#40 Article 3708 Posted at 1995/06/19 01:22:37 by WAK (MAP5274) [KENRI]
Subject: Re: またまた著作権(肖像権?)関係の質問です /3703
少々長くなりますが勘弁。 > 無許可で自分の名前を勝手に使われた場合(登場人物の名前として)って、 > 何か対抗手段はあるのでしょうか。 むうーっ。難しいですね。一応、刑法第34章「名誉ニ対スル罪」というのが あります。第230条の「名誉毀損」と第231条の「侮辱」がそれです。名前の使 用のみに関して言えば、適用は難しいと思いますが(というより無理かな)、 > それで、登場人物の紹介で、 > 「某サークルの会長をしているというウワサもある」などといらん > ことまで書かれたため、 とのことなので、名誉毀損(公然事実ヲ摘示シ人ノ名誉ヲ毀損…条文より)に 関しては成立する余地があるかと思います。また、作品中で明らかに侮辱され ている場合には、侮辱も成立し得ます。 えー、ついでに言いますと、侮辱については名誉毀損罪の一要素であり、名 誉毀損が成立しないときには侮辱も成立しないという判例があります。ですか ら、もし告訴に踏み切るのであれば、侮辱のみで告訴、ではなく、名誉毀損で 告訴か名誉毀損+侮辱で告訴、という事になりますか。なお、これらは親告罪 となっています なお、今回のように名前が一致したり、 > 「某サークルの会長をしているというウワサもある」などといらん という記述がある場合には、それらが事実であればプライバシー侵害と思われ ますので、侵害行為の差し止めや損害賠償の請求が可能と思われます。 プライバシーの権利保護を明確にした法律はありませんが、「個人の尊厳」 は憲法の拠り所の一つであり、他人の住居ののぞき見禁止(軽犯罪法)などにも 片鱗が示されています。従って不法な侵害があった場合には法的な救済措置が 与えられる程の人格的利益として高められていると言うべきです。 三島由紀夫の「宴のあと」にプライバシー侵害が認められた判例もあります (昭和36年(ワ)第一八八二号損害賠償請求事件、東京地裁昭和39年9月28日判決) し、しかもこの判例は、全体として違法性が少ないと思われる件に対してプラ イバシー侵害の成立を認めていますので、今回もこの線で訴えることは可能で しょう。 名前に関して言うと、「氏名権」という概念があります。日本では、肖像権 や氏名権に関する判例が非常に少ないのですが、注目すべきものに、1976年6 月29日に東京地裁が下した判決があります。 これは、俳優マーク・レスターの氏名と映像が、株式会社ロッテのCMに使わ れたという事で争われた裁判で、俗に「マーク・レスター氏名・肖像権侵害訴 訟」と言われます。正式(?)には、「昭和46年(ワ)第九六〇九号損害賠償請求 事件」というんですけど(笑)、まぁそれは置いといて…。 なぜ俳優の氏名や肖像を使うかと言うと、それを使うことによって経済的価 値を持つからです。これをパブリシティ(publicity)といいます。これは、氏名 や肖像に関しての人格権とは別の、一種の財産権であって、しかも無名の一般 市民でも持っています。 本判決ではパブリシティという語こそ使っていませんが、その法的利益を認 めた内容となっています。 ただし、これは経済的利益に関する判例ですので、人格権侵害の場に引っ張 ってくるのは妥当とは言えないかもしれません。 文学作品で、実在したモデルを使った場合には、作品への昇華度が高い場合 には原告敗訴、というパターンになっていると言って良いと思います。しかし、 昇華度云々はモデルにされた側のみならず、執筆者に対しても言えることであ って、生半可な気持ちでモデルに使うべきではないと私は思います。 因みに、私生活について誤った暴露や、昇華度の低い実録小説などでは、事 実上の名誉回復措置と損害賠償を認容する判決も出ています。 > 自分の名前を使わないでくれと申し入れたところ、 > 「もう遅い」「恥ずかしがらなくてもいいじゃん」「これ位笑って > 済ませた方がいいよ」などという解答しかこなかったそうです。 相手がここまで不誠実であれば、裁判に持って行くしかないかもしれません が、このアーティクルを参考にもう一度話し合われてはいかがでしょう?話し 合いの際には、こっそりテープレコーダーの用意もお忘れなく。裁判での証拠 にもなり得ます。 具体的には、作品の発表をやめて貰うという形になるでしょうね。 なお、裁判を行なう場合には、一度弁護士とも相談してみて下さい。私は司 法試験を通過した人間ではないですし、説明もこの位しか出来ません。 > それとも名前には著作権とかはないのかなぁ 人名に著作権はありません。 WAK(MAP5274)