#72 Article 1128 Posted at 1991/03/29 19:11:54 by 根本 剛志 (MAP1144) [NO.438]

Subject: 宇宙漂流記(後編)

《《《 Bパート(後編) 》》》


 エリはバルコニーから空を見上げていた。
 青い澄み切った空の中に、その青の中に溶け込んでしまいそうな月が浮かんで
いる。その月はゆっくりと移動して行くように見えた。
 やがてその空の一点に輝く物を見つけたエリはその『物体』がみるみるうちに
近ずいて来るのを理解した。そしてソレはワンダユウがいつも乗って来るUFO
である事を知った。暫くして乗り込んでいたワンダユウが脱とのごとくエリの部
屋に飛び込んで来た。
「エリさま!! 一大事でございます!!」
 そりゃ一大事でしょうと、エリは思った。
「何よ! 元はと言えばワンダユウさんがいけないんでしょう!!」
「は? 私がどうかしたのでございますか・・・?」
 ワンダユウのとぼけ顔にエリは・・・ 切れた。
「私がどうしたの問題じゃないでしょう! ワンダユウさんが地球をマール星に
持っていっちゃうって計画は分かっているのよ! 早くこの状況をなんとかしな
さい! そうじゃないと今度こそ本っっっっっ当に地球とマール星の国交は断絶
しますからねっっ!!」
 エリはワンダユウに強く詰め寄った。・・・が、当のワンダユウは狐につまま
れたような顔でエリを見上げていた。暫くワンダユウはエリの言葉を一つずつ理
解するように黙り込んでうんうんうなっていた。そして答えが出たらしく、イラ
つくエリに向かって体を浮かせ目線を合わせてこう言った。
「あの、エリさま。私が地球の軌道を外してマール星にワープさせていると申さ
れたのでしょうか・・・?」
「そ、その通りよ・・・」
 ワンダユウはエリをじっと見つめていた(^_^;)。そしてどのくらいの時間が経っ
たであろうか? ワンダユウはおもむろに口を開いた。
「何ですとぉぉぉっっ!! ではもう地球はマール星に向かっていると申される
のですかぁ!!??」
「当り前じゃない! 大体一番知っているのはワンダユウさんでしょう!?」
「ち、違います。マール天地身命に誓って私がそんな事をする訳がありません!
大体そんな事をしたら宇宙法規・第4989条第4項9に反する行いとなって私
は宇宙極刑々務所で終身刑になってしまいます!! 私はマール星の影の組織が
地球に向かって居るとエリさまにお伝えに参ったのでございます!!!」
 どうしようどうしようと慌てるワンダユウを見ているとあながち嘘でもないよ
うな気がしてきた。では一体誰がワンダユウに化けて今回の事件を引き起こして
いるのだろうか?

  天空での月の移動を観測したアマチュア天文家の情報を早速流したマスコミは
『人類史上始まって以来の大事件』と報道(そりゃそうだ(^_^;))。この報道は
全世界を一瞬の内に駆け巡った!!
 しかし、本当に軌道を逸脱しているのは他ならぬ『地球』の方であった。
 各国政府はこの地球の一大事に知らぬ存ぜぬを通し、政治家は既にパニックに
陥りここぞとばかりに日頃から暴言を吐く与党議員に暴行を加える野党議員や、
『黒い金』を握りしめて悦にはいるもの。またそのテの金で「私を救ってくれ!」
と新興宗教や各国宇宙センターに殺到する者・・・etc 科学者は科学者でこ
の地球の軌道逸脱で地球の環境がどう変化するか狂ったように観測する者。これ
からの地球軌道を半狂乱で計算する者。そして宗教はこの日史上最大の繁栄を迎
える事となった。市民はこの世の終わりとばかりに暴徒と化し、以下略(^_^;)…
 かえでヶ丘はと言えば、パニックにとまではいかないまでも地球最後の日が近
ずいている事で街中大騒ぎにはなっていた。大江山は内木をもっといじめておけ
ばよかったと嘆き、スネ美はと言えば「これは夢ですわ!」と現実から逃避する
始末(^_^;)。ちなみに内木くんは急に風邪をひいて寝込んでしまいこの喧騒には
無縁だったりするのであった・・・・・・(^_^;)

