#148 Article 22796 Posted at 1995/11/06 07:02:53 by DELTA (MAP5804) [STORY]

Subject: Re:*8 約7年後 /22795 .... /22723 /22719

§7

  「大魔王の復活」という事態にパニックを起こしかけた人々も、「セラヴィが討って出
 る」という翌朝の続報に少し落ち着きを取り戻したようです。やっこちゃんもその中の
 一人でした。セラヴィが「何とかなる」と言っているのだから大丈夫、と。
  しかしながら、初めてお客として魔法薬品店を訪れたセラヴィは、
  「蘇生薬(エリクサー)を…有るだけ下さい」
  と切り出し、やっこちゃんに大ショックを与えました。それはちょっとした村の年間
 総生産にも相当する代金総額のせいではありません。
  「まさか…そんな死地に向かわれるのですか…」
  顔面蒼白のやっこちゃん、振るえる声を出すのがやっとです。
  「死ぬと決まった訳ではありません…が、生きて帰れる保証もまたありません」
  「ど…どろしーさんの事を言ってるんでしょ?あの人攻撃魔法がメインで、治癒系は
 しいねちゃんの方が今は上手いっていうじゃない。困るわよねぇ、この薬ってそう十回
 も二十回も効くモンじゃないのにセラヴィ様の足を引っ張って…」
  無理に蔑んだような笑みを作るやっこちゃん。まるで必死に自分に言い聞かせている
 みたいです。
  「いえ…半分はどろしーちゃんにも持ってもらいます」
  「セラヴィ様……逃げて…あたしと一緒に逃げましょう!」
  普段はこんな事を言いだす娘ではないのはご存じの通り。懇願するやっこちゃんの目
 に涙がたまってゆきます。それはセラヴィがこう言うだろうと予感していたからに違
 いありません。
  「奴の狙いは僕一人です。逃げれば逃げただけ、どこまでも追ってきますよ。たとえど
 んな犠牲を払おうと、この国で倒すのが最良の選択なのです」
  「じゃ、あたしも連れてって!セラヴィ様と同じ日に、同じ場所で死なせて!」
  もはや錯乱状態のやっこちゃんをセラヴィが強く抱き締めます。「泣いていいんだよ」
 というサインだと受け取りかけたやっこちゃんが聞いたのは、こんな言葉でした。
  「やっこちゃんには生きて、やって欲しい事があるんです…僕の子供を生んで下さい」

  (…でも、最期を看取る役目には、あたしではなくどろしーさんを選んだのですね…)

  「セラヴィ様…これを…持って行って下さいませ」
  寝室の扉を開けて出て行こうとするセラヴィを、シーツ1枚まとっただけのやっこち
 ゃんが呼び止めます。
  「うちの家宝です。持ち主が危険な状態に陥ると、最も効果の有る薬のカプセルが割れ
 て着用者の体にかかるようになっています。神経毒と血液毒の中和剤が各9回分、抗催
 眠薬と、千切れた手足まで再生出来る細胞賦活剤が24回分。…蘇生薬も5回分入ってい
 ます」
  手の平ほどもあるメダルを受取り、早速首にかけるセラヴィ。今まで見せた事もない
 ほど愛しげな目でやっこちゃんを見詰めます。
  「僕も…やはり男だったんですかね。急に種を蒔いておきたくなるなんて…すみませ
 んねぇ。でもやっこちゃん以外に頼める人を考えつかなかったもので」
  「排卵誘発剤の効き目は確かですわ。立派に…育ててみせますから…」
  子供が父親の顔を見られるよう、生きて帰ると約束して欲しいやっこちゃん。しかし
 それを言い出す前に、セラヴィは扉を閉めて日暮れの街に去っていってしまいます。
  「あなたのお父さんは、あたしにとって最初で、ただ一人の…そして最後の男性(ひと)
 だったのよ」
  窓の外を歩くセラヴィを見詰め、下腹部に手をやりながら話しかけるやっこちゃん。
 少女の…いえ、童女の頃からの夢は今、こんな形で実現されてしまいました。
  「かわいい妹子になって…かわいいお嫁さんになって…何よ、全部叶ったじゃない…
 どちらも…一日だけ…だったけど…」
  微笑もうとしました…次に苦笑しようとしました。運命を呪って怒ろうとしました。
 しかし、セラヴィとの思い出が一つづつ鮮明に浮かぶ度、あふれる涙と嗚咽をどうする
 事もできませんでした。
  やっこちゃんの一生で、大泣きしたのはこれが最後だったそうです。


  MAP5804 書けない所は書かずにゴマかす(^^;; DELTA_WAVE
P.S エリザベスの台詞が一言も無いのに気付いていただけたでしょうか?セラヴィは
   今回、やっこちゃんの家に連れて来ていないのです。
P.P.S 二股かける最低男が、これで三人(--;)
P^3.S ネタばらししちゃうけど、"約7年後"は今回のが最初にあって、ここに至るまでの
     シチュエーションをつけたしたようなモンです。で、次の最終回もつけたし。