#72 Article 1114 Posted at 1991/03/28 20:15:15 by 根本 剛志 (MAP1144) [NO.438]

Subject: 惑星漂流記(前編)

《《《 プロローグ 》》》

 無限に広がる大宇宙
 死んでいく星もあれば、生まれでる星もある
 そしていまここに
 一つの惑星の運命的な破滅の罠が張り巡らされた・・・

 月面裏
 太陽の当たらない闇の中で、不気味な輝きが辺りを照らし出していた。その光
の帯は月面上の半分を覆うように広がって行く・・・



 その日春日エリ(12歳)はいつものごとく学校から垣根を飛び越えて帰宅し
た。ママの御小言もなんのその! その10分の1も聞かずに部屋に飛び込んで
行った。
「ただいま! チンプイ」
「エリちゃんおかえり」
 ベットに座っていたチンプイが浮遊しエリの元に飛んで来た。このチンプイ、
実は異星人(?)なのである。見かけは突然変異の丸形大ネズミよろしく縫いぐる
みのような風貌で誠に女の子にはウケの良さそうな容姿である。大きさは12歳
のエリが抱きかかえるのに丁度良い位の大きさと言えば、想像が付かれるだろう
か?(これで分かった人はコワイ・・・(^_^;))
 エリに抱きかかえられたチンプイは不意にある事を思い出したようにエリに話
し始めた。
「そう言えば、ワンダユウじいさんがエリちゃんに今度こそ必ずマール星に来て
もらうって張り切ってたよ。まぁいつもの空元気だと思うけどね」
「まあ、ワンダユウさんたらまた何か企んでるのね! でも、何でチンプイにわ
ざわざそんな事言うのかしら? 突然やって来てイキナリ科法でさらって行けば
良いのにね」
「エリちゃんって、最近過激なこと言うようになったねぇ・・・(^_^;)」
「そうかしら・・・?」
 普通はそんな事は言わないものだろうと筆者も推察する(^_^;)。
 まぁそのようなことはともかく、ワンダユウさんの企むことと言えばある程度
は安心出来るので大した心配はしないで済むと二人は考えていた。いつもは成功
するかのごとく思えるワンダユウの計画は事々くチンプイの妨害とワンダユウ自
らが招いた失策により失敗しているのであった。『策士策に溺れる』そんな言葉
がワンダユウには似合っていた。『そんなワンダユウが張り巡らす罠なんて大丈
夫』とタカをくくっている訳である。そう、今までは・・・



