#38 Article 1284 Posted at 1991/06/16 22:01:37 by ユ-サク (MAP1754) [STORY]

Subject: Re:*15 連載小説「ウサ姫道中記」・今度こそラブコメだっ! /1202 ..... /1080 /1079

第4回!

朝。快晴である。
エドロポリスに、大きな大きな陽が昇る。
…果してそれは、希望の夜明けか、はたまた厄々しい運命を告げる凶兆か!?

「姫様、御充分に、御充分にお気をつけあそばされませ。決して、決して、このような
 忍者どもを過信なさりませぬように。…ああっ心配で御座居ます、よよよよよ…」
「ちえっ。言いたい事言ってらぁ」
真横からまばゆい光を浴びる、ピザキャット本店前。
旅装束に身を包んだヤッ太郎・プルルン、そしてウサ姫が、心配でたまらないといった
腰元と、ワンコ-守の見送りを受けている。
少し距離を置いて、ピザキャット玄関にスカシ-とおタマ。
「まったく、こっちにもお呼びがかかるんじゃないかってヒヤヒヤしたぜ!あんなワガ
 ママ姫様のお守りをしながらカラカラの里へ向かうなんて、ゾッとしないもんなァ」
「よかったですねスカシ-さん。ヤッ太郎さん達がお留守の間は3人分、ボロゾ-キン
 の様になるまで働いてもらいますからね、しっかりお願いしますねッ!」
ニコニコと釘をさすおタマ。ダラリとアゴを開いて目を虚ろにするスカシ-。

ウサ姫は産まれて初めての旅姿。大きな牡丹をあしらったかすりの着物パ-ツに、背に
は愛らしい花笠を背負っている。プルルンも丈の短い着物パ-ツに脚半、鈴付きの杖を
持った旅娘姿。ヤッ太郎は三度笠にカッパを着た旅ガラスのいでたちである(ヤッ太郎
はカッパの下に戦闘服を着込んでいる)。

「くれぐれも、道中の警護を手抜かるでないぞ。行手の外様藩の動向については、既に
 猫忍一族が諜報活動に入っており、万全の体勢で臨んでおる。…だが不意の事故には
 対処のしようが無いのだからな。お前達が油断すれば姫様の御身に直接危害が及ぶの
 だぞ!よいか、決して油断するでないぞ!」
「はい、ワンコ-守様!あたしたちに任せて下さい!」
責任感の強いプルルンが、目をキラキラさせて答える。
「そ-そ-!」
ヤッ太郎がいつものス-ダラ調で相づちをうつ。
「…ホントに判っておるのか?エドロポリスのみならず、この国全体の将来を担う重大
 な御役目なのだぞ。…よいな、くれぐれも油断するのではないぞッ!!」
「判ってますって!へっへっ」
相変らず、気楽そうなヤッ太郎。
『ワガママ姫様を寝かし付けちまえば、後は宿場のお姐ちゃん達と飲んだり騒いだりの
 酒池肉林。払いは姫様のゴ-ルドカ-ドだァ、べらぼ-め、こぉんな役得がなけりゃ
 誰が御役目引き受けますかッて-の!うひひ、オイラの雄猫の血がうずくぜ!』
一方プルルンの方も、どうも使命に対する責任感というより以上に瞳を輝かせている様
である。どうも悲壮感が薄い。夏休みを前にして、表向きは仕事を張り切ってはいるが
心は既に南国へ飛んでいるOL、といった感じ。
実際、彼女の懐には「そよ風に誘われて、今!温泉・グルメ・素敵な出会いがあなたを
待つ! みちのく・ロマン街道 歴史と味の旅デ-タマップ」が忍ばされていたのだ。

「心配するでないぞよワンコ-守。供はこの者達の他に実はもう一人、考えておる!」
突然ウサ姫が明るい声を張り上げた。
「な、何と!!? して、その者とは?」
「ふっふっふ。このエドロポリスで一、二を争うツワモノじゃ!」

浅草。ようやく再建なった、掘っ立て小屋のだんご屋 ”みっちゃん”の店先で、寝間着
姿のおミツが配達されて来たばかりの新聞を見つめて、溜息をついている。

「はぁ……………す・て・き・ねぇ………欲しいなアァァァ…………」

おミツが見つめているのは、新聞の折り込みチラシ。そこには、こう記されていた。

[威力絶大、効果抜群!!初速1万Km/時、射程120Km、破壊力1メガトン!
 フルアクティブホ-ミングに加え、簡易クル-ジング機能も備えた無敵の性能!!
 爆発時の中心核温度1千万度、強力な中性子線と死の灰噴塵効果によりあたり一面
 その後50年草1本生えない凶悪さ! 只今1ダ-スに1本おまけセ-ル実施中!]