 そんな街の喧騒を後目に一人悦に入っている者が居た。そう、他ならぬこの事
件を起こした真犯人! 実はその名はマジロー! 彼は自分の計画の経過をコン
ピュータで計算し、このまま順調に行けば地球は月軌道に達し月の裏側にマール
星影の最高頭脳集団WHE(わしらは・ほんとうは・えらいんじゃ!)の協力の
元設置された『空間超光速移送装置』で地球を****星系マール星軌道の反対
側に移動させる事が出来ると喜々としていたのであった。
「これでエリさまもマール星に嫁がざるを得ない状況になるだろう。万一の場合
地球を人質に捕り脅しをかけ嫌でも言う事を聞いて頂くまで・・・」
 マジローの性格は皆さんご存じの通り『思い込んだら曲がった道も、行くが男
のド根性!!』と言った性格である。今回はとうとう内木なぞ問題外で地球ごと
エリを誘拐する計画をブチ起てたのである!!
 そんな事とはつゆ知らずチンプイは全速で先程UFOの居た空に向かっていた。
「何としてもじいさんに今回の計画を秘密の内に収拾してもらわないと、じいさ
ん自体が犯罪者になっちゃう・・・」
 溶け込みそうな月を見ながらチンプイは地球が動き始めてることを確認した。
このままでは本当に地球はマール星にワープさせられてしまう! チンプイはな
おも全速で上空を目指す。

「・・・と言う事は、地球を月まで持って行って・・・」
「そうです。そして月の裏側にセットした超大型の『空間超光速移送装置』で地
球を一気にマール星の惑星公転軌道まで持って行く計画と思われます」
「分かってるならさっさとその『空間なんとか』って言うのを壊せば良いでしょ
う!?」
 エリはワンダユウにそう詰め寄った。されどワンダユウは困り果てた様子でエ
リに申し訳なさそうに言うのであった。
「はぁ。私もそうしたいのは山々なのですがぁ、この『空間超光速移送装置』が
先程から作動しておりまして・・・ マール星々間警護隊の戦艦が地球に接近す
る事が出来ないんでございます。戦艦ばかりではございません。今となってはど
んな乗り物もワープする事が不可能となっています。とにかく連中の使用してい
る装置は周辺時空にに多大な影響を及ぼしましてこの近辺にワープアウトしよう
とする宇宙船は跳ね返されてしまうのです・・・」
「じゃぁこのまま地球をむざむざマール星に持っていっちゃっても良い訳!?」
 ワンダユウは実際何を言われても返す言葉もない。ま、このまま地球がマール
星まで一気にワープするような事になれば流石のエリもマール星に来ざるを得な
いのではないか? 等と言う考えが脳裏に浮かんでこない訳ではなかった。思わ