 日曜日 朝
 ママの起こす声にも係わらず、エリはチンプイと駄眠をむさぼっていた。まる
でその寝顔は平和そのものである。と、突然・・・
「おめでとうございますっ!」
 いきなりのテープの洪水にエリとチンプイはベッドの上から押し流されそうに
なった。視界を遮るテープを無言で払いのけながらエリは当然このテープの洪水
を起こした犯人の顔を頭に思い浮かべたその顔には怒りの表情がまざまざと感じ
取れる程である。
 最後のテープ一本を右手で払いのけるやいなや、すさまじい剣幕でエリはベッ
ド下に陣取る犬型アニマルタイプ異星人ワンダユウに向かって持てる力の全てを
喉に集中し一気に叫んだ!
「ワンダユウさんっ!! 一体朝っぱらからなんですかっっっっ!!!!」
「どわぁぁ~~~~~っ!!」
 あまりの声圧にたまりかねたワンダユウは、部屋の壁に吹き飛び叩き付けられ
たのであった。
「ど、どうなされました? エリさま」
「どうしたもこうしたもないでしょう!! 日曜の朝っぱさから一体何が『おめ
でとうございます!』よ!! 安眠妨害するなんて、こうなったらマール星と地
球の国交は断絶・・・ え? な・・・ なにしてるの??」
 ワンダユウはエリの非難を聞くのを早々と切上げエリに縫いぐるみのようなも
のを差し出した。
「ささエリさま。ルルロフ殿下からの今回の贈物はこの『コピー人形』でござい
ます。この人形の優れているところはこの鼻のボタンを押した者ソックリに変身
して自分の代わりに何でもやってくれると言う・・・ あれれえ??」
 得意満面に話すワンダユウを後目にエリはさっさと再びベッドに姿を隠してし
まっていた。
「いくらワンダユウさんがどんなに便利なものを運んで来てくれても、殿下の贈
物なんて絶っっっっっ対に、受け取りませんからねっ!! それに昨日は蛍ゲン
ジのステージをTVで観て遅くなったからまだ眠いのよ・・・ おやすみ、ワン
ダユウさ・・・」
 言うよりも早く、エリは眠りの中に身を任せていた。あまりの寝つきの良さに
流石のワンダユウも呆れたのであろう。未だ丸くなり図太く眠っているチンプイ
をたたき起こした!
「こりゃチンプイ! 起きんか~~~い!!」
「何するんだよぉワンダユウじいさん」
 状況の掴めないチンプイの首を掴んで(あの手で掴めるのだろうか?)自分の
元へと引き寄せ、今までの状況の説明を怒りと共に”ワンダユウなり”に説明し
た。
「そりゃエリちゃんが受け取る訳ないよ。ワンダユウさんももうちょっと時間を
考えてからエリちゃんに殿下からのプレゼントを渡さなくっちゃ」
「ならば! お前からこの殿下のプレゼントをエリさまに渡すのだぁ!」
「や~~だね」
「貴様、自分の立場を忘れたか? お前をここに置いているのはエリさまがマー
ル星に一刻も早くおいで頂くためのお世話係なのだぞ! それがどうだぁ!!
ことごとくワシがエリさまをマール星にお連れしようとする計画を邪魔しおって
からにもぉぉぉぉぉ!! 貴様なぞこうだぁ! 科法・バリバリ!! ワンダユ
ウ~~~っ!!」
「わわっ!! 何するんだよワンダユウじいさん!!」
「え~~いやかましい! 職務怠慢の貴様に『活』を入れてやるのだ!! 大人
しく我が科法を受けんかぁぁ!!」
 エリの部屋で『科法・バリバリ』の電撃が裂烈した。その電撃は逃げるチンプ
イを追いエリの部屋を無惨にも全方位に発された。
「も~~~っ!! やかましくて寝てられないわっ!!」
 流石のエリもこの喧騒には眠れないようである(当り前か)。ベッドから一気
に上半身を起こした瞬間であった。
「これでとどめだぁ!! 食らえチンプイぃ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 哀れ『科法・バリバリ』の餌食になったのは他ならぬエリであった(^_^;)。し
かも最後の一撃と振り絞ったため、それまでの電撃とはひと味違った強烈さを発
している!!
「あぁ!? エリさまぁぁぁぁ!!??」
 既にもう遅い・・・ ワンダユウは自分の放った科法がエリに命中した事を自
覚した後、これはきっとこの世が終わる怒の言葉が放たれると恐怖する脳裏にあ
りありと浮かんでくるのであった。そしてそれが現実の物となるのはもはや時間
の問題であった。エリの表情は怒りに満ちている・・・ 当然の事ではあるが、
エリの部屋は完ぷ無きまでに破壊され尽くされていたことも付け加えておこう。
 そして! エリの口が勢いよく開かれようとしたその瞬間!!
「何なのっ! この散らかりようはっっ!!」
 春日家最強の生物(笑)『ママ』がいきなり現れた!! 当然と言えば当然であ
ろう。部屋中を破壊する音が小さかろう筈は無い。近所にまで響いたその音を聞
きつけてきたのである!?
「エリちゃん! これはどう言う事!?」
 ママはカンカンに怒っている様子であった。それはそうだろう・・・ 散らかっ
ているのではなく『破壊』されているのであるから・・・
「違うわよ! これはワンダユウさんが・・・」
「言い訳なんて聞きたくありません! ママが見ている前でちゃんと部屋を片付
けなさいっ!!」
 流石のエリもママには勝てない・・・ エリの背後ではママの剣幕に驚いてい
るワンダユウとチンプイがこそこそと隠れていた。
「(小声)ワンダユウさん、何とか言いなさいよ! あなたが悪いんでしょう」
「(小声)しかし、今私が何を言っても聞く耳持たないと言う剣幕でございますで
すよ・・・」
 その通り、ママは既に切れていた・・・
「(小声)ここは一つ、殿下の贈物である『コピー人形』をお使いになっては?」
 『殿下』の一言がエリをこの状況から逸脱させた。
「なんですってぇ!! 殿下の贈物なんて使える訳無いじゃない!! 元はと言
えばワンダユウさんがこんな朝っぱら殿下の贈物を届けるのがいけないんでしょ
うっ!!」
「何訳の分からないことを言ってるの!! さっさと片付けを始めなさい!!」
 もうこれ以上は待てないと言う剣幕でママがヒステリックに大声でエリをせか
した。背後にいるワンダユウを悔しそうににらみながらエリは落着きを取り戻そ
うとせきばらいをした。そして申し訳なさそうに・・・
「ごめんなさいママ。今着替えるから悪いんだけどホウキとかチリトリとか持っ
てきてくれる・・・?」
 こう下手に出られてはこの頼みを聞かない訳には行かない、とママは思ったら
しい。目を閉じながら怒りを押し殺したように口を開いた。
「じゃぁ今すぐ持って来るから、ちゃんと片付けなさいよ」
 そう言い残してママは部屋から出て行った。階段を降りて行くのをドアごしに
確認後、エリはゆっくりとワンダユウの方を振り向きワンダユウに歩み寄って行っ
た。そして怒りの表情で静かに、しかも強い口調で顔をワンダユウに押し付けな
がら・・・
「ワンダユウさん。何もその『人形』を使わなくても充分『科法・モトノモクア
ミ』で部屋を元通りに出来るんじゃないの!?」
 マール星人との付き合いも結構長いのでひと通りの科法の種類はエリも覚えて
いた。
「仕方がないですなぁ。これも私の責任故私がなんとかしましょう」
 いかにももったいぶったワンダユウの態度にエリも怒り心頭に達しようとして
いた(^_^;)。
「では参ります。『科法・モトノモクアミ』ワンダユウ~~~~っ!!」
 その一言を発すると同時に、電撃で破壊され部屋中に散らばっていた様々な破
片やゴミ、すすけて汚れた壁が一気に元通りに修復されて行った。こうした光景
は何度も見ていて見慣れているのだが、やはり科法は素晴らしいとエリは思う。
 そして、暫くの後ママがエリの部屋に舞い戻ってきた。
「エリちゃぁん、お掃除道具持って来て上げたわよ・・・・・・」
 ドアを開けた瞬間、そこには信じられない光景が展開されていた。先程までの
『破壊』され尽くした光景は全く無く昨日エリにお使いを頼んだ時に見た光景と
何等変わりなかった。
「あっ、ママ、おはよう。あら、お掃除でもするの?」
 ベッドからエリがそう言いながら起き上がった。何事もなかったように・・・
「エリちゃん。確かさっきママがこの部屋を見た時はすっごく散らかっていたよ
うに見えたんだけど・・・」
「え? ママが来たのはこれが初めてでしょう?」
 こう平然と言われると流石に信じない訳には行かない。何よりもエリの部屋は
何事もなく。いやむしろいつもより片付いていると行っても過言ではなかった。
完璧である。
「・・・ははは・・・ 何でもないわ。エリちゃん、早く朝ご飯を食べに降りて
らっしゃいって言いにきたのよ・・・ じゃあ、早くいらっしゃいね」
 ママはそう言いながら釈然としない雰囲気でぶつぶつと言いながら階段を降り
て行った(^_^;)。
「どうやら成功のようですな」
 ワンダユウがベッドの中から『ぬっ!』っと現れた。
「そりゃさっきまでの散らかりようがものの数分で直っているんですもの。納得
しない訳にはいかないでしょ?」
「いやごもっとも。では私はこれで帰ります。ご迷惑をおかけしました」
 ガラガラとベランダに通じるガラス戸を手も使わずに開けて・・・
「エリさま、私今回は覚悟を決めました。今後どのような手を使ってもエリさま
をマール星にお連れ致します。では」
 一礼の後屋根に宙機してあるUFOに乗り込むと『ワンダユウ!』の一言と共
にワンダユウは帰って行った。
「やれやれ、もうワンダユウさんにも困ったもんだわ・・・ それにしても、な
にかしらね? ワンダユウさんの最後の言葉が気になるわ」
「まぁあれで『じいさん』も大変なんだから分かってあげなよ。それにじいさん
のやる事なんてたかが知れてるしさぁ」
 まぁ確かに、ワンダユウの企みは成功した例が無い。またそれによって自分と
しては実際迷惑をかけられる事の方が多いし、出来るならワンダユウさんにはも
う来てほしくないと言うのが正直なところだとエリは思っていた。それにしても、
今までにないワンダユウの『覚悟』とは・・・
 そんな時、ふと机の上に置いてある人形に視線が固定された。
「何よ! ワンダユウさんったらドサクサに紛れて結局殿下からの贈物を置いて
行ったんじゃないの!! まったく油断も隙もあったもんじゃないわ!!」
 その人形を手に取って、エリはワンダユウにしてやられたと思った。
「でも殿下がその人形をエリちゃんに送るなんてことがあるのかなぁ?」
「え? それってどう言うこと?」
 チンプイの不思議そうな言葉に、エリは思わず聞き返した。
「だってこの人形ってすっごい『ぐうたら』な人が使う、言ってみればこの人形
を好んで使う人って働き者じゃないんだよね。そんな人形を殿下がエリちゃんに
送るなんてことがあるかなぁ?」
 あっさりとそこまで言われてエリは目が点になってしまった・・・(笑)
 それにしても・・・ この人形は本当に殿下の贈物なのだろうか・・・?