「かわいいィ。かわいいなァァ………」

おミツのリアクションが不自然のように感じられるかも知れないが、そんな事はない。
イッセ-・ニヤケのデザインによるこの新型ミサイル、ちょ-かあいいペンギンの形を
していたのだ。ピョンピョンとランチャ-から跳んで出て、小さい羽根を広げて巡航
モ-ドに入る仕組みである。チュ-リップミサイルの上を行く、ペンギンミサイルだ!
おミツの様なミ-ハ-なミサイル娘の心をくすぐらずにはおかないデザインである。
しかし、かわいい外観に隠れたその性能は上記の通り。
世界を滅ぼすつもりなのか、イッセ-・ニヤケ!!!

「ふぅ…1発でもいいから、射ってみたいなァ。何か、いいバイトでもないかしら…」
「よ~う、おミッちゃん!」
「あ、ヤッ太郎さん。…あらァ、どこかへお出かけぇ?」
ヤッ太郎達の後からウサ姫が歩み出る。
「久しぶりじゃのう、ミサイル娘! 御前試合以来ではないか。元気かや?」
「はァ?……………どちらさまでしたっけぇぇ…?」
「……………☆★!」
思わず耳をピンと立て、眉を寄せておミツをにらみつけるウサ姫。
天下の将軍の御前といえば庶民なら地面にひれ伏して、あまっさえ姫様の花のかんばせ
一目でも拝めようもんなら感激の余り座り小便アワ吹き卒倒、とゆ-所が通り相場であ
る。…多分おミツは試合中も春風のような超然とした心持ちで、そのポ-ッとした目で
見据えていたのは試合の相手だけで、将軍以下幕府の重臣がズラリ揃った舞台などアア
おひなさまが飾ってあるなァ、位にしか思って無かったのだろう。…得な性分である。
ヤッ太郎もプルルンも顔を青くしたが、ウサ姫はサッと懐から変装用のトンガリメガネ
を取り出して顔にかけ、
「わらわじゃ、わらわッ!一緒にアンミツ食べたり花火観たりしたろ-がッッ!」
「ああ!あの時のスルメ丸飲みにした変なコね! 久しぶりねぇぇ。お腹、大丈夫ぅ?」
「……☆★@ж※Φ☆Ψξφ★」
「あ、あにょね、おミッちゃん、オイラたちこれから旅行に行くトコ!」
ヤッ太郎が慌てて間に割って入る。
「旅行?……いいなァ。あたしも行きたい……」
「そ、そ!それで、おミッちゃんも誘いに来たの!しかもアシアゴ経費その他一切合財
 こちらのお嬢さん持ち!おミッちゃんはタダでいいの!…そうですよね、お嬢様?」
「…そうじゃ」
ウサ姫がブ然とした表情で答える。
「えッ…タダ!!?」
「そうじゃ。ただし、わらわのお供を務め、護衛にあたるならば、じゃ」
「護衛………経費はそちら持ち……あ、あのぉ、それって」
おミツが言いにくそうにモジモジする。
「ミサイルの費用なんかも……出していただけるんです…か?」
「無論じゃ」
「行く-ッ! 行く行く行く、行きまァ一一一ァすッ!!」
たちまち店内に飛び込んで行くと、ドタンガラガラと旅支度を整え始めるおミツ。
「えっとォ……あ…あのォ…」
と思うと、扉の陰から顔をのぞかせる。着替えの途中らしく、肩がはだけている。
「出発の前に…ちょっとヤマト屋さんへ寄って行って…いいかしらァ…」
「にゃ? おミッちゃん。…だけど、こんな朝っぱらから、店なんか開いてにゃいと思う
 けど…」ヤッ太郎が目のやり場に困りつつ答える。
「だいじょうぶ!あたしお得意だから、売ってもらえます! わぁ-い、わぁ-い!」
再び奥へ引っ込んで行き、ガラガラと荷物をひっかき回すおミツ。
何故か、背筋に寒気が走るのを感じるヤッ太郎であった。
こうして、一行に最凶のペンギンミサイルを頭に乗っけたおミツが加わったのである。