ずこれは上手く行くかも知れんと思うと顔が緩んでしまい、ワンダユウの顔は情
けないくらいの表情になっていたいた。エリはそんなワンダユウが疑わしく思え
てきた。
「本当にワンダユウさんが今回の事件に絡んでいないの?」
 エリの疑惑を突くような言葉にワンダユウは我に返った。
「そ、そのような事はございません!! ただ私はエリさまが・・・」
 まったくしょうがないと思いつつ、エリは再度ワンダユウに問い直した。
「本当にどうにもならないの?」
「まぁ方法は全く無い訳ではございませんがぁ・・・」
 いつになく真面目な表情をしてワンダユウは話始めた。
「簡単と言えば簡単なのです。現在の地球の軌道逸脱とマール星へのワープを行
おうとしているのは今も言いました通り月面裏の装置によるものです。そしてこ
の装置には人間が乗り込む訳には行かないのです。何故なら超空間振動に寄って
有機物により構成される物質は破壊される為なのです。その為全行程をコンピュー
タのプログラムによって行われるのですが、地球の位置認識の為に地球上にマー
カーをセットしなければならないのです。このマーカーと共にマーカーの発する
微弱な電波を装置で歪む時空を切り裂いて伝える為のブースターが存在する筈で
す。このブースターは月面上の装置の端末も兼ねていますのでこれによって地球
の軌道を変更する事が出来る筈です」
「それじゃぁそのブースターを見つければ!」
「はい。地球は元通りの軌道に戻る事が出来るのです」
「それじゃぁワンダユウさん。そのブースターを捜しに行きましょう!!」
 エリの中に微かな希望の光が見えてきた。地球と言う物がエリに重くのしかかっ
ていたのだから無理もないだろう。そんなエリとは対象的にワンダユウはあまり
晴やかな気分ではなさそうだった。
「どうしたの、ワンダユウさん?」
「エリさま。確かにそのブースターを捜す事が出来れば今回の事件は解決するで
しょう。ですが・・・ どうやって私達はそれを見つけ出すんでございましょう
か?」
 え? っとエリは思った。そう言われればその通り。世界は広い。それをあと
4時間少々で見つけ出すことが出来るのだろうか? しかしエリは諦めなかった。
「それを何とかするのがワンダユウさんの今回の仕事でしょう! 地球を巻き込
むことはワンダユウさんも出来ないでしょう?」
「はぁ・・・ それとですなぁ・・・」
「今度は、なに?」
「恐らくそのブースターには我々の妨害に対抗して『対科法シールド』と『対ア
ニマルタイプ干渉波』が備わっている筈。私達マール星人のアニマルタイプは近
寄る事すら出来ないでしょう」
 沈むワンダユウを見て、エリは再び沈黙してしまった・・・

