#38 Article 1080 Posted at 1991/04/02 12:36:43 by ユ-サク (MAP1754) [STORY]
Subject: Re: 連載小説「ウサ姫道中記」・今度こそラブコメだっ! /1079
第一回。 舞台はエドロポリス。 あの騒がしく楽しくパ-プ-で愛らしい、懐かしい街。今再び、物語が始まる! 一時焦土と変したこの街も、近隣都市群の援助によりようやく活気づいて来た。 建築中の新メカEDO城の傍らの、バラック建ての城。 夜。この国で最も高い地位にある一家が、仲良く布団を並べて休んでいる。 その内、一番小さい布団からつき出た長い耳がモゾモゾ、ピクピクうごめいている。 「お婿さん…。姫のお婿さん…。どこいっちゃったんだぞよ? 姫は毎日毎日、そなたの事だけ考えてるのに…」 布団の中で、バックライト付きの写真立てを覗き込むあどけない瞳。 写真立ての中には、グルグル巻きに縛りあげられ、目をBSアンテナの様に飛び出させ て絶叫している若い男の写真。 「お勉強の時も、ご飯の時も、そなたが傍にいてくれるだけで姫はお行儀良くできるし 嫌いな物でも食べられるのに…姫はすっかり痩せちゃったぞよ? 見てくりゃれ…」 言いつつ寝間着の前をはだける少女。 つやつやとぬける様に白い肌。平らだが、別に痩せているようには見えない胸。 少女はそこに写真を押しつけ、抱き締める。 「お婿さん、お婿さん! 会いたい、姫は会いたいぞよ! 姫は…そなたが…」 ごろり、ごろりと寝返りをうつ。 「あッ…! あ、あ、あ」 その頬が赤くそまり、額にじんわりと汗が浮ぶ…。切なげに引きつった眉。 「あッ!ああああ!あッあッあ!」悶え、苦しげに震える背中…。 突然、ガバと起きあがる少女。 「ね、寝返りをうったらスジを違えちゃったぞよッ! い、いい、痛かったぞよッ! ひッ姫は、姫は、腹がたったぞよ一一一一一一一一一ッッ!」 ツルコ-デオマ-ッッッ!! ワンバンコ-ッッ!! 次の日。青空。昼食時の街は、活気に溢れている。 どこに続いているのか、腹をすかせた人々の長い行列。賑やかに立ち話をしている。 「いやぁ、その山イモピザの旨さときたら!カラッと揚げられたクリスピ-の間から、 トロリとしたとろろが…そりゃもう、まったりくったりもったりのったり」 「あのシェイクを飲んだかい? 新鮮な卵と牛乳をたっぷり使ってあの安さ。あれを一度 飲んだら、もう他の店のモンなんか飲めやしないね」 人々が噂をしている店は、焼け跡に忽然として現れた新進のピザ屋である。 工夫を凝らしたメニュ-と良心的な価格で、今やエドポリ一の人気を誇っていた。 その店…「PIZZA烏山支店」の店内。昼食時は、戦争の様な忙しさである。 「あッ!」 フロア-係の娘が、つまずいてくずおれる。 「あッ、大丈夫ですかおカラさんッ!」 慌てて駆けよる小型のカラス型アニマロイドが二人。 「おカラ!」 奥の調理場から飛び出して来る、若いカラス型の男。あの、写真の男だ。 「無理すんでね。疲れたら、奥で休んでろ、な」 「アハ、ちょっと蹴っつまずいただけだァ。オラ、この通り元気モリモリだァ」 健気にガッツポ-ズを作ってみせる娘。 「そんな顔すんでねぇ!お店が繁昌してるッてのにここで張り切らなぐてどぅすンだ。 ほれ、おめぇ達も仕事、仕事!」 「う…うん…」 心配そうに笑いながら再び配置に戻って行く男達。 昼下がり、ようやく客足の止まった店内で、遅い昼食を取る一同。 メザシに卵の、質素なおかず。 多分、店のメニュ-を充実させるために食費を切り詰めて頑張っているのだろう。 「済まねぇなぁ、ぷの4号、んの1号。おめェたちにも、こんな苦労させちまって…」 「カ、カラ丸さんッ!」 とんでもない!とばかりに乗り出す二人。 「あっしたちゃぁ、嬉しいんですっ!…幻ナリ斎様が行方不明になられて、散りじりに なって以来、こうして再びカラカラの仲間と一緒に働けるなんて…」 「な」 瞳を見つめあい、うなずきあう二人。その目はキラキラと輝いていた。 「ああ、おめぇ達の苦労は決して無にしねぇ。…見てろ、俺の夢はなァ、この店を全国 チェ-ンに拡げる事なんだ。国中から同士を呼び集めてなぁ、外食業界で再びカラカ ラの名を轟かせてやろうッて寸法よ」 楽しげに、箸を振り回して張り切る男…カラ丸。 「カラ丸さんにこうして声をかけて貰えなかったら、あっしゃぁ今だに上野のガ-ド下 で靴磨きをやってたに違いありやせん…」 「あ…あっしゃぁ銀座の花売り娘を、多分、今だに」 「そ-いや への3号は池袋でキャバレ-の呼び込みやってたって聞いたなぁ。