#35 Article 9366 Posted at 1993/03/08 16:50:03 by ☆まちばり☆ (MAP641) []

Subject: Re: 熱闘編オリジナルストーリー『大迷惑! 情熱スパイス』 /9349

(その夜遅く。あかね、自室で机にうつ伏せになり、手に持ったものを眺め
ている。別のアングルから見ると、黒いビンを持っているのがわかる。とき
どき、自問自答しているかのようにあかねの表情が変わる)

あかね: でもあたしはそうした‥‥そして、今もそうしたいと思って‥‥
     そして、たとえ‥‥(体を起こす)たとえ乱馬がそうしたいと思
     ってなくても、乱馬もあたしと同じくらいうんざりしてるはず‥
     ‥そうよ!

(あかね、立ち上がり、思い直すまいとするかのように急いで部屋を出る)

(乱馬の部屋。乱馬、ひとりでノートとにらめっこしている。ときどき胸を
こする。胸が痛いのではなく、何かを思いだそうとしているかのよう。あか
ね、ドアを開ける。何かを持っている)

乱馬: (けげんそうに)なんか用か?

(あかね、乱馬の前に座り、ご飯の入った茶碗、情熱スパイスのビン、2本
のスプーンをふとんの上に置く)

あかね: (ゆっくりと)乱馬‥‥あたしたち、出会ったときからずっとむ
     だな時間を過ごしてきたわね‥‥そして、乱馬を追い回す女の子
     たちや、あたしたちを追い回す男のひとたちといろんなことが‥
     ‥

乱馬: (いらいらして)ああ、それで?

あかね: (上目づかいに乱馬を見て)乱馬、もううんざりじゃない? は
     っきりさせたくない?

乱馬: (まごついて)え‥‥? あ‥‥でも‥‥(目をしばたたき、ビン
    に気づく)あーっ! そ、そいつでおれのことをどうかしようたっ
    てそうはいかねーぞ!

(あかね、自分と乱馬の前にそれぞれスプーンを置く。ふたり、しばらく茶
碗を見つめる)

あかね: お互いにひとくち食べさせるのよ、それで決着がつくわ‥‥いや
     なこともなくなるし、話をややこしくするひとたちもいなくなる
     わ‥‥(微笑む)おとうさん、きっと大喜びよ‥‥早乙女のおじ
     さまも‥‥

乱馬: ああ‥‥(あかねを見る)本気なのか?

あかね: (見上げて、こくりとうなずく)あんた、はっきりさせたいって
     言ってたじゃない、だから‥‥

乱馬: よし、

(乱馬、深呼吸し、ご飯にスパイスをかけ、スプーンをとり、ご飯をすくい
とる。少なくとも、そうしようとする。ご飯はべっとりとかたまってくっつ
いている)

乱馬: (からかって笑う)これ、おめーが炊いたんだな?

(あかね、乱馬をにらみつけると、もうひとつのスプーンをつかみ、大きな
ご飯のかたまりをすくいとる。乱馬もなんとかすくいとり、ふたり、しばし
見つめあう)

あかね: いち、にの‥‥

乱馬: さん!(スプーンをあかねの口の中に突っ込み、あかねのスプーン
    のご飯にかぶりつく)

(ふたり、飲み込み、しばらくぼんやりと見つめあう。外の廊下では、かす
みが洗濯した服を持って乱馬の部屋へ歩いて行く。かすみ、ドアを開け‥‥)

かすみ: あら! ご、ごめんなさい、私ったら‥‥

(かすみ、ドアを閉め、しばし立ちつくす。顔が真っ赤。胸に手をあてて心
を鎮める。廊下の棚に服を置き、急いで階下へ降りる)

かすみ: おとうさん? いる?

(翌朝の朝食。かすみ、にこにこしている。早雲とパンダ、(また)にやに
や笑っている。なびき、何を考えてよいやらわからない様子。乱馬とあかね、
相好を崩してお互いに食べさせている)

あかね: (食べ終わって)おいしかった!(立ち上がり、にっこりと乱馬
     に笑いかける)学校まで競争よ!(UP)

乱馬: あっ! ずるいぜ!(とび上がる)かすみさん、どうも!(あかね
    のあとを追いかける)待てよ、こいつう!

なびき: 「こいつう」ですって? あら、まあ‥‥

(乱馬とあかね、ご想像どおり、たあいのない間のびした追いかけっこを演
じる。すると、学校から2、3分のところで、風林館高校のイカレた校長が
現れ‥‥)

校長: HA! 今日はユーたちふたりとも遅刻の罰としてトイレ掃除でーす! 
    HAHAHAHA...

(ぶぎゅるっ! 乱馬とあかね、校長をふんづけて走ってゆく)

校長: (ふらふらと立ち上がり)OH, NO! 許しませーん!(シャツからリ
    モコンを取り出し、ボタンを押す。いくつもの巨大な網が乱馬とあ
    かねめがけて降ってくる)

あかね: (かわしながら)きゃあっ!

乱馬: (しゃがんで)あかね、こっちだ!

(あかね、乱馬の背中に飛び乗る。乱馬、校門へ突進する。あかね、的確な
パンチで網をすべてはねのける。ふたり、ベルが鳴ると同時にすべり込む)

乱馬: (笑って)引き分けだな!?

あかね: (やはり笑って)いいえ、あたしたちの勝ちよ!

(ふたり、互いに笑う。乱馬、あかねを背中に乗せたまま校舎へ駆けこむ)

			(アイキャッチ)

(学校の昼食時間。乱馬とあかね、互いに食べさせながらじゃれあっている)

乱馬: (大笑いして)んなばかな!

あかね: (くすくす笑う)ほんとうよ!