 日曜日だからと言ってママの仕事が減る訳はなく、むしろ巨大な置物と化して
いるパパの存在がママの掃除の邪魔になったりする事を考慮に入れれば平日より
も忙しいのではないかとさえ思える。そんな状況でエリがママに何のお手伝いも
依頼されない訳はないだろう。
「エリちゃん。昼ご飯の材料が切れてしまったから買ってきてくれない?」
 昼ご飯とあらば頼まれたら断わりきれるものではない。食い気は何物にも優る
ものと筆者は考える・・・ と、そんなことはどうでもいい。問題は昼ご飯以後
に起こった。
 エリは午後に内木くんと内木くんの家で遊ぶことになっているのであった。そ
のエリが出かける時、ママは昼ご飯の後片付けをしていたのであるがエリに不意
とも言えるお使いを頼んで来たのである。もうそろそろ小使いをもらう時期とあっ
て断わるに断われない。以前小使いの支払日前日にお使いを拒否して脱走を企て
た時の支払い額は要求の金額に達していなかったのであった。それ故にママの依
頼は『絶対!』である。頼みのチンプイは散歩に出かけたままであった。
 しかし、内木くんとの約束の時間は刻々と近ずいて来る!!
「そうだ! ワンダユウさんの置いて行った『人形』を使えば良いのよ! ちょっ
と悔しいけどこの際贅沢は言えないわ!!」
 エリは階段を駆け上がり自分の部屋に置いてある『人形』へと向かった。