「やっと見つけたぞ!!」
 チンプイはかなりの上空に浮遊しているUFOを発見した。
 しかし・・・ 先程見たワンダユウの使用する王室専用のUFOではなかった。
それはマール星でも見た事が無い型のUFO。そしてチンプイはそのUFOに近
ずくに従って自分の飛行速度が弱まって来ている事に気付いた。
「あれ? どうしたのかなぁ? うわわぁぁっっ!!」
 いきなりチンプイの目の前に”その”UFOが現れた。それと同時にチンプイ
の体は見えない何かに拘束されてしまったのだった。身動きも出来ないチンプイ
をあざ笑うかのようにUFOのキャノピーが開き搭乗者の姿が現れた。
「あ~~~~っ! あなたは! マジローさん!?」
 太陽をバックに葉巻を加えたマジローがチンプイに近ずいて来た。葉巻の煙を
チンプイに吹き付けながらマジローはチンプイにこう言った。
「おはようチンプイくん。おっと、もう昼過ぎか。先程は流石に私の変装は見破
れなかったようだね。まぁマール星諜報部の者としてはあのくらいの変装は朝飯
前だが」
 葉巻の煙にむせながらチンプイはマジローの話の続きを聞いた。
「私がこの地球を去ってから色々と君達の仕事ぶりを拝見していたのだがね、ど
う見ても甘いとしか言えない。よってこの私が以前受けた屈辱を晴らす為とプラ
イドの為にこうしてやって来た訳だ」
「でも地球ごとマール星までもって行く事はないじゃないか! それに何であん
たが『対科法シールド』と『対アニマルタイプ干渉波』の中で平気で居られるん
だ」
「貴様も地球に長く居すぎたようだな。マール星の科法の開発は日進月歩。こう
して科法をかけた本人が動けるのは通りじゃないか? まぁ貴様がマール星の情
報に疎くなったと言うのも裏を返せばそれだけエリさまをマール星にお連れする
のに時間が掛かっていると言うことではないか?」
 この言葉に流石のチンプイもぐうの音も出なかった。マジローは続けた。
「何れにせよ、エリさまをマール星にお連れする事が出来れば地球に用は無い。
エリさまが今すぐマール星に嫁がれると約束して頂ければ早速地球の軌道を元に
戻しても良いのだが」
「そんな事ボクの口から言える訳無いじゃないか!」
 マジローは”むっ!”としてチンプイに顔を押し付けた。その拍子にチンプイ
とマジローはUFOから多少離れる事となりチンプイは体に自由がある程度戻っ
た事を確認した。
「それなら仕方が無い。地球にはこのままマール星までワープして頂こう!」
 勝ち誇ったようにマジローはそう言いチンプイに背を向けた。
「そう簡単に上手く行くと思うな!『科法・ミニブラックホール乱れ打ち!!』
チンプ~~~~~イっっ!!」
 マジローはチンプイの発した多数のブラックホールをひょいと軽くかわした。
「ふっ、馬鹿め。そう簡単にこのマジロー様が貴様ごとき科法で負ける筈が・・・
何ぃぃぃぃ!!!」
 かわしたブラックホールは次々と『対科法シールド』で跳ね返され不幸にもマ
ジローは全てを直撃として受けてしまった(^_^;)。
「ぶ、ぶわかぁなぁぁぁ!! このオレさまがガキごときに・・・・・・」
 黒い点が消えると同時にマジローの叫び声もフェードアウトしていった。
「・・・やったぁ・・・ あのUFOに何かあるんだな! でもボクじゃあのU
FOに近かづけ無い・・・ どうしたらいんだ・・・」
 その時不意にチンプイの目の前で空間が光始め、多量の塵状の物質と共にマジ
ローが現れた。ダルーサの時と同じである。
「・・・・・・★!?」
 しかし、流石に複数のミニ・ブラックホールを受けた為か無傷ではなかった。
「チ、チンプイ・・・ 貴様中々やるじゃないか・・・・・・」
 そう言い残してマジローは気を失い地上に落下して行った。
「あっ! マジローさん!!」
 落下するマジローを追ってチンプイも急降下を開始した。いくら何でも傷つい
た人(?)を放って置ける筈はない。チンプイはマジローを科法で救い、エリの家
まで連れて行くことにした。

