#38 Article 1191 Posted at 1991/05/04 05:50:50 by ユ-サク (MAP1754) [STORY]

Subject: Re:*12 連載小説「ウサ姫道中記」・今度こそラブコメだっ! /1190 ..... /1080 /1079

第3回。

明け方も近い闇夜。
エドポリの北東、実際の日本で言えば常磐道の辺りを疾駆する二つの影がある。
ともに尋常でない速さを出してはいるが、一つの影が音も無く滑るかのように駆け行く
のに対して、後に続く影はガサガサと草音をたて、足取りも頼りない。
(おお、なんか”猫目 ”みたいなイントロ(笑)。)
「アッ!」
後を追う影の方が、バサッと倒れた。
「おカラッ!!」弾かれたように飛んで戻って来る影。
「大丈夫か…?」
「アハ、ごめんカラ丸さ、オラ足手まといになってカラ…」
健気に笑うおカラだが、カラ丸が小型のライトで彼女の足を照らして見ると太腿の部分
が無数の傷で真っ赤に濡れている。
サラシを巻いた膝から下は無傷なものの、丈の短い着物で草地を長時間走ったからだ。
しまった…おカラ用の忍び装束さえ作っておけば…野草の鋭い葉先に切り刻まれた恋人
の足を前にカラ丸はまたしても自分の失態を悔やんだ。
「カラ丸さ…ごめん、オラずっと忍者の修業サボッていたカラ…これじゃぁカラ丸さの
 嫁っことして、失格だ…」
しょんぼりとうなだれるおカラ。
おカラが何故忍者の技を鈍らせるほど修業をしていなかったか、カラ丸は知っている。
カラ丸に会いたくて会いたくて、ピエロの姿に身をやつして旅をして来たからだ。
炎天下の大道芸も、木枯らし吹く巡業も、か細い身で、たった一人で…。
思わず咽の奥にグッと込み上げるものを噛み殺して、カラ丸はおカラを背負い上げる。
街道沿いの農具置き場の小屋の中。
おカラの着物の裾をまくり上げ、傷に非常薬を塗ってやっているカラ丸。
うるんだ目で太腿をさすってくれている恋人の頭につかまっているおカラだったが、
…やがてしなだれるように身を寄せて、肩に抱き付く。
「カラ丸さッ!…オラ、オラ、カラ丸さと一緒ならどんなになっても幸せだ!…だから
 オラと離れないで!離れないで!」
「おカラッ!」
あまりの愛しさにキツく抱き締めるカラ丸。
小型ライトの淡い光の中で、二つの影が寄り添って倒れる。

カチン ←口バシの触れあう音(笑)。

ああっ!!果してこの健気な夫婦を今後いかなる運命が襲うのでありやしょうかッ!?
早く逃げろってば、早く!!…変な事やってる場合じゃないぞ(笑)!!