 チンプイは昼ご飯を食べた後は腹ごなしに散歩を楽しむことにしていた。まぁ
散歩と言っても飛び回るのであるが。食べた後で寝たりすると、それこそデブラ
ムーやピルーカスのような体型になってしまうと言う脅迫観念が彼にはあるのか
も知れない(笑)。
 ひと通りかえでヶ丘を飛び回った後、チンプイは春日家に向かって帰宅の途に
着いた。春日家が見えて来たところでその上空にワンダユウが乗って来るUFO
が静止していることに気が付き、チンプイは雲まで達そうかと言う高度まで上昇
して行った。案の定ワンダユウの乗ったUFOであったが・・・ ワンダユウ自
身は中で良い気持ちで眠っていた。
「ワ~ぁンダユウさん!」
「ななぁぁぁ!!」
 あまりの大声にワンダユウは飛び起きた。自分を眠りの世界より呼び戻した存
在を確認には数秒を要することとなったが。
「何ぢゃチンプイか。一体なんのようぢゃ?」
「聞きたいのはこっちの方だよ。じいさんこそ、ここで何してるの?」
 その言葉にワンダユウは含み笑いでニヤニヤしどうしであった。そして・・・
「聞きたいか? そんなに聞きたいか? どうしても聞きたいか??(クスクス)」
「何もったいぶってるの。どうせエリちゃんをマール星に連れて行くことしか考
えてないんでしょう?」
 図星であった(^_^;)。もっともワンダユウの考えていることと言ったらエリを
マール星に連れて行く事か、もしくは自分の地位の保身くらいであろう(笑)。
「貴様が本来は行わずばならない事まで、こうしてワシがやらなくてはならない
のだぞ。そこのところを考えてものを言わんか。まぁどっちにしろお前に話すと
ろくな事が無いでな。やっぱ話すのは止めておこうか。わっはっはっはっは!」
 こう言われて引き下がるチンプイではない。ワンダユウがそう言うならこっち
にも考えがあると言う表情でチンプイのトレードマークでもある丸いおっきな耳
から「何か」を取り出した。それをワンダユウの頭に乗せチンプイはすかさず科
法を放った。
「『科法・読心スピーカー』チンプイっっ!!」
 この科法は読んで字のごとく。この科法をかけられた者は考えていることを全
て強制的に読んでしまうと言う恐ろしい科法であった(クスクス)。しかも、この科法
は一旦かけられると科法をかけた者が欲しい情報を得たと思わない限り半永久的
にかかり続けるのである。
 この場合ワンダユウは隠し事の出来ない性格(思わず自分の計画を再度頭の中
で考えて悦にはいる為)が災いして最初の一言から、一気に企みの全てがチンプ
イに知れ渡る事となった。その計画を知ったチンプイはパニックになってしまっ
た。
「えぇ~~~~~~~っっ!!! 今朝エリちゃんに渡した『コピー人形』のス
イッチを押すと、エリちゃんの居る地球を強制的にマール星付近までワープさせ
るんだってぇ!!!」
 あまりの事にチンプイも驚きは隠せなかった。ワンダユウはワンダユウで、今
だ自分が科法をかけられているとはつゆ知らず、幸せそうな笑みを満面に浮かべ
ているのであった(^_^;)。
「何にしても大変だぁ!! エリちゃんに知らせなくっちゃぁ!!!」
 ほとんど惚けていると言ってもいいにやけ顔のワンダユウを一人(?)残し、チ
ンプイは急降下で春日家へ、エリの元へと向かった。

