#38 Article 896 Posted at 1991/02/11 17:57:39 by ユ-サク (MAP1754) [STORY]

Subject: Re:*6 激動焼け跡ラブコメ・小説版「てやんでえ」! /895 ... /889 /887

連載第2回だよ。

夕暮れが迫る焼け跡のエドロポリス。ピザキャットの店内。
「さぁ-て、今日はここまでだなぁ-」
「灯りが無いから、営業時間が短くなったのは楽でいいですね。…あら」
背を丸めて店のノレンをくぐって入って来るヤッ太郎。
「にゃ…にゃははは…ただいま…」オドオドとプルルンに歩み寄るヤッ太郎。。
「ごめぇんプルルン、オイラもっと早く帰るつもりだったんだけどォ…」
テ-ブルの上を拭いていたプルルン、プイとヤッ太郎を無視して奥に引っ込んでしまう。「あ…あら…」
しばしポカンとしたヤッ太郎、今度はおタマとスカシ-に駆け寄り、
「にぇ-にぇ-怒ってたぁプルルン? オイラの帰りがこんなに遅れてぇ-」
「………………」
ジト目でにらみ返すスカシ-とおタマ。
「へ!?」
「帰りが遅れたくらいの事なら良かったんですけどねぇ…」
「にゃ、にゃに、にゃに!?」
思わず不安になって聞き返すヤッ太郎。
「お前、見られちゃったんだよ。プルルンに、おミッちゃんと一緒に居るとこ」
「へ……ッ?」
一瞬目が点になったヤッ太郎、やがてブゼンとした表情になり、
「にゃ、にゃんでオイラがおミッちゃんと居た事位でとやかく言われなきゃいけないんだ よう!」
スカシ-とおタマ、思わず顔を見合せて溜息をつく。
「ハァ…ヤッ太郎さん、それでいいんですかぁ?」
「にゃにが?」
「プルルンはお前にゃ勿体無いぜ」
「そうそう、こんなチャンス、ヤッ太郎さんの生涯に二度あるかどうか…」
「な、なんだよ、それ…」
徹底的に鈍いヤッ太郎ではあったが、流石にハッと気付き、カウンタ-をドンと叩くと
「オ、オイラが誰と付き合お-とオイラの勝手でいッ!オイラ先に寝るぜッ!」
ブゼンとしたポ-ズのまま奥へ引っ込んでいくヤッ太郎。
ピザキャットの勝手口、川沿いに掘っ建て小屋が立っている。皆の仮の寝室である。
ヤッ太郎、気難しげな表情でその前まで来ると空を見上げ、…やがてニタ~ッとして、
「プ、プルルンがオイラのこと……に゛ひひひひひ、いや~モテる男は辛いねッ!」
鳴呼、お目出度馬鹿(笑)。

「ど-すんだよ。あれ」
「いやなに、手はありますよ。…今日はもう寝ましょ」
やがておタマとスカシ-も床につき、灯りの無いエドロポリスは静かな平和な夜を迎え
たのだった。…この時はまだ、誰も次の日に襲って来る激動を予感出来た者はいなかっ
たのである。

次の日、晴れた空。風もソヨとも吹かない、うららかな日であった。
しかし勘の鋭い者はやがて訪れる何かの予兆を感じただろう。…妙に静か過ぎるのだ。

能天気なヤッ太郎はまたも出前途中でおミツとデ-トしている。
「ねェヤッ太郎さん、今日は会って欲しい人がいるの」
「えっ?誰、だれ?」
聞き返しつつも頭の中で想像を先走らせるヤッ太郎であった。
「(ひょっとして松吉に会えってんじゃね-だろ-な…お兄ちゃん、これがあたしの
 婚約者よ、なんちって、にゃはははは!)」
「あ、あの人よ!」
「へ!?」
一台のジ-プが走って来る。米軍のウイリスである。
降りて来たのは、長身の男。ネコ型だが、豹型かと思わせる程体格が良い。
いきなりおミツの手を取り、ささやきかける男。
「ああ、素敵なお嬢さん。貴方が僕と会うためだけにその人生の何時間かを割いてくれ
 た…それだけで僕のハ-トは喜びに打ち震える…願わくば、後の全ての君の時間を、
 僕だけのものにしてしまいたい…」
「紹介しまァす!進駐軍の、プリンスさんでェ-す!」
「にゃ、にゃんでぇプリンスッ!おミッちゃんは、今オイラとデ-トしてたんだぞ!」
「あらぁぁ、お知り合いぃぃ?」
「フッ…僕の心は痛む、何故神は弱き者に試練を与えたもうのか…。少女の心は蝶の様
 なもの、より香り高き花に集まるのは必定とはいえ、それだけでは余りに酷い…」
「てッてやんでぇい、言・い・た・い・事いいやがって!」
声を震わすヤッ太郎、しかしその時おミツが間に割り込んだ。
「ヤッ太郎さんッ!おミツ、強いヒトが好きなのッ!」
「!?」
「プリンスさんは凄いのよォォォ。剣の腕も、ねっ!?」
「フ…。自慢ではないが、僕のフェンサ-の閃きの前には、世界中のいかなる強豪だと
 て、痛みを感じる間も無く眠りにつく事だろう…」
「にゃ、にゃんだとぉ…」
脳の出来は別にして、無論ヤッ太郎は刀の使い手としては相当の実力者である。それが
プライドを傷付けられて、黙っていられるはずがない。
「やいやいっ!おミッちゃんの前だからってでけぇ口叩きやがって!こちとらおEDO
 じゃちったぁ名の知れたニャンキ-1号様だい、眠らせられるもんならやってみせて
 貰おうじゃね-かッ!」
盛り上がる二人を見て、おミツは一人瞳をウルウルさせていた。
「(ああ…おミツったらなんてイケナい娘…。ヤッ太郎さんの猫目スラッシュを観たい
 がためにこんな事までしてしまうなんて。二人とも、ご免なさい。でも、でも…)」
おミツの頭部ミサイルベイのハッチが、ゆっくり開いてゆく。
「(ヤッ太郎さんもプリンスさんも、負けないで…。ああ、二人があたしのために競い
 合うなんて、なんて美しいの。おミツ…おミツ…)」
「おミツ感激一一一一一一一一一ッッッ!!」火を吹くおミツのランチャ-!
「わっわっ、ひえ~~~ッ!」
ヤッ太郎は慌ててジ-プの下に走り込んだ。しかしプリンスは…!
「ムンッ!」
フェンサ-が抜き放たれ、目にも止まらぬ早さで閃き、舞う。すると。
目標を失ったミサイルの群れがあさっての方向に飛んで行く。プリンスの足元に何かが
バラバラと落ちた。見ると、スッパリと見事に斬り離された弾頭部の炸薬であった。
「すッ、すッごぉぉぉ一一一一一いッ!」
「にゃ、にゃんでぃにゃんでぃ、その位オイラにだって出来らい!」
慌てるヤッ太郎。おミツの絶対防衛ラインであるミサイルがプリンスの前には無力だと
すると、…ヤバい、ヤバいぞ。
「お、おミッちゃん、待っててね、オイラ帰ってマサマサ取って来っから!」
ジェットホバ-を吹かして走り去って行くヤッ太郎。
…彼は、その先でどんな目に会うのか、まだ知らなかった。

つづくっ!						ゆ-さく。