 エリの部屋ではエリとワンダユウがこれ以上と無いくらいに沈んでいた。され
ど何もしないでは解決の糸口も掴めない! エリはワンダユウと共にブースター
を捜す事にした。
 ベランダに出たエリは空の月を忌々しく見ていた。月の大きさは彼女がこれま
で見たどの月よりも大きくハッキリと見えている。時間は無い。エリの背後でワ
ンダユウも月を見ていた。
「ワンダユウさん。それじゃ行きましょう!!」
「分かりましたエリさま。 ・・・は? アレは何でしょう?」
 ワンダユウの示す方向、それはエリの頭上に見えていた。黒い影が二つどんど
んとエリの元へと近ずいているようだった。
「あっ! アレってチンプイじゃない? それと・・・☆!?」
「あれは・・・ マジローではないか!!」
 やがて二人(?)はエリの目の前まで降下を完了。マジローは気を失っているよ
うであった。

「エリちゃんただいまぁ!」
「どうしたのチンプイ? マジローさんなんか連れて来ちゃって!?」
 エリは不思議で仕方がなかった。何故マジローが今ごろこんなところに居て、
しかも気を失ってエリの元へとチンプイによって運ばれて来たのか。まぁマジロー
自身は怪我をしている様子である。
「マジローさん怪我しているのね。はやく手当して上げないといけないわ」
「とんでもない! 今回の事件はみ~~んなマジローさんのせいなんだよ!!」
 薬箱を取りに行こうとしたエリの足はそこで止まった。
「どう言う事?」
 そのエリの言葉にチンプイは今までの経過と事情を話した。
「じゃぁマジローさんが地球をマール星までワープさせようとしたのぉ!?」
「そうなんだよ。それでボクがマジローさんに怪我させちゃったの」
 チンプイが? とエリとワンダユウは事の展開に驚いていた。
「恐らくマジローさん自体も気付かない内に『対科法シールド』と『対アニマル
タイプ干渉波』の干渉を受けていたんだと思うんだけど。だからエリちゃん、こ
んな奴に手当なんかいらないよ!!」
 マジローのすぐ横でマジローをしげしげと見ていたワンダユウもチンプイの言
葉に相づちを打った。
「全くチンプイの言う通りですぞエリさま。全てはこのマジローめが悪いんので
すからわざわざそんな者に妃殿下が直々に傷の手当などする事はありません!!
こんな奴はですね、こうしてこうして!!」
 ワンダユウはカーペットの上で横になっているマジロ-を足下にしようとした。
「何するの! ワンダユウさん!!」
 エリはワンダユウを突きと飛ばしマジローをかばうのであった。そんなエリを
見てワンダユウもチンプイも唖然とした。
「エリちゃん。マジローさんは今回の騒ぎの張本人なんだよ。それなのにどうし
てかばうの?」
「だって、怪我してるのよ。そんな人を放って置けるわけが無いじゃない! 私
にはそんなひどい事出来ないわ! あと、もしマール星の人達がまだ地球が今回
の騒ぎに巻き込まれている事を知らないんだったら、マジローさんの事をマール
星の人に言わないで。マジローさんだって殿下の為にやった事なんだろうから」
 そんなエリの言葉に流石のチンプイやワンダユウも何も言う事は出来なかった。
二人ともエリの優しい言葉にマジローに対する行いを後悔しつつ、ベッドに運ば
れるマジローを見ている事しか出来なかったのでる。
 マジローのある程度の傷の手当も終わりエリは意を決したようにチンプイとワ
ンダユウに『空間超光速移送装置』を止め、地球を元の軌道に戻す為にマジロー
の乗って来たUFOに向かうことを告げた。
「しかしエリさま。我々は奴めのUFOに近付け無いのですよ。そんな状態でエ
リさまを御連れする事など出来る筈がありません」
「でもチンプイに話によると何とか10m位は近付けるみたいじゃない。それな
らこんな手を使うのはどう?」
 エリは二人に耳打ちしながら自分の計画を伝えたのではあるが・・・
「え~~~~~~~~っっ!!!」
 エリの計画は無謀そのものであった。
 とにかく近付けるところまで自分を二人に運んでもらい、それから一気にエリ
をUFOまで飛ばしてしまおうとする計画であった。まだ届かず落ちた方が科法
ですくい上げる事は出来るが、着地に失敗して叩き付けられれば大怪我をしてし
まう事にもなる。もしそんな事が王室会議に知られでもしたら・・・ チンプイ
とワンダユウは青くなり身震いした。
「でも他に手は無いでしょう? 出来ればマジローさんに解除してもらうのが一
番とは思うけどこの怪我じゃ動けそうもないし、他の人にこんな事頼む事出来な
いわ。元々私が原因なんだから・・・」
 エリの決意は堅く、二人はエリのこの言葉に痛く感動した。
「ではエリさま。本当に行われるのですね・・・?」
「大丈夫よ! 私の運動神経は並じゃないわ!!(クスクス)」
 笑顔で答えるその表情には、やはり何処かしら無理が見え隠れしていた。でも
自分がやらなければならないと言う事だけは確かなのはエリが一番承知していた。
やがてエリとチンプイ、そしてワンダユウは覚悟を決めてマジローのUFOに向
かって行った。そして、エリの部屋の一角でまた一つの決意が生まれていた。

