#38 Article 100 Posted at 1990/09/03 00:09:10 by めんたこ (MAP822) [ORIGINAL]

Subject: 番外編 島流しが出来ない?

この物語は『キャッ党忍伝てやんでぇ』の番外編であります。
 あくまでも番外編ですので、実際に放映された『キャッ党忍伝てやんでぇ』と細か
 い設定、果ては大前提すら食い違っている可能性があります。
 その件に関しましてうろ覚えの知識で書き上げた筆者は何の責任も負いませんので
 念の為。
 また、この前書きを含めて280行程ございますので、「こんなもん読まない!」
 という方はTAB(だったよな)で読み飛ばして下さいませ。


			『キャッ党忍伝てやんでぇ 番外編』
				 島流しが出来ない?

「島流しにせぇ~~~い!」
 透き通るような白い顔を上気させながら、お得意の台詞を叫んでいるのは誰あろう、
通称島流しのおウサ……違った、メカエド城のれっきとした姫君、ウサ姫その人であ
った。
「失礼ながら、ウサ姫様に……」
 ワンコウ守は、ウサ姫の退屈しのぎにつき合わさられていた新たなる島流しの犠牲
者をバックに、姫に重大な事を告げようとしていた。
「これからは島流しを自重して下さいますよう、切にお願い申し上げます」
 顔を伏せている為、ワンコウ守の表情は見えない。
「どうしてじゃ、ワンコウ守?」
 ウサ姫は不機嫌さをあらわにしながらワンコウ守に尋ねた。ワンコウ守は先ほど、
暑苦しいから顔を見せるなと姫に言われた事を一瞬忘れ、伏せていた顔を姫に向けて
こう言った。「もう島流しに使える島がございませぬ」

 エドロポリスはエドロ湾に面している。その為、海の幸は豊富で、近海で捕れるイ
ワッシーやシネマアジ、ザンパンアサリなどの水揚げが多く、そのほとんどがエドロ
ポリスの魚屋で売買されている。
 また、その海の向こうにはウサ姫御用達、島流し専用の島、シマナガ島があった。
 シマナガ島は島の中央に休火山であるシマナガ山がそびえる小さな島だった。その
海の向こうという場所と、休とはいえ火山があること等からあまり島としての価値は
なく、島流し専用の島として有効利用している。
 また、シマナガ島は約一千人の収容が可能だったのだが、放送開始以来、あまりに
ウサ姫の島流し宣告が多すぎたため、先ほど通算一千人を記録、同時に島流しにした
くとも、その流す為の島がないという状態に陥ったのだった。

				◇

「という訳でニャンキー」
 ワンコウ守の顔がTVにドアップで映っている。それを遠まきに眺めているピザキ
ャットの面々は、時間外らしく、みんな私服パーツを身につけていた。
「一刻も早く新しい島を見つける為に出動だ!」
 一瞬、ピザキャットに静寂が訪れる。まず始めに口を開いたのはプルルンだった。
「なに?緊急呼び出しをかけておいて、話はそんだけ?」
 普段釣り目の彼女だが、今はその数倍釣り目になっている。「せっかくおニューの
洋服、バーゲンで買ってこようと思ったのに。見てよ、これ」
 プルルンの手には、力いっぱい握りしめられ、既にグチャグチャになった広告があ
る。見てよと言われても無理な相談であった。
「せっかくの猫銀座デパートの、半期に一度のタイムサービスが……」
「その気持ち、俺にも分かるぜ」と、スカシーはプルルンの両肩に手をおいて言った。
「スカシー……」
 プルルンとスカシーはまるで少女漫画のようにキラキラした目で見つめ合った。
「俺だっておミっちゃんといい所まで行ってたんだ。コブ茶を飲んで、その後一緒に
アメ猫に行こうって……」
 アメ猫とは、安いが値段の割に結構いい品物がおいてある狭い横町の事である。当
然の事ながら、お金持ちとは到底呼ばれるはずもないニャンキー達は、アメ猫の常連
だった。
「スカシー、てめえおミっちゃんといつの間に……許せん!」
 ヤっ太郎はとっさに近くのテーブルにのっていたフォークを握ると、スカシー向か
って突進した。
「話をしようと思ってたんだからな!」
 ヤっ太郎はスカシーめがけて突き立てようとしたフォークを見事に外した。スカシ
ーが避けた訳ではない。単にヤっ太郎が転けただけの事である。ご丁寧にも、転ける
時に効果音が『スカ!』とバックに表示される。なまはんかな転け方ではなかった。
「それじゃあ、おいらと一緒じゃねえか」と、床に転がったまま、ヤっ太郎がつぶや
いた。
 ナレーションが空しく響く。
『説明しよう。ヤっ太郎もスカシーが来る一分前、スカシーが話そうとしていた事と
全く同じ事をおミツに話しかけようとしていた。おミツは表にお客が来たようだと行
ってしまい、ヤっ太郎はその間ヤケコブ茶を飲んで待っていたのだが、実はそのお客
とはスカシーで、二人はお互いの事に全く気づかなかったのである』
「え~~~い。ブツブツ言ってないで早く行かないか!」
 ブラウン管に映ったワンコウ守のアップは既に鼻だけのものとなっていた。