夜が明けて、こちらはエドロポリス。

掘っ立ての木造メカEDO城、中庭に面した謁見席にウサ姫が座っている。
庭に控えているのはワンコ-守、そしてヤッ太郎とプルルンだ。
将軍もその辺で扇子振って喜んでるのだが、この人はさして重要ではない(笑)。
「面をあげい。婿殿の居場所について重要な参考人をつきとめたと申すのは真かや?」
「ぱふ~~っ!」
「は…ウサ姫様。今、本人を呼んで来ますので、そこでそのまま、ちょっとの間お待ち
くだせえ、しばらく、しばらくの間」
「うむ?」
何を思ったかヤッ太郎は庭の隅の出口に引っ込んでいき、なにやら奥の方でゴソゴソと
やっている気配がしたかと思うと、再び現れたのはピザキャット店員服姿のヤッ太郎。
慌ててウサ姫の前に駆け寄ると、頭を地面にこすり付けて土下座する。
「へへ~ッ、姫様におかれましてはご機嫌うるわしゅう」
「なんじゃあ? おぬしはいつぞやのピザ屋ではないか!? 姫とお城を探険した…」
「へ、へい」
「その方が婿殿の行方を知っていると申すのかや?」
「へい、これを…」
ヤッ太郎が差し出したのは、ピザキャットの前で彼とカラ丸が肩を組んでいる写真。
「おお!これは確かに姫の婿殿!なるほど重要参考人じゃ!でかしたぞよマヌケ忍者!
 ……マヌケ忍者ぁ? マヌケ忍者はどこいったんだぞよ?」
「ひ、姫様、あの方はその、トイレに行かれまして…」
「なにぃぃ!? 姫の前を抜け出してトイレに行ったと申すか!? ぶっ、無礼者ぉぉ!
 今すぐマヌケ忍者をここへ引ったててまいれぇ!!」
「ぱふ~~~~っ!」
「ひッ、ひえええええ!」
「ひっ姫様、それよりも今は婿様探しの方が大切なのでは!」
プルルンが助け船を出した。
「うむ、それもそうじゃ。して、その方、婿殿の行方は知っておるのか?」
「へへへ、へいっ。こ、この男は去年うちの店で働いていた奴でして、い、今は故郷に
 帰ったと風の便りに聞いておる様な気がしやすが…」
「故郷?…故郷とはどこじゃ!?」
「へ、へいなんでもそりゃもう遠い遠い遠ぉぉぉい南方のゾルゲル島とかレッチ島とか
 いう孤島だとかで、とても連絡は…」			 (↑シッテル?↑)
「行く」
「へッ!!?」
「すぐその島に行くぞよ!ただちに船の支度をせい~っ!」
「ぱふ~~~っ!」
「お、お待ちくだせぇウサ姫様、今思い出しやしたが確かその島は先週、火山の大爆発
 で海底に沈んだとか…」
「なに!?…では、姫の婿殿はどこにいるのじゃ?」
「さ、さあ、あっしにはとんと…」
「マヌケ忍者に探させるぞよ。マヌケ忍者ぁ!マヌケ忍者はまだ戻らんのかぁぁ!」
「ひ、ひえっ!!」
「ぱふっ!ぱふ~~~~~っ!」
プルルンは顔にスダレをかけて硬直していた。
ワンコ-守は黒目をバッテンにしてガックリしている。
考えてみればヤッ太郎にこのテの仕事が出来るはずがなかった…。頭を使う仕事など。
「あ、あにょウサ姫様、オイラが聞いたのはまた聞きのそのまた聞きの噂で、信ぴょう
 性の方はオイラのあずかり知らにゃいところで、その」
「ええ~い、こやつの言う事はちっともハッキリせんではないかぁぁ!もういいっ!…
 こうなったら姫が必ず行方をつきとめてやるぞよ!」
ウサ姫はじっと手の中の写真を見る。
「ピザ屋に婿殿が勤めていたのは確からしいから、…とりあえずこの周辺で聞き込みを
 やって…」
「あ一一一一一一一っ!」
突然、ヤッ太郎がわたわたと腕をバタつかせて慌てる。
「実はウサ姫様、その男は今年からウチの真向いで同じピザ屋をやっていて、その…」
「なに、お店!?」
「あ、バカ!」プルルンが驚く。
「!」ピクリとワンコ-守の眉が上がる。
「バカねっ!ど-してそんな余計な事言っちゃうのよっ!」
プルルンが小声でヤッ太郎を責める。
「だって聞き込みなんかされたらすぐバレちゃうじゃねぇか。そん時にウサ姫様にどう
 言えばいいんだよ!?今言っとかねぇと何かあるんじゃないかと疑われちまうぜ?」
「でも…ホラ…」
「何故それを早く言わぬ! 早速その店を調べるのじゃ~っ!」