「そ、それにしても、ここってとっても高いところね・・・」
 雲を突き抜けた高さに流石のエリも多少(?)たじろいでいる様子だった。仕方
が無いと言えば仕方が無い。そんな高さから科法の補助無しで10mを飛ばされ、
浮遊しているUFOに着地しなければならないのである。
「いいですかエリさま。我々はブースターの操作が終了しません限りあのUFO
に近ずく事が出来ません。よって全ての操作はエリさまが行わなければなりませ
ん。操作方法を書いた紙をエリさまのポケットに入れておきました。それを見て
順番通り操作して頂ければそれで結構です」
 いつになく真剣なワンダユウの眼差しにエリも否応なくこの作戦を成功させな
いと行けないと感じ取っていた。三人の居る上空は地球の軌道逸脱による気象変
化で恐ろしく強い風が吹いていた。ワンダユウの声も僅か2mと離れると聞き取
りづらくなる程である。
「ではエリさま、参りますぞぉぉ!!」
 エリはゆっくりうなずいた。その途端エリの体は突き飛ばされたように空を舞
いマジローの乗ってきたUFOへと向かっていた!! この調子なら上手く着地
出来る!! と、その途端風の流れが急に変わってエリの取っていた着地体勢は
見事に崩れ、この分では頭からUFOに激突する羽目に陥った!!
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「エリちゃ~~~~~~ん!!」
 チンプイの言葉も空しく僅か10m先のエリも助けられない自分をチンプイは
口惜しかった。もうダメ! とエリが目を閉じた瞬間、エリの体はふんわりとU
FOに着地していた。あまりの不思議さに目をぱちくりするエリ。チンプイとワ
ンダユウの科法かと思いきや、その二人とも唖然としている様子だった。そして
エリに科法をかけたのは、他ならぬマジローであった。エリの言葉に胸を打たれ
たのであろう。エリに背中を向けながらマジローは空に浮かんでいた。
「エリさま。私の仕事はエリさまをマール星にお迎えする事。
 しかし今回は私も少々使う手を誤ったようです。今回は私も素直に手を引きま
しょう」
「あ、ありがとう。マジローさん」
 マジローに例を言う必要はない筈であるが、エリの口からは素直にそんな言葉
が無意識の内に発せられていた。そんなエリであったが、今までの心労でUFO
のコクピットの中で気を失いコンソールの上に倒れ込んでしまった。マジローは
『空間超光速移送装置』の操作を行い、加えて『対科法シールド』と『対アニマ
ルタイプ干渉波』の科法も解いた。やっとの事でマジローのUFOに近寄れるチ
ンプイとワンダユウ。
「マジロー。お前の身柄は本来ならマール星国家警察に引き渡さねばならんのだ
が、エリさまのお言葉により今回は見逃すことにしよう。エリさまのお優しい心
に感謝するのだな」
 マジローは悪びれた様子も無く、ただ無口にエリをワンダユウに引渡し、地球
を後にして行った。
「やれやれ、これで何とかなったみたいだね。じいさん」

 夕方になり星が輝き始める頃、ワンダユウはマール星に帰って行った。そうそ
う。朝方にマジロー扮するワンダユウが置いて行った『コピー人形』であるが、
結局ママと共に今回の地球の一大事に二人で震えていたようであった(^_^;)。し
かしその実態が『空間超光速移送装置』のマーカーであったとは流石のチンプイ
も気付く事は出来なかったようである。
「チンプイ、たまには二人で星でも見ましょうか?」
 ベランダに出た二人は輝き始めた星を見上げていた。今回の地球軌道逸脱でか
えでヶ丘周辺の街は停電に見回れていた。星がいつもより良く見える。
「でもエリちゃん、本当は内木くんと二人っきりで見たいんじゃないの?(クスクス)」
「そりゃそうよ。でも今日は駄目でしょ? さっき内木さんのところに電話した
ら急に風邪をひいて寝こんじゃったんだって」
 ちょっとつまらなそうにそう言うエリだが、それでもベランダの手すりに頬杖
を付くエリの表情は明るい。そんなエリを見てチンプイは安心した。
「ま、それでもボクはエリちゃんにはルルロフ殿下と結婚して欲しいけどね」
 チンプイのその言葉にエリは「くすっ」っと笑った。
 やがて空も完全に暗くなり、満天の星がエリを迎えてくれた。と、そこでエリ
は不思議に思った・・・
「おかしいわぇ。本当なら乙女座のスピカが見える筈なのに、それらしい星が見
えないわ。それに何か停電って割り切っても、星の数が多過ぎやしない・・・?」
「そだね・・・ あ~~~~~~~~~っっ!!」
 と、突然チンプイは大声を上げた。まるでうろたえているようにも見える。
「ど! どうしたのよチンプイ!?」
「エ、エリちゃん・・・ この星空・・・ まるでマール星から見る星空と全く
同じに見えるよっっ!!!」
 暫くエリはチンプイが何を言っているのか理解出来ないでいる様子であったが、
徐々にその意味を理解するにつれ顔から血の気が引いて行く思いでチンプイから
星空に目を移して行った・・・

「じゃぁ、いま地球のあるところって・・・・・・・・・・」



                      《《《 惑星漂流記 完 》》》

                           根本 剛志(MAP1144)