#148 Article 22743 Posted at 1995/11/02 07:19:47 by DELTA (MAP5804) [STORY]

Subject: Re:*4 約7年後 /22742 ... /22723 /22719

§3

  小春日和をもたらした太陽は西に傾き、王城の城壁が手入れのいきとどいた庭の木々
 草花に長い影をなげかけていました。庭を散歩するしいね次官補の耳には小鳥(含ム、
 ぴー助)の鳴き声と、時折聞こえるチャチャ姫の笑い声、普通に話していてもここまで
 届くリーヤ大佐の大声、おしめの替えをせがむ第二王女の泣き声が入ってくるのみ。
  (とりあえずの外交課題は片づいたか…)
  "不死身の銀狼"が動いたというだけで、国境付近に集結しつつあった隣国の軍は蜘蛛
 の子を散らしたように退散していきます。この異名を名乗らせたのはセラヴィの発案。
 最初は単なるハッタリでしたが、伝説上の人物になったつもりのリーヤは次々と軍功
 をあげてしまったのです(^^;;。まあ確かに今のリーヤには弓も剣も通じません。長槍
 をしっかり構えて突進する騎士がかすり傷を負わせられる程度、まともに戦うには6+
 以上の魔法のかかった武器と、それを使いこなせる腕が必要でしょう。
  「しいね様、隣国の最新状況です…第三軍と四軍は解散、一軍は王都防衛に。二軍は北
 部の農民一揆鎮圧に。その他はほぼ通常通りのシフトに戻りました」
  「よろしい。こちらも"緑"に戻していいでしょう。農民一揆は軟着陸させてあげましょ
 う。われわれにはほとんど実害が無かったのだし」
  「はっ!」
  空から降ってくる声と、ただの一人言…前者はしいね次官補にしか聞こえません。庭
 師が仕事を終え、夜番の兵が配備につくまでの数刻は、二人が安心して情報と指令を交
 わせる数少ない時間帯です。
  (今度の平和はいつごろまで続いてくれるんだろう…この冬いっぱいもってくれれば
 いいのだが。灌漑用水をもう一本引いて、うりずり山のふもとまで耕地を広げて…そう
 だ、来年はベビーブーム世代が就学年齢だな。学校も増やさなきゃ……何だ…この感じ
 は…西か!?)
  強烈な眩暈と耳鳴り。太陽の横の空に黒い霞のようなものが浮かび、しばらくして消
 えました。城下の動物達が狂った様に吠えたて、鳥達はある筈のない逃げ場を求めて飛
 びたちます。チャチャの笑い声はぴたりと止み、リーヤは西を睨みつけ、安らかな眠り
 についていた筈の妹姫までが恐怖の泣き声をあげます。
  「しいね様!?」
  「ここから真西、130km位だと思うが…調べてくれ」
  「はっ!谷保々山ですね」
  「非常に危険だぞ。最悪、情報が取れなくてもいい、必ず戻って来い!」
  しいね次官補だけには判る気配が植え込みから消え、城内の喧騒も次第に収まってい
 きます。
  「ピカポンめ…お師匠様に呪いをかけただけじゃ足りないのか!?」

  「思ったより来るのが早いな。縮地法でも使ったか?」
  明かりひとつ無いピカポンの屋敷を探っていたお鈴ちゃん、いきなり後ろから声がし
 たので驚きます。が、すぐに苦笑とともに、
  「…虚像か」
  「その通り。だが、こういう事も出来る」
  ピカポンの掌から撃たれた魔法弾が、お鈴ちゃんの背中に命中。いかなニンジャマス
 ターといえど、このような至近距離では避けようがありません。裏地にLv.13の抗魔法
 刺繍がしてある忍び装束も、衝撃を完全に吸収するには至らず、20m近くを吹き飛ばさ
 れます。とはいえ空中戦はお手のもの、苦無が闇を切り裂きピカポンの虚像をかき消し
 ました。
  (気付かれた…作戦は失敗ね)
  脱出を図るお鈴ちゃん。服の背中の刺繍は焼けこげています。同じ部分にもう一撃食
 らったら致命傷になるでしょう。
  「まあそう帰りを急ぐな。みやげ話が欲しかろう。来るがいい、本体に会わせてやる」
  玄関ドアが目の前で締まり、すぐにそれは煉瓦の壁へと姿を変えます。屋敷の奥に通
 じる扉が一斉に開き、同時に廊下がシャンデリアで照らされます。
  「どうした、私の話を聞いてからでないと外には出られんぞ」
  「又は…あなたを倒すかね。最初に頭を狙わなかった事を後悔させてあげるわ」
  明かりに従って廊下を何度か曲がり、突き当たりの扉を開いたお鈴ちゃんを、信じら
 れない人物が玉座で迎えます。
  「私がお前に会うのは初めてだが…お前が私に会うのは二度目だな」
  「…だ…大魔王!?」


  MAP5804 お鈴ちゃんファンはちょっと覚悟してね DELTA_WAVE
P.S でも大丈夫、死なしたり労災認定患者にしたりしないから