PIZZA烏山支店、仕込みを終った2人のカラスが暖簾を出している。
「カラ丸様の帰りまで、二人でこの店をしっかり守っていこうなっ!」
「ああ!早く帰ってくださるといいけど、それまでは頑張ろうなっ!」
健気な2人の背後に迫る不気味な影があった。
「おめぇら、カラ丸の居場所を知ってるんだな…」
2人が振り向くと、そこに居たのは。
「ニャ、ニャンキ-!!」
ヤッ太郎とプルルンが風の様に動いて、いきなり憐れな2人をはがい締めにする。
「言えッ!カラ丸はどこへ行った、言え!言わねぇかッ!」
「し、知らねぇ! 知らねぇよ、ば、幕府の犬めぇぇぇ!」
「ふん、あたしらは猫よ!」
なにやら不自然にシリアスな二人の仕事ぶりを、傍で見守っている者達がいる。頭巾を
目深にかぶったイヌ型の男とウサギの娘。いうまでもなくワンコ-守とウサ姫である。
ウサ姫は、最早自分の目で成り行きを見ない事には我慢も辛抱も出来なくなっていた。
ワンコ-守もしぶしぶ承知して、お忍びで連れ出して来たのだ。
「言えッ!言わねぇと痛い目に会わせるぜ!」(註;ヤッ太郎のセリフです(笑)。)
「し、知ってたって絶対言うものかぁぁぁぁ!」
「おい…今から気絶させるが、悪く思うにゃ」ヤッ太郎が相手の耳にささやきかける。
「!?」
「判ったな…!カラ丸とおカラちゃんを守りたいのなら辛抱だぜ!」
「…!」なにやら判らないが諾くカラス。
「でえいっ!」
「ギャ一一一一一一一ッ!」
バッタリ倒れる2人。そのままピクリとも動かない。手刀が急所を突いたのだ。
「し、死んでしまったのかや!?」
「すいません、打ち所が悪かったらしくて……」
「ちょっと力が入り過ぎたかしらねぇ…?」
信じられない風に2体の”死体 ”を眺めるウサ姫。
ワンコ-守が言い出しにくそうにそんなウサ姫に歩み寄る。
「ウサ姫様…これでは捜査は振り出し。いったん、お城にお戻り下さい…」
「せっかく手懸りを掴んだのに…なんで姫のやる事はうまくいかないんだぞよ…?」
ウサ姫は地面を見据えたまま、動かない。
「ウサ姫様…」
「…姫は、今度こそ大好きな婿殿に会えると思ったのに…思ったのに…」
ぶわっっと大きな目から涙が溢れる。
「み、みんなが姫にああしろこうしろって言うばかりで…姫は難しい事も一生懸命覚え
 ようとして来たのに…な、なにしろ城に居るのはこの、うるさいオヤジの他にはアホ
 ばっかし…ひ、姫はだから頑張らなくっちゃって思って…なのに、なんで、なんで、
 姫が自分の考えで何かしようとしたら皆んな、皆んなして邪魔……う、うう、うう、
 うわあああぁああぁぁ~あぁああぁ一一一一一一一一一一ん!!!」
驚天するヤッ太郎とスカシ-。ワンコ-守も愕然として身を引く。
「うわぁぁ!うわぁぁぁん!うわぁぁぁあぁ一一一一一ん!!」
突然の、切なげな、悲しげな、その泣き声。
どう対処していいのか判らない。3人とも、オタオタするばかり。
「あああん!ああああぁ一一一一一ん! あああ、ああああぁぁ一一一一一一ん!!」
まさか、ウサ姫の気持ちがこんなに真剣なものだったとは…。いつものワガママの延長
の様に考えていたワンコ-守もヤッ太郎達も、思わず唇を噛み締めていた。
突如、ふっとウサ姫の鳴き声が途絶える。「もうやめじゃ」
ケロッとして振りかえるウサ姫。
「ウ…ウサ姫様!?」
「もう、いい子はやめじゃ。これからは、姫はやりたいようにやるっ…!」
それじゃこれまではいい子のつもりだったのか!?と言う疑問は差し置いて、見つめる
一同に向かって、
「とりあえず姫は、隣のコ-リャン国に出兵しようと思うぞよ。者共準備をせいッ!」
「げえッ!」
「ウ、ウサ姫様!!?」
「おぬしらも前線送りじゃぁ一一!男はみんな討ち死にするまで戦うのじゃぁ一一!!
 きゃははははははははははははははは!」
「ひ、姫様…」
「姫様がキレたぁぁぁぁぁっ」
冷や水をブッかけられた様に、心底ゾッとするヤッ太郎、プルルン。
このままでは一体エドロポリスは、この国はどうなってしまうのかっ(笑)!!?

