#70 Article 4588 Posted at 1995/05/20 09:45:56 by 灰原達之 (MAP3252) [SUGIMOTO]

Subject: 就職戦線異状なし

『就職戦線異状なし』
杉元伶一
講談社文庫 \520

 大学生の”いわゆる就職活動”をカリカチュアライズした小説です。著者の
語り口には、かなり毒がきいており、就職活動の馬鹿馬鹿しさがよくわかりま
す。大学生が就職活動をはじめる前に、それを相対化するために、読むべき本
の一つだと思います。
 就職マニュアル本をパロった部分は、相当笑えました。”恐るべき優秀な学
生”というふれこみで、就職活動に有利な特質をあげていくわけですが、全部
備えると、「んな奴ぁいねーよ」とツッコミいれたくなるような奇妙な人物像
ができあがります。

「ガキが大人になったかどうかの目安は、職業選択の幅がどれだけ狭まってし
まったかなんだろうな」
「なりたいものなんてのがあるうちは、まだまだガキなんだよ」

 この部分は、座右の銘にしたいくらいです。そう、なりたいものがなくなっ
ても、それでも仕方なしに”なにか”にならざるを得ないのが大人というもの
です。

 この作者は、他にマンガ家水玉蛍之丞と共著で『ナウなヤング』というワカ
モノ文化のエッセイも書いています。これもなかなかいいのですが、他に本が
見当たりません。
 最近、彼がどのような活動をしているか、ご存じの方はいらっしゃいますで
しょうか?
 私は、彼が今も小説を書いているならば、ぜひ読みたいのです。