈な世界なのかも知れない。そんな世界でエリの
存在と言うのは暫く退屈であった王室に一つの活気を与える存在であり、国民も
またそれは同じであった。エリ関係の商品は爆発的に売れる原因はそんなところ
から来ているのかも知れない。
 ワンダユウは先程エリの書いた自伝記のノートを大量に『マール星王室印刷所』
へ持ち込んだ。ワンダユウの目論見は当然これによってエリの人気をマール星国
民に今以上に盛り上げる為であることは間違い無いだろう。満面の笑みを浮かべ
て受付担当者にワンダユウはこれがエリの自筆原稿であると伝えた。
「え~~っ! これがあのエリのさまの直接書かれた肉筆原稿ですってぇ!?」
 受付担当者は余りの感動に失神してしまった。
「こりゃちょっとオーバー過ぎるのではないか?」
 そう思わずにはいられないが他の受付に持って行っても反応はみな同じ。ワン
ダユウにとってはエリの存在は極めて『普通』ではあるが、彼らにとってエリは
『雲の上の人』なのである。自由なんちゃらと言いながらも王室と民間の格差は
やはり絶大な物があるのであろう。これで負けるようなワンダユウではない!
マール星各地の印刷所を周り歩き、それこそ地の果てまでも捜しまわった結果、
最後の印刷所でも同じ反応で終わるに過ぎなかった。結局はワンダユウの苦労し
て(?)立てた計画は挫折の地へ赴くしか無かったのである。
 力尽き家に帰るワンダユウであるが、そう言えば未だエリの自伝記をワンダユ
ウはちゃんと読んでいなかった事に気付いた。
「こうなったらワシだけでも、これまでのエリさまの自伝記を読んでエリさまの
事を知ることにするかの」
 ワンダユウは『No.1』と書かれた1冊目1ページから目を通し始めた。それが
2冊3冊と進んで行くにしたがってワンダユウは自分の血の気が徐々に引いて行
くのがありありと分かった。
「もしかして・・・ これは発行しない方が良かったのかも知れんな・・・」

 ではエリの書いた自伝記をここでほんの一部分を抜粋しよう。

『人は苦労をして大きくなると先生は言うけど、スネ美さんのような親の七光で
苦労も無くぶくぶくと私腹を肥すのが本当の世の中だと私は思うわ。
 大体・・・ 何なのよ! あの人を見下した態度!! あんなんじゃいくらお
金があったって将来誰も結婚してくれるような人絶対居ないわよ!! それに大
江山くんも大江山くんよ! 別に私がスネ美さんにあんな長話させた訳じゃない
じゃない!! それなのに私のせいにするなんてぇ! ・・・・・・以下略
 ・・・でも、内木さんってやっぱり優しいわよね。私が落ち込んでいる時はい
つでも慰めてくれるし。マール星でワンダユウさんを使いにしかよこさない殿下
とは偉い違いよ! やっぱり私は地球から離れたくないわ・・・以下略』

 結局は『文句とのろけ』の日記でしかなかったのであった(笑)。

 翌日。エリは昨日の事などすっかり忘れて元気を取り戻していた。
「自伝記? あ、アレね。どうしたのか分からないけど、もう書く気が全くおき
ないのよ。夢の中で一気に自伝記書いちゃってスッキリしたような気がするのよ
ね(クスクス)」
 チンプイの質問に慌ただしい朝食の中エリはそう答える。どうやら彼女にとっ
て自伝記とは『ストレスの解消』以外の何物でもなかったようである(^_^;)。
「いってきま~~~~すっ!!」
 いつものように遅刻ギリギリで玄関を飛び出して行くその姿は元気印そのもの!
それを屋根の上からチンプイは、黙って見ていつもながらエリの忘却力の凄さと
気持ちの切り替えの早さに舌を巻かずにはいられない。
 そして、ワンダユウもそんなエリを見てマール星王室の将来を思わず憂いてし
まうのであ(^_^;)。

「本当にほたる殿にお妃候補を変更しようか悩んでしまうなぁ・・・」
「いい加減な事言わないでよ! ワンダユウじいさん!!」(チンプイ談)


              《《《 エリさま自伝記を書く 完 》》》

Aパート・アイキャッチ『わぁんだぁゆうぅぅ!!』(クスクス)

                           根本 剛志(MAP1144)