「あ、これこれ! これを使えばママのお使いも内木さんのところにもいけるわ。
でもやっぱりしゃくよね。ワンダユウさんが持ってきた殿下の贈物なんて。
・・・まぁこの際ですもの仕方無いわ。内木さんだって許してくれるわよね」
 何も内木くんにそんなことを許してもらわなくても良いのである(おっと!
これでは「ちびまる子」か(笑))。
「えっと、何処を押せば良かったんだっけ? 使い方だけでもちゃんと聞いてお
けばよかったわ。大体ワンダユウさんも置いて行くなら使い方くらいしっかりと
教えてくれても良いじゃないの・・・ それはともかく、この鼻だったかしら?」
 その時不意に天井方向から甲高い音が聞こえてきた。まるで砲弾が迫って来る
ような音である。不安げに天井を見つめるエリ。
「何かしらあの音? でも関係無いわよね。さてと・・・」
 やがて先程の音の方向が南向きに変わったかと思うと、いきなりベランダのガ
ラス戸が開いた! それと共に恐ろしく強い突風がエリの部屋の中を通り抜けて
行った。
「あ~っ、エリちゃんそのボタン押しちゃダメ!」
 プチっ! スイッチを押された『コピー人形』はみるみる内にエリそっくりの
姿に変わって行った。
「そんなこと言ったって・・・ もう押しちゃったわよ」
「ええっ、どうしよう? 人類が滅亡しちゃう!」
 もうこの世の終わりのごとくチンプイに絶望感が走った!!
「どう言う事なの? チンプイ??」
「実は・・・」
 気乗りのしない様子でチンプイは事の次第をエリに全て話した。
「なにそれ!? 冗談じゃないわ! チンプイなんとかしてよ」
「なんとかって言われても、じいさんがどんな方法で地球を移動させるのか聞か
ない限りボクには分からないよ・・・」
 正にチンプイは途方に暮れていた。そして、まさか自分一人の為に地球ごとマー
ル星に連れて行かれる身のエリとしては居ても立っても入られなかった。
「とにかくチンプイ。ワンダユウさんを呼んで来て!」
 惚けた表情に近いチンプイを何とか正気にしようとエリはチンプイの体を数度
揺すりながら頼んだ。やがてチンプイは正気に戻ると飛び上がりガラス戸口から
空へ、ワンダユウの元へと向かって行った。
「お願いよ、チンプイ・・・」

         《《《 Aパート(前編)終了 》》》

                           根本 剛志(MAP1144)