#38 Article 1291 Posted at 1991/06/20 16:26:21 by ユ-サク (MAP1754) [STORY]

Subject: 単発読みきり「てやんでえ」恐怖小説。怖いよ~

ああ、幸せだ。なんて俺はラッキ-な奴なんだ。目の前に拡がるのは山海の大御馳走、
キンキラの黄金の玉座に座り、そして隣にはべらせているのは…。
「ああ、幸せじゃ。姫は幸せじゃぞよ。お願いじゃ、今夜も、姫に優しくしてたも…」
皆さんよく御存じの、ピンクの髪パ-ツのウサギ型アニマロイドの姫さんだ。
わ、わは、わはははははははははははは!
ああ、よかった。本当に、エドロポリスへ来て正解だった。

どうやって俺がこの様な幸運を手に入れたか、教えてやろう。
前は俺も3流大学へ通う、平凡なアニメファンであり、「てやんでえ」ファンだった。
それが、ある日ふとした事から企画段階でのエドロポリスの成り立ちの話を聞いて、
俺の人生は変ったのだ。
エドロポリスというのは映画の「ウェストワ-ルド」みたいなロボット遊園地だった物
が人類絶滅後に増殖して拡がり、人類の真似事をやっている世界だというではないか。
それを聞いていてもたってもいられなくなった俺は理系学部に入り直し、死に物狂いで
勉強してホ-キング博士を超える大科学者となり、時空転位装置を作ってこうしてエド
ロポリスが作られている平行世界の、「てやんでえ」の時代にやって来たのだ。

来て正解だった。放射能障害や酸素が残っているか、などが心配だったのだがちゃんと
人間に対する医療機関が残っていて、週に一度検診を受ければ放射能も怖くない。
しかもアニマロイドのメモリ-には、しっかり「人類に奉仕する」という命令が今だに
プリントされており、いやぁもうモテまくる事モテまくる事。…そりゃ、彼等にしても
数千年か数万年ぶりに奉仕する相手が現れたのだから、熱も入ろうというものだ。
しかも、この世界に人間はたった俺一人。世界中の、可愛いアニマロイドの女の子が、
全部俺の物なのだ。
それ程までにモテまくる俺が、何故EDO城に向かいウサ姫を相手にしたかと言うと、
ここがこの世界で最もゼ-タクの出来る場所だからだ。
将軍以上に偉いヒトが現れたってんで、そりゃぁ夜も日もあけぬ歓待ぶり。
あのワガママなウサ姫すら、ちょっと俺が「こら」と叱り、頭をコツンを叩いてやった
だけで、たちまちカラ丸の事などコロッと忘れてこの甘えようだ。
…ふふ、やっぱりな。この娘は自分より強い、甘えられる相手を待ち望んでいたのだ。
人間、頭は生きてる内に使わなきゃダメよ。ふはははは。
今や俺は将軍イエイエを隠居させての最高権力者。これで好き勝手出来るぞ。わはは。
「ねぇ…姫は、幸せじゃ、幸せじゃ。今夜も優しく抱いてたもれ。ね」
ウサ姫が肩に頬ずりをして来る。可愛いヤツめ。ふふふふふふふ。…ウサ姫はまだ子供
だって!?……忘れちゃいけない、アニマロイドは元々接客用アンドロイドなのだ。
「ずっと姫と一緒に居てたもれ。千年も、万年も、ずっと一緒に…」
「ん?ああ、そりゃダメだな。人間は、そんなには生きられないんだよ」
「えっ!?そ、そんな…姫と一生添い遂げられないのかや!?」
「ああ、残念だがなぁ。もって、せいぜい百年ってとこかなぁ」
「わぁぁん、そんなの嫌じゃ、嫌じゃ。姫はそなたと一緒に居るんじゃ。ずうぅぅっと
 一緒にいるんじゃぁ!!」
ふふふふふ。あどけない顔をこすりつけて来る。しかしウサちゃん、君はやがて、俺に
飽きられたらポイされる運命なのだよ。なんたって俺は、この世界でたった一人の人間
なのだから。限られた資源は皆んなの物だ。そうだろう? ふふふふふふふふ。

あ、あれっ!?ここはどこだ!!?身体の自由がきかない…げ、げげげえぇっっっ!!
気がついた俺が目にした物は、鏡に映った俺自身の姿。
椅子に縛りつけられ、その上何と頭のてっぺんが、無い。頭骨をスッパリ切り取られ、
剥き出しになった脳に、無数の電極が差し込んであるではないか。
「これで、よしと。今から、婿殿の脳の電位パタ-ンを、こっちのアニマロイドの脳に
 移植する。これで千年も万年も生きられる婿殿の完成、というわけじゃ」
嬉しそうにニコニコするウサ姫。
見ると、俺の脳から引き出されたケ-ブルがつながっているのは、このハンサムな俺と
似ても似つかない、不格好なタヌキ型アニマロイドではないか!
「わ、わあ、嫌だ、やめろおおおぉぉぉぉっっっ!」
「心配なさるでない。脳の電位をそっくりコピ-するのじゃから、記憶も性格も、主様
 そのままじゃ。しかし主様そっくりの身体を探すのは、苦労しましたぞよ」
「そ、そりゃコピ-した物は俺と記憶も性格も同じ物になるだろうけど、それじゃオリ
 ジナルのこの俺は、どうなっちゃうの!!?」
「たった百年やそこらで腐っちゃう物など、ゴミ箱へポイじゃ」
げ、げげえええぇぇぇぇぇっっっっっ!!!
「さあて、始めますぞぉ」
「わああああ。嫌だ嫌だ、やめろおおおおおおおぉぉぉ」
「こ、これっ!ジタバタ暴れるでない!そう恐れられると、恐怖のパタ-ンまで一緒に
 コピ-されてしまうではないかあ。仕方ない、これ、精神安定剤をブチ込むのじゃ」
城医者の寿限無が俺の脳に注射針を突きたてる。
「や、やめろおぉぉぉぉ。ふにゃふにゃ。やめてくれえぇぇぇぇぇぇ」
「ううぬ、まだ抵抗しよるか。これ、もっと精神安定剤をブチ込んでしまえ」
「でも、これ以上ブチ込んだら頭がパ-になってしまいます。ジュゲムジュゲム」
「かまわん。少々パ-になろうが、婿殿は婿殿じゃ。うふふ、愛しておりますぞ。一緒
 にいましょうぞ、千年も、万年も…」
そ、そうか、そういう事だったのか。
「は、はにゃふにゃ、ほにゃま。ふ、ふにゃはにゃ、はらほにゃ。」
最早頭がモ-ロ-として、まともに考えられない。すっかりパ-になってしまった。
パ-になった頭の片隅にごく僅かに残っている正気の部分で、俺は気がついた。
不思議に思ってたんだ。将軍イエイエと、ウサ局様。あんなに不釣り合いの上、将軍は
バカなのに、なんで局様はあんなに将軍を愛していたのかって…。
何の事はない。俺より先に、このエドロポリスへ来ていた奴がいたのだ。

パ-になった俺の意識を移植されたアニマロイドが、始動して産声を発した。

「ぱふ~~~~~~~~っっ!!!」


「怖いよぉぉ~~~~」ゆ-さく。