 ニャンキーが出動したのは、それからたっぷり三十分は経ってからの事だった。
 出動しようとしたニャンキー達は、遅ればせながら、おタマがいない事に気づいた
のである。
 おタマはすぐに姿を現した。猫銀座デパートの紙包みを山ほど抱えて。
 その為、プルルン対おタマのバーゲン品争奪戦争、引っかきかみつき何でもありの
デスマッチが始まってしまったのだ。結局、半分ずつにする協定を結び、一応の決着
はみたのだが、それはかなりの被害をもたらした。
 ピザキャットの内装はいまや見る影もない。ヤっ太郎とスカシーには二人を止めよ
うとして出来た無数の引っかき傷がある。しかし、不思議な事に当のプルルンとおタ
マには荒い息を吐いてはいるものの、かすり傷一つなかった。
 おタマはせっかく自分が手にいれたバーゲン品をプルルンに半分も奪われ、しかも
内装の修理にお金がかかるその腹いせを思いっきり発散させる事にした。
        ランダム
「座標、角度……適当。発射速度はMAXっと」
 目的は新しい島さがしである。確かに座標は決まっていない。おタマはニコっと笑
ってから言った。「行っきまぁぁぁす!」
 それは暗い発射台の中で待っているニャンキー達にとって、恐怖の微笑みだった。

「どわぁぁぁぁぁぁぁ」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
 おタマによって打ち出されたニャンキー達は悲鳴を上げるのが精一杯だった。
「かあちゃん。ピザ屋さんが飛んでるよ」
「今日はいつもより頑張っているみたいだねぇ」
 すっかりレビュラーとなってしまった伊津茂乃親子である。長年ニャンキーの発射
風景を眺めていたのは伊達ではなく、一目で発射スピードが尋常でない事を見破って
いた。
 その言葉の通り、ニャンキー達は普段の数倍の加速度をもって打ち出された。もち
ろん、ニャンキー達にかかる負担はいつもの数倍のX乗となる。
『説明しよう。筆者は物理は特異では……もとい、得意ではなかった』
 しかし、ニャンキー達を見ていたのは伊津茂乃親子だけではなかった。それはヤっ
太郎の最大のライバル、苦労性のカラ丸その人である。(そこの人、苦労がクロウ=
カラスとかけてあるので読み流さない様に)
「あれは……ニャンキーか!どこへ向かう気なんだ?」
 カラ丸は自分の持てる最大スピードで流星と化しているニャンキー達を追った。
 そんな事とは知らないニャンキー達は、パワーMAXの結果として、地面に三つの
大穴を開け、その奥に埋まっていた。
「あいてて……ここはどこだ?」
 最初に立ち上がったのはヤっ太郎である。
 彼は普段からカラ丸との死闘を経験しており、衝撃には強かった。また彼の為に特
注で造られたという石頭パーツが物を言ったのであろう。
「こ、ここはシマナガ島じゃないか」
 ヤっ太郎に続いて復活してきたスカシーが言うまでもなく、目の前に『ウサ姫御用
達、シマナガ島にようこそ』と書かれている立て札を見れば一目瞭然であった。