乱馬: 違うって! 絶対、絶対、ぜった‥‥(笑いが消える)

(他の生徒たち、このありさまをずっと見ている)

男子生徒1: (近付く)なあ、一体全体おまえたちどうしたんだ?

男子生徒2: そうだよ、この間なんかお互いがまんならないって感じだっ
       たじゃねーか。

乱馬: ん?(いきなりにっと笑って)みんなこいつのせいさ。(あかねを
    指さす)

あかね: なによー、ちがうわよ。

乱馬: そうじゃねーか、その大きな黒い目でおれががまんできなくなるま
    で見つめやがって!

(ふたり、互いに相手を見る、そしてまた笑い出す。生徒たち、驚いて顔を
見合わせる。と、いきなり九能が教室に飛び込んでくる)

九能: 早乙女乱馬! 天道なびきから聞いたぞ! 妖しの薬を使ってあか
ねくんを意のままに従わせたというのは本当か!

(乱馬とあかね、不機嫌そうに九能を見る)

乱馬: いきなり何のマネだ!

九能: 答えろ!

乱馬: ふん。(弁当の方へふり返る)おれたちはやっと、お互い相手を本
    当に好きになるって決めたんだ。(あざ笑う)センパイにはチャン
    スはなかったってことだよ。

九能: なんだと!(木刀を頭上に振りかざし、乱馬に向かって突きを繰り
    出す)

(乱馬とあかね、すばやく視線を交わす。乱馬、九能の方へ宙返りし、稽古
着とはかまをつかみ、あかねの開けた窓から九能をほおり出す。しばらくし
て先生が教室に入ってくる)

先生: 九能君はここに来なかったかね?

男子生徒3: 来ましたよ、先生。

先生: 今度はなにをしてたんだ?

乱馬: 飛ぼうとしてましたよ、さっき見ましたけど。

(先生、困惑した表情で乱馬を見る)

あかね: あんまりうまくなかったわね。

(窓の外では、ぼーんと大きな音がして九能が飛び込み台から飛び跳ねる。
あかね、プールの方を見てまゆをひそめる)

乱馬: どーでもいいや。

(その後。乱馬、運動場の方へ歩いて行く。突然右京が現れ、乱馬を木の後
ろに引っぱりこむ)

右京: (乱馬を見つめて)‥‥

乱馬: (うなだれて)ウ、ウっちゃん‥‥聞いたんだな‥‥

右京: (やや苦し気に)乱ちゃん、隠し通そうとしてたんやないんやろ‥‥

乱馬: お、おれはその‥‥泣くなよ‥‥

右京: (沈んだ声で)うちに消えてほしいんか?

乱馬: そんな!(作り笑い)何はなくても、ウっちゃんは料理がうまいじ
    ゃないか‥‥ずっといてくれよ、あかねだってきっとウっちゃんの
    ことが気に入ってると思うぜ。

(右京、しばらく乱馬を見ると、うなずいて歩み去る。乱馬、何か言いたそ
うにしてその後を見送るが、何も思い浮かばない)

(その後。乱馬とあかね、帰宅途中)

あかね: 右京の気持ちなんて考えてなかったわ。何かいい方法があったら
     よかったんだけど‥‥

乱馬: ああ、そうだな‥‥(あかねの方に腕を回し、あかねもそうする)
    もちろん、シャンプーも傷つくだろうし‥‥

あかね: うん‥‥

乱馬: (少し笑って)小太刀もな。

あかね: うん!

(乱馬、笑い、あかねを抱き上げて家へ駆け出す)

あかね: きゃーーっ!

乱馬: やっほーー!

(その夜、夕食の風景)

乱馬: ばっかばかしい。おれは修行中にかざりっ気のない生活に慣れたし、
    その方が気に入ってるんだ。

あかね: でもあたしは快適な暮らしに慣れてるのよ!

乱馬: おれはぬいぐるみやかわいらしいフリルがいっぱいの部屋で暮らす
    つもりは‥‥んぐっ!

あかね: (乱馬の口に野菜を突っ込む)2、3日部屋を交換して様子を見
     るってのはどう?

乱馬: (野菜を飲み込み、意地悪く笑う)お互いの部屋で交替で夜を過ご
    すってのはどうだ? おやじは八宝斉か誰かと寝りゃいいだろ。

パンダ: (おびえて)ぶるんぶるん!

かすみ: (ショックで目を白黒させる)あかね、乱馬くん、それは早すぎ
     るって思わない?

早雲: 何言ってるんだ、これでふたりは万々歳だ!

あかね: (すこし照れながら微笑む)あのね、あたしたち、どうやって暮
     らしていくかきめなくちゃ‥‥そんなに急がなくてもいいかもし
     れないけど。(塩とこしょうに手を伸ばす)とにかく、あたした
     ち‥‥え?!(おなじみ黒いビンを取り上げる)おねえちゃん、
     これ情熱スパイスじゃない?

かすみ: え? ちがうわよ。シャンプーちゃんがここにいたとき最後の一
     振りを使い切っちゃって、それでシャンプーちゃんが出ていった
     あと私が洗ってこしょうを詰めといたの。

あかね: (ただならぬ表情を浮かべる)シャンプーが出てったあと‥‥そ
     れって、あたしと乱馬がもどってくる前?

かすみ: そうよ。

あかね: (乱馬を見て)じゃあ、あたしがあんたにご飯を持ってったとき
     は‥‥

乱馬: (あかねを見つめる)つまり、おれたちは情熱スパイスを食ってな
    くて、そして今まで‥‥

(このときほど当惑した表情のふたりを筆者はかつて見たことがない)

(天道家のロングショット。遠くで声が聞こえる)

乱馬: あかねのばかああーーー!!!

			(エンディング)

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				東京大学 理学部 情報科学科 3年
				伊藤隆幸 <yuki@is.s.u-tokyo.ac.jp>