あいつ、 声だけは良かったからなァ」 「れの8号なんかテキヤ稼業から裏街道に入っちまったって話だぜ…そりゃ忍者の技を 使えば出世出来るだろうけど…なんであんないい奴が…」 「見てろッ!」 雄々しく叫ぶカラ丸。 「今はこの店はこんなだが、必ず大きくしてやる! 俺に任せておけ!」 胸を張るカラ丸。 「そして、お前達の仲間を一人残らず雇ってやる!そんときゃぁ、お前達も幹部として よろしく頼むぞ!」 「カッ、カラ丸さんッ!」 「頑張ります、あっしら、頑張りますッ!」 「そうです、どんな苦労だって、へでもありやせんッ!」 豪放に笑うカラ丸。 おカラは、食事も忘れてそんなカラ丸を惚れぼれと見つめていた。 この人と一緒になって良かった…。 忙しくて辛いが、その中からじんわりと幸せがにじみ出して来る生活。 おカラは今、女に産まれた喜びををしみじみと噛み締めていた。 一方こちらは、烏山支店の真向い。 こちらもピザ屋ではあるのだが、烏山支店とは対象に店の雰囲気はど~んよりと暗い。 ネコ型の男女が2組、カウンタ-や椅子席でぼんやり天井を見つめている。 「予算…仕入れ…借金…返済…」 一番小柄なネコ型の少女が、なにやら口の中でモゴモゴ言っている。 「り、利益…きゃ、客…お、お客…」 ボ-然とした目で店の出入り口を見据える少女。客の入って来る気配はない。 と、出入り口のそばのテ-ブルの下に、なにやらキラリと光る物がある。 「あ一一ッッ!!お、お金一一一一ッッ!」 カウンタ-から飛び出し、ヘッドスライディングで飛び付く少女! ガン! 大きな頭を、モロにテ-ブルの角にぶつける。 「お、おタマッ!」 「おタマちゃんッ!」 慌てて駆けよるアニマロイドの若者たち。 ジュ-スの王冠を握りしめ、白目を剥いている少女、おタマを介抱する。 「あらあら、大きなたんこぶ!」 「おい、赤チン持って来い、赤チン」 「あ、赤ッッ!!」 絶叫してプルルンの腕から飛び起きるおタマ。 「そ、それを言わないで!その言葉を言わないで一ッッ!」 「にゃ?…赤ってコトか?」 「きゃ一一一一一一一一一一一ッッ!」 壁際まで走って行き、追い詰められたように震えるおタマ。 「……」 しばらく目を点にしていた若者達…ヤッ太郎、スカシ-、プルルンがやがて肩を落す。 「ああ、おタマがあんにゃになるのも無理ないぜ。ここんとこ、客の入りがめっきりだ もんにゃぁ」 「なんとかしないとなぁ。資金不足で猫忍一族の組織まで、ご破算になっちまうぜ」 「は、破算!」 まっ青になり、壁にガリガリと爪を立て、なにかから逃れようとするおタマ。 「おタマちゃんも、このままじゃ猫忍一族頭領の面目、丸潰れよねぇ」 「つ、潰れッッ!!」 スゥと意識を遠くして、後ろ向きに倒れるおタマ。 慌てて駆けよる3人。 夕暮れの迫る店内。おタマは頭に包帯を巻かれ、しょんぼりしている。 と、その時。 「あ-あ-あ-。ただ今より、特別放送を行うぞよ!」 メカEDO城の方向から、スピ-カ-で叫ぶウサ姫の声が飛んで来た。 「ウ、ウサ姫様!?」 「にゃんだ?」 店の外の道行く人々も、何事かと足を止めて、聞き入っている。 「えへん」 咳払いに続いて、ウサ姫は以下の様な文面を読み上げた。 「秋の日のヴィオロンの溜め息は、サカサクラゲの純情の様に、黒い、黒いぞよ!!」 「はぁ!!?」 「な、なに言ってんのよ!?」 「幕府の隠密だけに通じる暗号放送です…誰かを指名手配にするらしいです」 「へッ!?」 3人組はあきれておタマを見返した。 「ええと、報賞金がでるらしいです。”黒い ”を2回言ったから…四百万円かな?」 「……」 「お、オイラ達も上忍にゃのに…そんな暗号、聞いた事ないぜ…?」 「そうよ、なんで教えてくれないのよ、ねぇ!」 「忍者は戦うのが仕事ですからね…」 言いつつ、おタマがカウンタ-まで歩いて行き、ドサッと巨大な暗号表を取り出す。 コミケカタログ10冊分より厚い(笑)。 「これを全部覚える自信、ありますかぁ?」 絶句する3人。 「あ、あ…にゃははは、オイラ昇進試験受けるの、止めにする…!」 「そうそう!平和な世の中なら、忍者も悪くないわよね! 少しだけど恩給も出るし…」 「ああ、中流意識にドップリ漬かるのって、心地良いなァ」 3人組がバカ言ってる時、ウサ姫が続いて残りの文面を読みあげた。 「妊娠5ヶ月のスイカのヘソの裏で3匹のイモ虫が大腸菌ダンスを踊るぞよ!!」 「あ!!」 目を丸くするおタマ。 「どうした!?」 「て、手配人物の特徴を読み上げたんです…そ、それによると…」 当惑するおタマ。なにかが、意識の中で揺れ動いている。そんな眼差しであった。 「カ…カラ丸さんです…」 つづく。 ゆ-さく。