「よいか、絶対に油断するでないぞ-ッ! 姫様にもしもの事があったら、お前らもわし
 も打首獄門なんじゃからな一一一一一一一ッッ!」
ワンコ-守の悲痛な叫びを後にして、エドロポリスを出た一行、まずは北東へ向かう。

「るんるん!わぁい!旅じゃ旅じゃ初めての一人旅じゃ!おまけに、この旅路の果てに
  は愛しい婿殿が待っておる! わぁぁいわぁい!…はぁ。マヌケ忍者、はしゃいだら
 姫は疲れたぞよ、おんぶしてたも!」
「そ……そんにゃこと言ったって…」
おミツのミサイル百ダ-ス、プルルンのウォ-ムアップ用ダンベル他運動具に戦闘服、
ウサ姫の遊び道具及び全員の着替えパ-ツ等を満載した巨大な風呂敷をかついだヤッ太
郎は関節をギシギシいわせて青息吐息。その通った後には点々とオイルのたれたシミが
落ちている凄まじさである(笑)。
「遠慮するでない!くるしゅうないぞよ!」
はしゃぐウサ姫は、ラクダの背程もある風呂敷包みの上まで、ピョンと飛び乗る。
「ぐげっ」
「かと思ったら、姫はのどがかわいたぞよ。なんぞ冷たい物でもないかや?」
「…そういえばぁぁ、そろそろお昼ねぇぇ。どこか茶店があったら、休まないぃぃ?」
「あ、それいいわねっ!」
「こ…こんにゃろプルルン。て、てめぇの荷物くらい自分で持てってんだよ。オ…オイ
 ラより力あるくせしやがってぇ…」
「なにを申す、マヌケ忍者ぁ!可憐な乙女らが、か細い足に鞭打って辛い旅をしている
 とゆ-のにその冷たい態度はなんじゃぁ!男なら、優しく苦労を背負ってやるくらい
 当然じゃ!」
「ひいひいひいひい」
「あ、茶店よぉォ」
「アハッ、行きましょ!」
辛い旅をしている可憐な乙女2人が、スキップして茶店まで駆けて行く。

萱ぶきの茶店。「峠だんご」の赤いのぼりも鮮やかな、お馴染み時代劇の風情である。
「わぁ。なんだぞよなんだぞよこれは。乞食の集会場かや?」
初めての旅、見る物聞く物めずらしい物ばかりのウサ姫。所かまわずはしゃぎまわる。
「ぜぇぜぇ。ひいひい」
縁台の上で大の字に倒れているヤッ太郎をそのままにして、奥に上がり込んだ娘3人。
ウサ姫は煮炊きの煙ですすけた天井を見上げて喜ぶ。
「わぁ~い。きたないぞよきたないぞよ!」
手放しのはしゃぎっぷりである。
「へぃ、お団子お待ち」
「わぁ~い。まずいぞよまずいぞよ!」
楽しげなウサ姫を、薄暗い店の奥から窺っている目があった。
いかにも人相が悪い男が二人。ハゲタカ型と、オオカミ型である。…となれば、これは
もう悪役以外の何者でもない(笑)。
団子を食べ終ったウサ姫が、辺りを見回しながら立ち上がる。
「姫は、おトイレじゃ。カワヤはどこじゃ?」
「へい。こちらで」
「わぁ~い。くさいぞよくさいぞよ!」
はしゃぎつつ用を足したウサ姫が出て来ると、男が二人、その前にフラリと歩み出た。
「はぁい、お嬢ちゃん。このあたりに来たなら、ニンジン牧場を見なくちゃ。数百頭の
 野性のニンジンが走り回る大牧場があるんだけど、行くぅ?」
「わぁ~い。行くぞよ行くぞよ!」