 ニャンキー達がシマナガ島に来たという事は”あっ”という間に島中に広まった。
『説明しよう。その言葉通り、”あっ”と言い終わった現在、シマナガ島中の島民が
ニャンキー達が落ちた、ここナガ浜、東南角地に集結していた。その証拠に、ニャン
キーの姿は人影に紛れて見えなかった』
「あててて。おいらの尻尾を踏んだのは誰でい!」
 ヤっ太郎の抗議は文字通り人波につぶされた。
 何故シマナガ島島民がすべて集まったのかというと、この島には娯楽の施設がない
からである。元々、ウサ姫が島流しをするのは、冗談すらまともに言えない者が対象
なので、ここの住民は自分以外は皆つまらないと思っていて、楽しい事に飢えていた
のである。
『しつこいかもしれないが、また説明しよう。人は皆、自分自身の事はつまらないと
は思わないものなのである』
 もちろん、このナレーションも自分がつまらない事を言っているのだとは夢にも思
っていない。
「いわゆる貴方達がベリーフェイマスポピュラーなニャンキーさん達ですか」
 人混みをかき分けるようにやってきたのは、顔に白と黒の縦じまのしま馬型アニマ
ロイドであった。
「そういう貴方はどなた?」
 人垣を避けながらプルルンが尋ねる。
「いわゆる私のマイネームはシマナガシマシゲオ、いわゆるこのシマナガ島の島長で
す」
『説明しよう。筆者は必死で某氏の真似をしようと努力しているのだが、やればやる
ほど某スネークマンショウの咲坂守に似てしまうのであった』
『筆者:うるさい黙れ!』
『説明したかったのに……』

				◇

「なるほど。いわゆるひとつのこのシマナガ島に代わる島を見つけに来たという訳で
すか」
 島長のシゲオに話をする間も、野次馬は絶えない。話をしているプルルン以外はす
べて島民の整理に大わらわだった。
「ええ、ところでこの近くに島はありませんかぁ?」と、プルルンは目いっぱいブリ
っ娘をして尋ねる。
「さあ。ここはいわゆる一つの孤島でありまして、いわゆる島というのは近くにあり
ません」
 考えてみれば当然である。島が近くにあったら、足抜けならぬ脱走が容易に出来て
しまう。
「そうすると!」
 ヤっ太郎は島民の整理をしながら言った。「他の所に島を探しにいかなくちゃいけ
ないって訳か……あ、押さないで下さい」
 最後の言葉は未だワサワサと押し掛ける島民に向けてであった。
「じゃあ別の島に行くんで船を貸して下さいませんかぁ?」
 プルルンは島長にそう頼んだ。もちろんブリっ娘の姿勢は崩してはいない。ヤっ太
郎とスカシーは心の中で似合わねぇ!と叫んでいた。
「船、いわゆるシップですか?ここにはありません」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!何でよ、何でなのよ!」
 プルルンは今までのブリっ娘ぶりはどこへやら島長に掴みかかった。回りの島民は
あっけにとられて見ている。
「い、いわゆるひとつのここはシマナガ島ですから、誰も外へは出れない様になって
いるんで……く、苦しい」
 プルルンの怪力で喉を絞められ、島長の顔色は白と黒のしまから赤と黒のしまに変
化している。もう少しすれば青と黒のしまに変化するのだろうが、それを救ったのは
意外な人物であった。

「そこまでだ、ニャンキー!」
 空中から、最大スピードで飛んできたせいで息は荒いが、さっそうと声をかけたの
は誰あろうカラ丸その人であった。
「貴様らが何をするつもりなのかは知らんが、このカラ丸が阻止してくれるわ」
 まるで今までと立場が逆である。
 何も分からない島民達は、カラ丸の言葉に一斉に拍手する。カラ丸はそんな経験が
まるで無かった。
「いや、ドーモ、ドーモ」
「愛想を振りまいてどうする!」
 ヤっ太郎は叫んだ。
『説明しよう!ヤっ太郎は珍しく受けているカラ丸が羨ましかった』
「ねぇ、ヤっ太郎?」
 プルルンはヤっ太郎に何やらささやいた。
 ヤっ太郎の表情が驚きから変化した。言葉で表すなら、そう、ニヘラ~~~という
嫌らしい笑いだった。
 カラ丸の背筋に冷たいものが走る。
「ねぇ、カラ丸くぅ~ん。お願いがあるんだけど、聞いて貰えるかなぁ?」
 断わっておくが、これはヤっ太郎の猫撫で声である。雰囲気を掴んで貰うため、ヤ
っ太郎が女装をしていると想像して貰えれば結構であろう。
「な、なんだ」
 不思議に思いながらも、素直に下に降りて来るカラ丸。この辺が数少ないカラ丸フ
ァンの心をくすぐるのであろう。(どこがじゃ)
「ちょっとですむからね!」
 こういう時のニャンキーの息はピッタリと合う。あっという間にカラ丸の足にしが
みついた。
「ほら、カラ丸。飛べ!」
「他の島に行くまでの辛抱だから」
 ニャンキーは口々に勝手なことを言っている。

