#148 Article 22878 Posted at 1995/11/16 07:29:46 by DELTA (MAP5804) [STORY]
Subject: Re:*16 危険がいっぱい露天風呂 /6713 ...... /5728 /5727
21話に、こういうシーンが欲しかったので。 Title「人魚の涙」 (ばかみたい。お湯につかったらこんな風になるって事、初めから判ってたのに…) 薄暗い部屋の中で、マリンちゃんは横になって休んでいます。肌の赤みはもうだいぶ 引き、気持ちの悪いのもかなり治まってきました。大昔のご先祖様が大魔法使いと交わ した契約で、尾鰭を乾かすだけで人間形態になれるとはいえ、水中生活に適応した身体 にとって、陸上はあまり居心地の良い場所ではありません。まして温泉に入るなんて… 温度がもう少し高かったら、陸に長時間あがったイルカのように全身火傷していたか もしれません。 (…リーヤ君にまた水着姿を見せてあげたかったの…ちょっとの間だけでもいいから いっしょにいたかったの…なのに…) そのリーヤは隣の大部屋。今ごろは御馳走に舌鼓を打っているでしょう。リーヤの隣 に座ってごはんをよそってあげようと…一緒に御馳走を食べようと思っていたマリン ちゃん、でも今は水しかお腹に入りません。それ以前に立ち上がる事すら出来ないので す。 (まだ…身体が熱いな…リーヤ君の隣、誰が座ってるんだろ…) 開いている窓を通して、チャチャのバカ笑いや、リーヤの「これすっげぇうまいぞぉ」 などといった声が微かに聞こえてきます。腹が立つとか、うらやましいとかいう感情は 何故か沸いて来ません。好きになったのがリーヤでなければ、こんな苦労をしなくて済 んだのに…と一瞬考えてしまうマリンちゃん。 (でも、リーヤ君に出会わなかったら…その人の為に死んでもいいって思うくらいの 恋なんかしなかったわ…たぶん…一生…) 涼しい夜風が風鈴を鳴らし、マリンちゃんを浅いまどろみへと誘います。 「……んで俺が…」 「あんたがやらないと意味ないでしょ!?」 「だから何で!?」 「男が細かい事、気にしないの!大丈夫、今ならマリン寝てるから。起こさないように 置いてくればいいじゃない。ま、起こしてもいいけど」 やっこちゃんとリーヤでしょうか?廊下から漏れてくる声でマリンちゃんは目を覚 まします。少しのびをしてみると、だいぶ体に力が戻って来ているのが判ります。そろ そろ起き上がっても大丈夫でしょう。 いきなりガラリと廊下のふすまが開きます。起きて正座して三つ指ついてリーヤを出 迎えようと思っていたマリンちゃんでしたが、ちょっとの差でタイミングを逸してし まいます。 (まあいいわ、近づいて来たらリーヤ君に抱き付いちゃお…) 「マリン…おかゆ持ってきたぞ」 (おかゆかぁ…ならちゃぶ台に置くまで待った方がいいわね) たぬき寝入りを続けるマリンちゃん。自分では気が付いていませんが、浴衣のすそが はだけて柔らかそうなふくらはぎが露になり、乱れ髪の隙間からはピンクに上気した うなじが覗いています。おかゆを置いたらすぐ出ていく、と決心していた筈のリーヤ、 背中を向けて寝ているマリンちゃんの腰の曲線の艶めかしさにみとれてしまいます。 (もういいかな?…3…2…1…リー) 「マリン…俺、別にマリンの事嫌いって訳じゃないんだ…」 (え!?…それって…愛の告白なの…?) またも出鼻をくじかれたマリンちゃん、しかしリーヤの言葉の続きを聞きたくて、寝 たふりを止める事が出来ません。 「でも誤解すんなよ。好きでもないんだから…俺が好きなのはチャチャだけだ」 心に冷水を浴びせられたような気持ちになるマリンちゃん。そんな事は出会った時か ら判っていた筈なのです…しかし本人の口から言われると、やはりこたえます。 「小さい時からずっと一緒に育って、もちもち山を走りまわって遊んで…そりゃ魔法 の実験台にされた事もあったけどさ、でも一番大切な友達だったんだ。それからしいね ちゃんに出会って…はっきり判ったんだ。チャチャは誰にも譲れない…いや、チャチャ を俺だけのものにしたいって。だから…ごめんマリン。俺、おまえを好きになってやれ そうにない」 リーヤが立ち去る気配に、マリンちゃん耐えきれずに声をあげます。 「リーヤ君…もし…幼なじみがチャチャでなくあたしだったら…あたしと一緒に育っ ていたら…そしたら好きになってくれた…?」 「……わかんね…」 「…そうだよね…その時になってみないとね…おかゆ、ありがと。心配しないで、明日 はきっと元気になるから」 ふすまが静かに閉じられ、部屋は再び闇に覆われます。マリンちゃんの目頭にキラリ と光るものがあったのですが、一瞥をくれただけのリーヤは気付かなかったようです。 (リーヤ君には判らないようにしてるけど…人間の足で歩くのってすごく痛いのよ… 使った事の無い筋肉に力を入れて…でもかわいく見えるように他の娘のまねして…な のにリーヤ君、走って逃げちゃうし…あたしは全然追いつけなくて…) 子猫のような細い泣き声が、哀歌となって窓から流れていきます。遠いご先祖様も、こ んな思いで涙したのでしょうか?マリンちゃんの枕元には、やがて大粒の美しい真珠 が結球していきます。 ---------------------- ちょっと追加 「あ゙~おいしかった。お腹いっぱい!」 「御馳走なんて久し振りですぅ」 「お腹いっぱいで…もう…眠い…寝かせて」 急にトロンとした目になるチャチャ、女部屋に入ろうとした所をやっこちゃんに腕を 掴まれます。 「さあ!食後の運動よ。一階に卓球台が有るの。も・ち・ろ・ん・やるわよねぇ?」 「え゙?だってあたし、もう眠くて…」 「え~い、往生際の悪い娘ね!温泉宿に泊まりに来といて卓球しないなんて、あんたそ れでも日本人?」 「…ここ魔法の国…」 「ゴチャゴチャ言ってないで下に来なさい!60分一本勝負完全KO泣いても許さないぞ 電流ビリビリデスマッチの再戦よ~!ほらぁ、お鈴ちゃんも!」 「は、はい!……?」 何故か無意味に元気なやっこちゃん、寝ぼけまなこのチャチャを引きずって階段を下 りていきます。 ---------------------- MAP5804 あれ?マリンちゃんでシリアス出来た DELTA_WAVE P.S 泣き顔をピタリと止めるなんて器用な事、マリンちゃんには出来ませんからね。そ んな所にチャチャを入れたら根掘り葉掘り聞こうとするに決まっています。リーヤを けしかけた責任を取ろうとしたんでしょう。