縁台の上にブッ倒れているヤッ太郎の頭に、ゴツン。何かが投げつけられた。
「あ、あいたた…。あにゃ、なんだこれ?」
見ると、小石を紙でくるんだ物である。開くと、何やら漢字がいっぱい書いてある。
「新手のチラシかにゃんか…かな」
ヤッ太郎はポイと手紙を投げ捨てる。
「ウサ姫さまぁ。ウサ姫さま、一体どちらへ…ヤッ太郎、ウサ姫さま知らない? あら、
 なぁにこれ?」
プルルンが自分の足元に飛んで来た紙を開いて、読んでみると。
「娘は預った。返して欲しくば今宵落日の刻に、女一人に有り金を全部持たせて地獄ヶ
 原まで来い。余計な真似をすると娘を殺す。」

プルルンと、脇から手紙を覗いていたおミツはしばらくキョトンとして、…ゆっくりと
互いの顔を見つめ合うと、途端に空高く飛び上がる。

「わ一一一一一一一ッ!! 誘拐されたァ一一一一一一ッッッ!!!」

地獄ヶ原。
真っ赤な、血の様に赤い夕日がしたたるかの如く地平線にしなだれかかっている。
不吉である(笑)。
「わぁぁぁい、わぁぁい。人質交換じゃ、刑事ドラマじゃ。姫が主役じゃ、わぁぁい!
 これ、その方ら、お主らはこれからヒドい目に会うんだぞよ。覚悟はよいのか!?」
小脇に抱えたウサ姫を無視して、待ち受ける男2人。
「お、来たようですぜ」
風がうなりをあげる原っぱを、おミツが1人でやって来る。ゴゥゴゥと風が吠える。
……不吉だ(笑)。
「よぉし、約束どおり1人で来たのは褒めてやる。金はどこだ!?」
「………………」
おミツは、悲しげな瞳で盗賊達をにらみつけるばかりである。
「聞こえねぇのかッ!おいッ!…金はどこだって聞いてんだよッ!!」
怒鳴りつける男の背後から、突如として声。
「そっちこそ、ちゃんと人質を連れて来たのは褒めてあげるわ。…姫様は返してもらう
 わよ」
男達が振り返ると、真っ赤な忍び装束を来た女が、ふいにその手をサッと閃めかす。
と、突然男達が手にしていた小刀が物凄い力で引っ張られ、女の方向へ飛んで行く。
かと思うと、その場所に既に女はいない。ウサ姫を小脇に抱えた男が、突如としてその
横っ面を激打され、よろめいた所を人質をかっさらわれる。その間、およそ1、2秒。
見事なもんである。
「!?」
何が起ったのか判らない男達を尻目に、姫様を連れ戻したプルルンはおミツの傍らへ。
「いいわよ、おミッちゃん」
待ってましたとばかりに、大きな瞳をウルウルさせるおミツ。
「おミツ、おミツ、…悪い事する人、だッ、大嫌い一一一一一一一一ッッ!!」
パッと白煙を立てて娘の頭部から何かが飛び立ったのを見て、勘の鈍い男達もようやく
事態が異状なのに気が付き、慌てて逃げ出そうとする。
「わ一一一一一一一一ッッッ!」
だが時既に遅し。可愛いペンギンを摸したミサイルがカシッと羽根を広げ、男達をその
センサ-に捕えるとどこまでも正確に追尾して行く。
ピカッッッッッ!!!
大きな夕日さえもその輝きの中に飲み込む、巨大な火球! 突風と激震の中、膨れ上がる
キノコ雲の上空に、キラキラと見事なオ-ロラが現れる。
恐ろしく多量の高速放射線が電離層に衝突して花開いているのだ。シャムネコブランド
お得意の、凝ったギミックである。
「い……一発でコレなんじゃ、おミッちゃんが全部のランチャ-を使ったら、一体どう
 なっちゃうの!!?」
震え上がるプルルン。ああ、とどめを知らぬ軍拡競争の果てには、一体何が待ち受ける
のであろ-か(笑)!?
「あ-スッキリしたァ!」
満足げなおミツではあるが、…EDOを旅立って初日にコレでは、この先が思いやられ
ると言うモンである。

ところで、ヤッ太郎はその頃どうしていたかというと。
「う-んう-んう-ん」
ウサ姫がさらわれたのを知って、ガバッと慌てて飛び起きたため、酷使した腰がギック
リ腰を起して一日中ブッ倒れていたのだ。
ああッ、果してこんな事でこの先、無事に旅を終える事が出来るのでありましょうか!?

つづく。							ゆ-さく。