「どわぁぁぁぁ。くっつくな。離れろ。気持ちの悪い」
 いくら忍のカラ丸と言えども、ニャンキーの三人を足にくっつけたままでは飛び上
がることも出来ない。
「重量オーバーみたいね。降りなさいよ」と、プルルンが叫ぶ。
「何言ってやんでぇ。そう言ってる自分が一番重い……」
 ヤっ太郎は自分の言った言葉を理解した。
「みぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
 プルルンのかけ声とヤっ太郎とスカシーの悲鳴が辺りにこだまする。スカシーは単
に巻添えを食っただけの事である。
「いまだ!」
 カラ丸はそう思った途端、空中へと逃れた。「人の事をおちょくりやがって……い
でよ、タコ八号!」
『説明しよう!筆者にはこれ以上考えられなかった』
「ふっふっふ。外壁に本物のタコを使った贅沢なメカだ。その吸盤に捕まえられれば
いかにニャンキーと言えども逃れることは出来まい」
『説明ありがとう!』
「どういたしまして。行け、タコ八号」

 タコ八号は本物のタコと全く同じ形状をしている。ただ違うのは、胴体に(タコの
胴体は人間でいう頭の場所にあたる……そうだ。実は筆者もよく知らない)白い捻り
ハチマキをしている事だった。
「げげ、あんなのとどうやって戦えばいいんだ?」
 スカシーのつぶやきはもっともである。なにしろ大きさが格段に違う。およそニャ
ンキーの十倍の大きさ、海の中に足は入っているというのに動きは鈍っているように
見えないし、伸ばして来る足以外の所に触ることすら出来そうにない。
 しかも相手の足は八本、それを巧みに操って攻撃を仕掛けてくるタコ八号にニャン
キーは苦戦していた。
「しまった!」
「きゃぁぁぁぁ!」
 スカシーとプルルンがタコ八号に足をとられた。二人の身体が宙に浮く。
「……許せん!!」
『説明しよう!ヤっ太郎の正義の怒りが……以下略』
 ナレーションははっきり言って手を抜いていた。
「必殺!猫目スラァッシュ!!」
 タコ八号は胴体からまっぷたつに斬られ、爆発した。それを見てカラ丸は慌てて逃
げ出す。
「く、覚えていろよ」
 ヤっ太郎はそれに気づいていない。タコ八号の爆発をバックに決めの台詞を言う事
に専念している。
「天下無敵の大勝利……あれ?」
 ヤっ太郎はスカシーとプルルンがタコ八号の足に捕らわれていた事を忘れていた。
「ヤっ太郎~~~!」
 タコ八号の爆発を至近距離で食らった結果として、二人は黒こげになっていた。
「必殺技を使うんなら仲間を助けてからにしなさいよね!」
「そうだ。そうだ」
 二人は口から煙を吐きながら口々にヤっ太郎を非難する。ヤっ太郎に反論の隙すら
与えない。
 しばらくすると、非難の嵐もようやくおさまった。やっと反論が出来るとヤっ太郎
が口を開きかけた時、異変は起こった。

 海が変色している。
 見る間に海が盛り上がり、爆発した。波がしぶきをあげ、海の底から何かがほとば
しる。
「何、何なの?」
「いわゆる一つの海底火山の噴火ですね。先ほどの爆発で、いわゆる一つの刺激され
たのかと……」
 いつの間に来たのか、島長のシゲオが言った。
「どうするのよ」と、プルルンは叫ぶ。
「こういう場合はいわゆる一つの……逃げるのが一番かと」
「あ~~~、じれったい」
 ニャンキー達は一目散に逃げた。

 噴火はやがておさまった。
 海底火山が噴火した後には溶岩が盛り上がっていた。新たな島の誕生である。まだ
完全に冷えてはいないが、かなり広大である。やがて人の住める立派な土地になるで
あろう。
「これで島探しも一見落着ね」
 プルルンがまだ赤く燃え上がる大地を眺めながら言った。
「今日もお江戸は日本晴れだぜぃ」
 夕焼けをバックに最後の決め台詞。こころなしか、いつもよりニャンキーが格好よ
く見えた。

				◇

 こうしてウサ姫御用達、シマナガ島パート2は誕生した。
 ニャンキー達が着地に失敗して出来た穴は、ニャンキー等身大タコ焼きのカタとし
て、新たに観光の道を開いたシマナガ島の名物となる事になる。
 しかし、普段空を飛べないニャンキーがどうやってピザキャットまで帰ったのか。
 それは永遠の謎である。

				「めんたこ」