#53 Article 39 Posted at 1991/06/02 18:02:09 by W.M. (MAP009) [GENSAKU]

Subject: Re:*6 完訳が読みたいっ! /38 ... /32 /31

uchanさんのお持ちの原書も folio juniorシリーズなんですか。私もそれ
を持っております(ヨーロッパ旅行に行った友人のおみやげです)。残念な
がら、挿絵と固有名詞の部分以外、読んだ事はありません(笑)。

 それから訂正があります。
 前のアーティクルで、「En Famille(= in family)」というタイトルが
原作の最後の章の名前からきていると書きましたが、これは、「家なき娘」
の最後の章ではなくて、「Sans Famille(= without family)」のほう、つ
まり「家なき子」のほうの最後の章でした。間違えてごめんなさい。

 このあたりについて興味をお持ちの方のために、文庫本の訳者解説から、
その部分を引用します。

…………………………………………………………………………………………
 一たい作者は『家なき兒』の大成功を見ても別に急いでその姉妹篇を
書かうという氣は起こさなかつた、但しよい題材があればと考へて長い
年月を過ごしたのだが、ふと『家なき兒』の最後の箇所つまり少年がつ
ひに幸福な家庭を拵へ得たその章を主題としてこれを展開してみようと
いふ欲望をおぼえた。--『家なき娘』の原名アン・ファミーユが『家
なき兒』の最後の章「家にて(アン・ファミーユ)」からそのまま採ら
れたのもそのためである。--マロは、楽しい家庭の再建のためには、
どんな困苦も缺乏もいとはず自分の意志を貫徹し、つひには人々をして
自分を愛せしめるにいたる、雄々しい少女を描かうとしたのである。例
へばこの小説の後記に作者みずからはかうのべてゐる、「『家なき娘』
を支配すべきものは意志の研究であつた。作中に私は、一つの性格にお
ける意志の形成、それの働き、それの果たしうる奇跡の数々、さういふ
ものを描かうと努めたのである」。実地にソムの泥炭坑を訪れたり麻の
工場を調べたり長い研究と準備とがこの小説に先立つたことはいふまで
もない。
 原名のアン・ファミーユといふ言葉そのものには、右にのべたところ
でもお分かりになるやうに、『家なき娘』といふ今は少しもない。「家
を持つて」「楽しい家庭で」「一家打ち揃つてそろつて」といふやうな
意味あひの日本語でこの小説の題名にふさはしいものを、長い間私は捜
したが見つけることができなかつた。従来『家なき娘』として知られて
ゐるのでこの標題を踏襲した。
…………………………………………………………………………………………
 (以上、岩波文庫 32-576-1「家なき娘」津田穣訳の解説より引用)

 旧仮名遣いは趣深いのはいいのですが、入力するのが大変です。昔の人は
沢山字を識っていたのですね。

                        MAP009 / W.M. (ダブレムと発音してください)