「大丈夫ですウサ姫様…カラ丸さんの行き先は判りますよ」
「エッ!!?」
いつの間にやら、おタマがそこに居た。さっきから傍で一切を聞いていたらしい。
「こうなったら姫様には気の済むまでしたい様にして頂くしかないんじゃないですか?
 ねぇ? ワンコ-守様?」
「う!?…う、なに!?」
「し、したい様にって!?」
「まさか、カラ丸を捕まえさせるってゆうの!?」
「カラ丸達を犠牲にするなんて、そんなのひど過ぎるわ、おタマちゃん!」
おタマが二人に耳打ちする。
「…だからァ、ヤッ太郎さん達がウサ姫様と一緒に捕まえに行って、捕まらないように
 するんですよォ…気の済むまで諸国を漫遊すれば姫様の気もきっと晴れますって!」
「ハァ!!?」
「い、いかん!エドロポリスの中ならともかく、幕府に反旗を翻そうとする藩もあるや
 も知れん、そんな中に旅をするなど、もっての他!」
「少人数なら、逆に怪しまれないで済むでしょう。護衛なら大丈夫、あたしが猫忍一族
 を全員招集します。そして街道沿いに目立たない様についていかせます。…それなら
 どうです?」
「う?…う、ううむ…」
「婿殿の居場所が、判るのかや…?」
頬の涙をこすりながら、うるんだ目のウサ姫が聞く。
「そ、そうだぜ。もしだぜ、こいつらが生きてたって絶対口割らないと思うぜ!?」
ヤッ太郎が足元の”死体 ”を指差す。
「大丈夫。あたし見てたんです。カラ丸さん達の店がどうやってあんな安く品物を作れ
 るのかって。…そしたら、週に1回、カラスさん達が沢山の野菜や牛乳を運び込んで
 る事が判ったんです。早朝に」
「そ…それって…」
「多分産地直送便ですね。カラカラの里からの。だからあんなに安く出来たんですよ。
 カラカラの里は、まだ生きてるんです。カラ丸さん達が向かうとして、そこより他に
 場所がありますかぁ?」
最早、一同には返す言葉も無かった。

しかし一つ、彼等が油断している事があった。…足元に倒れ伏しているカラスの一人が
意外に丈夫なタイプだったらしく、さっきから目を覚まし、話を聞いていたのだ。

「ウ…ウサ姫が旅に出る!?…しかもカラ丸様を捕まえに、カラカラの里へ!?
  …こ、こうしちゃいられねぇ、早く全国の仲間にこの事を伝えねぇと…!」


やがて、ネコ富士山の周辺からおびただしい数の小型の忍者達が街道へ溢れ出て来た。

にゃ-にゃ-にゃ-にゃ-にゃ-にゃ-にゃ-にゃ-にゃ-

猫忍一族である。雪崩の様に波をうってエドロポリスへ下って行く。


一方、全国から呼び集められたカラカラ一族の群れは、常磐道に大集結を開始していた。
カァ-カァ-カァ-カァ-カァ-カァ-カァ-カァ-カァ-


2党の全面衝突は、これまでの時点では避けられていたのだが…。
鳴呼、風雲急を告げる常磐道。

つづく。						ゆ-さく。